風の吹くまま 気の向くまま

風の吹くまま 気の向くまま

横山秀夫

『第三の時効』

『ルパンの消息』


『臨場』横山英夫

 私は鑑識とか科捜研とか検死官とか監察医とか、そういう理系の(?)警察ものも好きです。
 この本は、倉石という凄腕の検視官が関わる事件を、関わった人物の視点から描いた作品です。『このミステリーがすごい!』2005年版でもランクインしていました。

 検視官というので、理系の学者然とした人物かと思えば全然違って、無頼な反体制者といった風情の検視官。検視官は医者ではなくて刑事なんですね。この人の眼力のすごさに、周囲の人が反感を覚えたり心酔したりして、「終身検視官」「校長」とも呼ばれている。
 ここに収められている短編はどれも人情味あふれ、生きてきた人に対する優しさが感じられました。ほろりとさせられるものが多くありました。

 中で一番よかったのは、「黒星」。
 誰が見ても自殺なのに、「殺し」という倉石。刑事たちも、そのことは百も承知で、倉石の言うのに従って捜査を続けている。その中で表れてくる、死んだ女性の人生に泣けました。なぜ、倉石はわかっているのに間違ったのか。
 終末の、新聞記者と倉石との会話がなんともいえず秀逸でした。落語の「さげ」みたいでした。

 本の表紙カバー、黄色の「KEEP OUT 立ち入り禁止」のテープがあしらってあります。こういうの好きだなあ。(2005.1.29)

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