受診ごとの血圧変動が大きい高齢者は、認知機能が低下しており、MRIで海馬の萎縮や皮質梗塞が多いという臨床研究である。
本試験はPROSPER試験という、高齢者に対するプラバスタチンの心血管合併症予防効果を検討した試験の後付解析として行われたものである。
日常、高齢者の高血圧患者を診療する場合、受診ごとに血圧が変動したり、家庭血圧でも測定ごとの血圧変動が大きい症例はよく見かけるが、多くはすでに冠動脈疾患、脳血管障害などの動脈硬化性合併症を併発しているという印象をもっている臨床医は多いと思う。
実際そのことはいくつかの観察研究でも確認されている。しかし、本試験では認知機能の障害を示唆し、かつ海馬というアルツハイマー型認知症と関連の深い部位の萎縮を認めたという点で興味深い。
本試験は、血圧変動が、血管障害や認知機能障害の、原因であるのかあるいは結果であるのかを示すものではない。
本試験で示された認知機能マーカやMRIは、3.2年間の試験終了時のデータであり、追跡前後の比較は示していない。そのため血圧変動が認知機能障害を低下させたのか、あるいは血管障害や海馬病変の結果として血圧変動が大きいのかは確認できない。
高齢者では収縮期血圧の絶対値が大きいほど、また脈圧が大きいほど予後が不良であることはすでに知られているが、本試験はさらに受診ごとの血圧変動が大きいことも予後不良のサインであることを示唆している。
また本試験には明記されていないが、多くは降圧薬を服用していると思われる。降圧薬自体にも血圧変動、すなわち降圧効果の安定性が異なるという報告もみられる。Ca拮抗薬やクロルタリドンなどの非ループ利尿薬などは受診ごとの血圧変動が少なく、ARBやβ遮断薬などは血圧変動が多いという3)。
高齢者高血圧を診療する場合、安定した降圧が得られるような降圧薬を選択することが重要である。
コメント:高血圧、高血糖などは動脈硬化のリスクファクターであることは周知の通りですが、血圧の変動が大きいと認知機能が低下している高齢者が多いという臨床研究です。
またMRIで海馬の萎縮や皮質梗塞も多いといいます。高齢者の血圧の変動は、脈圧の大きさと共に、注意すべき点かもしれません。血糖もHbA1c値だけでなく、血糖の変動に関して動脈硬化の進行に関与する可能性は指摘されており、変動はよくないことと記憶しておきたいです。
ブログの更新を2ヶ月もしていなかったのですが、訪問して頂いている方の数は変わらないですね。ありがとうございます。個人的に多忙でしたが、やっと少し落ち着いたので、久しぶりの更新です。
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