続 貞子の呪いのビデオなみ

続 貞子の呪いのビデオなみ


先日僕の友人、池田君の誕生日だったんで、
彼を連れてお寿司を食いに行きました。
もちろん僕のおごりです。
えらいなあ、僕。
まだ学生なのに僕は池田君に寿司をおごっている。
まあかっぱ寿司ですけどね。
♪かっぱ、かっぱ、かっぱのマークのかっぱ寿司。
全皿100円。お得である。
しかし全皿100円とは言え池田君は食う男である。
遠慮を知らない男である。
以前バーべキューをした時に、
みんなで食べられるようにステーキ肉を2枚買っておいた。
なんというかそれはこのバーベキュー大会ではメインとなるものであり、
みんなの楽しみでもあったのだが、
気が付くと池田君が一人でステーキを焼いて、
一人で2枚のステーキを食っていた。
みんな池田君に文句を言って怒ったけど、
別に池田君は謝ることもなく、
「おいしかったよ」
とさらりと笑顔で答える厚顔さだった。
池田君はとにかくそういう男だ。
大胆で剛直な男だ。
僕が学生で金がないことなどおかまいなし。
こいつは食う。
間違いなく食う。

しかしまあいろいろとお世話になっているので、
彼の誕生日ぐらいはいいかなと思ってのかっぱ寿司のおごりでした。


・・・・・・4000円払うことになりました。
やろう30皿食いやがった。
僕は10皿。
僕は腹六分目。
彼は腹十二分目。
ベルトはずしてやがったな、たしか。

ふつうおごってもらうのに人の3倍食うやつってあんまりいないよなあ。
まあ仕方がない。
遠慮なし、それが池田君だ。

そもそもこの池田君何事に対しても動じない。
仕事をクビになっても、交通事故起こして両足骨折したときも、
「まあしょうがねえよ。なんとかなんだろう」
と実に落ち着いていた。
僕など気が小さいもんで、ちょっとしたことであわあわしてしまいますが、
池田君はさすがです。
大物です。

そんな池田君にも最近彼女が出来ました。
何だか話によるとものすごくかわいいみたいで、
彼女の話するときだけはあの男らしい池田君ではなく、
ゆるゆるでれでれの池田君になっていた。
すごく幸せそうな池田君を見ていると、
何だかこっちも幸せになってくるようで、とてもほほえましい感じでした。
「今度会わせるよ。たぶんたなかの好みだと思うよ」
などとも言ってました。
ウキウキの池田君。
そんな彼を見ていると、これはもういらないのかなと思い、
僕はさみしい気持ちでお気に入りのエロビデオを
そっとかばんの奥にしまいました。
ざんねんです。
今日のために池田君が大好きな及川奈央さんのビデオを
ちゃんと編集して3時間にまとめたものを持ってきていたのに・・・。

しかしお気に入り以外のビデオもありました。
そうです。
あれです。
以前からこの日記を読んでくれている方にはおなじみの
「ヤワラちゃんビデオ」
     と
「ウンコ伝説メモリアル」
です。これはまったくもって僕のエロの守備範囲を大きくそれており、
かなり場外にいってるんで、処分に困っているもんでした。
たぶん池田君の守備範囲でもないとは思いましたが、
ずっとこれを所有していてもかなりなんだと思うので、
それならぜひ池田君の誕生日プレゼントにと思い立ち、
こっそり持ってきていました。
しかしさすがの僕も、幸せそうに自分の彼女のことを話している池田君に、
直接こんな汚らわしいヘンタイものを手渡すのは、
ちょっとムードを壊してしまうようで悪い気がしたんで、
こっそり車の助手席の下にそっとビデオを2本置いてきました。
まあそれはそれであとで見つけてくれて、
「たなかのやつこんなの置いてきやがって~」
と微笑み、楽しく笑ってくれればいいかなあと思っていました。


2週間後。っていうか今日。
そんなことしたこともすっかり忘れておりました。
学校帰り、ふと携帯電話を見ると留守電が入っていました。
池田君からでした。

池田君からの留守番電話の内容。
「おい、お前俺の車の中にへんなビデオ置いてったろう。
それ今日彼女が見つけて『これ何?』って聞かれてたいへんだったんだよ。
お前なんでそんなことすんだよ。(泣きそうな声)
俺と彼女はまだエロい話できる感じじゃねえのに、
ウンコ伝説メモリアルってなんだよ。
なんかすげぇ冷たい目で見られたぞ。
ゼッタイ嫌われた。
あーもう!どうすんだよ。
お前、俺が彼女に嫌われたらお前のせいだからな。
お前のせいだからな」

やっ、やってもうた!!!!!
まさか池田君ではなく彼女があのビデオたちを発見するとは!!!!

