H@CHIMAKI  COMP@NY

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第4話「それは突然に」

―――朝比奈にどう聞けばいいんだ?―――

その日の授業は、ほとんど集中できなかった。昨日の眠気などもとうに忘れていた。
今日の朝見た朝比奈の姿は少し陰りがあったようにも見える。
やっぱり悩んでいるのか?朝比奈も心を入れ替えようと葛藤しているのではないか?
しかし分からない。朝比奈ほどの金持ちのお嬢様が援交するなんて考えられない・・・。
もしかしたら別にわけでもあるのだろうか・・?
俺の疑問は募る一方であった。


今日の練習は、初日ということで発声練習と筋トレ(部長曰く「演劇は体力だ!」とのこと)だけだった。
演劇部は、全員音楽室で合唱部と一緒に「あー」とか「いー」とか叫んだり腹筋やら腕立てやらを二時間やってその場で解散した。
演劇部後輩と合唱部は、早々に引き上げてしまったので周りに残っているのは、俺と舞と朝比奈だけになった。
舞は、明日のトレーニングメニューを考えるために準備室に篭り、机に向っている。結局後片付けは、俺と朝比奈ですることになってしまった。

後片付けと言っても、机を戻したり掃除をしたりするだけだが。
普段から喋らない俺達は、お互い無言のまま黙々と作業を続けていた。
この非常に気まずい雰囲気を打破するための方法を模索していると意外にも朝比奈の方からく口火を切ってくれた。
「ねぇ、瀬戸内。朝言ってたことなんだけど・・・」
「えっ?」
不意をつかれ俺は少し動揺する。
それに対して朝比奈の声は、落ち着いていて普段とは想像もつかないくらいにおしとやかだ。言っちゃ悪いが、見ようによっては嵐の前の静けさを感じる。
「ねぇ。あの時、何を言おうとしてたの・・・?」
俺は、机を運ぶ手を止めていた。同時に朝比奈も掃除の手を止める。
「えーとだな・・。その、昨日の夜のことなんだけど・・・」
言葉一つ一つを紡ぐたびに罪悪感が募る気がする・・・。
こうなったら覚悟を決めるしかない!
「朝比奈!お前さ!」

バタン!ドンガラガッシャーン!

やけにコミカルな音を立てて教壇脇の音楽準備室の戸が開かれた。
音に驚き目をやると舞が床に這いつくばっていて、棚からドサドサと物が落ちてきているのが見えた。
「は、あははは・・・。どうも・・・」
こいつ・・・聞いてやがったな・・・。

そのあとは言うまでも無く、さらに気まずい雰囲気になって遅れてた作業のペースを速めた。ものの十分ほどで後片付けを終えて舞と朝比奈を残し、俺は一足先に帰宅しようと早足で昇降口へ向った。

腕時計に目をやると針は6時半ちょうどを示していた。たいして時間も経っていなかったことに俺は少し驚き、同時に溜息をついた。
またタイミングを逃してしまった・・・。これはある意味、告白する時よりもタイミングを見計らう必要がある・・・。
「はぁ」
もう一度溜息をついておいて下駄箱から靴を取り出しスリッパを脱いで履き替えようとしていた時だった。
「待って!瀬戸内!」
突然の声に振り返ると肩で息をする朝比奈の姿が後ろにあった。
「ど、どうしたんだ・・?」
俺は、言葉に詰まる。
朝比奈は、俺と目を合わそうとせずに視線をあちらこちらに向けながら。一瞬だけ俺と目を合わせると意外なことを口走った。
「さっきの続き・・・まだ聞いてないから。その・・・」

「一緒に帰らない?・・・」

俺の思考回路はショート寸前だった。



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