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みなさん、こんばんは。ミャンマーで日本人ジャーナリストが拘束されていますね。今日は乾石智子さんのファンタジー小説を紹介します。イスランの白琥珀乾石智子東京創元社《オーリエラントシリーズ》では西のコンスル帝国がメインパートの舞台だった。今回は、《紐結びの魔道師シリーズ》でおっそろしい魔道師を送り込む悪役パートを担い、他シリーズでもサイドストーリーとして登場していた東のイスリル帝国が物語の舞台になる。 イスリル帝国は優れた魔道師にして国母イスランとその子供達により統治されていた。イスランに大魔道師になると見込まれたヴュルナイは、軍を率いてコンスル軍を相手に幾多の戦いを勝利に導いた。ここまでなら“めでたしめでたし”で終わる。しかし読者はオーヴァイディンと名前を変えて生きるヴュルナイの変わり果てた姿を冒頭で見せられる。落差が起こった所以を、一代の名君のもとで栄えていた【過去】と、暗君によって治められ賄賂が横行し政治機構が機能していない【現在】の、二つの時系列を交錯させながら語る、オーソドックスなスタイルが取られている。 大魔道師の挫折と再生が本編のテーマだ。能力としては過去においてピークに達しているので、メインは精神の成長になる。そうはいっても、ビルドゥングスロマンというには、主人公が年を取りすぎている。魔道師なので長生きであり、見た目は中年でも言うを憚られる年齢である。いい年した男がうじうじっていうのもね…という不満は、乾石作品の特徴である、竹を割ったような性格ではっきりしている女性キャラクターで相殺される。主人公ヴュルナイが過去に囚われてうじうじするのはストーリ―上必要な過程なので仕方ないが、その分無実の罪で捕らえられた若い女族長ハルファリラや宮崎駿アニメに登場しそうな双子の魔女など、自らに課せられた運命を受け容れていく女性達の強さが際立つ。 さて彼等と相対する悪役なのだが、悪役としての記号的な役割に留まっている。深みを持たせようとしたのかもしれないが、過去の人物がとってつけたように出てくるのも違和感があった。そもそも主人公が最強の魔道師なので、敵がどれほど凄い技を持っていても、主人公が勝つ結末が見えてしまうから弱い印象なのかもしれない。 「コンスルとイスランって何?」と思った人は、どれでもいいので本を開いてみると、地図と年表が載っている。既刊書がどの時代の事を書いているかも書かれていて、わかりやすい。イスランの白琥珀 [ 乾石 智子 ]楽天ブックス
May 1, 2021
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みなさん、こんばんは。マスク配布始まっちゃうですんかね。本当に要らないな。今日は皆さんがよく知る名作に似ている作品を紹介します。クラリネット症候群乾くるみ徳間文庫 目覚めた時に虫になっていたのは、『変身』のグレゴール・ザムザ。では、グレゴール・ザムザが虫に体を乗っ取られていて、尚かつ虫の意識が頭に流れ込んできたら?ゴキブリを見て「おいしそうだ」と思った虫が、人間の手でゴキブリをぎゅっとつかんだら?うわ、考えただけで気持ち悪い~。『マリオネット症候群』は、虫ではないが、誰かに自分の体を乗っ取られた女性の物語。 どうも乗っ取った相手が男性らしい、という滑り出しは、彼の反応が映画『転校生』みたいだなぁ、とクスクス笑えた。実はこの後、深刻な真相が段々わかってくるのだが、それでもクスクス笑いは止まらない。暗号系の話が好きならば、もう一つの中編『クラリネット症候群』も楽しめるだろう。 こちらは書き下ろしで、『クラリネットをこわしちゃった』の歌みたいに、特定の文字が消えて行く現実に遭遇する高校生の話。途中文字が消えて、読みづらい所もあるが、こちらもそこそこ笑える。あまりにキツいブラックジョークばかりだと「うーん、この状況って笑っていいの?」と悩まされるが、本作ではその心配なし。【中古】 クラリネット症候群 / 乾 くるみ / 徳間書店 [文庫]【宅配便出荷】もったいない本舗 おまとめ店
April 21, 2020
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みなさん、こんばんは。とりあえず時差出勤の一週間が過ぎました。座って帰れるのがいいです。さて、今日は十二国記最新作の第三巻を紹介します。白銀の墟 玄の月 第三巻 十二国記小野不由美新潮文庫 既出のレビューを読んで頂くとわかるように、全四巻中本篇を読むと、「やっと!!」という読者の安堵のため息が聴こえる。中には号泣している人も(そんなにか(驚))。そうなのだ。生きていたのだ、あの人が。まあ白雉がいるからね。あの人が誰かは最低限ネタバレしないということで。そうか小野主上、最後に読者を救うのか。本篇にしてようやく、偽王として立った阿選の心情が描かれる。皆が知りたいのは“なぜ”やったのかという理由。 理由の一つは、目に見えないが最も尊ばれる、天意という厄介な存在にある。阿選も王になりたい気持ちはあったが、プライドが邪魔して驍宗の昇山を許す。そんな彼に向って「もしお前が昇山していたら、泰麒は額ずいていたのではないか」と言う者がおり、疑念が兆す。確かに天が全てを決めるのならば、これほどまでに荒れている国を放置していることが天意になる。そして天意を民に伝える抜群のアピール力を持つ泰麒は、角を折られて目に見えるわかりやすいアピールが出来ない。八方塞がりである。阿選は自分でなく驍宗を選んだ天に挑んでいるのかもしれない。 相変わらず久々に会う面々には「大きくなって」と必ず言われる泰麒。以前はどれだけマスコット状態だったかが窺い知れる。白銀の墟 玄の月 第三巻 十二国記 (新潮文庫) [ 小野 不由美 ]楽天ブックス
March 7, 2020
