GMPY-net'裏'版

ブタ部


今日はブタ部に入った。
ブタ部は、別にブタのモノマネをするとか、ブタの着ぐるみ着るとか、ブタだけで構成されているとかいうものではなかった。
家畜のブタには、太らせて豚肉を得るためにエサをがつがつ食わせる。
そこに習って、「死ぬまでになるべく太って、なるべく大量の大地の肥料になろう」という部だそうだ。
「別に牛部でもいいじゃんじゃないですか?」とちょっと聞いてみた。
すると部長は「馬鹿、ブタの方がそれっぽいだろ?世の中イメージで決まることがけっこうあるんだよ」と息を切らせながら言った。
そして、何故か強制的にブタ部に入部させられた。
あぁ、恥ずかしい。
友達の友達とかに「部活何に入ってるの?」って聞かれた時とか恥ずかしい。
携帯のアドレス帳に、ブタ部っていうグループ設定してるの見られたら恥ずかしい。
街中で久しぶりに友達に会って、「あぁ、ブタ部だったやつか」って大声で言われた時とか恥ずかしい。
恥ずかしいのに耐えてブタ部に入ってることを言ったのに、「え、何て?」って何回も言われた時とか恥ずかしい。
俺がブタ部に入ってることを知らない友達といても、豚肉が出てきたら、なんか1人で勝手に恥ずかしい。
ほかのブタ部の人に「あなたブタ部なんですか?実は私もなんですよ。よろしく」とか言われた時とか恥ずかしい。
ブタ部で大規模な飲み会とかあって、幹事がブタ部で予約とかしてたら恥ずかしい。
「お客様、ご予約されてますか?」
「…はい、ブタ部です…」
あぁ、恥ずかしい。
しかし、そんな恥ずかしいことにも慣れ始めた。
ただ、1つ気になることがあった。
しかし、そんな俺の気がかりをよそに、みんなブタ部活動に励み、大人になり、家庭を持ち、老人になっていった。
いくら年を重ねても、ブタ部の人たちはブタ部としての目的を忘れていなかった。
70歳くらいになっても、みんな丸々と太っていた。
そしてある日、俺の代のブタ部の部長が病気で亡くなった。
これで彼は、本当の意味でブタ部を卒業できるんだな、とみんな思った。
しかし、彼は火葬された。
みんな忘れていた。
日本では火葬が主流なことを。
1つの目的を達成するために、一生涯通して守り抜いてきたブタ部スピリットも、ただの大飯食らいという虚しいレッテルをはられて終わってしまった。
フルマラソンで頑張って走り抜いたのに、フライングしてたから記録無効になった、というのより虚しい。
なんか恥ずかしい。
ブタ部に一生を捧げたのに、火葬されて失敗したなんて恥ずかしい。
なにより、俺が死んだ時火葬されたら恥ずかしい。



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