「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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ポエムガーデン
ドーナッツ詩人
僕は作詞家への扉をたたくべく、遥々東京の音楽出版社を訪ねてまわったのでした。
創作活動に目覚め始めた21才のことでした。
あの日のこと、そして17年経った今の生活を合わせてここに綴ってみました。
♪ ドーナッツ詩人 序
1985年 5月
僕はいくつかの作品を抱えて
遠く離れた大きな街を目指していた
電話を入れるでもなく
つてを頼るでもなく
地図だけが頼りだった
二泊三日の出版社めぐりの旅
幸か不幸か
どこへ駆け込んでも担当者不在の連休の真っ只中
頭をかいて
笑顔を作って
受付のおねえさんに原稿だけを受け取ってもらった
戦った気のしない
不戦勝ばかりの出版社めぐりの旅
「出直してきます」と
この街に刻み込んだ僕の決心は
けれどどこまでも気ままな響きを持っていた
エンジンキーに手を伸ばし
カーラジオのスイッチをオン
気がつくと僕は
十七年もの月日を
その言葉を胸に走り続けていた・・・
【2002年のドーナッツ詩人】
レノンの気まぐれをまねてしまった夜
曲をひとつ 詩をふたつ作ってしまった
彼はいったい何を思って
あんなにも感動的な作品を創り出してきた?
その夜僕はあきらめてベッドを出ると
レコードをかけてレモネードをすすった
眠らないと決めた夜
CDではなくてドーナッツ盤を手にしてしまう僕
それを不幸と呼ぶ人もいないが
かりに不幸だったとしても
きっとドーナッツを選んでしまうのだろう
レノンの気まぐれをまねてしまった夜
曲をひとつ 詩をふたつ作ってしまった
♪
ギターとドーナッツ盤とドーナッツ詩人
ギターとドーナッツ盤とドーナッツ詩人
いくつになっても楽譜が読めないドーナッツ詩人
♪
僕がレコードとにらめっこしている時
僕はレコード以外のことは見えていない
にらめっこしている自分の姿をふと頭に浮かべると
思わず吹き出してしまいそうになる僕がいる
♪
季節からはぐれてしまった鳥たちの
季節からはぐれてしまった鳥たちによる
季節からはぐれてしまった鳥たちのための音楽
?
♪
僕が書く詩にはむずかしい言葉は出てこない
もちろん象形文字も出てこない
心に浮かんだ言葉をただノートに書き写すだけの作業
そしてそこには決まってBGMが流れている
お気に入りのドーナッツたち
洋楽の歌にはもちろん訳詞が付いていたけれど
僕には訳詞とは違うことを言っているように聴こえてならなかった
僕は僕なりに訳した歌詞に
適当なタイトルをつけて
人に読んでもらっては感想を訊ねた
♪
ボールペン らくがき帖 フルーツジュース
僕の夕食後のテーブルには
いつもと同じ仲間たちが顔を揃えた
音楽たちも付き合ってくれた
バラード ロックンロール リズム アンド ブルース
至福の時間が流れる空間であった
♪
あのドーナッツの懐かしさは
僕らが生まれる前からの懐かしさ
♪
今日はどんなドーナッたちと唄ってみよう
「ツイスト アンド シャウト」
「チェインズ」
「ロール オーバー ヴェートーベン」
今聴きたい歌が今唄いたい歌
「ワーズ オブ ラヴ」
「ロング トール サリー」
「のっぽのサリー」・・・
彼らはいつだってごきげんだった
♪
ドーナッツは同じフレーズを
繰り返し奏でるのであった
テーブルが一回転すると
針が飛び跳ねて同じところに着地し
また一回転するとまた跳ねて
同じところに着地する
僕はそのドーナッツを手に取ると
スプレーをかけて磨き直してはプレーヤーに戻した
今では懐かしいと思えるそんな作業に
ドーナッツ詩人は退屈するはずもなかった
♪
ドーナッツ詩人Aとは何?
About科ののんきものの一種
リンゴジュースを汗にしたり涙にしたりする
うぬぼれや のんびりや
通称 夏でもAkito
その他は?
何も浮かばない
♪
空き缶と空きビンとあきれ男
空き缶と空きビンとあきれ男
コンビニの本棚に弁当を忘れてきたあきれ男
♪
僕が鳥たちを哀れだと思うのは
彼らがひとつとしてポエムを書くことができないでいるから
鳥たちが僕を哀れだと思っているのは
僕がひとつとして美しくメロディーを奏でられないでいるから
♪
僕は思い立ってレコードショップのある通りへ・・・
ドーナッツには会えたけれど
新作のアイデアには会えなかった
♪
ドーナッツたちはショップの片隅で
申し訳なさそうにたたずんでいるのだった
レコードショップをいくつか訪ねて歩いてみたが
レコードショップで
レコードを見かけることはまれなことだった
ドーナッツはやはり
ファーストフードだけの物となってしまったのか?
部屋へ戻って僕のステレオラックでは
たくさんのドーナッツたちが幅をきかせていた
CDたちは申し訳なさそうに片隅で小さくなっていた
♪
「歌を聴くのは好きだけど買ってまでは・・・」
というのは
レンタルショップを訪れている人たちに聴こえている
心の中のメロディーで
「詩を読むのは好きだけど買ってまでは・・・」
というのは
僕の昨日までのポリシーで
♪
十年後に降る雨は
森をダメにしてしまう成分を含んでいるらしい
僕ひとりが声を上げてみたところで
煙突の煙を作る人たちの意識が変わらない限り
何も変わらないのだと思う
今書いている僕の詩には
十年後に流行る成分を含んでいるらしい?
僕は小さく声を上げてみる
♪
「私たちには唄ってあげることしかできない」
ドーナッツと鳥たちはいつもそんなふうに語りかけている
♪
遠い昔に届けられた絵葉書を
レコードを聴きながら眺めてみる
あの時のシーン
あの時と同じ思いが
メロディーと共に蘇ってくる
♪
僕は詩を愛しているのか と
気が向いた時にだけ書いている詩
僕が見ている先には
僕でしか見えない次回詩集の姿
僕はそんな幻(ゆめ)を見ているしかないのか と
♪
僕はどんな詩を書きたいのか
人々はどんな詩を求めているのか
耳を澄ます心に
風は何も教えてはくれない
人から人へ
心から心へ
ささやかられる伝説は
どんな答えを用意してくれているのだろう
ある日
見ず知らずの人たちからのファンレターの束が
ドーナッツ詩人の元へ届けられる・・・
という夢を見る・・・
♪
鳥たちのさえずりがかすかに聴こえてくる部屋
1985年のスナップ写真がちりばめられた部屋にひとり
大の字になっている僕の姿があった
真っ白いスケジュール帖のホリデイ
アンプにつなげられたままのギター
どこか物足りなさを感じている心の中の少年が
ときめきを奏でてくれる自分を期待している
カモンベイビー!
僕とドーナッツの間に流れた幾つものロメディー
カモンベイビー!
ギターとドーナッツとドーナッツ詩人
僕はターンテーブルの上のレコード盤に針を降ろすと
開け放した窓辺にもたれてギターをつま弾いてみた
ノイズまじりの甘酸っぱいメロディーに
いつか見た淡い夢を重ね合わせながら・・・・・
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