幻竜の羅刹

幻竜の羅刹

花と語りし少女5



「そうかもしれない。でも、やっぱり私が花と喋れるからって言うのもあると思うの」

「お母さんも言ってた。あの花畑には魔女がいるから気をつけなさいって」

「で、あなたはどうしたの?」

「えっと…その…幽香さんは魔女じゃなくて…いい人なんだって…」

「あら、うれしいわ」と笑顔になった

そんな幽香の笑顔をみて透はなんだか嬉しくなった

「そうだ、幽香さんと花を書きたいんですけど…被写体になってくれませんか?」と尋ねる

「あら?私を描いてくれとるの?もちろんいいわよ」

「あ、向日葵だと立ってなくちゃいけないから大変ですよね。え~っと…」と透は持ってきたかばんをあさり始めた

「あ、あった、あった。この辺じゃ花畑や花屋がないんで…造花ですけど持っててくださいませんか?座ってて結構ですから」

「確かに花畑はこの辺でここしかないわね。普通の花よりむしろ普通の花のほうがいいわ」

「え?なぜです?」と尋ねる

「また今度を教えてあげるわ。とりあえず…描いてくれる?」

「あ、すみません。今から描き始めます」というとキャンパスを見ては幽香をみてと忙しそうに手を動かしている

「あなたは花がすきかしら?」

「え?僕ですか?もちろん好きです」いきなり聞かれたのでちょっとびくっとした

「じゃあ何の花が好きなの?」

「僕は…アジサイが好きです。色とかもなんか優しい感じで、ふわっとひろがる花の形がいいなぁ~って思うんですけどね」

「アジサイねぇ。この花畑にもアジサイの咲く場所はあるわね」

「だけどこの前アジサイ畑の場所を埋め立てちゃいましたけどね…」

「あ、そうだったの?じゃあ今ここでアジサイを見せてあげましょうか?」

「え?だってなにも生えてないし、そんな無理じゃないですか?」と描きながらも尋ねる透

「まぁ見てなさい」というと幽香はポケットからなにやら小さいものを取り出す

「これはアジサイの種よ。これをね…」というと土に埋めた

そして、幽香は優しく土の上に手を重ねる 次に、ゆっくりと種に話しかけた

「さぁ目覚めなさい。あなたは今ここで立派に育つことができるのよ?」

すると土が小さく盛り上がり、芽を出し、見る見るうちに育っていく

座っている幽香を越え、大きく育ったアジサイに幽香はまた話しかけた

「さぁ蕾を開かせなさい。あなたの華麗な花を今見せなさい」

すると硬く閉ざされた蕾は開き、だんだん大きく花開いた

「すごい…アジサイが数分で育って、花が咲いた…」と驚きの声を隠せない透

「あ、こんな場所にあったら邪魔よね?とりあえず…種を撒き散らしてもらって枯れてもらいましょう…」というと幽香は花を優しく手で包み込む

「ごめんなさいね…また新しい命を何処かに咲かせるから」というと枯れ始め、種がポロポロと落ち始めた

それを拾い、ポケットの中にいれた

「そういった能力もあるんですか?」

「う~ん、気づいたらこんな風になってたって感じかしら?」

「へぇ…いいですね。花に囲まれる生活って言うのも」

「あなたは今そう感じでいるかもしれないけど時には辛いときもあるのよ」と冷たい声で言った

「辛いとき…ですか?」

「ええ、花と共に生き、そして会話をすることができる身だから辛いのよ」

「そうですか…。僕では…その辛さを紛らわすことができないですか?」と尋ねる

「あはは、そうね。今は楽しいから辛いって言うよりは楽しいわ」と笑顔で答えた

「ならよかった!」と透も笑顔になった

「なんだか数日前にあったのにだいぶ前からあっていたって感じね」

「そうですね。数日しか経ってないのにこんなに仲良くなれるなんて正直僕も思ってませんでしたから」

「ふふ、そうね。そうだ、明日この先の道を行ったところにある花畑にいかない?」

「あ、いいですね。行ったときありませんし…。僕なんかとでいいんですか?」

「もちろんよ。というか、皆私から逃げちゃうからあなたしかいないんだけどね」と笑う幽香

「別に悪いことしようとか思ってないのになんで逃げたりするのかがわからないな」

「噂を信じる者は皆そうなるのよ。花と語れる少女は人を殺す恐ろしい奴だって思いこんでしまってるのね」

「僕はそんなこと決して思わないからね」 「うん、ありがと」と笑顔で返す幽香

「じゃあ、僕帰るよ。明日は1時くらいでいいかな?」 「ええ、待ってるわ」

「バイバイ、幽香」 「ええ、透」 互いに「さん」を抜かして呼び合った

もう二人に見えない壁なんて存在しなかった…

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: