ウェディングドレス




外は晴れ渡る綺麗な青空。
その太陽は暑さを物語っている



「別に関係ねぇって。んなモン。」



暑さでダラけている彼。

「もぉ~~~。ちょっとはしっかりしてよぉ~」
寝転がる彼をぷにっと踏みつけた。
「お。いちご」
「ほぇ?…………ち……ちょっとぉ~~!!!」
スカートの裾を押さえる。

…………あれ?
「ち……違うよぉ。いちごなんて持ってないモン」
「じゃ、黒」

「エッチ…………」

大笑いしている彼の背中をバシバシと叩いた。

「もぉ~~。何もあげないんだから!!」
ぷいと横向いてスネてみた。

「んだよ。ガキみてぇによぉ~~。可愛かねーぜ」
「どうせ可愛くないですよぉ~」

ぷうぅと頬を膨らました。

「バーカ。」
ケラケラと大笑いしている。

「どうせ欲しいモンなんて……」
「何?」
「なんでもねぇ」

そのままお昼寝体勢に入った。

「もぉ……。馬鹿」
最近彼の部屋に来てもドキドキする様な事が無くなった。
むしろずっと寝ていることが多くなった。




せめて……キスくらいしてくれたって良いのに…………。




ぼぉ~っと空を眺めつつお茶を飲む。

つまんないのぉ…………。

本当に……付き合ってるのかな……?

「ねぇ……キバぁ」
「なんだよ」
横になったまま返事をする。

「キバって……他に好きな人居るの?」

突然の質問にガバッと起き出した。

「なんだそれ?」
「だって…………私判んないよ…………。キバの気持ち……全然判らない……」

「お前……そう思ってたのかよ……」

「だって冷たいじゃない…………最近……」
ふと視線を外す。



昔はあんなにドキドキしてたのに……。


今は全然手だって繋いでくれない。


態度だって冷たい。




全然訳判らないよ………………。




「だって……あたしの事……好きじゃないみたい…………」
キバからの言葉は返ってこなかった。
「そう思ってるなら……別にいい…………」
急に胸が締め付けられる様に苦しかった。

本気で…………言ってるの?

ずっと…………今迄一緒だったのに…………。

折角…プレゼントも…明日にって……明日渡そうと思ってたのに……。

「ばかぁ!!!」
その包みを投げ付けて私は部屋を出ていった。

もぉ知らない…………。
このまま忘れてやろうと思った。

彼と私は同じ寮に住んでいた為に部屋も結構近かった。
だから明日……この部屋を出ていこうと、そこまで思った。
もう辛すぎる……。


嫌い……。
絶対に嫌いになってやる。


自分の部屋に入り、鍵を掛けた。
そのままドアに凭れ込んで大泣きした。
泣いてすべて忘れようとした。

でも……前の楽しかった日々を思い出してしまう。
一緒に居るだけで楽しくて…………嬉しくて……。
他に何もいらないとまで思った……。

2時間程泣きっぱなしで疲れてきた。

そのまま自分の部屋へと足を踏み入れる。

「あれ…………?」
テーブルの上に大きな箱があった。
出た時には確か無かった筈なのに…………。
なんか……気味悪い…………。
綺麗に梱包されてあるだけでなんか不気味だった。
開けたら……何か呪われるのかも…………

どぉしよう……恐いよぉ…………

そのまま立ち往生で30分程経った。
こうしてても埒があかないので、とりあえず開けてみる事にした。
おそるおそる手を掛ける。


……………………………………………………


「出来ないよぉぉぉ~~恐いよぉぉぉおお~~~」
一人怖がっていると部屋のドアが開いた。
「おーーーーまーーーーえーーーーなぁぁああ~~~~」
かなりイラついたキバが部屋に入ってきた。
「お前いい加減に開けろっつーの!!!!」
「グスッ……な…………何怒ってるのよぉ~~~」
半泣き状態でいる私に苛立ちを隠せないようだった。

「い・い・か・ら!!!」
「…………恐いよぉ…………」
「恐くねぇっつーんだよ!!!」
「な…………何なのよぉぉ~~~」
思い切り目を瞑り、バッと開けてみた。

恐々と目を開けていくと、真っ白な服が入っていた。


コレって…………。

キバの方を振り向く。




「ねぇ…………何?此れ」

「見りゃ……判るだろーがよ」




広げてみると、かなり高価そうなウェディングドレスだった。

「ど……どうしたの?此れ…………」
「どうしたのって……言われても………………明日誕生日だからさ……。
だからお前に着てもらおうかなって……。こっそりバイトしてたんだぞ。」



次第に頭の中が整理されてきた。

嘘?

まさかでしょ…………?


「でも……明日はキバの……誕生日…でなんであたしに………」


まだイラついた口調で私に言った。

「いいか?お前が着る。お前が俺んとこに来れば交渉成立って訳だ。判ったか?」



「でも……私は着るって言ってないじゃない……」
「言ったのと同じじゃねぇかよ」
丸めてあった様にくしゃくしゃになった小さい紙切れを差し出された。

「…………あ」
それはさっき渡した包みの中にあった手紙だった。

「あ…………嫌だ…………ちょっとぉ~~~」
顔を赤くしながらその手紙を取り上げようとしたが邪魔をされる。

「ほぉほぉ。『いつまでも一緒に居れたらいいね』と。
『いつかは私を貰ってくれることを祈って』と。」

顔から火が出そうだった。
書いてるときは全然感じなかったが、いざ読まれると無償に恥ずかしすぎて変すぎて腹が立った。


「やめてよぉぉぉおお!!!恥ずかしいよぉぉお」
「いーじゃねーかよ。どうせ俺しかいねぇしな」
「で……でも…………もう違う人と付き合うつもりだもん……」

かなり強がってみせる。

「お前嘘つくといっつも眉が動くから直ぐバレるんだよ。バーカ」
「だって…………キバに……だって…こんな高いの貰ったって……お返し出来ないよ……」

「それを着たお前を俺が貰えばいいって事じゃねーのか?お判り?」
「ずっと…さ、………どこにも出掛けなかったり……してたのって……」
「金掛かるかんなぁ。」
「いっつも部屋入ると寝てばっかりいたのも……」
「寝てねぇかんな。あんま。2・3日寝てねぇのなんてザラだよ」

そんな…………事知らなかった。
知らないところでそんな大変なことしてたなんて………。
知ってたらあんな酷い事言わなかったのに…………。



「……私の事…………嫌いになった?まだ…好き??」


また涙腺が緩んできた。


「んな事聞くなよ。判ってんだろ?」


おでこを突つかれる。


「なんで……この事言ってくれなかったのよ…………」


ぽろぽろと零れていく涙。


「だってつまんねぇだろ。言ったら」


もう何も言葉が出なかった。


「ごめんなさぃぃぃ~~~」
彼の胸の中で大泣きしてしまった。


「お…………おい……そんな泣く事じゃ…………ねぇだろ」
優しく包み込む彼の腕。

「ふぇ………………ふぇ……ふぇ………………っくしゅ」

「あ」

泣きすぎて鼻がむず痒くなってくしゃみをしてしまった。


「お前なぁ……俺に向かってくしゃみしたろ?ぜってぇコレ涙じゃねぇよな?」
「あ…………あはvv」
「あはじゃねぇっつーんだよ………………」
頭をぐりぐりとこぶしでされる。


「いたいたいたいたいたいた………………ごめ~~~ん」
「ゆるせねぇなぁ~~~」
笑いながらまだぐりぐりとしている。

「痛いよぉぉぉ~~」

「ごめんてばぁ…………ごめん…………ね……」
急にしんみりしてきた。


「悪ぃな…………待たせちゃって」
「ううん…………大丈夫」
また直視が出来ない。
今度は恥ずかしくて……見られなかった。

「……好き……だぜ。ずっと」
「あたしも………………」

「でもな……」
「なに?」
深いため息とともにティッシュ箱を差し出された。




「いいから鼻かんどけ」

「ぁい…………」




泣きすぎて鼻がぐちゅぐちゅだった。

「お前……な…………子供じゃねぇんだから」
「えへへへ…………」

誕生日前の変な出来事。
別の意味で絶対に人には話せない、一生思い出に残る出来事には違いないだろう。



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