会議


そこはあでやかな美女が舞い、春の小鳥の歌声のような音が流れる町であった。
無数の男女が歌い踊り、一時の春を楽しむ。
絢爛さと淫靡さを併せ持つその町にはもうひとつの顔があった。

一軒の料亭―――
「もう、おりゃー我慢できん。芹沢の野郎の首を取り塩漬けにしてくれん。」
新撰組隊士の一人である原田佐之助が怒気あらわに言った。
「原田殿のお気持ちはわかりますが、芹沢は文武に優れた達人。
下手に動けば返り討ちにあうが必定にござる。
ここは古来より勝ちやすきに勝つことが兵法の常道。
まずはじっくりと機をうかがうべきでござらぬか?」
山南敬助がたしなめるように言った。
「臆したか―――山ナミィィィッッ―――!!!」
「兵法というものがござろう。原田殿。」
他の隊士達もそれぞれに武断派と穏健派に別れ喧々がくがくに自説を主張した。
会議は流れる、しかし意見は踊る。
土方は冷ややかな目をしながらその光景を黙然と見ていた。
沖田は目を閉じながら話を聴いていた。
―――と、その時
「まーだ、ガタガタ騒いでたんか?」
新撰組局長、近藤勇が悠然と部屋にやって来た。
「長い厠でしたね。」
沖田がクスリと笑みを浮かべながら言った。
「あーすんげぇぇ、長え糞がでたかんなー。 トシィ、あの糞始末しといてくれねーか。」
歳三の目が冷ややかに笑った。

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