第二章



それから一週間が過ぎ、そんな出来事も忘れてしまっていた頃、
アルバイトから戻ると留守番電話にメッセージが入っていました。

「覚えていますか、Bです。
明日お昼から映画に行くから君もルームメイトと
一緒に来ませんか?ディナーも僕達がご馳走します。」

先週のパーティで会った青い目金髪のBさんからだった。

その日は歯医者の予約があったので、一応断りの電話を入れようと
電話をかけた。

そしたら電話に出たのはBさんではなくて、あの茶髪のAさん。
ただでさえ下手だった英語がしどろもどろになっていたら、

「明日君も映画に行くの?僕も行くんだけど君達を迎えに行く前に
Bに君に電話するように伝えるよ。」

「ハイッ、じゃあ明日会いましょう!(^◇^)」

電話を切った私は明日の歯医者の予約の方に断りの電話を
入れた。

土曜の朝、青い目のBさんから
私とルームメイトSちゃんの住むアパートの前迄
迎えに来ると電話があった。

その日の予定をBさんは電話で説明をしてくれた。
お昼からビーチに行って、その後食事をして
映画を見る計画だから、水着の用意をして来いと言う。

それを聞いて私は、

「ビーチ?
ビーチに行くの?」

何が嫌いって私はビーチに行くのが大嫌いだった(今も嫌い)。
ハワイに住んでそれは変だと思うかもしれないけど
私が留学先にハワイを選んだ理由は、
日本に近いアメリカがハワイだったから。
マリンスポーツが好きだという訳ではなかった。

「私、日焼けするのが苦手だから映画の時間にどこかで
待ち合わせしてもいいかしら?」

Bさんは、
「僕達はウォーター・スキーのボートを予約してあるんだ。
君は見てればいいよ。だから一緒に行こうよ。」

ウォーター・スキー?
とんでもないと思った。
第一、私はかなずち。
恥ずかしながら浮き輪無しでは海には入れない。

でもとりあえず、見るだけなら…、それに
Aさんも来る事だし仕方なく行く事にした。
カバンには待っている間に読む本を詰めた。

ルームメイトのSはおおはしゃぎ。
彼女はダイビングやビーチが大好きで、肌も小麦色だ。

待ち合わせに現れた青い目のBさんと
やわらかな茶髪のAさん。
Aさんは昼間見ると又さらに素敵だった。

海に着いてボートが来るまで時間があったから
泳ごうという話になった。
もちろん私はお断り。
浜辺の木陰でさぁ本でも読もう!

Aさんが私の方へ歩いて来て、
「ハワイ市場ちゃんは一緒に泳がないの?」
(英語で、日本語はわからない人達)

「ごめんなさい。私、泳げないのよ。」

「海に囲まれた国に住んでいたのに泳げないの?
僕なんて18歳まで海を見たことなかったよ。」

「えっ今おいくつなんですか?」

「22歳」

ひぇ~~~若い。(もちろん年下)
26、7歳位に見えたのに。

驚いたのはそればかりでない。
“泳ぎ方を教えてあげる”と言われて
海に引っ張られたと思ったら、いきなり真剣な顔で叱られた。

「君さ~海に来たのにどうしてお化粧をしてきたの?
そんなにマスカラがついていちゃ目が痛くて
泳げないだろう?
いますぐ更衣室で顔を洗っておいで。
レッスンはそれからだ!」

(〇o〇;) きょわぁ~い!

彼の顔は激まじめだった。
「ほらっ、僕のゴーグルを貸してあげるから
これをつけてごらん、水が目にしみないよ。」

その後は涙涙のスパルタレッスン。
(T_T)  (T_T)  (T_T)

Aさんがかっこいいなんて思った気持ちはいずこへ。
あげくの果てにはするつもりのなかった
水上スキーにも強引に君なら出来る!と
海に放り込まれた。 

おぼれたら助けてあげるから大丈夫だよ!
「You can do it! You can do it!」
Aさんがポートの上から叫ぶ。

今でもその時の写真が残っている。
生涯忘れられない、「かなづちの水上スキー初体験」だ。

ボートが走り出す。
ものスゴイスピードと振動を体で感じた。

「助けて~!!怖い~!!」
大きな声で何度も泣きそうになって叫んだ。

浮き輪のついたベストを着けていたけど
それでも初めての大海原はとても怖かった。

でも元々は運動神経の良い私。
気がついたら、一度でスイっと立ち上がり、
叫びながら海の上を滑っていた。

何でも一回目で立てる人はそういないらしい♪
(^○^)

先ほどのレッスンが効いたのかなんとなく泳げる
ようになったような気もする。

今まで必死に日に焼けず、色白を守った私の
肌は無残にも小麦色になってしまった。
でも楽しかった!
それ以来あんなに嫌いだったマリンスポーツも
水上スキーだけは好きになりました。
ありがとうAさん。

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