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[1] 読書日記 この2週間程度の間に読んだ本10冊程度の、 感想なぞを。 初野晴 「水の時計」(角川文庫) 童話「幸福の王子」を、臓器移植という題材で現在に置き換えた着想、 そして、童話そのものの空気感をそのまま移したような文章が良かった。 皆川博子 「倒立する塔の殺人」(ミステリーYA!) とにかく、その文体の紡ぎ出す世界に魅了された。 皆川博子 「聖女の島」(講談社文庫) とにかく、その描かれた世界に酩酊させられた。 飛田甲 「幽霊には微笑を、生者には花束を」(ファミ通文庫) ありふれた「ボーイ・ミーツ・ゴースト」譚かと思いきや、 直球で本格ミステリ。意外な拾い物。 深水黎一郎 「エコール・ド・パリ殺人事件」(講談社ノベルス) この10冊の中では一番ミステリとして面白かった。 一見地味な印象を受けるタイトルではあるが、 ミステリ好きなら読んで損のない内容。 ダグラス・ケネディ 「どんづまり」(講談社文庫) この10冊の中では一番好みの作品。 「世の中にはこんなアイデアを思いつき、それで本を書いてしまう人がいる」 という意味で、D・E・ウェストレイクの「斧」を読んだ時以来の感動をした。 ダグラス・ケネディ 「ビッグ・ピクチャー」(新潮文庫) 上記作品とは逆に、何処にでもありそうネタを出発地点に、 ここまで執拗に描き、そして膨らませるとは……、実にお見事。 ジャンリーコ・カロフィーリオ 「無意識の証人」(文春文庫) 物語の筋道云々よりも、主人公のかもす雰囲気が印象的。 ピーター・ジェイムズ 「1/2の埋葬」<上>(ランダムハウス講談社文庫) ピーター・ジェイムズ 「1/2の埋葬」<下>(ランダムハウス講談社文庫) <脱出か、それとも「埋葬」か> <結婚前夜(スタグナイト)。 新郎マイケルを祝うために悪友たちが仕掛けた悪戯―― それは酔った新郎を棺桶にいれて生き埋めにし、 数時間後に掘り出すという、他愛もない計画だった。 だが、埋めた直後に仕掛け人全員が事故死。 ほんの悪ふざけのはずが、最悪の事態にまで発展し……。 目撃者ゼロ。当事者全員死亡。 絶対的不利な状況下で、 孤独な中年警視グレイスがマイケルの救出に乗り出す!> 当初期待して読んでいた解決の様相とは多少違ったけれど、 それはそれとして、最後までページをめくる手を止めることなく読めた。
2008年12月18日
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[1] 読書日記 <「掲示板に脅迫状が貼られたの」 ハルタは動じなかった。「先輩の話だと、毎年あるみたいじゃないか」 「一昨年からよ。手口はずっと同じ。わら半紙に新聞の文字を切り抜きにして、 拡大コピーして貼るの。要求を呑まなければ屋台の食べものに毒を盛るって」 「確か去年は――」 「クレープ」 「一昨年は?」 「たこ焼き」 「で、今年は?」 「やきそば」 うぷぷ、とハルタが笑いを堪えている。「じゃあ訊くけど今年の要求はなんだい?」 「教頭のかつらよ。学校史上最大のタブーに職員室はかってない緊張感に 包まれているわ」> 初野晴 「退出ゲーム」(角川書店) を読了。 青春ミステリ。 昨今、「青春ミステリ」と広告される粗悪品が無闇矢鱈と垂れ流される中にあって、 折り目正しい上に、出色の出来の「青春ミステリ」。 この作品がシリーズ化したならば、 米澤穂信の「古典部」シリーズと共に、 角川書店の「青春ミステリ」の二大看板になりそう。 「青春ミステリ好き」なら押さえておきたい一冊。 勿論、一般の(あるいは「本格」の)ミステリファンにも、おすすめ。
2008年12月02日
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[1] 読書日記 北山猛邦 「『クロック城』殺人事件 」(講談社文庫) を読了。 この作者といい、 西尾維新といい、 今の日本のミステリ界にはエドワード・ゲインが意外と多い印象。
