幻竜の羅刹

幻竜の羅刹

桜の姫君11



「今日何日だっけ?」 「日にちぐらい覚えなさいって言ってるのに…今日は15日よ」

「あ、じゃあ明日ね」と答えた 「あんたねぇ…大切な日が明日っていうのに日にち覚えてなくてどうするのよ」と呆れていた

「まぁ今日聞こうとしてたところだったからどっちにしても変わらないわよ」とのんきに笑っている

「もし約束の日が過ぎてたらどうしてたのよ」 「その時はその時よ」と扇子を取り出した

「ってか明日、あなたの記憶だけじゃなくて私と魅魔の記憶も消さないと意味無いんだからね」

「それくらいわかるわよ。もう術も扇子に唱えてあるから後は約束の日が来るのを待つだけよ」と笑顔で答えた

「いよいよ明日なのね…」と紫が遠い目をした 「ええ、明日ね」と答えた

「まぁ明日は私の舞いでも見ててよ。ちゃんと舞ってみせるからね」と自信有り気だ

「ええ、もちろん見るわよ。私のことを覚えている恵美を見るのは明日で最後になるわけだしね」

「そうね…」と幽々子は呟いた やっぱり悲しいのねと紫は心の中で思い、一人に指せてあげようと思った

「私ちょっと用事があるから帰るわね」 「バイバイ、紫」 「また明日ね」というと消えていった

「明日…か。時が流れるのは早いわね…。私達にとって時とは移り変わる景色を眺めているだけのようなもの。だけど人間にとってみれば日々が大切でいつ死ぬかわからないからね…」と一人呟いた

その日もいつものように日は沈み、月が輝き、そしてまた日は昇った

「さてと…いつ頃来るか指定するの忘れたわね…恵美の気配が来たら丘に上ろうかしら」と朝日を眺めながら言った

「いよいよ今日ね」と言う声が聞こえ、振り向くとそこには紫と魅魔の姿があった

「私達は恵美にばれないところで見てる事にするわ」と紫が言った

「わかったわ。後は来るのを待つだけ…って、来たか」と気配を感じ取った幽々子が言った

「ええ、来たみたいね」と魅魔も紫もある方向を向く

「じゃあ行ってくるわね」というと笑顔で幽々子は丘へと向かった

「幽霊になってからあんなに人と接したのは初めてね」呟く

「初めて会った時はとても小さくて泣いていたのにもうあんなに大きくなって…人は成長が早いものね」と空を見た

丘を登るたびに思い出されるひとつひとつの事柄を懐かしく思った

幽霊の幽々子からしたら数年のことなどどうってこと無いのになぜか懐かしく感じるのはそれだけ恵美と接してきた証なのだろう

屋上に近づくとゆっくり桜を見ながら歩く恵美と彼氏の姿が見えた

ちょっと霊力を使って顔を見ようかしら、と心の中で言うと幽々子の前に二人の歩く姿が映った

あら、イケメンなのね、と微笑んだ

そうして二人は頂上へつくと町を一望した

「ここからの景色って綺麗ね」 「本当だね。普段は何気なく住んでいる町もこうしてみると綺麗だね」と男は言った

「さて…そろそろ私の出番かしら?」と呟くと扇子を取り出す

恵美と男はベンチに腰掛け、桜と町の景色を眺めた

幽々子が恵美へ向けてウインクをすると恵美もそれに気づき、ウインクを返した

さてと…これが人のためにする愛しさを込めた、そして別れを惜しむ舞いよ…と心の中で呟いた

両手に扇子を持ち、腕を広げた

「我の名、西行寺幽々子。春を想う舞いを今…」と呟くと扇子をぱっと開いた…

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: