酔眼教師の乱雑日記

「額に汗して働く」

贈る言葉 「額に汗して働く」



 12期生の皆さんご卒業おめでとうございます。この期で初めて無断でゼミをやめた方が出たのは、教師として大変残念な思いをしましたが、23名の方々の笑顔に助けられました。皆さんは「人間としての礼」を忘れずに、「物事のけじめ」をしっかりとつけて人生を送ってください。

 さて、「失われた十年」という言葉が過去のものになり、企業業績も上向きつつありますが、一方では、「構造計算書偽装事件」「ほりえもんのlivedoor事件」「東横イン無断改造事件」のような倫理観・道徳観のない事件が続発し、「金儲け」主義が経済を蝕んでいます。
 「正当な利益」をあげることは否定しませんが、堀江の「法の抜け穴」を探して時価総額を増やす方法、確かに「金は金を生みます」が、それは絶対に社会全体を豊かにするものではありません。「物を作り、物を流通させ、物を消費する」この循環を省略した経済の活性化はありえないのです、「額に汗してお金を稼ぐ」ことを省略して、「金」だけを人生の成功の尺度にした人間は周りの人々に迷惑をかけながら「天罰を受ける運命」なのです。
 このような事件の根底にあるのは、「拝金主義」、自分だけ、自分の会社だけが「利益を上げれば」、他の人や企業の迷惑など関係ないという「おぞましい考え方」ではないでしょうか。このような状況が、戦後60年の民主主義と教育の帰結であるとすると情けない限りです。日本の民主主義・資本主義は偽ものなのかもしれません。

 皆さんは「人格の陶冶(とうや)と実学志向」を建学精神とする大学で学ばれました、「人格の陶冶」こそ、最高学府で学んだ人たちに求められるものです、人格の陶冶なくして「実学」はないのです。陶冶は、「人間形成」のことをいう古い表現です。近年は、ほとんど人間形成という言葉で置き換えられていますが、辞書によると「生まれついた性質や才能を鍛えて練り上げること」とあります。生まれたときから「悪人」はいません、成長する過程での環境や教育が間違えた方向へと向かわせたのではないでしょうか。

 論語の學而編に「貧而樂(貧しくして楽しむ)」という言葉があります。その意味するところは、「貧乏であろうとも、あわてることはない。目的をもって生きる、信じるところに生きる、趣味に生きる、修養につとめる、そこにはおのずから、積極的な人生の楽しみが生まれるものだ」です。
 「貧而樂」の精神で、○○ゼミを卒業される皆さんは、「額に汗して働く」大切さを自覚してください、そして、周りの人々に「気遣いのできる」人間として生きていってください、還暦を迎えた教師のささやかな願いです。



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