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久恒啓一

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本木雅弘主演の映画「おくりびと」を観た。本木は、NHK大河ドラマで徳川慶喜役を見事に演じていた役者である。今回は難しいテーマをよくこなした好演だった。

「おくりびと」とは、聞きなれい言葉だが、遺体を棺に納める納棺師という仕事をテーマとした異色の感動を与える作品である。死という現実を納棺師という目から扱った作品だが、これは主役である本木が100数年前から温めてテーマである。第三者が初対面の遺体を抱き、その旅立ちを手伝う行為、無言の関係が映画的であると思っていた本木は、自分が見た光景が、洗練された所作で非常に美しく、茶の作法のようでもあり、作曲家、指揮者のように、場の一体感を生み出すアートであると感じる。この役者の感受性は将来の大成を予感させる。

遺族や近親者が集まって故人をしのぶ中、遺体を清め、死装束を着せ、剃髪や化粧を施し、棺に納めるのが納棺師の仕事であるが、実際にそういう場面に遭遇したことはない。そのような仕事があることに驚いたが、実に奥の深い仕事だ。

主人公の妻役の広末涼子は、はしゃぎすぎの印象だが、夫の仕事の中身を知り「汚らわしい」という言葉を発するところは、よかった。

納棺師の親方役の山崎努の圧倒的な存在感を相変わらずで、この映画のテーマの奥行きを感じさせる名演技である。こういう役者はなかなかいない。

助演の笹野高史もいい味を出している。鶴乃湯で一風呂浴びて詰将棋をしているこの男は、焼き場に勤務している人だった。遺体を毎日焼く仕事をしている彼は、「ここは門です。全ての人が通る門です。」と心に沁みる言葉を発する。

滝田洋二郎監督は、長い静寂の中から多様な感動をもたらす納棺について「生前の一番輝いていた頃を思い起こさせながら、それぞれが生きて来たさまざまな感情を瞬時に噴出させるというか、それを演出する納棺師の仕事ってすごい職業だなと思いました」と語っている。

まだ文字がなかった時代に自分の思いを石に託すという石文という手紙のスタイルも、親子の感情をあらわすのに用いていたが、これも小道具としては効いていた。

音楽を担当した久石譲は、全編をチェロの演奏でまとめるが、チェロ奏者の芸術(アート)も、納棺師の技術(アート)も、死者を蘇らせるという点において、本質は同じである。



いい映画だった。





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Last updated  2008/09/24 11:45:31 AM
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