「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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第二期黄金時代のパフォーマンス
第二期黄金時代のパフォーマンス♪
【 プロローグ!】
「あなたの人生においての最初の黄金時代はいつですか?」(黄金時代=良き時代)
とてもシンプルに考えたなら僕にとっての「第一期黄金時代」は小学6年の頃ではないかと思う。
学業以外のあらゆる部門で何かとスポットライトに当ることが多く何度もヒーロー的存在になることができてその記憶は今も輝きを失わないでいるから。
そして「第二期黄金時代は・・・?」と訊ねられたとしたらきっと19歳から21歳の頃と答えるのではないだろうかと思う。
あの頃の青春の眩しさの日々の中にあって、更にスポットライトの明りに照らし出されている栄光の想い出、『ライブパフォーマンス』というバンド活動の存在が今も僕の記憶の中でときめきの鼓動を打ち続けているから。
【 スカウト!】
「こいつ楽器できるから・・・」
バンド活動の始まりは同僚Sのこんな言葉からだった。
会社の休憩時間に缶ジュースを飲んでいた僕の目の前に20代後半の男性(いわゆる会社の先輩)を連れて現れた同僚Sが「こいつ楽器できるから・・・」の言葉をその先輩に告げたのだった。
話の続きの内容はバンドを結成したいからメンバーにならないかというものだった。
僕は音楽は好きだったし特に断る理由もなかったのでその場であっさりとバンドの話を承諾した。
僕が19歳の時の事だった。
【 浜省が人生の時!】
20代後半の人物(ここでは以後リーダーと呼ぶ)は以前、浜省(浜田省吾の略)のコピーバンドを組んでいてライブ活動もしていたという自他共に認める浜省フリークであった。
初めて同僚Sと二人してリーダーの家に招かれた時のこと、部屋の壁に見つけた大きなモノクロの写真には浜省そっくりの髪型で、浜省そっくりのサングラスをかけ、浜省きどりの皮のジャケットを着てステージで熱唱しているリーダーの姿があった。
その当時のライブ音源も聴かせてもらったがそこにはやはり浜省魂が感じられるものだった。
その日リーダーはギターで浜省の曲を奏でながら浜省の魅力について熱く語ってくれた。
僕らも浜省の歌の良さは以前から知っていてそれまでにも結構聴いていたのでリーダーの熱弁にもうなづくところは沢山あった。
そういうことなので僕らがやる演奏曲はすべて浜省の曲でいくということは揺るぎのないところであった。
本当は「ビートルズ」や「佐野元春」たちのミュージシャンの曲が演奏曲の候補として僕の頭の中をちらついていたが、その部屋は他のミュージシャンの名前が出せるような空気ではなかった。
僕と同僚Sは僕らが演奏できそうな歌を選曲するべく楽譜をめくりながらアバウトにいくつかピックアップしてみたりするのだった。
まだまだ机上のコピーバンド。担当楽器すら決まっていない時のことだった。
【 必然のポジション!】
さて僕はどんな楽器ができるだろう?
同僚Sは何ができるんだったっけ?
リーダーはボーカルとリードギターを兼任すると言った。さすがリーダー!
続いて同僚Sはハードロックのギターが弾けると言った。更にすごい!!
けれどSのその発言はほぼ本人の思い込みであった。
試しにギターを持たせてみたところその指の動きはとてもギターリストと呼べるものではなかった。
学生時代は剣道をやっていたというS、(それは関係ないが・・・)彼にはとりあえず初めてのベースにトライしてもらうこととなった。
何はともあれ二人の担当楽器が決まって僕に残された楽器は限られていた。カスタネット?トライアングル?・・・まさか!
