「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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山さんの刑事部屋
Rust Christmas
鈎 のえる(一九)女性。大学生。
狩尾 悠大(二一)男性。大学生。
志文(二五)男性。大学生。
清羽(二〇)男性。大学生。
又井(二一)男性。大学生。
戸増(二二)男性。大学生。
●暗がり
うずくまって紐の端を握る女。
鈎(まがり)のえる。
その隣で落ち着きのない男。
狩尾(かりお)悠大(ゆうだい)。
悠大「なあ」
のえる「何?」
悠大「もう一回考え直さへん?」
のえる、盛大にジト目。
のえる「この期に及んで怖じ気づいたん?」
悠大「そういうわけやないけど・・・」
のえる「ディンドン、ディンドン」
悠大「へ?」
のえる「聞こえるやろ、鐘の音が」
馬鹿正直に耳を澄ます悠大。
のえる、クスリ。
のえる「噓うそ、まだ鳴ってへん。ウチらが
これから鳴らすんやんか」
●大学本館・講義室・朝(以下回想)
まだ人もまばらな教室内。
各席に一枚ずつ置かれたビラ。
怪訝そうに手に取る男子学生。
『クリスマス中止のお知らせ』。
発行人は『ク根闘』。
やにわに教室に入ってくる男女。
『百クリ祭実行委員』の腕章。
実行委男A「みなさん静粛に」
元から静かだった教室に響く声。
実行委男A「モモクリ祭実行委員です。只今
より無許可ビラを回収します」
実行委女B「中身は決して読まず、机の上に
戻すこと。持ち帰りは厳禁です」
ビラを手放す学生たち。
通路を進んでビラを回収する二人。
実行委女B「そこのネルシャツ君、さっさと
置いて」
実行委男A「隠している者はクッコントウの
シンパとみなされますよ」
最後方の女子学生が立ち上がる。
気づかれる前に後扉から退出。
女子学生の席のビラが消えている。
●同・廊下・朝
歩きながらビラを読む女子学生。
のえるである。
その表情が次第にほころんでゆく。
●旧学生寮・外・昼
朽ちかけた木造の学生寮。
廃棄物置場と化した前庭。
冬枯れた草を踏み分け近づくブーツ。
●同・アジト・昼
ビールポスターで塞がれた窓。
掛金で内側から鎖されたドア。
畳敷きの上に一ダースの椅子。
五人の男が思い思いに掛けている。
カップ麺をすすっている志文。
SSRを引いてご満悦の清羽。
口を開けて爆睡している又井。
ダンベルで上腕を鍛える戸増。
退屈そうに耳掃除をする悠大。
唐突なノック。
男たちの間に緊張が走る。
のえる(声)「もしもーし」
男たち、目配せし合うが誰も動かず。
執拗に続くノック。
さらには強引に開けようとする気配。
内側の掛金が今にも壊れそう。
のえる(声)「お留守ですかー」
志文、カップ麺を畳の上に置く。
●同・廊下・昼
物言わぬアジトのドア。
不思議そうに佇むのえる。
のえる「けったいやなあ、ここのはずなんや
けど・・・管理人さんに確認しよかな」
踵を返したのえるの背後で開くドア。
室内に引っ張り込まれるのえる。
●同・アジト・昼
すかさず掛金をかける戸増。
数字錠をロックすると扉前で腕組み。
部屋の真ん中で立ちつくすのえる。
彼女を取り囲む男たち。
左右から挟むように清羽と又井。
清羽のスマホからガチャが回る音。
又井は立ったまま船漕ぎ。
真正面には居丈高な志文。
やや離れて及び腰の悠大。
のえる、きょろきょろ。
のえる「もしかして貞操の危機ってやつ?」
ギョッとしたように一歩退く男たち。
のえる「とりあえず座っていい?」
返答を待たず傍の椅子に座る。
志文「お嬢ちゃん、部屋間違えてないか」
のえる「クッコントウの部室でしょ、ここ」
のえる、あっけらかん。
志文、威厳を保とうとしながら。
志文「クッコントウ? 何やそれ風邪薬か?
