風の吹くまま 気の向くまま

風の吹くまま 気の向くまま

篠田真由美

『一角獣の繭』

『アベラシオン』篠田真由美


『聖女の塔』

『すべてのものをひとつの夜が待つ』

『胡蝶の鏡』

『アヴェ・マリア』

 建築探偵のシリーズではありますが、ちょっと番外で、この本は蒼くん自身のお話です。
 過保護すぎる「保護者」たちからちょっと離れて、自身の問題を解決しようとがんばります。

 二十歳も過ぎたのに蒼はいつまでも子どもっぽいと思っていたのですが、この物語で、蒼はとても精神的に揺らぎますが、最後にはかけがえのないものを得ることができ、大人へと成長したような気がしました。
 蒼という名前でなくて、本名でも、違和感がなくなっていました。

 同時にこの物語の中には、さまざまな「母」が現れます。その存在の大きさ。
 これから京介の物語も語られていくのかと思いますが、やはり「母」なり「家族」なりがネックになるのでしょうか。(2004.5.23)


『失楽の街』

 建築探偵桜井京介シリーズの第2部最終章です。
 これはふつうの厚さだったので、約一日で読み終えることができました(はは)。

 インターネットでの犯行声明から始まる事件。ミステリは社会の変化に対応してインターネットの有象無象が取り込まれて、ますます複雑な世界ができてきますね。

 古きよき時代のアパートメントが今回のメインの建築物でした。モデルは同潤会アパートだそうです。といっても私は全然知らないので、この話の中の説明を読む限りは、とてもすてきなコミュニティをつくっていたところだったんだなあと思いました。

 いくらこの世界を憎んでも、壊したいと思っても、自分にとって大事なもの、好きなもの、失いたくないものがある限り、壊さないで、自分を消したりしないで、生きていくことができる。
 最後に神代先生が京介に言う言葉からそんなことを感じました。

 あと、印象に残った文章があるんですが、P286の下段、5行目からの2段落。本が手元にある方は、読んでみてください。
 「生き物としての本能」・・・生きる力をかき立てるような、本物の経験を、子どもたちにさせてあげたいなあ。

 ところで、私も京介と同じで、あれは「じゃま」だと思っちゃいました。

 それにしても一番の驚きは、ラストの京介です。(2004.9.25)


『angels-天使たちの長い夜-』

 蒼くんが出ていますが、建築探偵シリーズとはまた趣を異にしている作品なので、シリーズを読んでいなくても楽しめます。
 前に読んだ、『Ave Maria』よりも以前の、蒼くん高校時代のお話です。

 とある高校が舞台。
 学校に居残っていた生徒たちが、はからずも他殺死体を発見する。そして彼らは自分たちで犯人を見つけようとする。犯人は、生徒たちの中にいる・・・。

 今時の高校生がどんな言動をするのか、実際あまり出会っていないのでわからないので、ここに登場する高校生たちが、ふつうなのか特殊なのかわかりません。が、一種あこがれたくなるような世界にいることは確かです。
 他殺死体の謎もですが、さらに別の謎もあって、なかなか読ませてくれました。
 生徒たちの独白や文章など、よくこれだけ書き分けられるなあと感心でした。

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