一人がギター、一人がベースとくれば僕がドラムスを担当することは必然の流れなのであった。
演奏レベルはともかくとして・・・。
【 回想フィルム!】
ドラムは高校時代に友達の部屋にあったのを遊びで何度か叩いたことがあった。
当時僕らはロックバンドを組んでいて僕はベースギターを担当していた。
学校が終るたびに友達の家に集まっては4~5曲のレパートリーのロックナンバーを繰り返し演奏していた。
けれどどういう訳かその活動が学校の先生の耳に入り僕らは即座に呼び出され「大至急バンドを解散すること!」と宣告されたのだった。
後に僕を個人的に呼び出した先生曰く「バンドはいかん。不良になるぞ!」と。
何故バンドをすることが不良なのか僕にはまったく理解できなかった。
バンドのメンバーはみな昔からの気のいい仲間たちで性格も純粋な者ばかりだった。確かに身なりはいわゆる不良を絵に描いたようなものではあったが・・・。僕はたまたまその逆をゆく身なりをしていただけだった。
結局僕らは先生に逆らうことはできず直ちにバンドを解散した。
そのわずか数年後、僕は誰にも束縛されることなく、そして学生時代の純粋な気持ちのままでバンドのドラマーを務めることとなったのだった。
よくわからないけれど「美しい!」と思った。
【 産声記念日!】
練習場として提供されていた、市が運営する会館で僕らは初めての音合わせを試みた。
僕はドラムセットを持っていなかったので会館に置かれてあったバンド活動休止中の人のドラムを使わせてもらった。
スティックを手に持って音を鳴らしてみる。太鼓をポンポン♪シンバルをバンバン♪なんとも愛しい響き。
僕は高校時代に仲間から教わったビートを幾つか試してみた。ドンドンチャ!ドンドンチャ!4ビート♪8ビート♪16ビート♪ぎこちないながらもしっかりと体が覚えていた。
本当は高校時代からベースよりもドラムに憧れを持っていた僕なのだった。
叩く毎に軽快さが増していっていた僕のドラム。そのリズムを乱すかのようになにやら低音のノイズが割り込んでくる。「ボンボボン♭~ボンボボン♯~♪」同僚Sが奏でていたベース音だった。
このノイズ音をメロディーに変えてゆかなくてはバンドとして話にならない。
リーダーは自分の練習を中断しては手取り足取り根気よく、時に熱くなりながらSにベースラインを教え込んでゆくのだった。
その光景は大げさでなくドレミのドからのスタートと言えるものであった。
必死にベースと格闘していた彼。僕はそんな彼のどこか一つでも誉めてやれないものかとあれこれ探してみるのだけれど、どうも適当な言葉が浮かばないのだった。
「まあ気長に頑張ろう!」僕はそう心でつぶやく他になかった。
マイペースなドラマーの僕と産まれ立てのベースマンの彼と・・・果たしてこのメンバーで本当にバンドとして成立するのだろうか?と不安でいっぱいだったあの頃。
けれどそんな同僚Sが後に誰もが認める名ベーシストになろうとはその時にはとうてい予測のできない話なのであった。
【 She is a OK!】
そのような練習の日々が続いたある日、リーダーが一人の女性を連れてきた。僕らのバンドにはなくてはならない存在、待望のキーボードプレーヤーの登場であった。
第一印象はちょっと気の強そうな雰囲気と薫りをかもし出していて近寄りがたいように思えたが会話をしてみるととても穏やかで笑顔の絶えない心優しいお姉さんだった。
ライブの時にわかったのだけれどそのお姉さんはかなりの人気の持ち主で、ファンクラブでもあるんじゃないかっていうくらいの声援があちらこちらから投げ掛けられてきて僕はビックリしたのを覚えている。
最低限のメンバーも揃い演奏もそれらしくなってきた頃どこからかクリスマスパーティーでのライブ演奏の話が持ち上がってきた。
それにともないバンド名も決めなくてはならなくなり、四人で散々考えて考えて考えたあげく「スーパーパニック」と命名された。(きっとこのバンド名は仮の名前でそのうち正式なものに変更されるのだろうと思っていたが結局バンド解散まで変更されることはなかったのであった)
そんなこんなでますます張りきって練習に励む僕たちなのであった。
【 レディース&ジェントルマン!】
そして遂にやってきたクリスマスパーティーでのライブ演奏。
ベーシストの顔を見ると「なんとかいけるぞ!」という表情をしていてメンバー一同胸をなでおろす。
僕は僕で日頃から完璧を求めないタイプの人間なので「実力の六割か七割くらいが出せればいいや・・・」という気ままな心境でいた。
体育館を利用したパーティー会場は青年部主催ということもあってかほぼ若い人たちの集まりだった。
少なくみても男女半々の合わせて50人くらいはいただろうか?