ここはな、日帰り温泉研究・・・」
のえる「これ見てん」
ビラを突きつけるのえる。
清羽「場所書いてへんのに何で・・・」
志文に睨まれて口をつぐむ清羽。
のえる「その辺で聞いたら教えてくれたよ。
結構有名みたいやね」
悠大「先輩、やっぱアジト移した方が」
志文「軽く言うな。どんだけ手間かかるか」
のえる「ウチもよして」
さらっと爆弾発言。
志文、耳を疑うような顔で。
志文「・・・お嬢ちゃん、クッコントウが何
か分かって言うてんのか」
のえる「正式名は知らんけど、クリスマスが
憎くて憎くてたまらん人らの集まりやろ」
戸増「クリスマス根絶闘争」
背後で腹式呼吸の効いた声。
筋肉を誇示しながら続ける戸増。
戸増「本学に代々受け継がれてきた誇り高き
抵抗戦線や。女子供の来るとこやないで」
戸増の言葉に追随する面々。
志文「そうやそうや。うちは女人禁制」
清羽「と、特に三次元は・・・」
又井「ZZZZZZ」
悠大「帰った方がええと思うよ」
のえるの表情が突然曇る。
のえる「むりやり部室に引きずり込まれた」
志文「え」
のえる「一応事実やもん。学務に届け出ても
文句ありませんよね」
重い沈黙がアジトに垂れ込める。
のえる、小春日和みたいな笑顔に。
のえる「ウチも憎いねん、クリスマス」
爆弾が落ちたような男たちの顔。
又井も完全覚醒。
又井「えっ、えっ、これ何の場面?」
●暗がり(現在に戻る)
のえる、紐を握る手を代わる代わる。
息を吹きかけては温める。
悠大「交替しよか」
のえる「いらん。こんな愉快な役、譲るわけ
ないやろ」
悠大「今だけや」
慎重に紐を引き継ぐ悠大。
のえる「うっかり引っ張ったら台無しやで」
両手をこすり合わせるのえる。
悠大「右のポケット」
のえる「ん」
悠大「俺のコート」
悠大のポケットに手を入れるのえる。
出てきたのはホッカイロ。
●旧学生寮・アジト・午後(以下回想)
急ごしらえの面接会場。
壊れかけの長机を挟んで。
のえるvs五人の男たち。
志文「最初に確認しとくで」
のえる「どうぞ」
志文「自分、イヌちゃうやろな」
のえる「いや人間ですけど。尻尾あるように
見えます?」
立ち上がって可愛く尻をふりふり。
思わずシャッターを切る清羽。
戸増、スマホを奪って写真削除。
志文「スパイやスパイ。実行委か自治会の」
のえる「ちゃうちゃう。あ、犬の種類ちゃい
ますよ」
吹き出しかけて畏まる悠大。
志文「じゃあ何で仲間に入りたいんや」
のえる「だ・か・ら、クリスマス中止に賛同
してるって言ったでしょ」
志文「その心は?」
のえる「ウチの名前見たら分かる」
戸増「知らんがな、名前」
のえる「申し遅れました。理工学部一回生、
鈎のえるです。以後お見知りおきを」
又井「理工か、後輩やんけ」
悠大「ノエル・・・もしかして誕生日?」
のえる「そ、二十五日」
清羽「うっわ、キラネーやん・・・」
悠大「それだけで?」
のえる「ウチ、教会の子なんよ」
突然の神妙な口調。
のえる「結構大きい教会でパパが牧師さん。
普段から全然構ってくれへん親やった」
自然に居住まいを正す五人。
のえる「誕生日のお祝いはしてもらったこと
ない。大昔に死んだオッチャンの誕生日の
方が家では大事やったから。学校はいつも
冬休みで、友達におめでとうって言われた
記憶すら皆無や」
誰かのわざとらしい咳払い。
のえる「毎年、お小遣いでちっちゃいケーキ
買って自分で自分祝っててん。お店の人に
サンタさんの飾りどうですかって聞かれた
時はさすがに泣きそうやった」
誰かが洟をすする音。
のえる「信徒は別にええねん。けど関係ない
輩が便乗して浮かれくさってるん見てたら
ウチもう・・・」(俯く)
思わず立ち上がる清羽。
清羽「(涙声)あ、あの、僕も・・・」
清羽を手で制する志文。
志文「動機は理解した。けど、足手まといに
なられるんは困る。ここは一つ、テストを
させてくれ」
のえる「テスト?」(上目遣い)
志文「そうや、闘士の資質があるかどうか、
腕試し度胸試しや」
心配するような悠大の顔。
警戒するような戸増の顔。
●同・承前
ぽーっと呆けている清羽。
手にしたスマホを見ようともせず。
ダンベル腕立てをしている戸増。
戸増「・・・転向者め」
清羽「(夢から醒めたように)え、何すか」
戸増「別に」
長机に突っ伏し寝の又井。
その隣で考え込む志文。
悠大がおずおずと近づく。
悠大「先輩、あれは・・・」
志文「言いたいことは分かる」
悠大「じゃあ何で」
志文「あの子は危なっかしい。変に関わらん
方がええ」
悠大「ちょっと意地悪すぎませんか」
志文「一休さんの将軍様よりはマシやろ」
忍ぶようなノック。
そそくさとドアに駆け寄る悠大。
悠大「メリー」(ドア越しの合言葉)
のえる(声)「バッドエンド」
悠大、数字錠をもどかしげに回す。
ドアが開くやいなや、つむじ風。
のえる、志文の元へ一直線。
長机を挟んで緊迫の対峙。
セーターから何か取り出すのえる。
机の上に力強く叩きつける。
驚いて目を覚ます又井。
のえる「合格、ですよね」(ニッコリ)
『百クリ祭実行委員』の腕章。
志文の視線、腕章とのえるを往復。
志文「・・・よう持って来れたな」
のえる「実行委員になったんで」
志文「え」
のえる「貸与品やから堂々と」
戸増「待て待て、一体どんな手え使たんや。
あいつら選民思想の塊やぞ」
のえる「さっきと同じ話したら何か同情して
くれてすんなりと。クリスマスと鈎さんの
