音楽雑記帳+ クラシック・ジャズ・吹奏楽

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bunakishike

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2005年02月06日
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カテゴリ: クラシック音楽




 曲はショパンの『24の前奏曲』全曲とムソルグスキーの『展覧会の絵』というヘビーなプログラム。午後4時という、変則的な時間に始まりました。帰りの時間の関係でしょうか。そういえば、ホロビッツも確か4時頃の開演時間だったように記憶しています。もっとも、彼の場合は、別な理由(食事をゆっくりと、とるため)からだったと思いますが。。

 ショパンの前奏曲集の第1曲目は、通常だと結構速いテンポで始まるんですが、曲を慈しむ様に遅いテンポで1曲目が演奏されました。agitatoという表情記号が付されているんですが、まったく意表をつく解釈でした。他の曲でも何曲か思いがけない発見をするような仕掛けがあり、帰ってからCDを聞いてチェックしてしまいました。他の人の演奏が聴きたくなると言うことは、結構いろんなことをしているということで、普段はあまり無いんですが、こういうことがあると嬉しくなってしまいます。

 曲はほとんどアタッカで繋がれ、全体的にテンポが遅めで、遅い曲の場合は1曲目で感じたことがそのまま当てはまるような感じがしました。彼女はすごく若い筈ですが、内面的な成熟が感じられました。打弦はあまり強くないというか、女流としては普通でしょうが、無理に強い音を出そうとしていないところが、見識だと思います。全般的には遅い曲の味わいがとてもあったと思います。かつて評論家の吉田秀和氏がよく言っていた『ポエジー』という言葉を、演奏中に思い出してしまいました。

 第4曲のLargo、第13曲のLentなどが得に良かったと思います。第4曲はジェリー・マリガンが『ナイト・ライツ』という名前でジャズ化していますが、それを思い出させるような、しみじみとしたいい味を出していました。他の人の演奏では、伴奏の8分音符が結構うるさかったりするもんですが、それはありませんでした。全体的に、テンポにもう少しメリハリがあれば、もっと良かったと思います。
ホールと楽器の関係もあるかとは思いますが、音の切れはさほどあるとは感じられませんでした。

 休息を挟んでムソルグスキーの組曲『展覧会の絵』。この曲では前の曲よりはかなりダイナミックスを意識した演奏だったと思います。中庸のテンポでプロムナードが始まりました。最初の6小節が2回繰り返されますが、最初の6小節を強音でひき、その後の6小節を弱くしていました。このような解釈は初めて聞きました。
ここでも比較的遅い曲が、なかなか味わい深かったと思います。牛車などは普段結構おどろおどろしい感じで引かれることが多いと思いますが、そういうところが全くなく、意表をつかれました。反面、原曲の持つ荒々しさ、諧謔性などは希薄というか、まったく視野に入っていないような感じでした。テクニック的には、非常に安定していましたが、強音を意識するあまりか、ミスタッチが数回あったのが残念でした。

とても頭の良いピアニストだと思います。自分の領域をわきまえて、それを最大限に生かそうとしていることがよく分かりました。今後、もう少し打弦が強くなり、曲にメリハリがつくようになると、さらに、個性的なピアニストになっていくような気がします。個人的には、今の彼女ならグリーグの叙情小曲集などを弾けば、壷にはまりそうな気がします。

上原彩子 ピアノリサイタル

1.ショパン 24の前奏曲 全曲
2.ムソルグスキー 組曲『展覧会の絵』
3.アンコール (曲名不明)
4.アンコール (曲名不明)

2005年2月5日(土)  盛岡市民文化ホール

1階席8列31番で鑑賞

上原彩子オフィシャルページ

上原彩子『チャイコフスキー作品集』 今のところこれが唯一のリリースの様です。
チャイコフスキー:グランド・ソナタ
ジェリー・マリガン 『ナイト・ライツ』
表題曲と原曲を聴き比べてみるのも一興かと思います。夜のしじまを思わせるような、しみじみとした演奏です。
ジェリー・マリガン/ナイト・ライツ







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Last updated  2007年03月03日 23時38分27秒
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