履歴と感想 : ひ

 読書履歴 と 読後感想 ( ※ 作品の記載順と出版順は必ずしも一致していません )

【 ひ 】

東野圭吾
・ 放課後
・ 卒業
・ 白馬山荘殺人事件
・ 学生街の殺人
・ 十字屋敷のピエロ
・ 眠りの森
・ 仮面山荘殺人事件
・ 宿命
・ ある閉ざされた雪の山荘で
・ 美しき凶器
・ 同級生
・ むかし僕が死んだ家
・ 天空の蜂
・ 名探偵の掟
・ どちらかが彼女を殺した
・ 悪意
・ 秘密 ・・・・・ ★★★★★
秘密
妻・直子と小学5年生の娘・藻奈美を乗せたバスが崖から転落。
妻の葬儀の夜、意識を取り戻した娘の体に宿っていたのは、死んだはずの妻だった。
その日から杉田家の切なく奇妙な"秘密"の生活が始まった。
─── 出版社の内容紹介等から引用 ───

『 心と体の入れ替わり 』 を扱ったものというのは、小説・漫画・映画・等など、沢山あるのですが、そういったものは、SFであったり、ファンタジーであったりすることが、多いかと思います。
本書にも、そういった面がありますが、ちょっと違うように思います。
こういうことが、もし本当に起こったらどうなるんだろう … というような事を、真実味を持って、かなり本当の意味で、リアルに書かれていると小説だと思います。
妻の直子は、自分の置かれている状況に、なんとか適応しようと頑張ります。
主人公である、お父さん ( 旦那さん ) は、その頑張っている娘の姿の妻に対し、ときに応援し、ときに、嫉妬し、ときに疑心暗鬼になりながら、接しています。
体の成長と共に、環境も変化し、気持ちの変化を見せる妻に対し、置いていかれたような心境になる。
私なら、どうするのでしょうか…。
私自身、男ですし、娘を持つ父親ですので、かなり、自分自身に照らし合わせながら読みました。
主人公の心の葛藤が、よくよくわかるような気がしました。
切なく、つらいながらも、爽やかなラスト・・・。
ラストページでは、泣いてしまいました。
・ 私が彼女を殺した
・ 白夜行 ・・・・・ ★★★★☆
・ 嘘をもうひとつだけ
・ トキオ ・・・・・ ★★★★★
トキオ
遺伝的な難病ゆえ、短い生涯を終えようとしているわが子。
「『生まれてきてよかったか』と尋ねたかった」とつぶやく妻に、主人公、宮本拓実は語りかける。
今から20年以上前に、自分は息子と会っていたのだと…。
定職を持たず、自堕落に生きていた若かりし日の拓実の前に、見知らぬ若者が現れる。
トキオと名乗るその青年とともに、拓実は、行方不明となったガールフレンドの捜索に乗り出した。
─── 出版社の内容紹介等から引用 ───

物語は、若い頃、未来から来た息子に会った事を奥さんに話すところから始まり、その過去の出来事に移っていきます。
その過去の話が、懐かしい・・・。
トキオは、若かい頃の拓実に逢うわけなんですが、この拓実が、かなりどうしょうもないくらいのアホです。
拓実のアホさ加減に、トキオは、あきれ返るのですが、なんとかしようとするトキオの姿がたまりません。
アホの拓実と、一生懸命のトキオのおかげで、本当は暗くなりそうな話が、爽やかで、明るい印象の作品になっているのですが、最後はやはり、この物語の本質の部分で泣けてきます。
東野さんが、アホな男の話を書こう、と思って書いた作品で、書いていて楽しかったらしく、作品が等身大というか、自然な感じというか、書きたいことだけを書いた作品なんだそうです。
SF苦手な方でも大丈夫なこの作品 ・・・ いいです。
・ 超・殺人事件
・ レイクサイド
・ 手紙 ・・・・・ ★★★★★
手紙
兄は強盗殺人で服役中。
その時、弟は…。
断ち切られた兄弟の絆。
希望なき世界を彷徨う人生。
いつか罪は償われ、傷は癒されていくのだろうか。
『毎日新聞』日曜版連載、第129回 直木賞候補作品
殺人犯の弟という運命を背負った高校生が成人し、やがて自分の家族を持つにいたるまでの軌跡を、真正面から描ききっている作品。
─── 出版社の内容紹介等から引用 ───