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みなさん、こんばんは。昨年18年ぶりに小野不由美さんの十二国記シリーズが刊行されました。本巻はその第一巻です。白銀の墟 玄の月 第一巻 十二国記小野不由美新潮文庫 Facebookで囁かれ始めてから遂に、満を持して十二国記最新刊登場。18年小野主上を待ち続けた皆さまの辛抱強さにただただ感服するばかり。 高里要改め戻ってきた泰麒が戴国を目指す所で終わった「黄昏の岸 暁の天」の続きになる。メインヒロインの陽子は登場せず、泰麒とその一行が、所在不明の驍宗をひたすら探す。この世界では、国王からの依頼がなければ他国を助けてはならないという掟があり、戴国にはまず自助努力が求められる。国王も麒麟もいない国は荒れ果て、疑心暗鬼の中で一筋の旧王を慕う勢力が希望を繋ぐ。一方で偽王となった阿選がなぜ今回のような暴挙に出たか怪しむ件も描かれる。なぜならば阿選は決してヴィラン=悪漢ではなく、むしろ驍宗とは別のタイプのリーダーとして立てる人物だったからだ。阿選その人ではなく周辺が勝手に政を行っている気配もあり、この辺りは忖度がまかり通っている現代日本を彷彿とさせる。 選んだ主もおらず、トレードマークの角もなく、よって特殊能力も持たない泰麒には、かつて見知った人達の記憶によって辛うじて麒麟と認められているが、実際の所はただの少年と同じだ。彼にはおそらくこれから辛く苦しいアイデンティティ確立の旅が待っている。白銀の墟 玄の月 第一巻 十二国記 (新潮文庫) [ 小野 不由美 ]楽天ブックス
March 6, 2020
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みなさん、こんばんは。綾瀬はるかさん主演でNHKドラマ化もされた守り人シリーズを知っていますか?上橋菜穂子さんは世界的に有名になりました。虚空の旅人上橋菜穂子新潮文庫 上橋さんの名前を一躍有名にした『守り人』シリーズの外伝。『守り人』がタイトルについた作品が、新ヨゴ皇国の皇太子を護衛するバルサを主人公に据えているのに対して、『旅人』がタイトルについている作品は、皇太子・チャグムが主人公だ。普通なら甘やかされて育つ王族に生まれた彼は、奇妙な体験をしたせいで庶民達と暮らし、帝王教育では学べないことをいくつも体験している。心優しきチャグムだから、即位の儀に招かれたサンガル王国で起こる陰謀に、知らんふりはできない。ましてや、「神を宿した」として幼い娘が海に葬られると聞いて、自分の境遇を重ね合わせてしまう。皇太子の成長を縦糸に、周辺国の動きを横糸に織りなす物語は、小野不由美さんの『十二国記』シリーズに似ている。弱そうに見えて意外な強さを持っていたり、己の信じる道を貫く気概がある所など、主人公の性格も共通点が多い。自分を知るからこそ、どこまでも謙虚で、他人にも寛容になれるチャグム。理想の国主となりそうな、彼の成長が楽しみ。利発で優しい皇女サルーナ、その姉で、夫の目論みを見越している策士タイプのカリーナなど、サンガル王国の女性達脇役陣も個性的。虚空の旅人 【4】 (新潮文庫) [ 上橋菜穂子 ]楽天ブックス
December 19, 2019
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みなさん、こんばんは。夜久々に雨が降り、ちょっと涼しくなりました。嬉しいですね。さて、今日は小野不由美さんの人気シリーズを紹介します。華胥の幽夢 十二国記小野不由美講談社X文庫 十二国記シリーズ最新刊の「書簡」では、王になりたての陽子と、彼女の大親友・楽俊の、互いの「せいのび」が、書簡によって描かれる。彼等は互いに周りから、「迫害」には遠く及ばないが、「大歓迎」にはほど遠い目で見られているし、本人達もそれを感じ取っている。そして、お互いがどんな風に見られているか、どんな思いをしているかも、遠く離れていても、何となく察している。それなのに、彼女達は書簡でせいのびをする。自分のためというよりは、書簡を読む相手のために。そんな風に思える相手を持ち、そんな手紙を書ける彼等が、羨ましい。「乗月」「華胥の幽夢」は、「これが正しい」と信じた対照的な二人が登場する。為政者となる事の難しさ、為政者である事の難しさが描かれる。他、「黄昏の岸 暁の天」直前の泰麒が過ごす、つかの間の平和が描かれる「冬栄」、「帰山」収録。華胥の幽夢 十二国記 (新潮文庫) [ 小野不由美 ]楽天で購入
July 26, 2018
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みなさん、こんばんは。サッカー日本監督の大会2ヶ月前の解任にはびっくりしました。遅すぎるのでは?さて、本日紹介するのは怖くないミステリです。生き屏風 角川ホラー文庫/田辺青蛙昔に比べれば、鬼も随分幸せになったものだ。 童話『ないた赤おに』では、赤おにが受け入れられるために、青おにと別れなければならず、『桃太郎』『金太郎』では退治されてしまう。 ところが、夢枕獏の『陰陽師』では鬼の哀しみが描かれて同情を誘い、本作の主人公・小鬼の皐月は、人間から相談事を持ちかけられる存在だ。 頼まれたのは「病で死んだ酒屋の奥方が屏風に取り憑いて、あれこれと我がままを言うので、話相手になって欲しい」ということ。現世と異世界の真ん中に絵が介在するのは、行方不明になった親友が掛け軸から出てくる、梨木香歩の『家守綺譚』と似ている。「死んだ後も生きた人間を困らせるなんて、なんて傍迷惑な」という奥方の印象が、皐月との交流で変わってゆく。妖艶な狐妖、喰えない猫みたいな皐月の師匠(実際猫に変化する)が登場し、ほのぼのした雰囲気が漂う。「まるで講談師みたい」と言われる皐月が、この先いくつの「あやかし物語」を語るのか、とても楽しみ。【中古】 生き屏風 角川ホラー文庫/田辺青蛙【著】 【中古】afbブックオフオンライン楽天市場店
April 11, 2018
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みなさん、こんばんは。女優の高畑淳子さんの長男の事件は驚きました。まあ、苦労をしてこなかったんでしょうかね。こちらは日本のファンタジー小説です。BH85―青い惑星(ほし)、緑の生命(いのち)製薬会社に勤務する水木恵は、利用者・別府から「毛髪の伸びるスピードと色がヘンだ」と電話で相談を受ける。実は、開発部から営業部に異動になった毛利理が、出荷時に紛れ込ませた〈BH85〉というまだ実験段階の薬が原因だった。しかもその薬にはある秘密があって、次から次へと人間や鳥を同化してゆく。 どん臭い理系男・理としっかり者の恵が事件の真相を追ううちにお互いが気になり始める…というのは、ロマコメにありがちな展開。でも、ここからもパターン通りの展開を期待すると、肩すかしを喰わされる。バイオハザードという恐ろしい事態を扱っているのに、当事者達がやけにのんびりしているのだ。 スリルとサスペンスの中で、行動を共にするうち恋愛感情が湧き上がる、なんて事にはならず、さしたるドラマティックな展開もなしに、二人は、これから生まれてくる子供の将来について話し合っていたりするのだから不思議だ。 映画『スターウォーズ』シリーズのチューバッカや、アニメ『エヴァンゲリオン』のヒロインが例に挙げられたりと、ある世代の大人達のオタク心を刺激するアイテムがいっぱい。吾妻ひでおさんのイラストも、どこかすっとぼけたキャラのイメージにぴったり。【中古】 BH85 /森青花(著者) 【中古】afbブックオフオンライン楽天市場店大判 ストール 無地 レディース ストール やわらか 大判 選べる20色 uv ガーゼ ビッグサイズ UVカット(再入荷!3/1)春 夏 春夏 肌触り ボリューム 冷房 冷房対策【宅急便】価格:1382円(税込、送料別) (2016/7/31時点)
August 25, 2016
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みなさん、こんばんは。今日も関東はあいにくの雨です。そして8月が終わりですね。あっという間でした。こちらは日本のファンタジー小説です。竜盤七朝DRAGONBUSTER 01秋山瑞人王の一族とはいえ十八番目の娘で、周囲から期待も注目もされていない月華(ベルカ)。腕は立つが、青い目をしているため差別されている若者・涼孤(ジャンゴ)。 月華には、財産も、面倒を見てくれる者もいるが、その身分ゆえに自由に行動が出来ない。涼孤には財産もなく天涯孤独だが、自由に町を歩ける。そして二人とも、剣術には真剣。お互いの持ってないものが相手にはあり、お互いが惹かれているものが同じ。ほうら、二人が恋に落ちる条件が揃った! でもまだ本作では、ラブラブにはほど遠い。男の子より女の子の方が早熟だから、月華がいくぶん意識している感じではあるけれど。お互いの境遇をまだ知らないから、これから関係がどれだけ変わるかは未知数。大人っぽい姐さんタイプの女性、腕自慢の相棒、若い頃は凄腕だった姫の守役など、傍役達も、それぞれの背景がわからない。まだまだ隠し球がありそう。「次の巻でラスト」らしいので、もどかしい思いは、そこで解消されるだろう。ところで、「ジャンゴ」という名はマカロニ・ウェスタン『続・荒野の用人棒』のフランコ・ネロ演じた同名の主人公と関係が?電撃文庫 1591 竜盤七朝DRAGONBUSTER 01/秋山瑞人【後払いOK】【1000円以上送料無料】オンライン書店 BOOKFAN
August 31, 2015
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みなさん、こんばんは。何だか景気が良いようですね。でも実感がないのはなぜ?明け方の雷にはびっくりしましたね。さて、こちらは荻原規子さんの最新作です。彼女は『空色勾玉』をはじめとする勾玉シリーズで一躍脚光を浴びました。あまねく神竜住まう国荻原規子平治の乱後、伊豆の地にひとり流された源頼朝は、生きる希望も失いがちだった。そんな彼のもとへ、ある日、意外な客が訪れる。かつて、頼朝の命を不思議な方法でつなぎとめた笛の名手・草十郎と、妻の舞姫・糸世だった。北条の領主に引き渡され、川の中州の小屋でともに暮らし始めた頼朝と草十郎。だが、土地の若者と争った頼朝は、縛り上げられて「大蛇の洞窟」に投げこまれ…? 敗軍の将の嫡子として、関東の豪族・伊東家のもとに身を寄せていた頼朝が、北条時政の庇護を受けて蛭が小島に流された期間の物語。そもそも、伊東家から北条家への家移りは、伊東家の娘・八重姫との間に子供が出来、しかもその子が男の子だったことから、平家を恐れた伊東家によって殺されそうになった事が原因である。そう書いたのは『曽我物語』で、近年放映された大河ドラマもこの理由を採っている。しかし児童書では、いくらなんでもこの理由は使えないため、伊東家の当主が急死したことから頼朝が「災いを呼ぶ者」として忌まれ「彼の命運を河の主に委ねる」として領地内に大蛇の潜む淵がある北条時政が引き取った、という理由にすり替わっている。ただ、血の気の多い坂東武者達が、危険な存在を自然のなすがままに委ねるということは現実的に考えにくいので、フィクション性が高いとはいえ『曽我物語』の説が濃厚である。 頼朝の乳母である比企尼の婿である安達盛長が側近として仕えたことや、頼朝が走湯権現に帰依していた史実などを巧みにフィクションに取りこんでおり、将来彼に影響を及ぼすある人物との出会いもさりげなく描かれている。目標を見失っていた頼朝が、ある存在との対決を経て自信を取り戻し、再生するまでの過程を追った成長物語がメインで、ファンタジーの要素が含まれている。その一角を担うのが、著者が10年前に書いた『風神秘抄』で主役を務めた男女二人だ。今回は脇役のポジションであり「必ずしも前作を読んでいなくても楽しめる」と書かれたレビューもあったが、彼等の成長ぶりを見る上でも、やはり前作を読んでからの方が良い。彼等がなぜ頼朝に執着するのか、彼等の力が実際には何なのか、草十郎はなぜあの姫に対して複雑な感情を抱くのか、など、前作を読まないと分からない部分が多々あるからだ。『風神秘抄』は、ある人物の運命が変わることで歴史そのものが変わってゆくダイナミックな部分があったが、本作はそれに比べるとストーリーも地味で、場所も限定的である。ある者との対決も、対決の結果自体はもちろん彼の運命に影響を与えるが、それよりは頼朝が成長するための通過儀礼としての意味合いが強い。ボリュームもさほどなく、タイトルに著者が込めた自然への想いを理解した頼朝の今後の成長物語(あるのならば次作)、そしてこれ以前の物語である『風神秘抄』を繋ぐ挿話のように感じた。 【楽天ブックスならいつでも送料無料】あまねく神竜住まう国 [ 荻原規子 ]楽天ブックス
May 21, 2015
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みなさん、こんばんは。お盆で電車が空いています。皆さんも里帰り中でしょうか。私は都内で仕事です。さて、今日紹介するのは日本のファンタジー小説です。沈黙の書 乾石智子 まだコンスル帝国が建国される前の時代。 火の時代、絶望の時代が近づいている。北からの災厄もやってくる。いさかいが起こる。戦がはじまる。荒廃とまやかしの繁栄、欲望と絶望、暴力と殺戮。穏やかな日々は吹きはらわれる。富める者はさらなる富を求め、力を欲する。人々は踏み潰され、善きものは物陰に縮こまる。神々は穢され、理は顧みられることもない という預言を受け取った預言者ステファヌスが、戦が起こった後の世界を救うために旅に出る。 預言者に火の時代とされた、小国が群雄割拠して争う、それより少し先の未来にして現在。全ての村人が超人的な力を持っているにもかかわらず、その存在が知られていなかった風森村で、風を操る能力を持つ“風の息子”が生を受ける。超人的な力を持つ風森村の子供達は村から引き離され、そうと自覚せずに戦いの道具にされてしまう。自分がしていることに怖れを抱いた風の息子は、村に戻る途中で長い影の男から「沈黙の書」を渡すよう迫られる。 この二つの時代が並行して進み、途中で“風の息子”が“長い影の男”から執拗に見せられる神官の息子の生涯が挿入され、三つの時代が並行して進む。この三つ目の物語がいつ頃の時代に属するかは、神官の息子の正体が明かされた時に分かる。第一作・第二作で使われた、登場人物が過去に遡り、自分の前世を追体験するパターンの少しひねった形であり、その生涯とその名前から、既存読者は神官の息子と今までに登場したある人物との繋がりを容易く見つけられる。 オーリエラント黎明期とあって、凝ったスタイルの魔法は出てこず、「~の魔道師」と名のついた魔道師はただその物体を操る能力を持っているだけである。風森村で子供時代の“風の息子”たちに大人が話す国の成り立ちは、ある動物がまるで旧約聖書の天地創造における神のような役割を果たす。オーリエラントの語源、コンスル帝国成立のいきさつが明らかになる。北からやってくる蛮族は、さながらゲルマン民族の大移動のイメージ。 無垢で汚れなき村(=大人に守られた子供の世界)から戦場(大人の世界)に放り出された主人公・“風の息子”が、戦いの中で自らの使命を悟り、自らの命を賭して最も困難な願いを叶えるために戦うビルドゥングスロマン。竜や巨人など超自然的な存在は登場するが、世界を救うのは圧倒的な力ではなく、極めて一般的な“あるもの”だ。まるで大きな巻物をぱあっと広げたように“あるもの”が次々と世界に広がってゆく様は、アニメ化でもされたらさぞ壮観なシーンになるはず。また作者も、“あるもの”の力を信じているからこういう物語が書けるのだろう。 今回もやはり読み始めたら途中でやめることが出来ず、一気読み。 【楽天ブックスならいつでも送料無料】沈黙の書 [ 乾石智子 ]楽天ブックス
August 13, 2014
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魔道士シリーズの連作短編集です。【送料無料】オーリエラントの魔道師たち [ 乾石智子 ]楽天ブックスオーリエラントの魔道師たちScribe in the Darkness乾石智子 既刊長編(『夜の写本師』『魔道師の月』『太陽の石』)にも様々な魔法と魔道士達が登場したが、本篇では一部お馴染みのそれらに加えて、新たな魔法が紹介される。その中で強調されるのは、本シリーズでも何度となく述べられてきた、人間ならぬ力を持ち何でも出来るかわりに、闇や澱みを自らの中に引き込まなければならないという、魔道士のプラスとマイナス面である。闇や澱みを体内に引き込めない魔道士は『魔道師の月』に登場した某魔道士のように、困難から逃げているとされてしまい、優秀とは言えない。人間が成長するためには正論ばかりではやっていけないのと同じである。 さりとて、マイナス部分を自分のうちに取りこみ、うまく扱うのはどんな熟練した魔道士でも至難の業である。その最たるものが『黒蓮華』だ。復讐者である顔のない魔道士と、復讐される側の家族の一人、という二人によって語られる本作は、復讐者の心理を読者だけが知り、かつ、復讐者の正体だけは読者にも復讐される側の家族にも最後まで明かされないという、サスペンス色の強い作品である。プアダンという人間や動物などの死体の一部を使用する魔法は、使う者の内面をどんどん蝕んでゆく。その蝕まれていく様子が黒い蓮に例えられており、その不気味さの高まりは、復讐される側が感じる恐怖の高まりと相まって、相乗効果を上げている。 『黒蓮華』は魔道士が行きつくところまで行ってしまったが、『闇を抱く』は、魔女が、そのとば口で立ち止まる術を教えてくれる。虐げられた女性を救うために活躍する女性だけの士組織が登場するが、これも昨今のDVに悩む女性のためのシェルターを彷彿とさせる。ここで魔女が「善意のない魔法を使うのは、自分の良心を体力と一緒に削っていく行為なの。人を呪うことはそんなに簡単なことじゃないわ」と警告を発するが、これが魔を使う者が利点と共に引き受けなければならない業である。またこれは、出来るとなれば際限なく復讐を望む人間への警告でもある。そうはいっても真面目な警告ばかりが述べられているのではなく、軽く見られている女性達が男性達を出し抜くという痛快な面も持っているのでご安心を。 出し抜くといえば『紐結びの魔道師』『魔道写本師』も、ある種出し抜く話である。後者には第一作で主人公を助けた師匠が登場するので、密かなファンである、という方は是非読んでみて欲しい。
April 8, 2014
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今日も引き続いて 乾石智子さんのファンタジーです。今度新作も出るとか。楽しみです。【送料無料】太陽の石 [ 乾石智子 ]楽天ブックス太陽の石Legacy of sorcerers 乾石智子 霧岬の村に住む16歳のデイスは村の外に捨てられていたところを拾われ、両親と姉に慈しまれて育った。三百年ほど前、魔道師イザーカト九兄弟のひとりリンターが空から降ってきて、地の底に達する穴をうがち、隆起させたというゴルツ山に登ったデイスは、土の中に半分埋まった肩留めを拾う。金の透かし彫りに、“太陽の石”と呼ばれる鮮緑の宝石。これは自分に属するものだと直感するデイス。だが、それがゴルツ山に眠る魔道師を目覚めさせることになろうとは…。 『夜の写本師』『魔道師の月』に続く第三弾『太陽の石』は、ちょうど両者の間の時代を舞台にしている。古代ローマ帝国を模したコンスル帝国が傾き始めた頃とあり、その理由として地位を高めんとする魔道師と、権力を得んとする者との癒着があった事が作品中で紹介されている。この辺りも現実世界を彷彿とさせてなかなかに面白い。 魔道師が登場する本シリーズは、主人公となった少年の成長が大きなテーマであるが、もう一つのテーマは愛だ。『魔道師の月』こそ人間の欲望という普遍的なテーマを扱っていたが、『夜の写本師』は男女間の愛、『太陽の石』は兄弟間の愛が取り上げられる。もちろん、愛情が深ければ深いほど、その逆のベクトルである憎しみの感情も強いものとなり、愛することができたかもしれない対象から憎しみをぶつけられた主人公が葛藤する所がこの作品のみどころである。また、二作の悪役に据えられた人物は、いずれも愛情を渇望しながら得られなかったことが憎しみを抱く原因となっており、それ故に単純な悪役としては描かれておらず、強い印象を残す。 さて、本作の解説は翻訳家の金原瑞人さんが担当しているが、日本のファンタジー界の歴史までさらっとおさらいできる優れ物である。その中で彼が誉めていたのが彼女の文章力だ。「文章力という恥ずかしい言葉を使ったのは初めてだが、この言葉意外に適当な言葉が見つからない」と書いている。私も全く同感で、文章を読んでいると、後から後からイメージが頭の中に湧いてきて、どんどん物語に引きずり込まれていく。表現力なのかテンポなのかリズムなのか、おそらく細かく見ればあるだろう齟齬もふっ飛ばして先を読みたくなる勢いがある。その武器をどんどん磨いて、私たちを未だ見ぬ世界に連れ出して欲しい。
April 7, 2014
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みなさん、こんにちは。良い天気ですね。もう桜は散ってしまったかな?今週あたり入学式や始業式ですね。今回紹介するのは、昨日紹介したファンタジーの第二弾です。主人公はそれぞれ異なりますが同じ世界を舞台にしています。【送料無料】魔道師の月 [ 乾石智子 ]楽天ブックス魔道師の月Sorcerer’s Moon乾石智子 『夜の写本師』で親友の妹を救えなかった魔道士キアルスは、コンスル帝国にやってくるなり、ある男と間違えられて捕まる。その男とは、皇帝の甥ガウザスに仕える大地の魔道師レイサンダ―。彼は皇帝に持ち込まれた暗樹に怯えて姿を消していた。若き二人の魔道師は、四百年以上前に自らの命をかけて暗樹と戦った男の存在を知り、闇と戦う決意を固める。 だいぶ物語世界の事が明らかになってきたが、コンスル帝国のモデルはどうやら古代ローマ帝国のようだ。今回初めて地図を見たが、帝国の位置が地中海の島々と似ている。また、冒頭に登場する、島に引きこもっている皇帝といえば、二代目皇帝ティベリウス、暗樹に操られて暴君と化す次の皇帝は、ティベリウスの次の皇帝カリギュラが浮かぶ。更に皇帝に男色の気があり闘技場がありまとう衣装の名称も似ているとくれば間違いない。 シリーズ第二作では、第一作で脇役だったキアルスが主人公。第一作でも用いられたが、登場人物が過去に遡り、自分の前世を追体験する件が登場し、コンスル帝国を中心とした物語世界の歴史が少し明かされる。今回の“悪役”は人ではなく物―全ての望みを叶えるが破滅をもたらす暗樹―だ。暗樹は人の悪意につけいり、その人が悪事を行うという運びになっており、暗樹が象徴するものは、人間の中に潜んでいる悪意や憎悪などマイナスの要素を持つ感情だ。 闇を持たないレイサンダーが無垢なる存在として『聖杯伝説』のギャラ八ッドよろしく、迷いなくヒーローと指名されるのかと思いきや、“闇を持たない”故の弱点が用意されていた。レイサンダ―の長兄が彼にこう言う。「おまえにはふそれらを引き受ける土台の闇がほとんどない。魔道師のくせに。土台の闇は自分で作りあげるものなのだ。壁を乗り越えるために泥にまみれ、雨風にうたれ、火傷をし、雷で身体を満たし、光で目を焼き、幾度となく溺れなければ、闇は根を張ってくれぬ。傷つかずに闇を得ることはない。おまえにはその根性がない、絶えようとする気力がない、我慢する力がない…」挫折すればすぐやる気をなくしてしまう現代若年層に彼を擬しているようだ。彼と対照的なキャラクターに設定されているのがキアルスで、トラブルにぶつかりながらも強い彼の姿を通して、レイサンダ―が真のヒーローと成長していく過程が描かれる。一方キアランも過去の追体験で自分の年齢よりも遥かにハードな体験を背負ったために急激に成長していく。本作は2人のビルドゥングスロマンでもあるのだ。異世界を舞台としながらも、現代に通じるテーマを提示しているファンタジーシリーズでの、若者達の活躍が本当に楽しみである。
April 6, 2014
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今日などは歓迎会があったのか新入社員が夜遅くまで歩いている姿を見ました。さて、こちらは日本のファンタジーです。【送料無料】夜の写本師 [ 乾石智子 ]楽天ブックス夜の写本師 Scribe of Sorcery乾石智子 右手に月石、左手に黒曜石、そして口に真珠を含んで生まれてきた少年カリュドゥは、生みの親から遠ざけられ女魔道士に育てられる。ところが魔道士候補の少女を匿っていたことがばれ、育ての親は大魔道士に殺されてしまう。復讐を誓うカリュドウは復讐を誓うが…。 生まれた時から他とは違ったものを受け継いでいるが、幼い頃には何ら能力を発揮するところがない。カリュドウはファンタジーの主人公の王道的なキャラクター設定である。ここから何らかの試練を経て秘められた能力が一気に開花し、一直線に目的達成に向かうか、或いは回り道をしながら同じ所に辿りつくというパターンが考えられるが、断然面白いのは紆余曲折のある後者であり、本書もそちらを採っている。魔道士に育てられながら自分にはその才能がないことにコンプレックスを抱いていたカリュドウが、才能がない故に大魔道士から見過ごされ、魔力ではかなわないので全く別の能力を身につけていくという流れも、その紆余曲折が絡んでいるからこそ自然に見える。まあ逆に、その紆余曲折が“前半もたついている”という評価にもなっているようだ。但し、当初からシリーズ化の予定があったのかどうか定かではないため、第一作であれもこれもと作品世界や登場人物の説明を説明しておく必要があったのではないか。 カリュドウが自分の前世を追体験するという形で、三人の魔女の運命が提示される。海と月と闇の魔法を持つ第一の魔女が発した呪いによって、第二、第三の魔女は必ず大魔道士と会う。大魔道士は相手を倒した瞬間から次の転生した相手に狙われる運命を背負う。第一の魔女は大魔道士に愛情を抱いており、死の間際に裏切られた。その恨みの凄まじさがこの呪いに現れているのかと思ったが、本当に憎いならば相手に永遠に会わない呪いも発する事が出来たはずだ。それなのにそうしなかったのは、勿論復讐心もあっただろうが、彼に対する執着もあったのではないか。魔道士に執着を残していた第一の魔女の記憶をそのまま受け継いでしまったように、第二の魔女も彼に惹きつけられ、第三の魔女は自ら魔道士を引き寄せるような事をしている。現実の男女間に生じる、愛憎半ばする感情と重ね合わせてみると、なかなかに面白い。 最近のファンタジーやミステリーには、犯罪を犯した側に対する情状酌量の余地を残す傾向があるが、本作でも三代にわたる魔女達が残酷な殺され方をしていった様を描いた後に、大魔道士側がこのような行動を取るようになったそもそもの事情を明かしている。「魔力も制御を誤れば恐ろしい事になる」体験を経て抑制を学んだ主人公と、相手の魔力を根こそぎ奪ってしまおうとする大魔道士の魔法はその成長過程も含めて対照的に描かれている。生みの親から愛されなかったという共通の過去を持ちながら、大魔道士の方に抑制を超えてしまう愛情への渇望が根底にあったという事であり、物語のラストには一つの救いが提示されている。間違えてしまったそもそもの始まりを変えれば、人の運命はいくらでも変わるし、一度破れた恋愛も別の結果をもたらすであろう。
April 5, 2014
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アニメにもなった『十二国記』ファンからは“小野主上”などと呼ばれている小野不由美さんの9年ぶりの作品を紹介します。今の季節読むのにある意味ぴったりかもしれません。鬼談百景小野不由美雑誌『幽』に【鬼談草紙】として掲載された作品に描き下ろし18篇を加えた99話が収録。もちろんこの作品数は百物語を意識してのこと。長らく書かれていなかった小野さんの9年ぶりの新作とあって期待していた向きもあるだろう。同時期発売の『残穢』とは表紙でリンクしているが、カバーだけではなく、カバーのその下、書籍本体の表面にも仕掛けが施された凝った作りになっている。またこの絵も何とも不気味だ。少女の顔と片方の足は黒く塗られており、ブランコの端は切れている。本文同様、白と黒しか使われていない。少女の表情が見えない分、何か普通でない感じを受ける。 怪談の語り手は体験者自身、あるいは伝聞によるもの。舞台は、学校、廃屋、山、古い家、海、なんと海外の体験談もある。至る所で監視カメラが置かれ、宇宙からも監視衛星で見張られて、この世に隠されたものなど、明らかでないものなど、何一つないと思われているにも関わらず、怪談だけはずっと残っている。怖い理由は、現象だけがただぽん、と提供されるからだ。これが、「これこれこういう現象が起こっているが、実は誰誰が誰誰を恨んでここで亡くなったからだ」などと理由が明らかにされようものなら、まあ半分くらいは怖さが減ってしまう。なぜならば、その対象の恨みの原因が自分でないことがわかり、幾分かはその対象に同情なり共感も寄せてしまうからだ。共感も同情も寄せようもない、つまり、どう対処すればいいのかわからない時、そういうものに、人は一番恐怖を覚えるのだ、とりわけ目に見えないものを。 暑すぎる夏に、特に丑三つ時などに読むと、電気を使わず冷やりとした感覚が味わえるのではないか。幼い頃の自分自身の体験を思い出すかもしれない。それぞれのボリュームが短いので、移動中でも読めるだろう。 幽BOOKS鬼談百景/小野不由美オンライン書店boox
August 6, 2012
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小野不由美さんのもう一つの作品を紹介します。今の季節読むのにある意味ぴったりかもしれません。残穢/小野不由美オンライン書店boox残穢小野不由美読者からの奇妙な現象を知らせる手紙に、ふと首をつっこんだ作家が、時代を遡って調べるうちに、次々と怪異につきあたるようになってゆく。作者が病気をしていたことや、実名のライターの名前も挙がっているので、一体どこまでが本当の所なのだろう?と疑い始める。実は疑い始めたらもうこの作品にはまってしまっている。なぜなら“ここに書いてあることが本当かもしれない”と思い始めた瞬間に、もうきっと貴方は作品で描かれているところの残穢に触れてしまっているかもしれないからだ。この残穢の捉え方は、映画『リング』で描かれた呪いの種類に似ている。自分に何の原因もないのに、何かに呼ばれてしまったり、取りつかれてしまうほど怖いことはない。向かって行く先がないのだから。 実は『鬼談百景』のすぐ後に読んだもので、作品中に登場する逸話の―それこそ残穢―残り香が記憶として生々しく残っていた。そのためリフレイン効果でより怖さが増した。『鬼談百景』の時はフィクションなんだろうな、と思って読んでいたことが、今回の調査の過程で登場することで「実はこれは本当のことだったのじゃないか。書いてしまうとまずいから、ああいう風にぼやかしたのではないか。」と考える。一年前は、静かな空間でぎしぎし鳴る音や、風もないのにカーテンが揺れたら「地震か?」と疑ったものだが、本作を読んだあとでは、別の原因を探ってしまいそうだ。
August 5, 2012
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みなさん、こんばんは。今年も立派なゴーヤが取れました。日よけにもなってくれるし、助かっています。ところで、ライダー定食って知ってますか?もちろん実在はしません。とんでもない話ばかりが載っている短編集を紹介します。ライダー定食 東直己光文社文庫 「納豆箸牧山鉄斎」では、佐藤家にやってきた箸、牧山鉄斎が、仲間の箸から「自分が納豆箸(納豆専用の箸)にされる」と聞かされる。そこから「箸達のアイデンティティとは何ぞや」「人間は箸をどう考えているか」という激論が始まってしまう。でも実はこれ、箸=人間、人間=神にあてて書いたのかな、と思える節がある。 例えば、「我我箸は、人間様の御創りになった体で、人間様が御遣わしになった場所で、与えられた使命に御仕えする(p92)」なんて所。でも、こんな理屈をつけようとする頭の上を、笑いのブルドーザーがなぎ倒しに来る感じ。とにかく、まともな事を考えようとする気が失せてしまう。 いやぁ、久しぶりに心の底から笑えました。こんなに笑えるとは、人生まだまだ捨てたものではありません。落ち込んでいる人、イライラしてる人必見です。 「ライダー定食」では、愛されないOLが、癒しを求めてツーリングに。彼女の道行きを描いたブラックユーモア炸裂の本作は、是非魔夜峰央さんに漫画化してもらいたい!感傷を一切取り払うような、シャープな画風と絶対合うと思います。【楽天ブックスならいつでも送料無料】ライダー定食 [ 東直己 ]楽天ブックス【 庵の友 】 〜 IORINOTOMO 〜(手作り焼き菓子10種詰め合わせ) ギフト 贈答用 贈り物 菓子折り ギフト 詰め合わせ 小分け 敬老の日 プレゼント かご箱 クッキー フィナンシェ カステラ バームクーヘン フロランタン サブレ お菓子 おじいちゃん おばあちゃん 贈答品
July 14, 2012
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みなさん、こんにちは。パンダの赤ちゃんが生まれましたね。無事育ってくれるといいですね。さて、今回は、このほど新たに刊行される分も含んで十二国記シリーズが新たに出版される小野不由美さんの作品を紹介します。『東亰異聞(とうけいいぶん)』 小野 不由美 / 新潮社明治29年、帝都東京。魑魅魍魎が跋扈する街・東亰。新聞記者の平河新太郎は万造と共にその奇怪な事件を追ううちに、鷹司公爵家のお家騒動に行き当たる。利き手に人形、片手に扇子、羽織袴を身に纏い、三味線の音を背に、ゆうらり、と立ち上がる。そんな語り手の姿が眼前に立ち昇って来るような人形と謎の人物のやり取りは、扇子で調子を整えながら、講談師のごとくに語ってみたくなる文章だ。世の中が言文一致に向かう前。話し言葉と書き言葉、二つが混ざりあわんとしていた明治という時代にその文章はよく似合い、語るそばから怪しく淫靡な香りが匂い立つ。本書の主人公平河新太郎や万造達が街に出て調査する場面は、文章も会話も現代風だ。それは彼等が、火炎魔人、夜道で辻斬りする闇御前、さらには人魂売りや首遣いなどの魑魅魍魎の怪しき雰囲気を、振り払わんとする立場にあるからだ。2つのタイプの文章が交互に現れ、やがてクライマックスに向かうさまは、離れて植わっていた二本の大木が、上に向かうにつれ、枝が絡まり葉が重なり、やがて木の下が真っ暗闇になっていく様を想起させる。ハメルンの笛と並ぶ魔力を持つ、小野氏の「ことのはつづれ(言の葉綴れ)」にくるまれてふぁんたじあへの門をくぐる人は後を絶たない事だろう。東亰異聞/小野不由美【1000円以上送料無料】梨花さん愛用のフコイダン高濃度美容液!使ったその日からうるおいを実感!まさに生まれたて肌...価格:4,725円(税込、送料別)
July 9, 2012
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小野 不由美さんの十二国記シリーズはお読みになりましたか?平凡な高校生の陽子が異世界に召喚されて、王として自立していくまでを描く物語を、他の国々との個性的な国主との絡みで描いたシリーズです。NHKでアニメ化もされました。 【中古】ライトノベル(文庫) 魔性の子 / 小野不由美【10P19Mar12】【画】【中古】afb 【b0322】【b-novel】ネットショップ駿河屋 楽天市場店『魔性の子』 小野 不由美 / 新潮文庫十二国記番外編。「黄昏の岸 暁の天」とリンクしているのであわせて読むと良くわかります。教育実習のため母校に戻った広瀬は教室で孤立している不思議な生徒・高里を知る。彼をいじめた者は報復ともいえる不慮の事故に遭うので、高里は祟ると怖れられていた。アニメ「十二国記」ではヒロイン、陽子と共にもう2人浅野と杉本が異世界に旅立つことになっている。どうしてそうしたのかな?と思ったが、この書を読んで納得できた気がする。杉本はこの書での広瀬なのだ。自覚のないヒロイン陽子よりも、この世界のルールが理解できる自分こそ、選ばれた人間であり、この世界こそ自分の生きる世界だと思い込んでしまう杉本。事実は、彼女を裏切っているのに。現実世界で杉本のようにいじめられていたわけではないが、やはり疎外感を感じていた広瀬。彼はもしかしたらこことは別の場所に自分の世界はあるのでは?という考えが高里の存在で確かなものになると思っている。だから彼をかばっている。それもまたある種の他力本願であることに、彼は気付いていない。高里を守ろうとする凄まじい事件の連続には圧倒されるばかり。これは高里が今後背負ってゆかなければならない業なのだろうか。自分の業を知っている高里と、ただ今の場所が嫌だから逃げたい広瀬と。その差が選ばれし者とそうでない者との差のように思う。