2008年11月19日
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[1] 読書日記 <清子はいつだってどこだって主役だった。 島の誰もが清子を見つめ、清子に気に入られようと機嫌を取り、奪い合う。 それもそのはず、三十二人の島民中、女は清子たった一人だった。 清子はもつれた髪を手櫛で梳き、 波間に浮かぶホンダワラ状の海藻でひとつにまとめてみた。 今年で四十六歳になったが、髪が薄くなった以外、まだ衰えはない。 そんな自分を巡って、どれほどの死闘が繰り広げられたか。 清子はまたしても笑いを浮かべた。 人が死んだり、怪我したり。 これほど男に焦がれた女が世界に何人いるだろう。> 桐野夏生 「東京島」(新潮社) を読了。 クルーザーでの世界一周の旅の途中、太平洋上の無人島に漂着した清子・隆夫妻。 彼女たちから遅れること三ヶ月、その島に、バイト先から脱走し、漂流してきた 日本の首都圏のフリーター23名。 その更に2年後、蛇頭によってこの島に置き去りにされてしまった中国人グループ。 彼女と、彼ら(総勢31人の男たち)の島での生活や脱出を描いたユートピア小説。 主人公格の清子は、いかにも桐野夏生のヒロインで、楽しい。 無人島だろうと冷静、狡猾で、したたか。 物語としては、自分が読書前に想定していた程の、生々しさや、毒々しさは無かったが、 代わりに、「現代の若者」たちの漂流記ならば、恐らくこんな感じになりそう、と 思わせるリアリティがあった。 必死さ皆無。 基本、青空の下にもかかわらず、インドアかつ開放感のない、狭量で陰湿な世界観と 不健康さが漂っている。 新書本の下手な「若者論」、「フリーター論」よりも的確にして正確。 ちなみに、清子は、島内の唯一の女性というより、「現代の若者」に対置されている 唯一の「大人」(「若者を見る世間)ともいうべき存在でもあり、健全な印象を受ける。 題材の割りに、暗くもなく(決して明るいわけでもないけど)、ウェットでもなく、 読み出したなら、一気に最後まで読めるし、読みたくなる作品であり、お薦め。
2008年11月13日
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[1] 読書日記 <こんにちは、我が敬愛なる紳士淑女の皆さま。ようこそ。 ようこそ、私どものショーへ。 これからの二日間、お腹がいっぱいになるまで さまざまなスリルを味わっていただこうと存じます> 事故で四肢麻痺となった、元科学捜査官のリンカーン・ライムと、 彼の手足、目鼻となって現場で動く女性巡査のアメリア・サックスが、 タイムリミットに迫られる状況下で、 作品毎に個性的な敵役と、「名探偵」VS「名犯人」の頭脳戦を繰り広げる、 「リンカーン・ライム」シリーズ第5弾、 ジェフリー・ディーヴァー 「魔術師(イリュージョニスト)」(文藝文春) を読了。 今回の敵役は、著者の言葉を借りれば、 <デヴィッド・カッパーフィールドとハンニバル・レクターを合わせたような> イリュージョンの達人にして、明晰な頭脳を誇る、残酷な殺人鬼「魔術師」。 ライムにとっても、殺し屋「コフィン・ダンサー」以来の好敵手。 手品やイリュージョンのテクニックとトリックを駆使して、警察の目を欺き、 ニューヨークの各所で、奇術のネタに見立てられた、さながら舞台公演のような 連続殺人を重ねていく。 <さてさて、本日これからお目にかけますのは、 そのフーディーニが窒息の危険を冒して演じましたマジック、 その名も“手持ち無沙汰の絞首刑執行人”の再現版でございます> と、今作では敵役のキャラクターがまず魅力的。 それに加えて、今回は物語の開始早々、「密室からの犯人消失」を描き、 事件の立ち上がりスピードがとにかく早い。その早さたるや、シリーズ随一。 ミステリ好きとしては、その「密室からの消失」という意匠も嬉しい。 更に、物語中で語られる手品の手法や、物語を彩るイリュージョンの世界も 楽しく、興味を惹き付けて離さない。 ジェフリー・ディーヴァーお馴染みの、中盤のジェットコースターのような サスペンスや、終盤のドンデン返しに次ぐ、ドンデン返しは言うまでもなく。 これまで読んだ、シリーズ5作品の中では、「コフィン・ダンサー」に次いで、 2番目に好きな作品(3番目は「ボーン・コレクター」)。