犯罪被害者の家族ではなく、犯罪加害者の家族の苦しみを描いたものです。
高校生である主人公が、ある日突然、現実の厳しさや、世間の冷たさにさらされます。
犯罪者の弟という事が、何度となく主人公の道を閉ざす事になります。
にもかかわらず、兄からの手紙は届き続け、次第にその兄の手紙が、疎ましくなります。
主人公は幾度となく、選択をせまられます。
その度に、読者は 『 自分ならどうするだろう・・・ 』 『 その選択はいいのだろうか・・・ 』 と思いながら読む事になります。
主人公の心情を思うと、せつなさと、やりきれなさで、読んでいてつらくなります。
ネタばれになってしまって申し訳ないのですが、あえて書きます。
終盤、主人公の奥さんのがんばりには、泣けてきましたし、それを知った主人公の決断には、胸を打たれます。
涙なくして読めなかったです。
最後の最後では、涙が止まりません。

いろいろと考えさせられる作品です。
当たり前の事なんですが、犯罪加害者の家族は、加害者ではないという事を、あらためて教えられた様な気がしました。
・ おれは非情勤 ・・・・・ ★★★☆☆
おれは非情勤
ミステリ作家をめざす 『 おれ 』 は、小学校の非常勤講師。
下町の学校に赴任して2日目、体育館で女性教諭の死体が発見された。
傍らには謎のダイイングメッセージが!一方、受け持ちのクラスにはいじめの気配がある…。
盗難、自殺、脅迫、はては毒殺未遂(!?)まで、行く先々の学校で起こる怪事件。
見事な推理を展開するクールな非常勤講師の活躍を描く異色ミステリ。
他にジュブナイルの短篇2篇を収録。
─── 出版社の内容紹介等から引用 ───

小学校の非常勤講師が、赴任先で先々と事件に出くわすなどという、とんでもない設定になってます。
主人公は非常勤講師ということもあって、生徒達と必要以上親密になる事もなく、ドライな感じのキャラクターです。
タイトルが 『 非常勤 』 ではなく 『 非情勤 』 なのは、ここらへんからきてるのでしょう。
連作短編なんですが、学研の 『 5年の学習 』 『 6年の学習 』 に掲載されたものをまとめているようです。
そういうこともあってか、トリック自体もそうですし、解決時の説明もわかりやすい。
物語は基本的にはハードボイルド調で、ラストの決めセリフもなかなか、かっこよく、ぐっときますし、相手が子供だからといって見下すこともないところはいいです。
おまけの二編もなかなかよかったです。
本も薄く、すぐに読み終わるので、内容共々気楽に読める本書はオススメ・・・。
・ 殺人の門 ・・・・・ ★☆☆☆☆
殺人の門
どうしても殺したい男がいる。
その男のせいで、私の人生はいつも狂わされてきた。
人間の心の闇に潜む殺人願望を克明に描く、衝撃の問題作。
『 KADOKAWAミステリ 』 連載に加筆・修正し、単行本化。
─── 出版社の内容紹介等から引用 ───

かなり後味の悪い作品でした。
読んでいると、だんだんと暗くなります。
生憎、主人公には感情移入出来なかったんでまだましなんでしょうが、もし、感情移入して読んでしまったら、相当凹むこと間違いなし。
作者の力量を十二分に感じますし、凄いとは思うんですが、面白い作品かどうかは、また別の話で・・・。
主人公の不甲斐無さや、ある人物の人間的に問題のある点等、読んでいてしんどいです。
主人公をここまでどん底に落とす必要があるのか・・・と、読んでいる間は思っていました。
ラストの展開を最大限に盛り上げる為とはいえ、あまりにもやり過ぎな感じがしました。
また、『 とっとと殺してしまえ 』 って思いながら読んでしまったのですが、この作品を読まれた方はそういった方が多いのではないでしょうか。
色々と考えさせる部分もありますが、あまり人にオススメしたくない本です。
・ 幻夜 ・・・・・ ★★★★☆
幻夜
95年、西宮。
未曾有の大地震の朝、男と女は出会った。
美しく冷徹なヒロインと、彼女の意のままに動く男。
女の過去に疑念を持つ刑事。 
彼女は一体誰なのだ…。
永遠に太陽は求めない ・・・ 二人の夜が本物ならば ・・・
─── 出版社の内容紹介等から引用 ───