誕生日、両方お祝いしようねーって」
戸増「・・・・・・」
のえる「これでウチも晴れてクッコントウの
イヌか。ハードボイルドって感じやわ」
唖然とする一同をよそにウキウキ。
●同・外・午前
侘しい前庭を木枯しが吹き過ぎる。
ぶるっと震えるのえる。
赤錆だらけの我楽多山を眺めて。
悠大「そんなにええ景色?」(背後から)
のえる「何か落ち着く」(振り向かずに)
悠大「呼んでる。勉強会やって」
のえる「講義サボってきたのに勉強?」
悠大「作戦会議のこと」
先に学生寮へ歩き始める悠大。
ややあって後を追うのえる。
●同・廊下・午前
先を行く悠大に追いつくのえる。
廊下にも溢れた得体の知れない品々。
神輿の残骸をヒョイと避けるのえる。
●同・アジト・午前
長机の向こうに志文と戸増。
手前の椅子に又井と清羽。
ノック、合言葉、開扉。
入ってきた二人に戸増の嫌み。
戸増「下っ端が揃って重役出勤とはな」
悠大「すいません、戸増先輩」
意外そうに悠大を見るのえる。
悠大「俺も今年から加入組や」
のえる、清羽の背後へ。
読んでいるマンガを覗き込む。
のえる「ヨハネ先輩、何読んでるん?」
清羽「な、何でもない。ただの少年マンガ」
慌てて隠そうとする清羽。
清羽「あと、僕はキ・ヨ・ハ・ネ!」
のえる「隙ありっ」
華麗に漫画を奪取。
のえる「なになに、月曜日の・・・」
清羽「やめ・・・返して・・・」
のえる「絵カワイイやん。この子、おっぱい
デッカ」
戯れる二人に志文の咳払い。
*****
書類を見ながら淡々と喋る志文。
アジトに流れる弛緩した空気。
半分空席の椅子を見回すのえる。
隣の悠大に囁く。
のえる「なーなー」
悠大「何や」
のえる「ここ、椅子多すぎひん?」
悠大「今はこんなんやけど、多い時は十二人
おったらしい」
のえる「マジで? 兵どもが夢の跡やん」
戸増「そこ! 遅刻の次は私語か!」
新人コンビ、ビクッ。
志文「お前らが一番聞いとかなあかん話や。
去年の行動が何で失敗に終わったか」
のえる「ハイハーイ」(元気に挙手)
志文「はい、鈎」
のえる「去年はいかなる作戦を決行したので
ありますか」
志文「強訴や」
のえる「ゴウソ?」
志文「全員で僧兵のなりして神輿担いで広場
に突っ込んだ。イヤ、突っ込もうとした。
けど事前に実行委に漏れとった」
戸増「内通者がおったんや。後で締めあげて
除名したったけどな」(苦虫)
志文「善戦虚しく広場手前でロックダウン。
遠く見えるツリーが怨めしいほどにキレイ
やった・・・」
志文、郷愁。
のえるの脳裏によぎる廊下の神輿。
思わず吹き出すのえる。
戸増「何がおかしいねん」(威圧)
のえる「いえ、ゆうべ見たナンマンが」
志文「もう他人事ちゃうぞ」
のえる「え」
志文「何せ実行委との二足の草鞋やからな。
せいぜい利用させてもらわな。せや、ええ
こと思いついたぞ」
志文、立ち上がってウロウロ。
居眠りしている又井をはたく。
志文「二重スパイや。向こうにはテキトーな
ガセ流しといてこっちは警備情報を頂く。
クッコントウ潜入に成功したって吹き込む
んや。できるか?」
悠大「待ってください、危険すぎ・・・」
のえる「ウチは別にええけど」
庇う悠大を制して。
のえる「今年は何するおつもりですか」
志文、ニヤリ。
志文「又井、アレを」
めんどくさそうに裏に下がる又井。
ハンガーラックを引っ張って戻る。
ずらりと掛かった赤穂浪士の羽織。
志文「討ち入りや」
戸増「季節的にもバッチリやろ」
ドヤ顔の幹部連。
のえるの表情を窺う悠大。
のえる、怖いくらい笑顔。
●暗がり(現在に戻る)
紐を支え続ける悠大。
寒気で紅くなってきた手指。
悠大「ずっと持っとく必要あるん」
のえる「え」
悠大「紐。いざ決行って瞬間になってからで
ええんちゃうん」
のえる「・・・まあ、『常在戦場』的な?」
悠大「何でリモコン式とちゃうんやろなあ。
その方が今ごろ楽できとったのに」
のえる「それはーそのー・・・マタイ先輩が
途中で抜けちゃったから・・・」
悠大「誰のせいや思てんねん」
のえる「うっ」
悠大「(溜息)ほんま難儀な女やわ・・・」
のえる「せ、せやから私、責任感じて自分で
最後まで仕上げたやんか」
悠大「このピタゴラスイッチ?」
不信顔で紐を揺らす悠大。
のえる「なかなかのモンやと思うで」
エッヘンと無い胸を張る。
悠大「冷えるなあ・・・」(モジモジ)
のえる、悠大に身を寄せて。
カイロごと悠大の手を包み込む。
のえる「これぞ愛の『手袋』や」
悠大「・・・そういうのがアカンねん」
●旧学生寮・アジト・午前(以下回想)
部屋には一人、又井だけ。
並べた椅子の上に横たわって高鼾。
のえる(声)「マタイせんぱい」
又井、ムニャムニャ。
のえる(声)「起―きーて!」
揺すられて椅子から落ちる又井。
しゃがみこんで見下ろすのえる。
のえる「大丈夫? すごい音したけど」
又井「ああ、うん、平気へいき・・・」
目の前にスカートから覗く太腿。
のえる「・・・すけべ」(視線に気づいて)
又井「な、何言うてんねんお前・・・」
精一杯取り繕って起き上がる。
又井「そんなカッコしてしゃがむ方が悪い」
のえる「別に怒ってへんのに」
ケラケラと無邪気に笑う。
電気ポットへと退避する又井。
紙コップにティーバッグを垂らす。
又井「・・・休みの日まで熱心やな。今日は
だれも来えへんで」
のえる「だからやん」
又井「え」
突然訪れる意味深な沈黙。
