風の吹くまま 気の向くまま

風の吹くまま 気の向くまま

エッセイ・対談

『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』北尾トロ

『キン・コン・ガン!』渡辺和博

『人間は考えるFになる』土屋賢二・森博嗣

『人生気のせい人のせい』土屋賢二×三浦勇夫

『先達の御意見』酒井順子

『指揮のおけいこ』岩城宏之

『むかつく二人』三谷幸喜・清水ミチコ

『トリックスターから、空へ』 太田光

『金田一です。』石坂浩二

『若者殺しの時代』堀井憲一郎

『ファンタジーのDNA』荻原規子

『生協の白石さん』

『学校ごっこ』 永 六輔 NHK出版

 前が翻訳物で、活字がぎっしり詰まった本だったので、息抜きがわりにこの本を並行してときどき読んでいました。
 『学校ごっこ』とタイトルにあるように、内容は学校の時間割になっており、教科に合わせていろいろな話があります。

 私が一番受けたのは、最初の国語の時間です。そのなかでも、「仰げば尊し」のエピソードが一番。
 みなさん、「仰げば尊し」は、「卒業式に子どもたちがやる嫌がらせの歌」だそうですよ。相手は誰かというと、もちろん先生です。詳しいことは本にありますが、これだけでも読んで損はないです。
 それから、給食の時間で、「いただきます」「ごちそうさま」を言わないし意味も教えない学校があるというのにびっくり。笛で食べ始め、食べ終わる学級がある。何とも味気ない給食。競争じゃないんだから、と永六輔さんと一緒に文句を言いたくなりました。
 他にも、生物の時間「シャケは森の魚」はなるほどと思ったし、宿題「今日子ちゃんの絵日記」はジ~ンとしたあとにオチがあって、おもしろかったです。

 永六輔さんの絶妙な語り口に、あっという間に読めてしまうエッセイです。


『読むクスリ34 社長を変える魔法』 上前淳一郎  文春文庫

 いろいろな会社の企業努力というか、そこに勤める人たちのエピソードがいい。
 秋田県の鷹巣町役場では、カウンターに一番近い席に課長の席があるという話、公務員もやるときはやってるなあと感心。
 その筋の方からのクレームに対応した支店長が、恫喝されて困っているときに、自分がやった仕事だからとのりこんできてその筋の方に見事なタンカをきったという西京銀行の女性行員さんの話に爽快感。
 カードをなくした人にマニュアル通りに対応したあと、「ところでお客様」と続けて他の銀行などの連絡先を教えてくれたカード会社の女性の話、本当のサービスとはかくあるべし。
 また、シンガポールではボウフラを発生させたら罰金という法律があるという話もあった。清潔を重んじるかの国ならではだが、熱帯ではボウフラは病気のもと。死活問題なのだろう。本気で徹底させたいなら、人々の善意や良心に期待するのはやめて、法律で徹底することもあり得るのだな。
 短いエピソードがたくさん詰まっていて、どれもほっとして勉強になりました。これ知ってる?と話の種にもなりますね。


『イラクの中心で、バカとさけぶ』 橋田信介 アスコム

 橋田さんが、ちょうど銃撃か爆発かに遭遇して、物陰に身を小さくして耳をふさぎながらレポートしている場面を、テレビで見ました。写真を見て、ああこの人だ~と思って買った本です。
 戦争中は会社勤めのカメラマンは現地に入らないそうです(上から止められるから)。戦場に行くのはフリーのカメラマンだけ。
 平和な生活をしているけれど一方では、仕事にならないから「戦争にならないかなー」と考えている橋田さん。それがなければお金にならないのだ。

 そしていざ戦争が始まるとなると、賄賂やら不正な手段を使ってでもイラクに潜入し、戦場を映しだすそのバイタリティ。イラクでの取材の裏側。正義感というごたいそうなものではなく、要は生活のために戦争を取材に行くのだ。

 でもひょうひょうとした文章の中にときどき出てくる、戦争についての自問自答。この戦争には意味があるのか、生みの苦しみが報われることがあるのか、・・・・。
 カメラマンは、ただありのままの姿を映しだすのみ。ただ、橋田さんは「攻撃される地」にいて取材している。爆撃されたビル、負傷した子ども、並んだ棺桶、イラクの人たちの生活・・・。

 フセイン像が倒され、イラクを引き揚げることを決めた橋田さんと鈴木幸男さんは叫ぶ、「世界のバカヤロウ」と。

 橋田さんは、どちらに正義があるとかそんなことは言っていないのですが、イラク戦争は愚かな戦争だけれど、日本も荷担したからには最後まで責任引き受けろよ、その覚悟をしろよ、と。

 白髪の戦場カメラマン。シルバー・アイアン。
 還暦を過ぎてなお戦場に出かけ、生死を分ける現場を取材している橋田さんは、まだまだ活躍されるそうです。(2004.3.1)

(以下2004.5.29記)
 昨夕のニュースで、イラクで日本人記者が二人襲撃され、亡くなったというのを聞いて、橋田さん・・・?と一瞬思ったのですが、今朝になって、橋田信介さんの名前が新聞にあるのをみて、大変ショックでした。

 というのは、この方の姿をイラク取材のテレビでみたり、書いた著書も読んだりして、親しみを覚え、60歳過ぎているのにがんばっているなあと密かに応援していたからです。

 実際にお会いして知っているわけではありませんが、とても悲しいです。著書をぱらぱらと見返しています。

「命なんざー、使うときに、使わなけりゃー、意味がない」

 今頃、天国で、ゆるゆると笑ってらっしゃるのかもしれませんけれど・・・
 それでも・・・すごくすごく、残念です。

 亡くなられた橋田信介さん、小川功太郎さんの、ご冥福をお祈りします。


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