音楽雑記帳+ クラシック・ジャズ・吹奏楽

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bunakishike

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2024年09月13日
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カテゴリ: クラシック音楽

以前BISから 武満徹のギター作品集 をリリースしていたスエーデンのギタリスト、ヤコブ・ケッレルマンが、今度は細川俊夫のギターの作品集をリリースした。
ギター独奏曲とソプラノとのデュオ、それに弦楽合奏との曲という組み合わせ。
「目覚め」は弦楽と打楽器が加わる15分ほどの曲で、「ヴォヤージュ」(1977-)というソリストとアンサンブルまたはオーケストラのための協奏曲のシリーズの1曲。
ソリストが人間、オーケストラが人間を包み込む宇宙、自然、世界を象徴しているという。
「目覚めは」シリーズの第9作目で、作曲者によるとギターを蓮の花に、弦楽オーケストラを水(池)に例えている。
具体的には、
『弦楽器が持続する音は水面の振動を表し、低音域は水中の世界を、さらに低い音域は池の底の泥の世界を表している。
一方持続音よりも高い音域は空の世界を表している。

この作曲者のコメントを理解すると、この曲を深く理解できそうだ。
弦の痙攣しているようなトレモロやグリッサンドの鮮烈な響きが、聴き手の心にグサッと突き刺さるようだ。
エンディングのハープやベル、弦の上昇音型のグリッサンドなどは上に伸びていきたいという蓮の意志を表したものだろうか。
12の日本民謡からなる「日本の歌」はケッレルマンの委嘱作で、「さくら」(2004)以外は2022年に作曲された。
12ヶ月にふさわしい、非常によく知られた日本の歌を選んだという。
殆どがワンコーラスか2コーラスで、原曲にあまり手を加えていない。
聴いていると、心がじんわりと暖かくなってくるような編曲が多い。
「さくら」は歌と言っても声を出して歌うのには相応しくない。
音数が少なく、テンポが極端に遅い。
そこから原曲の日本人でもわからなかった根源的な魅力が伝わってくる。
2022年に作曲された残りの11曲は「さくら」のような厳しい音楽ではないが、決して甘くならないところが、いかにも細川らしい。

「山寺の和尚さん」は弦をビンビン鳴らしたユーモラスな音楽。
子供の頃に見ただろう夕焼の懐かしい風景を思い出させるような「夕焼け小焼け」、母親の愛情がしみじみと伝わってくる「かあさんの歌」など短いながらも心温まる曲集だ。
最後の「江戸の子守歌」は多少音を変えているのも新鮮だ。
「セレナーデ」(2003)は夜の音楽だそうだ。
ピッチを上げ下げする「ベンド」が使われていて、日本的な情緒を感じさせる。

第2楽章「夢路」は柔らかなサウンドだが、タイトルのような甘美なものではない。
ソプラノとギターのための組曲が2曲取り上げられている。
「2つの日本民謡」(2003)は、音数の少ない、間をいかしたもので、実に日本的な響きがする。
特にピッチを上げ下げする「ベンド」が使われているのが効果的だ。
イルゼ・エーレンスは日本人的な発声で、美しい日本語と相まって、全く違和感がない。
「恋歌I」の各楽章のギターの導入部は、3つの古代短歌(日本の31音節の詩)を歌詞として使用しており、細川の音楽の基本的な特徴を凝縮した形で示している。
声明から影響を受けていると作曲者自身が述べている。
通常のクラシックとは全く違う、細川独自の音楽で、馴染むまでには時間がかかりそうだ。
なお、ブックレットの作曲者による詳細な解説が大変参考になる。


ヤコブ・ケッレルマン:目覚め~細川俊夫:ギター作品集
(BIS BIS2745)24bit96kHz Flac


1.2つの日本民謡~ソプラノとギターのための(2003)
 黒田節
 五木の子守唄
3.セレナーデ~ギターのための(2003)
 月光(つきひかり)のもとで
 夢路
5.恋歌I~ソプラノとギターのための(1986)
 秋の田の
 君が行く
 由良の門を
8.旅 IX「目覚め」~ギター、弦楽、打楽器のための(2007)
9.《日本の歌》12の日本民謡集~ギター独奏のための編曲作品(2004*/2022)
 さくら(4月)*
 春の小川(5月)
 通りゃんせ(6月)
 ふるさと(7月)
 山寺の和尚さん(8月)
 赤とんぼ(9月)
 荒城の月(10月)
 夕焼け小焼け(11月)
 雪の降る街を(12月)
 お正月(1月)
 かあさんの歌(2月)
 江戸の子守唄(3月)

ヤコブ・ケッレルマン(g)
(1)(2)(5)(6)(7)イルゼ・エーレンス(s,track 1,2,5-7)
タリン室内管弦楽団(track 8)
クリスチャン・カールセン(指揮 track8)

録音
2023年9月21&22日/スンドビュベリ教会、ストックホルム(スウェーデン)(track 1-7,9-20)
2023年1月12&13日/ハウス・オブ・ザ・ブラックヘッズ、ホワイトホール、タリン(エストニア)(track8)





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Last updated  2024年09月14日 10時04分22秒
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