のえる「マタイ先輩・・・やりたい?」
又井「な、何を?(ファルセット)」
給湯ボタンを押す指がカタカタ。
のえる「忠臣蔵」
紙コップから飛び散るお湯。
又井「あちっ」
音もなく忍び寄るのえる。
お湯を浴びた又井の手をとる。
のえる「やけどした?」
又井「な、何ともない・・・」
のえる「外のアロエ取ってこよか」
又井「何ともないって!」
強引にのえるを振りほどく。
背を向けて手を押さえる又井。
又井「・・・忠臣蔵が何?」
のえる「先輩、あんま気が進まなそうやなと
思って」
又井「そうでもないけど」
ノエル「めっちゃダルそうやったで」
又井「・・・そういう鈎は?」
のえる「正直、ガッカリ」
又井「ほんま正直やな」
のえる「だってさ、考えてみて。クリスマス
妨害すんのに、やってることは季節外れの
ハロウィンやん。本末転倒ホッテントット
やわ」
又井「差別用語やぞ」
のえる「?」
又井「ホッテントット」
のえる「へー、そうなんや。物知りー」
又井「・・・で、本題は何や」
のえる「先輩、いつも寝不足やんな」
又井「?」
のえる「それって、夜中に機械いじりしてる
からでしょ」
又井「何でそんなこと知ってんねん」
のえる「イヌの鼻なめんなよ」
又井「学校の連中には言うてへんのに」
のえる「学校で聞いたとは言ってへんけど」
又井「こわ・・・」
のえる「高校でロボコン出たんやろ」
又井「出ただけ。初戦敗退や」
のえる「その腕、ウチに貸してくれへん?」
のえる、又井の背中におでこをトン。
のえる「もっと楽しいこと、しよ」
●同・昼
別の日の作戦会議。
人員配置図を前に瞠目する志文。
その前にすまし顔で立つのえる。
志文「・・・鈎、これマジモンか」
のえる「はい議長」
志文「パチモン掴まされたんとちゃうな」
のえる「鑑定書付きのマジです」
横から配置図を覗き込む戸増。
戸増「蟻の這い出る隙も無いやんか」
後ろから恐る恐る囁く悠大。
悠大「これ、討ち入るのムリですよ」
志文「そんな簡単に諦められるか。もう兜も
陣太鼓も用意したんやぞ」
悠大「大石やる気満々やないですか」
戸増「俺は槍の玄蕃や」
悠大「その人、二次創作キャラですから」
戸増「創作やったら悪いんか。忠臣蔵も半分
作り話やんけ」
悠大「日本人ぜんぶ敵に回す気ですか」
ワチャワチャと脱線。
今にも吹きそうなおすましのえる。
又井「議長」
自席から立ち上がる又井。
意外に通る声で泰然と挙手。
志文「発言か、珍しいな」
又井「緊急動議です」
自信を持って歩み出る又井。
その背後、不安そうな清羽。
●ゲームセンター・夜
両替機から硬貨を浚う清羽。
クレーンゲームの間を漫然と彷徨。
のえる「あームカツク。イカサマやんコレ」
アクリルに額を押しつけるのえる。
美少女フィギュアとにらめっこ。
手元には崩れかけた硬貨の塔。
清羽、見つからないように方向転換。
のえる「あっ、ヨハネせんぱい!」
逃走は三歩で阻止される。
●ファーストフード店・夜
窓際席に並び座る清羽とのえる。
トレイに山盛りポテト。
のえる「さーさー、ご遠慮なく」
清羽「う、うん・・・」
紙ナプキンで一本つまむ清羽。
のえるの傍にはゲーセンの景品袋。
のえる「先輩マジ神」(ホクホク顔)
清羽「そんな欲しかったんや」
のえる「(激しくうなずいて)一目惚れ」
清羽「観たことあるん、アニメ」
のえる「全然。面白いん?」
清羽「考察系やから人選ぶかも。けど作画は
劇場版レベルやし、キャラデに気鋭の絵師
起用しててめっちゃ話題。映像観てるだけ
でも楽しいと思う。あと声優陣豪華すぎて
草」(急に饒舌)
のえる「(笑って)今までで一番声聞いた」
ポテトをくわえて挑むような視線。
のえる「で、先輩自身の感想は?」
清羽「ぼ、僕? す・・・好きやけど」
のえる「マジ? ちょっと観たいかも」
スマホで視聴方法を調べ始める。
清羽「あ、あの、良かったらディスク焼いて
あげる・・・けど?」
のえる「!」
両手で清羽の手を包む。
清羽「あっ、えっ?」(挙動不審)
のえる「甘えてもいい?」
清羽「も、もちろん・・・」
のえる「めっちゃうれしい。あ、手拭かんと
ゴメン」
清羽「だ、大丈夫、これくらい・・・」
清羽の手についた油と塩。
拭いもせず膝の上に引っ込める。
●旧学生寮・アジト・午後
長机に散らばった六枚の紙片。
アジビラを切って作った投票用紙。
四枚に○、二枚に×。
無記名だが個性が表れた筆跡。
メンバーを見渡す志文。
志文「民主的投票の結果や。尊重せな」
戸増、忠臣蔵衣裳に未練の眼差し。
志文、戸増の肩を叩く。
又井、のえるに窺うような視線。
のえる、応えるように唇に笑み。
清羽「鈎さん、あの・・・」
二人の視線の交換に気づく清羽。
鞄から出しかけたナイロン袋を戻す。
人間模様を只々見つめる悠大。
●同・外・午後
殺風景な前庭を歩むのえる。
少し遅れて後を追う悠大。
●大学本館・廊下・午後
とある一室の前で立ち止まるのえる。
掲げられた『百クリ祭準備室』の札。
上品なノック、しずしずと入室。
その様を陰から見ている悠大。
●同・承前
準備室から出てくるのえる。
のえる「お先に失礼します。また明日」
丁寧に会釈してドアを閉める。
廊下を戻るのえる、再びつける悠大。
●メインキャンパス・広場・午後
大講堂前の広場を行き交う学生。
その中央に据えられた大きな台座。
巨大クリスマスツリーの設営中。
目もくれずに歩むのえる。
やおら立ち止まって。