『 白夜行 』 の続編と聞き、読み始めるも 「 ん?」
設定・展開 等 作品がもつ雰囲気は似ている部分が多いものの、『 白夜行 』 の登場人物が出てこず、続編ではないと思わせるが、中盤頃から おぼろげに感じる違和感が、後半に差し掛かる頃には形を成してきます
上手いです。
さすが、東野圭吾さんらしい、巧みな組み立て方の作品です。
作者自身は 「 続編としては書いていない 」 と言っておられますが、そう言いながらも、その発言の前後では、続編を示唆する発言もされています。
続編か否かは、両作品を読んだ方がどう感じるかに委ねているのかもしれません。
『 白夜行 』 を未読で本作を読まれても問題はありませんが、『 白夜行 』 から読む事をオススメします。
もしかしたら、本作読後に 『 白夜行 』 というのも面白いかもしれません。
こういった事から 『 白夜行 』 と比較される事も多い本作で、『 白夜行 』 の方が面白いと評価されているのを、よく目にしますが、私は、本作の方が面白く読めました。
『 白夜行 』 では、客観的な視点から語られる事が多かったかとも思うのですが、本作は主人公自らの心情等、内面部分の描写が多く、読み手として、物語に入りやすかった様に思います。
ラストのシーンはあっけない印象もあり、読後、呆然としてしまったのですが、それは 『 白夜行 』 と同様です。
そうなると、また、続編的な作品が刊行される事になるのでしょうか。
2度ある事は3度ある?
それにしても、女は怖い・・・
・ さまよう刃 ・・・・・ ★★★★☆
さまよう刃
不良少年たちに蹂躙され死んでしまった娘の復讐のため、父は仲間の一人を殺害し逃亡。
“ 遺族による復讐殺人 ” としてマスコミも大きく取り上げる。
世間の考えは賛否が大きく分かれ、警察内部でも父親に対する同情論が密かに持ち上げる。
はたして 遺族に犯人を裁く権利はあるのか?
社会、マスコミそして警察まで巻き込んだ人々の心を揺さぶる復讐行の結末は?
─── 出版社の内容紹介等から引用 ───

他人事ではない。
明日にでも、この物語の 『 誰か 』 になるかもしれない。
その時あなたの『刃』は どこに向けられるだろう?

─── 著者からのコメント ───

現行の少年法についての問題提起にもなっている “ 社会派 ” といった部分と、追う者と追われる者、そして 追っているのは追われる者でもあるといった “ サスペンス ” としての プロットがしっかりと両立しているこの作品。
娘を持つ父親である私にとっては、正直言って読んでいて つらかった。
高校生の娘が 人間性のカケラもない少年二人に殺された上、殺される前の地獄の様なありさまを撮影したビデオを見るに至っては、主人公の行動について 否定できない思いがしました。
主人公に復讐を成し遂げさせてやりたいと思いつつも、復讐という行為が許されるものではないのは、言うまでもありません。
結末については ネタバレになりますので ふれませんが、なんとも 悲しい。
東野圭吾さんらしく、読みやすい文体でしたが、結末も 東野圭吾さんらしい様な気がしないでもなく・・・。

樋口明雄
・ 光の山脈 ・・・・・ ★★★☆☆
光の山脈
南アルプスと八ヶ岳にはさまれた村で、妻の亜希と、猟犬たちとともに生きるロッタこと、六田賢司。
ある日、新聞記者であるロッタの兄が、村で行われている産業廃棄物の不法投棄をスクープしたことが引き金となり…。

─── 出版社の内容紹介等から引用 ───

雪山を舞台とした冒険小説です。
不器用な生き方しかできない主人公が、たった1人でヤクザ相手に立ち向かう事になる経緯、極寒の極限状態での死闘等、本書の作者ならではの描き方で先を急ぐ様にページをめくってしまいました。
ですが、読み終わってみると、何かが足りない様な感じがしたのと、ちょっと うまくまとめすぎている様な感想をもちました。




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