March 26, 2012
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みなさん、こんばんは。SF小説はお好きですか?作者はもうなくなっているのですが、タイムトラベル?タイムリープ?を扱った日本のSF小説を紹介します。マイナス・ゼロ広瀬 正集英社文庫昭和20年、ある空襲の夜。隣家の先生が戦火に巻かれて死ぬ間際「18年後にその場に戻ってくるように」と浜田俊夫に頼む。そして昭和38年、約束した場所を訪れた俊夫の前に現れたのは、密かに憧れていた先生の娘・啓子とタイム・マシン。しかも、啓子はどうやら冷凍保存されていて、年を取っていないようだ。さらに、俊夫が戦後18年間、未来を知る何者かによって裕福な暮らしをしていた節もある。 どうやら二人を動かす「運命の操り手」がいそうだな。誰だろう?『マイナス・ゼロ』というタイトルの意味は、何だろう? 二つの謎が気になって、物語を先へ先へと読み進めた。映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』にも登場したが、未来を変えると過去が、過去を変えると未来がコロコロ変わって面白い。SFというと未来社会の物語を想像するけれど、ここで描かれているのは、現在から見れば、昭和38年という過去だ。だから従来持っているSF小説のイメージで読んでいくと、違和感があるかも。マイナス・ゼロ改訂新版 (集英社文庫) [ 広瀬正 ]楽天ブックス
February 29, 2012
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私は今日が仕事納めです。年の初めにはどうしようかと思っていたけれど、年末仕事があってよかったくらのかみ小野不由美講談社村上勉さんといえば、「だれも知らない小さな国」のコロボックルシリーズ。この絵を見ただけで、本を貪るように読んだ子供の頃が、わあっと押し寄せて来る。彼の絵を見るのは、本当に何年ぶりだろう。装丁から、とても懐かしい気分にさせてくれた。 懐かしいといえば、物語の舞台といとこ達の描写も、自分の子供時代とよく似ていた。私の両親は、共にとてもきょうだいが多く、よって私にはいとこ達が大勢いた。盆や暮、その他の行事に、親戚一同が集まり、大人達が話している間「子供達は、みんなで一つの部屋で遊びな。」と、追い払われた。普段は会わない子達がいきなり出逢うわけで、最初は遠慮して会話がはずまない。けれど、次第に相手がわかってくると、みんな本性を現す。誰が決めたわけではないけれど、やはり年長がリーダーとなり、それぞれ得意分野がわかってきて、近くの森に「ぼうけん」に出かけたものだ。 物語と同じく、私も伯父や叔母の事を、いとこの名前をつけて「誰々くんのおじちゃん」「誰々ちゃんのおばちゃん」と呼んでいた。心得た大人はちゃんと返事をしてくれた。彼等の本当の名前を知ったのは、だいぶ後になってからだ。昔の農家の納屋や蔵は、今のような蛍光灯がない。灯の届かない所は本当に暗かった。まわりが田んぼだから、薮が多かったし、何がいるかわからない林は、街灯もなく、「暗くなったら、何かいるのでは?」と、怖がって足早に通り過ぎたものだ。うちは大富豪ではなかったけれど、本家の家長=祖父が絶対の力を持っているうちは表面化しなかったが、死後田畑をめぐってごたごたがあった。但し、事件にならず、私も成長するまでそんな事があったと知らなかった。頁を捲っていく度に、小野氏の目配りの聞いた描写によって、「ああ、そういえば、うちもそうだったなぁ。」って、すっかり忘れていた事が、いくつもいくつも甦ってきた。 村上勉さん、そして自身の子供時代と、懐かしさをめいっぱい刺激してくれたこの本がもう一つ、持ち込んでくれたのは「子供の頃よく読んでいた探偵ものって、こんな感じだったなぁ。」というミステリーへの懐かしさ。私は小説を万遍なく読んでいたが、本当にミステリー大好きだった子は、この本に出てくるような「屋敷の見取り図、アリバイリスト」や暗号を、必死になって解いていた。こうして、この本は、私のノスタルジアゾーンのど真ん中に、ストライクボールを見事に三つ、決めてくれた。 物語を凌駕する悲惨な事件が起こる、現在に生きる子供達には、こういう本は、緩やかすぎて「つまんなーい」ってそっぽを向かれるだろうか。そうだとしたら、悲しい事だ。私は空想の世界の面白さに触れ、そこで語られる決して押しつけがましくない内容から、「みんなで力を合わせて一つの事をやり遂げる」「自分の力で考える」など、随分メッセージを受け取って来た。そして、これらの教訓や、読書体験の面白さは、大人になった今も、私の中に生き続けている。今の子供達にも、自らの姿や状況が変わっても、心に生き続け、そして時には生きていく支えになる本を是非持っていて欲しいと思う。 「かつて子供だったあなたと少年少女のために」と満を持して刊行された本書が、そんな一冊になる事を、私は信じている。【中古】単行本(小説・エッセイ) くらのかみ / 小野不由美【中古】afbネットショップ駿河屋 楽天市場店
December 28, 2011
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