2008年10月30日
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[1] 読書日記 事故で四肢麻痺となった、元科学捜査官のリンカーン・ライムと、 彼の手足、目鼻となって現場で動く女性巡査のアメリア・サックスが、 タイムリミットに迫られる状況下で、 作品毎に個性的な敵役と、「名探偵」VS「名犯人」の頭脳戦を繰り広げる、 「リンカーン・ライム」シリーズ第4弾、 ジェフリー・ディーヴァー 「石の猿 (上・下)」(文春文庫) を読了。 今回の敵役は「ゴースト」と呼ばれる蛇頭(中国の密入国の斡旋ブローカ)で、 目的達成の為であれば、手段を選ばず、殺人を辞さない、冷酷非道な人物。 映画「ユージュアル・サスペクツ」の「カイザーソゼ」や、 漫画「ジョジョの奇妙な冒険」第5部の「ボス(ディアボロ)」のように、 その素顔は、ほとんどの人間が知らない。 参考のため以下に、文庫裏表紙の概要を抜粋。 <中国の密航船が沈没、10人の密航者がニューヨークへ上陸した。 同船に乗り込んでいた国際手配中の犯罪組織の大物“ゴースト”は、 自分の顔を知った密航者たちの抹殺を開始した。 科学捜査の天才ライムが後を追うが、ゴーストの正体はまったく不明、 逃げた密航者たちの居場所も不明だ――> 毎度のことながら、見事なタイムリミットの設定によるアクションと、サスペンス。 要所、要所できちっと読ませる。 特に、サックスによる<『ギネス』記録達成>ものの現場検証のシーンなどは、 相変わらずの緊迫感。 ただ、これまでに比べると全体の流れとしては、まったりとしていたように感じた。 ご馳走でも、毎日続くと飽きるてしまうように、読者として慣れてしまった為か? でも、物語が一段落したかに見えてからの展開は衰え知らずで、さすがのひと言。 一筋縄ではいかない、本シリーズの本領発揮。 これを見せられるから、読むのがやめられない。 というわけで、次作「魔術師(イリュージョニスト)」へと進む。
2008年10月27日
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[1] 読書日記 事故で四肢麻痺となった、元科学捜査官のリンカーン・ライムと、 彼の手足となって現場に赴く、女性巡査のアメリア・サックスが、 作品毎に、常に目前に迫るタイムリッミトの中、 敵役との「名探偵」VS「名犯人」の頭脳戦を展開する、 「リンカーン・ライム」シリーズ第3弾、 ジェフリー・ディーヴァー 「エンプティー・チェア」(文藝春秋) を読了。 映画化もされた、第1弾「ボーン・コレクター」では、 ニューヨークを舞台に、連続誘拐&殺人を繰り返すサイコキラーと対決し、 第2弾「コフィン・ダンサー」では、 航空会社の重役3人の殺害を依頼された凄腕の殺し屋と、手筋を読みあったライム。 今作では、地元ニューヨークを離れ、ノースカロライナの田舎町で巻き込まれた、 少年による女性誘拐事件において、新たな敵役との勝負を繰り広げる。 本文中に出てくる名詞や、専門用語の量が多く、前半(立ち上がり)まどろっこしく 感じるが、中盤以降(文庫で言うならば下巻以降)は面白過ぎてやめられない。 特に終盤(競馬言うところの最後の直線)の展開たるや圧倒的で、 「衝撃のラスト!」「この映画のラストは誰にも言わないで下さい」系のサスペンス 映画の、しょーもないどんでん返しなんぞ足元にも及ばない。 エンターテイメントにおける「予想外の結末」とは、こういう作品だと言わんばかし。 「バットマン」や「スパイダーマン」等の、アメコミのように、 シリーズの敵役も個性的で、魅力的。 ミステリというジャンル自体が苦手という人以外ならば、10人中7人は「面白い!」と 言うであろう、お薦めのシリーズ。
