アレルギー性鼻炎治療の将来(講演会)



現在行われている抗ヒスタミン薬を中心とした内服治療、ステロイドを中心とした局所療法とは異なり、今後数年間で実現可能なアレルギー性鼻炎に対する新しい治療として、次の4つが考えられる。

1)細菌・ウイルス感染機序を利用した免疫不均等を改善する治療
 ヒトの体は細菌やウイルスに感染したり、ワクチンなどで類似感染状態を起こすと、それらに対する抗体を作り、今後感染しないように身を守る。
それとは別に、細菌に含まれるDNA特有の受け手や、ウイルスに対する特有の受け手がヒトの免疫担当細胞には存在し、感染時その受け手を介した活性化にて、インターフェロンガンマーを代表とするいろいろな物質が産生され、感染を治そうとする。これが自然免疫である。インターフェロンガンマーにはIgE産生を抑え、アレルギー反応とは逆の方向に働く作用がある。
この細菌に含まれるDNA(CpG・DNA)やウイルスRNA(dsRNA)を用いてアレルギー反応を抑えようとする治療である。

2)人工的に作成した抗原の投与による免疫寛容の誘導
減感作療法は、アレルゲンワクチンを定期的に皮下接種する治療であり、現在行われている治療の中で、唯一根治的治療と言われている。しかし、治療には長い期間、頻回の通院が必要であり、時にアナフィラキシーを起こすことから行われなくなっているのが現状である。抗原には、抗原提示細胞を介したやや複雑な免疫反応経路とは別に、直接T細胞を活性化する部位が存在することがわかってきた。そこでその活性化する部位のみを人工的に作成し、投与する治療法、ペプチド療法が生まれた。この治療法は、これまでのアナフィラキシーがないという大きな利点が存在する。ペプチド療法によって抗原に反応しなくなる免疫寛容が誘導される。

3)抗体を用いた治療
分子生物学と技術の進歩によって抗体が人工的に作成されるようになった。
一般にマウスの抗体をヒトに投与すると必ずやアナフィラキシーを起こすが
アナフィラキシーを誘導する部分をヒトの抗体に置換することによって、
アナフィラキシーをおこさなくなった。代表的は抗体として抗IgE抗体があげられる。すでに臨床治験は終了している状態であり、認可も待っている。またヒトの細胞には必ず正と負のシグナルが存在する。その二つのシグナルを同時に活性化して、アレルギー反応を起こす正のシグナルを抑制しようとするキメラ抗体が存在する。

4)細胞内で起こっている特定のシグナルを阻止し、免疫反応を停止する治療
すべての細胞は、刺激を受けると必ず細胞の中で蛋白のリン酸化を受け、次々とバトンタッチが行われる。これが細胞内シグナル伝達と言われる。アレルギー性鼻炎の病態の中で重要なのは、好酸球浸潤であるが、好酸球遊走因子の産生などは特定のシグナル伝達がある可能性がある。そこでこれらシグナル伝達を調べ、特異的に抑制できないか検討している。

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