消せないもの2

わたしの腕にはたくさん傷がある。
おとーさんとおかーさんにもらった大事な体に自分で傷をつけてたんだ。
その時の気持ちはあまり思い出せない。
ただ何度も何度も血を出して、ずきずき痛むのを感じていたよ。
右腕には大きな根性焼きのあとがある。
治りかけてくるとまた同じ所に火をつけた。
そこだけつるつるで毛が生えてこないから、「どーしたの?」って子供によく聞かれたよ。
体の中にも飛び降りた時の骨折の後があるだろうな。
今でも神経痛になって残ってるよ。
壊れた内臓も修復してもすぐ壊れ、脳みそもいかれてなかなか治らない。
どうしてこんなになったのかな。
怪我して血が出て痛いのは、「生きてる証拠だよ」って、子供によく言ってたけど、
わたしは自分で生きてる証拠をつくりたかったのかもね。
あるいは誰かに「どーしたの?」って心配して欲しかったのかもしれないな。
体の傷はもう消す事はできないけど、痛みはなくなったんだ。
でも目に見えない心の痛みは、これからもずっと消える事はないのかもしれない。




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