2008年10月23日
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[1] 読書日記 <確かに、わたしが辞職を決意したのは愛美の死が原因です。 しかし、もしも愛美の死が本当に事故であれば、悲しみを紛らわすためにも、 そして、自分の犯した罪を悔い改めるためにも、教員を続けていたと思います。 ではなぜ辞職するのか? 愛美は事故で死んだのではなく、このクラスの生徒に殺されたからです。> という、 中学校三学期、終業式の日のHRで始まった、女教師の「告白」で幕が開く、 話題の書、 湊かなえ 「告白」(双葉社) を遅ればせながら、読了。 ミステリ。 年末恒例の「このミステリーがすごい」等のミステリ本ランキングには、 確実に顔を出してきそうな作品。 6章の章立てからなる長編作品ながら、 元は第一章の「聖職者」で、小説推理新人賞を受賞した短編だった、 というのだから、ネタの膨らませ方、その構成力には驚く。 全6章の全てが、事件関係者の独白による「告白」という文体も凝っている。 当初、女教師の独白文をまどろっこしくも思えたが、 慣れればサクサク進められるし、 読み出したらその展開に、一気読みせずにはいられなかった。 非常によくできたミステリでもあるがそれ以上に、 一見、社会派寄りと見せかけながら、 実は重いテーマや題材を、メッセージ色をぼかし、 あくまでプロットの肉付け之為の小道具として、 巧みに玩びに玩ぶ、エンターテイメント小説。 多少戯画的でリアリティに欠ける側面はあるが、 そういった些事には拘泥しない、 とにかく面白い本を読みたいんだ、という人には是非お薦めしたい一冊。 何かこのブログの文章だけ見ると、 黒武洋「そして粛清の扉を」(新潮文庫)を彷彿とさせるけれど、 「バトル・ロワイヤル」的な、かの作品とは、 全くジャンル違いの作品なので、一応。
2008年10月21日
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[1] 読書日記 ハウスダストのアレルギーを持っているので、 場所によって、あるいは場合によって、くしゃみや、鼻水が止まらなかったり (同じアレルギー症状の花粉症に近い感じだと思われる。 自分は花粉症ではないが、花粉症の知人達の様子を見るかぎり)、 酷い時には、呼吸困難に陥ることもある。 昔、弟の下宿先に遊びに行った際には、 呼吸困難で喘息に近い状態になったりもした。 ただ、埃(ほこり)ともどうやら相性があるらしく、 どんなに部屋が汚かろうと、大丈夫な種類の埃の場所だと大丈夫だし、 どんなに部屋が片付いていようとも、駄目な場所は駄目なよう。 自分の部屋だと、どんなに掃除をしていなくても普段は平気。 しかし、部屋にいてもアレルギー症状に見舞われることが、時々ある。 それは、読書をしている時が多い。 主に、古本屋で買った本を読んでいる時が大部分を占める。 恐らく、古書店の店内の埃だか、前の持ち主の家の埃だかが 本のページとページの間に挟まれて、我が家まで運ばれてくるのであろう。 今回も、トイレットペーパーを抱え込み、 (ティッシュペーパーでは、鼻水を止めるのに追いつかないので) くしゃみを連発しながら、 綾辻行人 「深泥丘奇談」(幽BOOKS) を読了した。 連作ホラー短編集。 これまでの綾辻行人作品の作風を期待して読んでいたので、 当初は肩透かしをくらったように感じたが、 読み進めていくと、なかなか楽しい世界。 同作者の「眼球綺譚」ともまた違い、 「新耳袋」各話を、一人の人物の視点、一つの場所で小説化したような味わいで、 話によっては現象だけが語られ、オチが無かったりもする。 ちなみに、前回、鼻水をダラダラと垂らしながら読んだ本が、 「ひぐらしのなく頃に ~第一話 鬼隠し編(上)~」 と、割と近いジャンルの小説だったので、 身体が実は「ホラー」に近いジャンルに拒否反応を起こしているのかも、 と勘繰っていたりもする。
