鱗羽

鱗羽

空間ベクトル1-5〔核心犯〕

核心犯


 道場もいつもより早く閉まってしまい、次の授業までの残りの時間を潰すべく部室に行ったら先客が1人でテレビを見ながら煎餅を勢いよく音をたてて食している。
「悠ちゃん、1人?珍しいね。」
同じ学年の五人の女子の中の一人、籐馬悠。身長は標準だが物凄く細く、部活一体力がない。髪の毛はいつも薄い茶色で肌は色白く男子に大人気。そして女子のエース。
「櫂ちゃんと翔ちゃんは授業中」
「透子ちゃんこそ珍しいね、1人なの。」
「伏見は仕事で学生部に行くって。後で会うけど。」
「忙しいんだねぃ」
「何にもしてあげられない自分が情けないですよ。」
籐馬は煎餅を口にくわえたまま、テレビのスイッチに手を伸ばした。そして鞄から煎餅の袋を取り出して私に勧めた。
「透子ちゃん、1つ聞きたいんだけど良いかな。」
私はいただきます、と小さく言いながら藤馬から手渡された煎餅を食べ始めた。
「ん?何?改まって。」
「透子ちゃんさ、片瀬のこと…気に入ってるでしょ。」
「まぁ…そうだね。」
「それってさ、恋愛感情ってやつ?」
「さぁね、どうだろう。そう仮定したとしても向こうはそんなふうには私のことを思ってないよ。残念だけど。」
「答えになってない。」
「どうして?そう、思うの」
「勘(笑)。」
「どうして?」
「…私はその手の話に関しては本当に鈍感なんだけど、透子ちゃんはなんていうか…」
とても言いにくそうにしてテレビのリモコンを弄っている。
「申し訳ないんだけど昼食べて良いかな。」
話の途中で私はさっき部室に寄る途中に購買で買って来たカレーを鞄から出した。
「…なんていうかさ。なんていうか…透子ちゃん言っても怒らない?」
「まだ聞いてないから怒りようがないよ。ってか怒らないと思うよ。で?」
籐馬の返事を待たずにカレーを口に運び始めた。
「透子ちゃん、片瀬好きなのバレバレ…。」
思わず口に含んでいたカレーを噴出しそうになるところだった。…なんて事を言うのだ。

「もしかして…櫂からきいたの?」
「え?なんで?櫂ちゃんが私に言うはずないじゃない。」
片瀬のことについて私は櫂相談していたので籐馬が櫂から聞いたのかとおもってしまった。
「道場でなんとなく透子ちゃんを観察してたらそうかな、て。」
「あ~そうか…やばいね。悠ちゃんが気が付いてた事は部活人々皆知ってるよな。」

「…恐らくは。というより…もう手遅れだと思う。」
「なるようになれだね、これは」
「なんで好きになったの?」
「…教えね。」
「まぁ今日はいいや。」
「残念だけど私と片瀬に関しては皆が期待してるような関係には発展しないよ。」
「え…?」
籐馬が返答した瞬間、部室の扉がノックされた。開いた扉の前には話題の人物が立っていた。
「…カレーくさいですね、この部屋。」

彼はそういった。

03/11/18

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