のえる「これ新人訓練か何かですか、先輩」
振り向くのえる、隠れそこなう悠大。
のえる「それとも好意が高じてのストーカー
行為? あ、韻踏んでもた(笑う)」
悠大「たまたまや、たまたま・・・」
のえる「たまたま一時間も廊下で待ちぼうけ
しとったんや」
悠大「・・・・・・」
のえる「おしゃべりな顔」
してやったり顔で歩き出すのえる。
仕方なくついていく悠大。
悠大「・・・キミ、あっちが本命ちゃう」
のえる「アッチ?」
悠大「実行委」
のえる「アハッ、まだ疑ってるんや。トマス
先輩より猜疑心強い人がおるとはねー」
悠大「潜入されてるんはクッコントウの方、
てことないよな」
のえる「無い無い」
悠大「中で何喋っとったん」
のえる「赤いニシン振舞ってたに決まってる
やんか。ウチのおかげでアッチは討ち入り
阻止に全戦力投入予定やで」
悠大「・・・・・・」
のえる「俵星玄蕃のみっともない姿を撮って
ネットに晒したるって息巻いてるわ」
悠大「・・・キミは何がしたいんや」
のえる「?」
悠大「あっちこっち色目・・・」
二人の間を遮るように通る台車。
その上にはオーナメントの箱が満載。
車輪の音が悠大の語尾を掻き消す。
のえる「あっちこっち、何?」
悠大「いや、ええわ・・・」
俯く悠大を不思議そうに見るのえる。
のえる「ユーダイ先輩」
悠大「何や」
のえる「ウチら、同類っぽいな」
●旧学生寮・外・昼
我楽多山を引っくり返す又井。
赤錆びた廃材を細かくより分ける。
いつになく真剣な表情。
●同・アジト・昼
志文に詰め寄る戸増。
戸増「先輩、俺ら三年越しの同志でしょ!
何で俺までハブられなアカンのですか!」
志文「まあ落ち着き。これも安全保障や」
戸増「安全保障て、そんな体制側の言葉」
志文「去年みたいな不戦敗は二度とゴメンや
からな。情報は最小限に留めときたい」
戸増「詳細知ってるんは」
志文「俺と又井だけや」
戸増「ホンマですか」
志文「創設者に誓う」
戸増「誰か後ろで入れ知恵しとる奴とか」
分かりやすく目を逸らす志文。
戸増「志文先輩」
志文「(インターナショナルの口笛)」
戸増の筋肉、無言の圧力。
●ガレージ・夜
又井、丸い遮光眼鏡で溶接作業中。
シャッターが開く音にも気づかない。
手を止めて季節外れの汗を拭う。
傍らに置かれるコンビニ袋。
見下ろして微笑むのえる。
のえる「根詰めすぎちゃう?」
眼鏡のレンズを上げる又井。
のえるの生足をまじまじ見て。
又井「作業場に来る恰好ちゃうで。自慢の脚
に火傷してもええんか」
のえる「先輩が喜ぶかな、思って」
又井「勝手に足フェチにすんな」
コンビニ袋をかき分ける又井。
ほかほかの中華まんが現れた。
又井「気利くやん」
のえる「世話女房みたい?」
又井「すぐそういうこと言う」
かぶりつく又井、断面が赤い。
又井「何やこれ辛っ」
のえる「ハバネロとジョロキアのホットチリ
やって。あったまるやろ」
のえる、コンビニ袋からカルピス。
又井、たまらず一気飲み。
のえる「で、進捗どないですか」
又井「・・・おおむね順調。こいつのせいで
腹壊さんかったらな」(むせながら)
のえる「何事も気合いですよ。ファイト」
又井「他人事か(笑う)」
溶接済みの部品を拾い上げるのえる。
のえる「こっからどうするん」
又井「現場にちょっとずつ運び込む。警戒が
強まるんはまだ先、気づかれる前に仕掛け
終える。敵さんが察した時にはもう手遅れ
って寸法や」
のえる「茹でガエル作戦やね」
又井「ぬるま湯に浸ってる奴らにギャフンと
言わせたるわ」
カッコつけてレンズを下ろす又井。
悪い顔で笑い合う二人。
●旧学生寮・廊下・午前
アジトのドアをノックする悠大。
合言葉の前半を待つも無音。
再度のノックに不安がにじむ。
ドアの向こうで数字錠の回る音。
飛び出してくるのえる。
悠大にぶつかっても詫びもせず。
そのまま廊下を駆け去ってゆく。
茫然と見送る悠大。
一瞬だけ見えたのえるの涙が鮮烈に。
●同・アジト・午前
立ちつくす志文、戸増、又井、清羽。
悠大、気後れしながらも歩み入る。
悠大「・・・何かあったんですか」
志文「やられた」
悠大「え」
志文「手入れや」
アジトを見回す悠大、特に異状なし。
志文「ここやない。現場や」
又井「予定になかった大掃除がカフェテリア
に入りよった。コツコツ仕込んでた仕掛け
が全部パアや・・・」
傍らの椅子を蹴り飛ばす又井。
志文「らしくないぞ、やめとけ」
倒れた椅子を元に戻す悠大。
悠大「もしかして情報が・・・」
戸増「去年の二の舞やな。せやから女なんか
入れんなってあれほど」
悠大「待ってください、鈎さんが?」
戸増「他に誰がおるんや。あのアマが一番の
新参者やないか。あとは皆去年から・・・
いや、もう一人おるな」
悠大「!」(敵意に気づく)
戸増「お前、まさかあのアマと・・・」
清羽「もうやめましょうよ!」
柄にもない叫びに静まり返る一同。
清羽「こんなんしたくて入ったんちゃうねん
・・・僕みたいなヤツでも仲間ができたら
変われる思ってワクワクしてたのに・・・
胸糞悪い内輪揉めはもうたくさんや!」
部屋の片隅に走り寄る清羽。
段ボール箱から布を引っ張り出す。
広げられたのは『ク根闘』の旗。
立てた中指がリースを突き破る図柄。
清羽「何が同志や。こんなもん・・・」
旗を破ろうとするも震える手。
歩み寄って旗を奪い取る戸増。
清羽の胸倉を片手で軽々掴み上げて。
戸増「お前もアイツに誑かされたクチやろ。