2008年10月20日
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[1] 読書日記 出版早々に買っていながら、永らく放置している間に、 『このミステリーがすごい!2006』の1位に選ばれ、 第134回直木賞や、第6回本格ミステリ大賞を受賞し、 いつまにやら文庫化し、そして映画の公開も間近に迫った、 東野圭吾 「容疑者Xの献身」(文藝春秋) (読んだのは単行本の方だけれど、写真は文庫版の方を) を読了。 何故、今まで読まなかったんだ? と、疑問に思うほど、読み出したらあっと言う間に読み終わっており、 おっと思わせる作品だった。 形式は、倒叙もの(ドラマ「刑事コロンボ」や「古畑任三郎」のように、初めから 犯人が誰かは明かされている)のミステリながら、殺人の事後共犯者であり、この 物語の主人公でもある石神という数学教師が、どのようなトリック(手段)を用い て、殺人の実行犯の親子を警察の手から守ろうとしたかは伏せられた、実質はハウ ダニット(方法が謎)が主体のミステリ。 探偵役は「探偵ガリレオ」の湯川学(物理学者)で、事件隠蔽の「頭脳」である犯 人・石神との対決(知恵比べ)を描いている作品でもある。 漫画「デスノート」の「夜神月」対「L」や、ジェフリー・ディーヴァーのリンカ ーン・ライムシリーズのような味わい。 とにかくスピーディーな展開も相まって、最初から最後まで一気に読みたくなる作品。 犯人・石神の動機(「献身」の理由)も良い。 ただラストは、この物語のトリックや動機に比べてると、見劣り、ビシッと決まらな かった印象。「ここまで書く必要があったのだろうか?」とか、「違う書き方でも良 かったのでは無かろうか」と感じてしまう。
2008年10月01日
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[1] 読書日記 今野敏 「隠蔽捜査」(新潮文庫) を読了。 後に警察組織を揺るがすまでに発展していく事件に係わり、 家庭内の重大な問題(不祥事)に頭を悩ます、 主人公・竜崎(警察官僚)の葛藤と決断を描いた物語。 面白い。 世間や組織のいわゆる「本音」と「タテマエ」の使い分けに、 馴染めなかったり、反発する、「正論を振りかざす」キャラクターを、 物語の主人公とする作品は数あれど、 そのタイプを組織の下っ端ではなく、管理職側に配置した珍しい作品。 恐らく「踊る大捜査線」のパロディ。 (もしも、主人公の「正論の人」を、 「巡査部長」の青島ではなく、「警察庁の官僚」室井にして、 「東北大学」卒業だったばかりに、「やりたい事をやれる」権力持てなかった学歴を 「東京大学」卒業へと変更したらどうなるのか?) 事件は勿論、現場で起きてるんじゃなく、会議室で起きています。
2008年09月25日
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[1] 読書日記 「となり町戦争」の三崎亜記の新作、 といっても発行されたのは半年近くも前だけど、 「鼓笛隊の襲来」(光文社) を読了。 「阪急電車」の下に積んであったので、勢いのまま。 <赤道上に、戦後最大規模の鼓笛隊が発生した。 鼓笛隊は、通常であれば偏西風の影響で東へと向きを変え、 次第に勢力を弱めながらマーチングバンドへと転じるはずであった。 だが今回は、当初の予想を超えて迷走を続け、 徐々に勢力を拡大しながら、この国へと進路を定めた。> という書き出しではじまる表題作をはじめとした、 SF的シチュエーションのワン・アイデアを軸を展開される短編集。 