バックパッカーの旅Ⅱ(欧州~北アフリカ~欧州~日本)

バックパッカーの旅Ⅱ(欧州~北アフリカ~欧州~日本)

カサブランカとカスバの女



  長い間、列に並んでいると、荷物が肩に食い込んでくる。
 地元の人だろうか、大きな荷物をいくつも抱えて、列に割り込んできたり、我先に税関を少しでも早く出ようと誰も落ち着きがない。
 検査はかなり厳しい。
 荷物をエックス線にかける。
 それが済むと、今度は何人かの係官の手で、荷物を全てチェックしていく。

  しかし、それも現地の人達だけだという事でホッとする。
 我々旅行者はごく簡単なもので、ほとんど調べられず、パスポートのチェックだけで、すんなりと通してくれたではないか。
 なぜ?
 それにしても、下船から税関を通過するのに30分以上もかかってしまっている。
 最後のチェックを済ませると、客引きが早速寄ってきた。

       客引き「カサブランカへ行くのか?」
       俺  「NO!今日はここで泊まるさ。」
       客引き「安い宿を知ってるよ。」

  ひつこく英語を駆使して話し掛けてくる。
 日本語も少し心得ていて、「コンニチワ!」と、陽気に纏わりついてくるのには参ってしまった。
 カサブランカへ行く列車のチケットも売っているようだ。
 客引きは映画で有名になったカサブランカを、旅行者が多く訪れてくる事を知っている。
 カサブランカはモロッコにとって貴重な観光地なのだ。
 まず、マネーチェンジを済ませた。
       US20$≒88.30ドラハム(1ドラハム≒60円)

       客引き「1ドラハムは60円だ。」
       俺  「フランスフランと同じだな。」
       客引き「ホテルが良いか、ペンションが良いかね。」
       俺  「ペンションが良いな。」
       客引き「シャワーはいるか?」
       俺  「いらねーな。」

  ユーレイルパスを早く使わないと勿体無いので、あまり長くモロッコでゆっくりする事が出来ない。
 だから、シャワーも要らない。
 その分安くなるからだ。
 客引きのおっさん、ポッケットから何やら紙切れを見せてきた。
 そこには、日本語でこう書かれてあった。

     「このおじさんは、日本人に親切で、いろんな所をガイドしてくれたり、安い宿を紹介してくれます。ガイド料はいくらか必要ですが、それほど高いとは思わない・・・・・。-畠山-」

  ガイドした日本人に書いてもらったもののようだ。

       俺  「安い宿はあるのか?」
       客引き「案内するよ!」
       俺  「俺はあまり金を持っていないぞ!」
       客引き「宿の紹介料は要らない。」

  どうやら、紹介料は宿屋の方から受け取るらしい。

       俺「OK!」

  一応宿の紹介を頼んでみた。建物の外へ出ると列車が停まっているのが見える。

       俺  「あの列車はカサブランカへ行くのか?」
       客引き「ああ、そうだ!お前は学生か?」
       俺  「そうだ。」
       客引き「学生なら、バスの方が良いぞ!」
       俺  「バスでも行けるのか?」
       客引き「列車は7US$だけど、バスだと4US$で行ける。バスステーションはすぐそこだ!」
       俺  「・・・・・・・。」
       客引き「しかし、カサブランカはビルがたくさん建っていて、物価もここより高いぞ!タンジールの方が、土産物を買ったり生活するにはずっと良いぞ!」
       俺  「そうか。」
       客引き「右手の斜面に建ち並んでいるのが、カスバだ。」

  ”カスバ”という言葉は昔、”カサブランカ”と言う映画で聞いた事もあるし、何かの歌の文句でも耳にしたことがあり、何か懐かしい響きをもって聞いている。
 ”カスバの女”のカスバがここにある。

  見ると、白い石で出来た建物が、所せましと山の斜面を埋め尽くしているのが良くわかる。
 左手には近代的な建物がそびえ建ち、空に向かって伸びているのが見える。
 港から街に入った所に、バス・ステーションがある。

       客引き「ここが、バス・ストップだ。」
       俺  「・・・・・。」

  見ると、時刻表が貼り出されてある。
 午前中、5:30が一便。
 午後に数本出てるだけ。
 現地人でごった返していて、ボロボロのバスが何台か停まっていた。

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