デレデレしやがって。俺が見てへんとでも
思ったか。キレたふりしてもな、容疑者の
リストからは・・・」
戸増を後ろから羽交い絞める又井。
戸増「おま、先輩に向かって・・・」
又井「そのくらいにしときませんか。清羽は
白です」
又井の膂力に戸増の手が緩む。
解放されて咳き込む清羽。
又井「それと、人の彼女のこと、悪く言わん
といてくださいね」
啞然とするメンバーたち。
一番ショックを受けたのは清羽。
黙ってアジトから飛び出す。
志文「しっちゃかめっちゃかやな。ここらで
頭冷やした方が良さそうや、俺も含めて」
椅子にドッカリ腰を下ろす志文。
又井を振りほどいて睨む戸増。
盛大な舌打ちと共にドアへ。
志文「追い打ちすんなよ」
戸増「・・・ヤニ補給です」
残された志文、又井、悠大。
●同・外・午前
清羽、前庭にまろび出るように。
小さくなった我楽多山の前。
肩を震わせるのえるの後ろ姿。
声をかけようとして思い止まる清羽。
音を立てないようにその場を去る。
のえるの口元に寄るカメラ。
耐えきれず唇から溢れそうな笑い。
●同・アジト・午前
沈黙を持て余したメンバーたち。
散らかった部屋を片づけ始める悠大。
旗の埃を払ってじっと見つめる。
志文「そのデザインどう思う?」
悠大「こんな時に何を・・・」
志文「三年前、戸増に描かしたんや」
悠大「え」
志文「入団テストの名目でな。前のデザイン
がクソ過ぎたから正直、多少ヘタクソでも
採用するつもりやった。ほんだらこれや。
えらいカッコええモン描いてきよった」
遠い日を懐かしむ表情。
志文「腹も据わっとる。クリスマスへの敵意
も人一倍。まさに期待の星やったな」
悠大「・・・・・・」
悠大、背中をつつかれて振り向く。
又井「悪かったな、狩尾」
悠大「?」
笑いを噛み殺す又井。
又井「さっきのは芝居」
悠大「は?」
又井「仕掛けは別の場所や。カフェテリアを
いくら引っくり返しても何も出えへん」
悠大「それって偽情報・・・」
志文「ホンマの標的は俺も知らん」
悠大「え? えっ?」
志文「聞きにくるヤツがおったらそれっぽい
場所教えといてくれと又井がな」
又井「カフェテリアは説得力ありましたよ。
ダンパ会場ですしね」
悠大、混乱しながらも懸念の色。
悠大「・・・やっぱり鈎さんが?」
志文「ガサ入れよったんは実行委とちゃう。
自治会や」
又井「それに鈎やったら初めから知っとる。
発案者はあの子やからな」
悠大「じゃあ聞きにきた人って・・・」
戸口で微かな音。
一斉に視線を向ける三人。
固まったように立っている戸増。
志文「私物まとめる時間くらいはやるわ」
●メインキャンパス・校門・朝
門の両脇に立つ百クリ祭実行委員。
にこやかにチラシ配布中。
その中に腕章をつけたのえる。
通りかかった悠大と目が合って。
のえる「ぜひ参加してくださいねー。イヴは
ゴスペルイベントもありまーす」
他人行儀な笑顔でチラシ押しつけ。
困惑しながらも受け取る悠大。
●同・中庭・午前
のえる、ベンチで読書中。
膝の横に置かれる缶のお汁粉。
のえる「小豆残るから苦手なんやけど」
のえる、見もせずに。
悠大「コツ教えたろか」
隣に腰を下ろす悠大。
自分の缶をよく振って開ける。
上を向いて缶を口に当て、回す。
読書に集中するのえる。
缶を回し続けながら飲む悠大。
傍から見たらシュールな光景。
悠大、缶のお尻をトントン。
のえる「やっぱアカンやん」
悠大「もうちょっと、あと一粒・・・」
無事飲み終えて小さくガッツポーズ。
気まずい沈黙が訪れる。
悠大「・・・最近、あっちばっかやな」
のえる「準備が佳境やからね」
悠大「こっちの準備は?」
のえる「スイッチに取りかかってる」
悠大「顔出してるんや、又井くんとこ」
のえる「二日に一回」
悠大「あの、さ・・・」
のえる「何?」
悠大「嫌やったら答えんくてええけど」
のえる「せやから何?」
悠大「又井くんと付き合ってんの?」
パタリと閉じられる本。
無言で悠大を見るのえる。
悠大「あ、別にダメとかやなくて・・・」
のえる「誰が言ってるん」
驚くほど無感情な口調。
悠大「自由恋愛は民主主義の根幹やし。まあ
誰と誰が付き合おうが俺は・・・」
のえる「誰が、って聞いてるんやけど」
悠大「・・・又井くんが自分で」
鼻で笑うのえる。
悠大「・・・ちゃうん?」
のえる「告られたこともOKしたこともない
のに。えらい迷惑」
悠大「・・・・・・」
のえる「一回はっきりさせとかなあかんね。
今はまだ早いけど」
悠大「・・・・・・」
のえる「引いた?」
悠大「・・・清羽な」
のえる「ん」
悠大「辞めたで、クッコントウ」
のえる「そう」
悠大「ドライやな」
のえる「だって本人の自由やん」
悠大「せやけど」
のえる「一票入れてくれたんは感謝してる」
悠大「・・・・・・」
のえる「ヨハネ先輩が二次元美少女と出逢え
ますようにって祈っとくわ」
のえる、手を組んで目を閉じる。
悠大「・・・同類って?」
のえる「?」(片目を開けて)
悠大「言うたやん前。キミと俺が同類って」
のえる「ああ、アレか」
やっと表情を崩すのえる。
のえる「錆びてるやろ、先輩も」
悠大が何か言うより早く。
ベンチを離れるのえる。
●同・並木道・午前
大講堂を背にして歩くのえる。
背景にぼんやりと巨大ツリー。
のえる、缶を回しながら汁粉を飲む。
●クリスマス直前のモンタージュ
BGM『もみの木』(ジャズ風)。