一編が20ページ程度の長さだというのも大きいと思うが、 画集を眺めているような、詩集を読んでいるような感覚で、 あっという間に読み終わる。 そして、絵画や詩を見ているとき同様に、 例えばこの「鼓笛隊」とは○○の事を現わしているんだろうな、 という自由な解釈が楽しめる作品も多く、楽しめた。 ただ、 どうしても自分の書きたかったことを説明せずにはいられなかった、 と見受けられる箇所も多く、 そこは読者の裁量に委ねても良いんじゃない、と感じる部分も多々あった。 それに、 これを遺伝子と言おうか、重力と言おうか、 読んでいて「村上春樹」をチリチリと感じ、 作者の次の作品ではなく、村上春樹の小説を読みたくなった。
2008年09月10日
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[1] 読書日記 昨日、 数日後に結婚式が迫っている友人から、久々にメールを受信。 結婚式の受付を拝任した。 良い機会なので、その友人から薦められていながら、 永らく放置し続けていた、 有川浩 「阪急電車」(幻冬舎) を引っ張り出してきて、読了。 阪急今津線の宝塚駅~西宮北口駅間の、 主に車中を舞台とした連作短編形式の恋愛小説。 各話章題も、 宝塚駅 宝塚南口駅 逆瀬川駅 小林駅 仁川駅 甲東園駅 門戸厄神駅 西宮北口駅 と今津線の駅名。 関西に住んでいる身として、競馬ファンとして非常に馴染み深い。 沿線上に住んでいる訳ではないけれども、 この作品中にも出てくる「仁川駅」には阪神競馬場があるので。 以下、本文より抜粋。 <仁川には阪神競馬場があり、シーズン中の週末は競馬客でよく賑わう ――どころの話ではなく、大レースがあるときなどは歩行者信号で 捌ききれないほどの客が詰めかけるので、電車で来る客を改札から競馬場まで 直接流せるように地下に連絡通路が作られたほどである> ちなみに、この連絡通路は出来てまだまもないので綺麗で、 阪神競馬場のGI(大レース)優勝馬(あるいはゴールの瞬間)の写真が壁に展示 されており、開放感もある。 中山競馬場の、もしここで地震が起きたら生き埋めになるかも、と不安を煽るような 連絡通路とは大違いである。 閑話休題、 この作品の感想をば。 非常に軽い作品。 分量、内容ともに。 非常に明確なメッセージや、筋立て、 単純化された世界(事態)等は、ジュブナイル小説やライトノベル的。 読んでいて、甘酸っぱい話というか、「青」酸っぱい話も……。 中高生向け。 とりあえず、作家に対する感想としては、やはり自衛隊ネタが出てきた、というところ。
2008年09月09日
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[1] 読書日記 読んでいないので書かないのではなく、 どうせ毎日読んでいるので一々書くのが面倒になり、 しばらく「読書日記」を書いていなかったが、 何となく書きたくなったので再開。 ここ最近読んだ海外ミステリ(翻訳ミステリ)の感想を、まとめて。 フレッド・ヴァルガス 「青チョークの男」(創元推理文庫) パリ市街地で連日、路上のガラクタが青チョークで描かれた円で囲まれるという 出来事が発生する。誰もが悪戯と決め付け放置していたこの事件に、パリ第五区 警察の警察署長アダムスベルグだけが、不吉な予感を感じていた……。 というような感じに物語がスタートする本書。 関東の方に遠出した際に、その移動の車中にて読了。 味のある語り口と、 上記アダムスベルグを筆頭とした独特の登場人物造詣にはまり、 軽く作者のファンになった。 旅行からの帰還の後、同作者の既刊本をすぐに買い求める。 フレッド・ヴァルガス 「死者を起こせ」(創元推理文庫) ある朝突然、自分の家の庭に、全く憶えのない木が植えられていて気味が悪いので、 地面を掘ってもらえないかと、隣人の老女の頼まれた、ボロ館に暮らす三人の歴史 学者と元刑事。木の下を掘っても何も出ては来なかったが、しばらくして依頼人の 老女がその姿を消してしまった……。 