H@CHIMAKI  COMP@NY

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第7話「欠乏者の死」



小さな生徒指導室に俺の声が響いた。

「いいか?東、もう一度聞くぞ?食費を盗んだのは西なのか?」

木でできた机をはさんで向かい合ってるのは、生徒指導の先生だ。


ことの始まりは朝だった。

1班の食費がなくなった。と、3班に聞き込みに先生が来た。
そこにタイミング悪く、紅子が1班の食費が鞄の中に入っていた、と持ってきた。

なぜだ?紅子はそんなことしない。
それは、俺が一番よく分かっている。

「失礼します。」と、沖 洋子が入ってきた。
1班の班長。

「・・・・。ここからは生徒同士で解決してくれ・・・・。」
と、いい加減な言葉を残して先生は、去っていった。

いなくなると同時に沖が不気味な笑みを浮かべた。

「あらぁ?3班には泥棒がいるみたいね?」
「沖・・・・。てめぇ・・・。」
拳に力が入る。
「まぁ。私の心は広いからねぇ。許してるわよぉ。でもぉ・・・・。」
「なんだ・・・・。」
「何も知らない。他の1班の子たちは、どうするでしょうねぇ?」
ニヤリと笑う沖。
「西さんも、今頃は罪を償おうと・・・。」
そういって、右手の指で左手の手首を切るマネをして見せた・・・。

嫌な予感が、頭をよぎる。

「くそぉ!!!」
沖の顔面を一発殴ると俺は一目散に1組の教室へ走った。

まだいるはずだ。

欠乏者は比較的、自殺が多い。
どんな欠乏者でも死ぬとき、最後に抱く感情は何だと思う?と、聞かれたことがある。
「怒」
ソイツはそう呟いた。
それは、自分をこんな心にした周りへの怒りと。
そうなった自分への怒りだと。
ソイツは言った。

そんなことを言ったソイツは数日前に死んだ。

数日前に新聞で見た、欠乏者の集団自殺事件。


「くそったれ・・・・。」

乱暴に1組の戸を開けると窓際に向って血が点々と落ちていた。
机が散乱していた。
怒の感情がない紅子は、最後に何を思うのだろう?

ソイツは言った「どんな欠乏者でも」。


窓際に座って肢体をだらりと伸ばしている紅子が。そこにはいた。

傷だらけで。右手にはカッターが握られている。

「紅子・・・・・。」

紅子は糸を切られた操り人形のようにそのカッターを左手首に持っていく。

「紅子!!」
そういって俺は駆け寄りカッターを奪った。

「千・・・ちゃん・・・?」
「バカ!!!死ぬな!!!」

ひどく虚ろな目をしていた・・・。しかし・・・・。

かすかに顔には笑みが浮かぶ・・・。

こんなときでも・・・・感情欠乏者は・・・。

「へへ・・・。ちょっと痛かったよ・・・・。」

ちょっとじゃないだろ?

口の端からは血を流し・・・。
顔と腕は痣だらけ・・・・・。
衣服はカッターで無数に切られて血が出ている。

「死ぬなよ・・・。ちくしょう・・・・・。」

「ちくしょおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」

俺は持っていたカッターで自分の左腕を切りつけた。
深く。深く。

血が飛び散った。紅い。紅い血が。

これは紅子を守れなかった自分への戒めと。



黒い炎のような自分への怒り。









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