夜襲


沖田総司は一人で町を歩いていた。
この日、沖田は一人で警備の任に就いていた。
半月の光を浴びたその顔は、
あまりの美男を隠すために仮面をつけたと言われる唐土の蘭稜王のごとく美しかった。
ちょうど五条大橋にさしかかったところで総司は不意に何かを感じた。
一つの影が沖田に斬りかかってきた。
その斬撃は鋭く迅い。
沖田はスゥゥーッと動いた。
決して迅い動作ではなかったが完璧にその一撃をかわしていた。
鋭い連撃が続いた。
けれども沖田はその全てをことごとく紙一重でかわした。
かわしながら総司は考えた。
(芹沢の手の者ではないし、薩長の者でもないようですね。
 それではどこのものでしょうか?)

(げっ・・・かわされた???くそ、悪人のクセになかなかやるな・・・)
だが最後はこの美男で天才が勝つ!!!)
さらに鋭い斬撃を次々とと放つ。
しかし全て寸前でかわされる。
相手の動きは決して早くはない、だが当たらぬ。
月の光に照らされ敵の顔が見える。
(ホーウ、な・・・かなかやるな・・・だ・・・だがまだまだ俺のがちょっと上だな)
その瞬間相手の一撃が正確に頸部に決まった。
薄れゆく意識の中で思った。
(せ・・・せめてあの子の手を握りたかった・・・・そしてその後あんなことも・・・・)



© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: