ひらめ日記

ひらめ日記

私に起きた事件 (2)


日本から研修に来る代理店の人が、英語もドイツ語も出来ないということで、急遽ドイツ語の出来る日本人を探して欲しいと言う要望が来たらしいのです。
仕事内容は研修期間中の通訳と、その後、主なマニュアル等の翻訳ということで、契約期間は1ヶ月のはずでした。

当時私は失業中で、有効な労働許可証を持っていませんでした。
つまり、派遣社員としては働くことが出来なかったのです。
そこで、派遣会社と今の会社で話し合い、今の会社が私を社員として雇うことになりました。

初めて会社の人事の女性から電話が来て、報酬の額を聞いたとき、正直驚きました。
あまりにも少ない金額だったからです。
が、それプラス交通費実費を支給すると言うことでした。
家から会社まではとても遠いので、交通費が出なければこの仕事を引き受けることはなかったと断言できます。

ところが、後になって社長が交通費を払うのは、日本からのお客さんのために運転した距離分だけだと言い出しました。
私はもちろん話が違うと抗議しました。
が、その場に私に電話をかけてきた女性が呼ばれ、彼女も社長の言うとおりだと証言しました。
が、彼女は私の方を一切見ようとせず、嘘をついているのは明らかでした。

その後、会社側は私の契約を延長したいと言ってきましたが、提示された月給の額は、私の失業保険の支給額より少ない額でした。
何もしないで家にいてもらえる金額より、毎日往復2時間かけて通い、8時間働いて得られる金額の方が少ないのでは、モチベーションも上がりません。
折も折り、ハリケーンカタリーナの影響で、ガソリン代も高騰していました。

その金額に難色を示した私に、会社側は交通費一部上乗せ支給と言う妥協案を提案してきました。
それを合わせても、以前の収入に比べたら、本当に情けなくなるような金額でした。
が、「失業しているよりましでしょう」という人事部長の言葉にも一理あったので、契約書にサインしました。

その後、私の契約は何度となく延長されてきました。
一昨年の冬に1年延長された時は、「次回の延長が最後です」と言われました。
つまり、次に延長される時は、無期限の契約がもらえると言うことです。

その契約が切れる3ヶ月ほど前、私は上司に打診をしました。
こちらでは、契約が切れて職を失う場合、契約満了日の3ヶ月前に労働局に申請しなければいけないことになっているためです。
そのしばらく後、その上司と社長が同じ日に立て続けに私のオフィスにやってきて、口頭で無期現の契約をすることを伝えられました。
ちょうど母が結婚式のためドイツ入りしていたので、そのニュースを伝え、その日の晩は彼と三人で乾杯しました。

去年の11月、ようやく件の契約書を提示されました。
が、そこには「契約を無期限に変更、それ以外の条件は今までどおり」としか明記されていなかったのです。
これには正直、戸惑いました。
まず、私が持っている契約書に記載されている仕事内容と、今現在の仕事内容は大幅に変わっています。
それに、私は無期現の契約を結ぶ前には、もう一度月給その他の諸条件を見直すチャンスがあると信じていたのです。

正直、月収の額には全く納得していませんでしたし、ドイツでは毎年自動的に昇給するというシステムはありません。
つまり、この契約書にサインをしたら、自分から転職しない限り、一生この月給で勤めることになるのです。
さらに私の場合、なぜかは分かりませんが、お給料は普通の事務職並みなのですが、待遇が重役並みとでも言いましょうか?
たとえば、他の人のようにタイムカードがありません。
タイムカードがあれば、残業時間が溜まった場合、その分を有給休暇にすることが出来ます。
また、他の人のようにボーナスがありません。
これらのことを新しい契約にサインする前にもう一度はっきりさせたかったのです。
そのため、「このままではサインできません」と告げました。

その後1ヶ月以上、会社側から何も音沙汰がありませんでした。
そして去年のクリスマス前、ようやく提示された新しい契約書は、今年の6月までと言う期限付きでした。
その2ヶ月ほど前には「あなたの仕事には非常に満足している。喜んで無期限の契約を結びたい」と言っていたのに、なぜまた期限付きの契約書なのか?
理解に苦しみました。

そして今年の3月、また3ヶ月前の申告時期が迫ってきたため、再び会社側に契約について打診しました。
私は内心、おそらくは延長されるだろうと思っていました。
日本市場における知名度がようやく高まってきて、問い合わせや受注が順調に増えており、これから益々売り上げが伸びることは明らかだったからです。
ところが、会社側の回答はNOだったのです。

社長としては、日本人を雇うことで、日本での売り上げが飛躍的に伸びると思っていたそうです。
ところが、予想通りの結果にはならなかったため、これ以上日本市場に力を入れることは辞めるということでした。
つまり、事実上日本市場からの撤退です。
そういう理由であれば、確かに日本人である私を雇い続ける意味はありません。
ショックでしたが、受け入れるしかありませんでした。

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