初ライブの僕らにしてみれば十分な人数だった。
【 スーパーハプニング序章!】
パーティー開催の前に予行演習ということで出演するもう一組の常連バンドが軽く2~3曲演奏をした。
僕らも当然同じように行うのだろうと準備を始めようとするとリーダーがやって来て「俺たちはしないぞ!恥を二度もかくことはないから・・・」と。
なるほど!と僕はその意見にえらく感心してしまった。さすがリーダー、よくわかっていらっしゃる!
考えてみれば演習をしない方がきっと本番の時の新鮮さも大きいだろうし間違いなくそれが正解なのだろうと信じて疑わなかった。
けれどそれがあんなハプニングを生もうとは・・・。
【 スーパーハプニング!】
一組目のバンド演奏が華麗なままに終了し、いよいよ僕らの出番となった。
前のバンドと同様、会場の明りが落とされスポットライトが僕ら四人を照らし出した。
まずは勢いよくオープニングナンバーにふさわしいハイテンポの曲「終わりなき疾走」でスタート。
練習どおりに軽快にそして順調に演奏は始まった。
リーダーは浜省のごとく力強いアクションをまじえながら熱唱の中にいた。
ベーシストの同僚Sも指先にすべてを集中させ自分の役割をこなしていた。
ドラムのすぐ左横ではキーボードプレーヤーのお姉さんが余裕の笑みで軽やかに鍵盤を叩いていた。
そして曲のプランのすべてを把握し何の心配のなかった僕は軽快なビートを刻みながらスポットライトの眩しさに陶酔しきっていた。が・・・、そんな僕の頭の片隅に「?」マークなるものが浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返すのだった。僕はその「?」マークの意味が何であるのかを探りながらも演奏を続けるのだった。
そして一曲目の演奏が半ばあたりにきたところだったろうか、ふと自分の足元に目をやるとドラムのペダルをキックする度にそのドラムが前進し僕から少しずつ離れて行くのが目に入ったのだった。体育館の床の滑りが最高の仕上りをみせていた結果であった。
激しいオープニング曲ということもあってその滑りを食い止めることは不可能と言えた。
だからといって途中で演奏を中断するわけにもいかず、離れて行くドラムに足をなんとか届かせながら演奏をキープするしかなかった。僕は六割か七割の気持ちで「まいったな~」と思った。
一曲目が終了する頃には僕の右足は今にもつりそうなくらいに伸びきっていて足を乗せたペダルに付属する太鼓はすでに手の届かない遥か遠くのところまで離れていた。
なんとか一曲目の演奏を終えると二曲目に備えるべく急いでドラムを元の位置に引き寄せるのだった。
リーダーはそんなハプニングに気づくことなくメンバーを代表して拍手に応えていた。
ドラムのすぐ右横にいたベーシストのSは練習のとき同様自分のパートをこなすことで精一杯でいた。
そしてふと左横に目をやるとキーボードのお姉さんは手で口を隠しながらも目がおもいっきり笑っていた。
僕は首をかしげながら苦笑いをするのが精一杯で二曲目以降のことを考えるとため息さえも出ないのだった。
「なぜに僕のドラムだけが・・・」ともう一組のバンドのドラムを見てみるとドラムセットの下にしっかりとカーペットが引かれてあった。常連バンドは滑りやすい床のことをすっかり把握していたのだ。
予行演習さえしておけばこんなことにはならなかっただろうに・・・と、けれどすべてあとの祭りなのであった。
幸か不幸かすべての曲においてこのような悲劇(コント?)が繰り返された。
ライブ終了後、いろんな種類の汗を掻いたような気分の僕は六割五分の心境で自分にこう言い聞かせるのだった。「何事も経験だ!」と。
僕にとって初めてのライブパフォーマンス is 滑りまくりのパフォーマンス?
けれど何故か「もう二度とライブなんてやらない」という気持ちにはまったくならなかった。
むしろその逆の気持ちでいっぱいだった。
僕はそれらのハプニングを含めた『ライブ』というものがきっと好きなのだろう。
【 To be continued !】
その後バンドは数人のメンバーの入れ替えを行ないながらも練習などの活動は継続していった。
そしてそうこうしているうちに待ちに待っていた僕にとって二度目のライブ演奏となる話が舞い込んできてくれた。
それはとあるデパートでライブパフォーマンスを演じるというものだった。
「次なるスポットライトが僕を待っている!」と心の声。
僕の胸は既にときめきの鼓動(ビート)を刻み始めていたのだった。
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