飾りつけられてゆくカフェテリア。
聖歌隊(ゴスペル研)の練習風景。
巨大クリスマスツリーの点灯式。
陽キャたちのスケジュール調整。
実行委の警備シミュレーション。
*****
BGM『もみの木』(行進曲風)。
基板をはんだ付けする又井。
星型の板に色を吹き付けるのえる。
標的周辺を偵察する悠大。
アジトでどぶろくに溺れる志文。
壁に貼られた『ク根闘』の旗。
●ガレージ・夜
又井、睡魔に抗えずうつらうつら。
はんだごての先が逸れて図面の上へ。
細い黒煙がたちまち炎に変わる。
●旧学生寮・アジト・午前
飛び込んでくる悠大とのえる。
三脚だけ残して全てこけた椅子。
一脚の上でうなだれている志文。
悠大「又井くんは・・・」
志文、のろのろと顔を上げて。
憔悴した表情で首を横に振る。
のえる、さすがに動揺の色。
●病院・ナースステーション・午後
悠大、看護師と交渉中。
少し離れて見守るのえる。
押し問答の末、戻ってくる悠大。
半分安心、半分失望の表情。
のえるの肩を叩いて先に行く。
●電車・車内・午後
空いた車内に悠大とのえる。
ロングシートに一人分空けて座る。
悠大「人騒がせやな、あいつも」
のえる「・・・・・・」
悠大「ぼやで済んだのに慌てて足折るとか」
のえる「・・・・・・」
悠大「まあ、一週間入院したら寝不足も治る
やろ」
のえる「・・・面会謝絶ちゃうの」
悠大「面会拒絶や、正確には」
悠大の顔を見るのえる。
まるで迷子の少女のよう。
悠大「俺らの前に先客がおったらしい。話を
聞く限りたぶん清羽」
のえる「・・・・・・」
悠大「二人で何話したかは知らんけど、当分
顔も見たないんは確か」
のえる「・・・そう」
悠大「万事休すや。自業自得やけど」
俯くのえる。
悠大の視線、華やかな中吊りへ。
クリスマスディナーショーの広告。
悠大「嗚呼、我らが闘争は虚しくも頓挫す。
世間は知らぬが仏のメリークリスマス」
隣に目をやる悠大。
のえるも中吊り広告を見ている。
悠大「いっそのこと便乗するんも有りやな。
志文先輩誘ってアジト飾りつけて、三人で
パーッと・・・」
のえる「ウチはやる」
悠大「やるって、一人では・・・」
のえる「誰が一人て言った」
ギラギラと燃えるのえるの瞳。
思わず引き込まれる悠大。
のえる「ウチらでクリスマスを錆びさせる」
無言で見つめ合う二人。
乗車してきたお婆さんが間に座る。
●暗がり(現在に戻る)
聞こえてくる聖歌隊の歌声。
紐を取り戻しているのえる。
悠大「いつまで続くんや、これ」
のえる「今、メドレーの折り返し地点」
悠大「うわ、まだまだやん」
のえる「歌聴いてたらええやん」
悠大「だってラテン語知らんし」
のえる「普通に英語や。ていうか、別に歌詞
分からんでも良くない?」
悠大「俺、無理な人。せやから洋楽も聴かれ
へん」
のえる「めんどくさい男やなあ」
悠大「誰かさんには言われたないけどな」
屈託なく笑い合う二人。
悠大「教会の娘やろ。訳して」
のえる「うっ、それは・・・」
悠大「さてはそれも嘘か」
のえる「それより。こういう時に時間が遅く
感じるん、何でか知ってる?」
悠大「あ、ごまかした」
のえる「ゲートがガバガバになるからやで」
悠大「?」
のえる「チコちゃん言うてたもん」
*****
のえる、ゴスペルに合わせて鼻歌。
悠大「ふーん」
のえる「何?」(歌を止めて)
悠大「クリスマスが憎い、ねえ・・・」
のえる「・・・・・・」(口をつぐむ)
悠大「好きなんや、この歌」
のえる「(スルーして)ユーダイ先輩って何で
クッコントウ入ったん」
悠大「また露骨に流す」
のえる「ええから答えて」
悠大「ケーキ」
のえる「?」
悠大「ケーキ屋の息子や。売れ残ったケーキ
食わされすぎてトラウマなった」
悠大をじーっと見据えるのえる。
のえる「嘘やろ」
悠大「一刀両断」
のえる「やっぱり嘘や」
悠大「信じるか信じないかはあなた次第」
のえる「この詐欺師」
悠大「キミと一緒にせんとって」
のえる「何それ、悪口?」
悠大「そっちが先言うたやん」
のえる「・・・ま、えっか」
悠大「?」
のえる「理由はなんでもええわ。この瞬間を
共有できるんやったら」
高まるゴスペル。
紐を握るのえるの手に力。
●広場/暗がり/並木道・夜
三面スプリットスクリーン。
*****
巨大ツリーを背に歌う聖歌隊。
その前に集う大勢の聴衆。
ツリーの電飾は抑えめ。
聖歌隊の持つキャンドルが映える。
荘厳な歌声に聴き入る学生や講師。
友達同士、カップル、家族連れ。
*****
広場に続く並木道。
警戒中の実行委員たち。
一人がウォーキート―キーで通話中。
実行委女C「本部応答願います」
本部(声)「こちら本部。どうぞ」
実行委女C「こちらC班柊木。1855現在
メインアベニュー周辺に異状なし。敵影も
認められず。引き続き警戒に当たります。
どうぞ」
本部(声)「本部了解。風邪ひかないように
あったかくしてください」
通話を終えた実行委C。
隣で足踏みしている同僚。
実行委女D「うー寒さむ。今年こそはマジで
ホワイトクリスマスかもよ」
実行委女C「降ろうが降るまいが私たちには
関係ないけど」
実行委女D「だよね。あの喪男どものせいで
ウチらまで毎年プライベート返上だもん」
曇天を見上げる実行委C。
実行委女C「・・・鈎さん、肝心な日に腹痛
なんてツイてないな」
実行委女D「誰よりも張り切ってたのにね」
実行委女C「終わったらお見舞い行かない?