と、「日常の謎」+「奇妙な味」風ミステリを皮切りとしながら、 事態が殺人事件へと発展していく展開は、上記「青チョークの男」と同様。 登場人物造詣は、やはり独特かつ個性的。 今回読んだ作者の3作品の中で、ミステリとしてはこれが好み。 フレッド・ヴァルガス 「論理は右手に」(創元推理文庫) パリの街路樹の根元にあった犬の糞から現れた人骨。元内務省調査員のケルヴェレ ールは、ボロ館に住む歴史学者たちの力を借り、調査に乗り出す。 という始まりで、上記「死者を起こせ」と同じシリーズの第二弾ながら、 主人公かつ物語のけん引役が新たな登場人物に変わっている変り種。 前作では、歴史学者の一人が主人公格だった。 名前だけの登場であるが、上記「青チョークの男」の主人公であるアダムズベルグ が出てきており、3作品は地続きの世界観であったことが明らかになった。 ロン・ファウスト 「死人は二度と目覚めない」(ハヤカワ・ミステリ文庫) 弁護士の使い走りとして働く主人公が、まもなく莫大な遺産を相続するある男の 捜索を依頼される。男がクルーザーに乗って洋上に出ていることを突き止めるも、 クルーザーに男の姿はなく、そこにはヤギの死体が転がり、近くの海中からは、 重石をつけて沈められた多数のダッ○ワイフと、女性の死体が発見された……。 という概要に惹かれて、本書を購入するも、 当初の謎(意外性)が読み進むにつれて逓減していく作品だった。 ミステリという範疇ながら、読み終わってみれば、 こちらが思い描き、読みたかったミステリのジャンルとは微妙に違った、 というのが率直な感想。 こちらに理解力が足りない為か、タイトルの意味(理由)もよくわからなかった。 ジョン・リドリー 「地獄じゃどいつもタバコを喫う」(角川文庫) 偶然にも、自殺した直後のカリスマ・ミュージシャンの未発表テープと、マフィア から盗んだヘロインを手に入れてしまった、コンビニ店員のパリス。テープを狙う エージェントと、マフィアの差し向けた殺し屋に追われ、パリスはロスからラスベ ガスへと車を走らせる……。 という概要が全ての、血と硝煙が吹きすさぶパルプ・ノワール。 ドミノ倒しの如く死体が量産されていく筋立てと、 その死体の山を築き上げていくタフな殺し屋のキャラが良い。 物語が転がりはじめたなら、一気に最後まで読んでしまいたくなる類の作品。 ジェイムズ・スウェイン 「カジノを罠にかけろ」(文春文庫) カジノのブラックジャックで大勝連勝を続ける謎の男。カジノ・コンサルタントの トニー・ヴァレンタインはイカサマであると確信するも、その手口が見抜けない。 それに、イカサマだとわかる不審な行動は、カジノ側に目を付けられることは分か っているはずなのに、何故その男はそんなにも派手に振る舞うのか……。 という、イカサマ師と、イカサマハンターの対決を扱ったギャンブル・ミステリ。 「地獄じゃどいつもタバコを喫う」の最後の舞台がラスベガスだったことの連想か ら、ラスベガスのカジノが舞台のこの作品を読了。 中盤で多少、集中力は切れるも、全体としてはミステリとして面白い作品。 一人称とはすなわち嘘発見器にすぎないことがわかる。 ウィリアム・モール 「ハマースミスのうじ虫」(創元推理文庫) <合法と非合法の境目を澄すまし顔で歩いている人間>の観察・蒐集を趣味とする キャソン・デューカーは、「バゴット」と名乗り、クラブの仲間を恐喝した、 全く特徴のない男を、広いロンドンの中から見つけ出し、狩り出す為に行動し、 罠を仕掛ける……。 という、「追うもの」と「追われるもの」を描き、 読了の上記後半3作品と似たような構図の作品ながら、比較すると、 全く派手さに欠ける、オフビートなテンポ、筋立て、語り口な作品。 だけど、今回の7作品の中では一番の好み。 抜群に面白かった。
2008年09月08日
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