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恋愛セミナー90【春琴】



「紫式部物語~その生涯と恋」ライザ・ダルビーというアメリカ女性の書いた
小説を読みました。
16歳のときに源氏物語に出逢い、その年の内に留学し、
京都で芸者としてお座敷にたったこともあるという著者。
本はすでに八カ国語に訳されているそうです。

式部の娘・賢子への遺言の形で、源氏物語の書き進められる様子や宮仕えの経緯、
夫・藤原宣孝や時の権力者・藤原道長とのやり取りなどが物語に。
紫式部が生身の女性として浮かび上がります。

最後の章は 「夢浮橋」 に続く失われた帖。
源氏物語があの形で終わってしまったのは、実は発表されていない帖があった、という趣向。

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尼姿の浮舟の美しさに心惹かれ、執心する薫。
髪が元の長さに伸びてしまう夢を何度も見てしまう浮舟。
ある日浮舟は庭の撫子を摘もうとして雷に打たれてしまい、盲目になってしまう。
視力を失った浮舟を見て匂宮は逃げ帰り、薫はかえって愛情を感じる。
ますます絆が強くなったように感じると浮舟に語る薫は、
見惚れている自分を知られずに思う存分美しい浮舟を見つめることができ、
仏道の話を語り合える仲になれたと喜び心軽くなる。
見つめられていることが見えなくてもその気配を察し、
自分よりも深い闇にいる薫を、哀れに思う浮舟。
薫の残した香りを、浮舟は部屋から追い出してしまった。
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薫と浮舟のその後は、ご想像のとおりでしたでしょうか。
逃げることもできなくなった浮舟は、ますます人形めいていませんか。

雷に打たれ視力を失った浮舟とかえって絆を深めたと思う薫という設定は、
谷崎潤一郎の「春琴抄」-熱湯で美しい容貌を失った盲目の主・春琴と
自らの目を突き主に誠を貫く佐助の物語-に通じる部分を感じます。
殉情(新品ビデオ)

どこまでも向き合う佐助とその誠を心のなかではわかっている春琴と、
名実ともに聖なる関係になりながらも、心のうちは添えない薫と浮舟。

すっかり心の目が開いてしまった浮舟には、薫は物足りない相手に見える。
浮舟がほんとうに見つめて欲しい部分を薫が見逃している限り、
この関係は平行線を辿るでしょう。

優れた物語は、描かれていない部分を埋めたくなる願望を生む。
浮舟は匂宮か薫かどちらかを選ばねばならない。
二度あることは三度を厭わず浮舟を死に臨ませる。
白黒つけるのが好きなアメリカ人ならではの物語に仕上がっているようです。

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