ほら、例の件もあるし」
実行委女D「だね。でもケーキ持ってくのは
どうだろ?」
実行委女C「あ、確かに・・・」
並木道の先で微かなざわめき。
*****
暗がり。
今にも紐を引きそうなのえる。
悠大の手、無意識にのえるの肩に。
*****
並木道を広場に向かう影。
他の通行人が驚いて道を開ける。
色めきたつ実行委員たち。
忠臣蔵衣裳の志文。
たった一人、陣太鼓を持って。
志文「時は元禄十五年、師走半ばの十四日、
いや、二十四日。百大の夜風を震わせて、
響くはクッコントウの陣太鼓!」
陣太鼓を叩きながら歩み続ける。
実行委女C「至急至急。メインアベニューに
不審者。破壊分子の可能性あり。ただちに
制圧に移る!」
実行委員たち、サスマタを構えて。
怯むことなく近づいてくる志文。
実行委女D「止まれ! これ以上近づいたら
承知しないよ!」
志文「又井、清羽、狩尾、鈎、戸増・・・。
おのおのがた、討ち入りでござる!」
駆け出す志文、迎え撃つ実行委。
*****
並木道での騒ぎをよそに。
ゴスペルはいよいよクライマックス。
キャンドルを高く掲げる聖歌隊。
ツリーの電飾が七色に輝き始める。
*****
悠大の指がのえるの肩に食い込む。
紐を一気に引くのえる。
弾け飛ぶストッパー。
機構内部で無数の歯車が回り出す。
*****
電飾が不気味な錆色に変わる。
歌いながら振り向く聖歌隊。
聴衆からも不穏などよめき。
どこからか重々しい鐘の音。
聴衆E「ツリーが!」
ツリーから緑の葉が落ち始める。
歌うのをやめて距離を取る聖歌隊。
降り積もるイミテーションの葉。
その下から現れたのは錆色の幹。
いや、手がある、足もある。
廃材で造られた巨大な人型だ。
男児F「あ! ろぼっとー」
ジャコメッティが彫ったような巨人。
頭部に戴くのは星ではなく紅い海星。
聴衆、遠巻きに見守り続ける。
蝶番になった巨人の口が開く。
吠え声の代わりに荘厳な鐘の音。
たまらず耳を押さえる聴衆。
*****
ツリーの台座の隠し扉が開く。
飛び出してくるのえると悠大。
のえる、悠大の手を引いて走る。
巨人に圧倒される聴衆を掻き分けて。
並木道に向かって全力で駆け抜ける。
のえる「オーラスや!」
走りながら振り向くのえる。
巨人の頭がパカッと割れる。
後には、天に向かって伸びる筒。
その筒から曇った夜空へ一条の閃光。
真冬の打ち上げ花火。
鼠色の背景に花開いたのは。
リースを突き破るファッ●サイン。
悠大「良かったんか、あの図柄で」
のえる「何で」
悠大「だって裏切り者の・・・」
のえる、真っ赤な頬を緩めて。
のえる「カッコええからええねん」
並木道の先に人だかり。
女子に取り押さえられている志文。
革命者たちの足が鈍りかける。
地面に押しつけられた志文の顔。
同志に向かって不敵に笑う。
志文「あら楽し、思いは晴るる、身は捨つる
・・・」
実行委女C「誰が喋っていいって言った」
さらに強く押さえられる志文。
志文「・・・行け。殉死なんかいらんで」
頷いて走り過ぎるのえる。
ついていくのに必死の悠大。
実行委員たちは逃走に気づかない。
空からチラチラ舞い落ちるもの。
実行委女D「ほら、やっぱ降ってきた」
掌で受ける実行委D。
汚れた氷片が体温で崩れてゆく。
しんしんと降る錆色の雪。
●学生街・夜
普段より温かい喧騒に満ちた通り。
走り続けるのえると悠大。
時折誰かとぶつかりそうになるが。
寛大な笑顔が二人を見送る。
悠大「鈎さん・・・」(ハアハア)
のえる「何や、もうバテたんか。情けないぞ
男子・・・」(ハアハア)
悠大「おめでとう」
のえる「・・・・・」(ハアハア)
悠大「あれは嘘とちゃうやろ、のえる」
悠大の手を握る細い指に力がこもる。
のえる「・・・五時間早いわ」
心なしか増える白い息。
遠くなる二人の背中。
イルミネーションに溶けるように。
了
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