電話の池田君はいつもの豪胆な彼ではなく、
大事なものをなくしてしまった子供のように、
泣きだしそうな勢いであわてていた。
または、彼女の買ってきたハーゲンダッツをこっそり食べたのがばれて、
必死で鬼女と化した彼女に言い訳をする僕のように、
ものすごくあわてていた。

僕もさすがに池田君にすまないことをしたと思い、
さっそく彼の携帯に電話を入れました。
池田君はすぐに電話に出て、すぐに僕に対する文句を次々と言ってきました。
なんかかなりエキサイトしていていまいち要領を得なかったんですが、
それでも話を聞くと、ヘンタイビデオを見つけた彼女はかなり引いていたようだったとのこと。
そりゃあそうだろう。
あのビデオのあのパッケージを見て引かない女の子は
そうはいないはずだ。
しかも悪いことに、そのビデオをどうやら池田君の所有のものだと思ってしまったらしいのだ。
池田君は、それはこないだたなかに貰ったものだと必死に彼女に説明したらしいのだが、
何だかあんまり信用されてない感じがするらしいのだ。
「信用されないのはお前の普段の行いが悪いからじゃないのか?」
と僕が余計なことを言うと、
「ふざけんな!!!!!!」
と思いっきり怒鳴られてしまいました。
すいません。
「でも大丈夫だよ、ちゃんと言ったんだろう。自分のじゃないって。
なら大丈夫だよ」
と僕はやさしく諭すようにいいました。
しかし彼はどうにもこうにも大丈夫ではないようで、
「そんなのわかんねえだろう、もし勘違いしてたらどうすんだよ」
と激しく僕に詰め寄ってきました。
僕は言い返す言葉も思い浮かばず、黙ってしまいました。
池田君もかなり困ってしまったようで、黙ってしまいました。
いい歳の男二人がヘンタイエロビデオのことで困り果て、
黙ってしまいました。

どうしよう?

二人して頭を悩ましていると池田君は突然こんなことを言い始めました。
「俺今からお前んとこにメール入れるから、
お前はそれ読んで俺の留守電にいれろ。
俺はその留守電を彼女に聞かす。
よし!それなら信用してもらえる。
すげぇ、俺って頭いい~。
じゃあ今からメール送るから、それをちゃんと読めよ。
分かったか?
なるべく自然にな」

ガチャン。

言うだけ言って、池田君は電話を切ってしまいました。
よく意味が分かりませんでしたが、15分後池田君からメールが来ました。

メールの内容。
「こんにちは、はじめまして、たなかです。
車の助手席の下に変なビデオをおいたのは僕です。
僕が置きました。
誕生日プレゼントに僕の持っているビデオをあげることにしたんです。
誤解を生むようなことしてすいませんでした。
僕が勝手にそのビデオを持ってきてこっそり置いて帰りました。
ごめんなさい」

なんですか、これは?

もしやこれを僕に読めと!?

携帯に電話をかけるとすぐに留守電になりました。
やはり・・・・。

屈辱的な気持ちで読まさせていただきました。

しかも一回読んでしばらく経ったあと、
池田君からまたメールが入りました。

メールの内容。
「なんか読まされてる感じがする。もう一回」

おい!読まされてる感じじゃなくて、実際に読まされてんだよ。
まったく、やってられんよ。
ちょっといらいらしながらも、
もう一回留守電に情けないメッセージを仕方なく入れました。

その後三回ほど池田君からダメだしをいただきました。
ダメだしの内容。
「謝罪の気持ちが感じられない」
「かみすぎ」
「あっ、間違えて消しちゃった。もう一回」

くそっ。
はじめの二つはまあいいとして最後はお前のミスだろう。
お前が謝れ!
なんて思ったが、余計なこと言うとまた大変なことになるといやなので、
じっと我慢の子でした。

あとこのあほらしいメッセージを池田君の彼女が聞くかと思うと
なんか情けなくなるね、ホントに。
あと池田君からオッケイもらった後から思ったことだけど、
謝罪メッセージのところに、
「誕生日プレゼントに僕の持っているビデオをあげることにしたんです」
って節があった。

「僕の持っているビデオ」

僕の持っているビデオ、これを詳しく書くと、
「僕の持っているウンコ伝説メモリアルとヤワラちゃんビデオ」
である。
おい、僕はまだあったことも見たこともない池田君の彼女に、
「たなか=ヘンタイビデオ」
「たなか=ヘンタイ」
という強烈かつ、ダーティーなイメージを焼き付けてしまうことになる。
これはいかんと思ったが、またダメだし食らうのは嫌だったので、
まあいいかなと思い直し、ほっときました。

しかしさっき、池田君から電話が入りました。
ちゃんと誤解が解けたと喜んでおりました。
まあ彼女はちっとも誤解なんぞしてなかったようですが・・・。
僕は池田君に向かってとりあえず、
「よかったねえ、誤解が解けて」
と言っておきました。
すると池田君は泣き出さんばかりの勢いで、
「たなか・・・ありがとな。ほんと・・・よかったよ」
と言いました。
そして、
「彼女がお前に会いたいって」
と言ってきました。
僕はかなりドッキリして、
「あっ、そうなんだ・・・・・。まあ今度ね、時間があったら・・・」
と、なんともあいまいに、ごまかして答えておきました。

はっきりいって僕は池田君の彼女に会いたくない。
だって池田君の彼女は僕のことを
「ヘンタイのたなか」
と認識しているからだ。

・・・そんな人とはさすがの僕も、はずかしくて会えません。
だって僕は、ヘンタイじゃないんですから。


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