福井県民国~for maniac people~

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第2話 悲劇


 そんなことを思っていても始まらない。もう私は家を出たんだ。凛に、
「お兄ちゃん行かないで!クリスマスなのに、凛寂しいよ!お願い!」
と、せがまれても家を出てきたんだ。日本のためにも、自分のためにも、そして妹のためにも家出を成功させなければ。
 そんなことを言っているうちに電車の扉が開いた。今回チョイスしたのは寝台特急さくら。目的地は長崎だ。ちゃんぽん、カステラ、ハウステンボス、東京よりは田舎だが十分見所がある。今日の後悔を忘れるためにも長崎を楽しもう。そう思いながら電車に乗り込んだ。

>17:47 寝台特急さくら入線

 客室は案の定狭かった。お金の都合上、2人部屋にしたのだが、それが失敗だった。ベッドとベッドの間が極端に近い。通路も狭い。ベッドも狭い。何もかもが狭い。まあ、長崎までの辛抱だ。我慢しよう。
 私が高い金を払ったのに割に合わなく、苦痛を覚えているのに、我慢するのには理由がある。実はチケットを買うときに駅員にこう言われたのだ。

「あ~、座席は余ってるんだけどね~、1席しか余ってなくて~、しかも相席なんだけどね~。いい?」
「まあ、いいですけど。その相席の人ってわかりますか?」
「あ~それ聞いちゃう?実はね女子高生なのよ。あっちの方は相席はオッサンでもいいっていってるんだけど~。変な事はしないでよ~」
私は苦笑いをしながら、しかし心の内では大喜びしながら金を払いチケットをもらった。
そして駅員さんは耳に顔を近づけて、「頑張れよ~」とささやいた。

 女子高生はブスかも知れない。はたまたエビちゃん並の美少女かも知れない。しかしどちらも5割の確率だ。私は後者に賭けたい。そしてムフフな展開を期待したい。どうせ、この時期に寝台に乗る女子高生は、長崎に住んでる彼氏に会いに行って、聖なるクリスマスを過ごす目的の人しかいないと思うが。
 そんなこんな考えているうちに、その運命の女子高生が部屋のドアを開けた。
「うわぁ・・・」
 私は賭けに勝った。そこには今まで見たことないような美少女が立っていた。顔はこの前鉄板のドラマに出ていた堀北何とかに似てる。服装はファー付きのコートにスカル柄のTシャツ、デニムのミニスカートだ。まさに雪のような生足が素晴らしい。そして極め付きはボンッ、キュッ、ボンだ。また、中学時代の初恋の相手の面影があった。好きなタイプのストライクゾーンにセンターの赤星からノーバウンドでストライク返球した感じだ。私は神様仏様イエス様に感謝した。
 その子は軽く礼をして隣のベッドに座った。まったく横顔も最高だ。なんて浮かれていたらあることに気付いた。何故か知らないがあっちもこっちをチラチラ見ている。もしかして一目惚れしたのだろうか。今日は私が初めて漢になる日かも知れない。
 いつの間にか出発時間になっていた。そろそろ電車が動きそうだと思った瞬間、外がやけに騒がしくなった。駅員が声を荒げている。酔っ払いオッサンが騒動を起こしているのだろう。電車はそんなこともお構いなしと言っているように走り出した。
 今から今までで一番素敵な夜が始まると思ってウキウキしていた自分に悲劇が訪れた。その悲劇は突然部屋に入ってきた1人の男から始まった。
 その男は右手にいわゆる拳銃という代物を持っていた。そして叫んだ。
「おい、静かにしろ!この電車は俺たち「黒の旅団」が乗っ取った!逆らう奴はこの拳銃 で撃ち殺して、窓から投げ捨てる!」
こんなことが本当に自分の身に降りかかるとは思っていなかった。最悪だ。
 そんなこともお構いなしに寝台特急さくらはスピードを上げた。

>18:03 東京駅発


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