「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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ネオ・ヴェネツィア戦線
蛍
鹿児島県知覧町
空軍基地
木村大尉「貴様!この忙しいときに、女子(おなご)と会うとは何事か!それでも選ばれた軍人か!恥さらしめが!!!」
大尉は男を殴った
そして男は、そのまま気を失った
木村大尉「まったく!だらしがない!おい!誰か、こいつに表で水をかけてやれ。」
ピシャ!
男「うわ!!」
水をかけられると男は飛び起きた
男「に、西川!・・・あ、そうか俺、殴られて・・・」
西川「まったく・・・お前はいつもこれだな、林。」
西川はそういうと、林の手を取り起き上がらせた
林「すまんな、毎回どうやってもバレてしまうな。誰か、上官殿に報告しておるんやないか?」
そう言うと、林は子供のような笑顔で笑った
西川「また、百合子さんに会っていたのか?」
百合子さんは、林の恋人で
近くの、工場で戦闘機や戦車の部品を作っている
肌は白く、めっぽう美人だ
林「そう。いつ出撃命令が出るか分らんしな。」
西川「それにしては、最近は1日おきになってないか?」
林「実はな・・・」
林は、俺に耳打ちをした
林「百合子に、子ができてたんじゃ。」
西川「え?本当か?!めでたいな!それで、最近行ってたわけか?」
林「まぁそういうことや。出産まで一月ぐらいだそうや。せやから、はよう生まれへんか顔出し取ったわけや」
西川「ほぉ~やることはやってたわけだな(笑)」
そうやって2人は
いつ死ぬかも分らん状況で飛び込んできた明るい話で笑った
2人は、学徒動員で召集が掛かかった大学生
西川は、東京出身
林は、大阪出身
違う場で生まれ育った2人だが
この基地に来てすぐに仲良くなった
この基地に来てもう1年近くになるが
奇跡的にも、出撃がかからずにいた。
現在の戦況からすれば
経験をつんだパイロットが重宝されているのに理由があるだろう
しかし、経験をつんだとはいえ
優秀なパイロットが育つには10年
出撃は時間の問題となっていた
そもそも、この特攻をせざるをえなくなった理由は
ミッドウェー作戦の失敗で
多くの、空母とベテランパイロットを失ったこと
最強の戦艦といわれた大和の艦長
山本五十六が暗殺されたこと
そして、沈むわけがなかった大和のまさかの沈没
これらが多く響いたのか
東南アジア戦線もことごとく敗戦し
石油がそこをつくのも問題となり
戦闘機の数に対して燃料が足りなく
敵戦艦までの片道の燃料しかなくなったことに理由がある
そして、林に子ができたことは皆に広まり
その夜は、皆で祝ってやることとなった
昭和20年 7月21日ー
この日・・・遂に出撃命令が下った
木村大尉「・・・林!以上の3名に出撃命令を言い渡す。出撃は、明日の正午沖縄方面!以上!」
3名の中に、林が入っていた・・・
俺(西川)は、またもや出撃命令を言い渡されなかった
隊員A「林!よかったな!お国のために頑張れ!」
隊員B「お国のために命を捧げられるんだ!喜べ」
林「そうやな。皆ありがとう。この命・・・最初から日本のための物や!」
林は、胸を張って言った
だけど、俺は許せなかった
西川「うるせぇ!!なんでだよ!!もうすぐお前には子が生まれるのに!なんで・・・なんで・・・その直前に死ななくちゃいけないんだよ!!」
一瞬、場は静まった
林「西川・・・いいんや。これで、俺は満足や。百合子や子供には悪いがそれで、百合子達が生き延びられれば・・・」
西川「・・・クソ!!なんでお前はそんなに優しいんだよ!!」
悔しかった・・・。
なんで林が先なのか
幸せを迎える直前に・・・
西川「大尉殿!林の変わりに私を行かせてください!!」
これしか・・・方法はなかった
林「に、西川お前・・・」
木村大尉「ダメだ!貴様の志願は受け付けない。」
当然の結果だった。上官の命令は絶対だ
しかし、俺は諦めなかった
西川「大尉殿!!お願いします!!」
勢い余って大尉の胸倉をつかんで言った
木村大尉「ぬぐぅ!!貴様!・・・上官に向かってこの行為はなんだ!!!ええい!!貴様ら、こいつを反省房に連れて行け!!」
西川「おい!!!放せ!!!大尉殿!!!考え直してください!!私が!私が林の代わりに・・・」
バタン(戸が閉まる音)
林「(・・・西川)」
その夜
反省房ー
カツ、カツ、カツ
誰かが入ってきた
木村大尉「反省は終わったか西川?」
大尉だった
西川「大尉・・・最後のお願いです。」
そういうと、腰から小刀を取り出した
木村大尉「な、貴様!!何をする?!」
これしか・・・方法はなかった
一方、林は小川へ来ていた
ここは、去年西川と出会ってすぐに見つけた場所で
毎年夏になると蛍が多く飛び回り
通称蛍川とも呼ばれている
しかし、今年はまったく飛んでいなかった
不思議なくらい
最後に、ここで蛍を見ようと思い来てみた林だったが
いないものは仕方ないので
帰ることに・・・
その時だ、誰かが走ってきた
???「はぁはぁ!やっぱりココか!」
それは、西川だった
林「西川?!出られたんか?・・・て、お前!その血は何だ?!」
西川の腕からは血が出ていた
西川「はぁ・・・はぁ・・・。気にすんな。」
林「そ、そうか?それにしても、今年はココに蛍全然おらんわ」
寂しげに言った
西川「去年はすごかったのにな。星空みたいに沢山光っていて綺麗だったのにな・・・」
林「ま、ええわ。最後に、お前に会えただけでも良かったわ」
西川「・・・俺が蛍になってきてやるよ」
林「え?お前が蛍?ははは!最後までおもろいやっちゃな~(笑)」
西川「ははは!おもろいか?景気付けに少し笑わしたかっただけだ(笑)」
このとき・・・林は何も知らなかった
林「じゃ、今晩はもう寝るわ。明日・・・最後に酒を交わそうぜ?」
西川「あぁ。またな・・・」
翌日、正午
林「林!ただいま到着しました・・・」
そこには、戦闘機も・・・西川もいなかった
いたのは・・・木村大尉だけだった
林「え?大尉?」
何も林は知らなかった
木村大尉「ご苦労だったな林。もう出撃は終わった・・・」
林「え?!どういうことですか?!」
意味が分らなかった
目の前にあるはずのものもないし
大尉の言ったことすらも
木村大尉「実は、昨晩・・・」
西川「これでもですか!!」
西川は、自分の腕を切り
そこから出た血で
床に、志願の意志を書いた
木村大尉「お・・・お前・・・・。」
西川「あと、お願いがあります。このことは出撃が終わるまで林に言わないでください。そして、あいつに知られる前に出撃させてください!!お願いします。」
木村大尉「・・・そこまで思っているとは・・・分った!貴様のその決意を認めてやる!林の代わりに貴様の出撃を言い渡す!そして、出発は午前1000に変更する!」
西川「ありがとうございます!!!」
・・・・・・
林「そんなことが・・・・うぅ・・う」
林は泣くことしかできなかった
その夜・・・
林は、西川の言った言葉を思い出し
蛍川へ行ってみることにした
すると、そこにはあふれんばかりに蛍が飛び回り
そのうちの1匹が林の手の上へ飛んできた
林は分っていた
それが、西川だと
目からは自然と涙がこぼれていた
林に次の出撃命令が下ることはなく
まもなく、終戦を迎えた
そして、百合子さんには女の子が生まれ
蛍と名づけられた
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