「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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ケニアの旅――貴女とサファリを 1
―― 私をキリマンジャロへ連れて行って その1――
「昨晩、カーニヴァルで私ウトウトしてましたけど、子供さんの話してましたよね」
アンボセリへ向けてナイロビを発つとすぐに、ザンギリカットの娘さんが切り出してきた。
なぜか、単独フリーツアーのはずが、日本人4人で同乗だ。
でも、宝塚はともかくとして、ゲットできたんだ・・・・・・「ザンギリカット」・・・・・。
―――昨夜、彼女はフォークにさした肉片を落としながら居眠りこいてたくせに、わりとあざといお耳の持ち主ですこと。
「そぉ~~なんですよぉ~~。これ名刺がわりに見てね♪」
そのMと名乗る女の子に、もう11年も愛用している黒カバンから写真立て二つと封筒に入れた写真を渡した。
「独身じゃないんですよ・・・」と、まずは安心させといて、と・・・・・・。
「うわ~~~~。これが奥さんですかぁ~~。すっごい、綺麗!!スチュワーデスさんか、なにかですか?・・・・・・で・・・どこでだましはったんですか?」
―――いやぁ~~だましたんじゃなくて、だまされたんですぅ~――と、切り返そうとしたら、後部席のSが口を挟む。
「あー、目元がお父さんそっくり!完全にお父さん子たちね。かわいそー」
と、話を娘たちに持っていってしまった。Sとは気が合いそうにないなぁ~。
さっきからSの横にいるHはだんまり・・・・・・をきめこんだままだ。
この二人は・・・・・・・・・苦手だなぁ~~(笑)
閑話休題・・・・・・。
10分ほどで、ナイロビの林立するビル群は消えうせ、なだらかな草原がどこまでも続く広陵地帯になった。
ナイロビからケニア側のキリマンジャロ山麓に広がるアンボセリ国立公園までは約5時間の道のりである。
アンボセリはまだまだ・・・・・。
パステルカラーの水色がかった空に浮かぶ雲が綿菓子のように思える、そんな晴れた日の4WDでの旅たちだった―――――。
やがて、車は未舗装の路を行きだした。丘の原野はまだまだ続く。
大地には低木、アカシアがすべてだった。
時折、通り過ぎる赤い点画のような彩りは、マントを着たマサイ族だ。
そして、何十分かの間隔で、その赤の集団がいる。牛も多い。
「マサイ族の市場ですね」
日本語がバリバリのパトリックが退屈そうに説明する。
「あ、マサイ族の撮影はやめてください」
「声、入ってる?撮影はやめてってよ」と小うるさく、S。
私は黙ってビデオカメラを閉じ、Mに向けて、
「マサイの人たち、時折、道端で手を挙げてるでしょ?あれ挨拶してんじゃないんだよ。ヒッチハイクだよ。Mちゃん、かわいいからじゃないの(笑)」私はMをからかう。
「そうなんだ。チェッ(笑)」
やがて道は所々未舗装の道路になった。
丘の原野はまだまだ続く。
大地は低木、アカシアがすべてだった。
そして時折通り過ぎるのは、マサイ族の衣装の赤。
2時間ほど走り、由緒正しく土産物屋があるトイレ休憩で、再び大地を行く。
車に乗り込む間際、土産物屋のお兄さんは窓越しに、大きなオークの木を彫ったような仮面とライターを交換しようと持ちかけてきたが、躊躇したまま出発となった。
その仮面に価値があろうとなかろうと、損な買い物でないことは承知していた。
躊躇したのは、サファリ初日にしては異常に大きすぎる買い物で、移動と運搬が困難に思えたからだ。
しかし、その後2度とライターと交換できるような店とは遭遇しなかった―――。
道はいつの間にか赤茶けた土に変わっていた。
どおりで、振動が激しくなってきたわけだ。
パトリックはトイレ休憩時にもう一台のほうへ移っていた。
私が運転手フランクの助手席に陣取っていた。
「あ!前方に大きな轍を発見。ハンドルを右にー。いや、左(爆笑)」
「勝手に下手なナビやってるよ~~」とS。
このオネエサンはもう少しマシな言い方できないものかしら。
「お一人様、300シリング頂戴いたします」とMに手を差し出す。
「絶対、外回りのお仕事ですよね!なんか怪しい商売してそ~~(笑)」―当たってます(笑)―
Mと連れのHは、大阪ビジネスパークに大きなビルがある電気会社に勤めている。
「今、防衛庁のほら、あれで会社が大変なんですわ~~」と嘆く。
車内は完全にMと私の二人の会話にとってかわった。
いや、私がそう望んだからだ。
「希望も銭も落ちとるんやない。自らの手で掴みとらなアカンのや~。Mちゃんには三日後にはソマリアへ連れたってんねん。高う売り飛ばしたるわ」
「なんか、怪しい関西弁。ますます怪しい(笑)」
そうこうするうちに2度目のトイレ休憩になり、再びパトリックが乗りこんできた。
青い空!どこまでも続くサバンナ!絶好のサファリ日和。
はやる気持ちは、いつか、いやまもなく会える動物たち。
その気持ちをMちゃんと分かち合おうと、
「ねぇ?何の動物を一番最初に発見するか賭けない?300シリングね♪」
愛嬌のあるMはすぐさま乗ってきった。
Sまで乗ってきた。
仕方なく・・・のような様子でHも乗ってきた。
その割にHはすばやかった。
「私はハイエナ!」
「じゃあ、ゼブラ(シマウマ)」とMが続く。いいとこ押さえられた。
穴狙いでいくか!
「ガゼル!!!」Sと私は同時に叫んでいた・・・・・・・き、気があったのね・・・・・。
Mがクスクス笑っている。
譲ってもよかったのだが、Mちゃんが持参していたポケット図鑑によると、ケニアには「トムソンガゼル」と「グランドガゼル」の2種類生息していることが判明。
私は「グランド」の方を息巻いて取った。
アンボセリ一帯には、「トムソン」の方しか生息しないことは、その時は知る由もなかった・・・・・・・・・・・・。
「さて~~~、いよいよダービー・サファリの始まりですっ!」
見渡すかぎりの平原になってきた。
路はますます悪路になってきた。
睡魔と気分の悪さが交互に訪れる、その対策でもあるダービーだ。
4人で窓の外、遠くを近くを、凝視し続ける。
緑には水水しさや濃さがなく、やがて目が疲れてくる。
アフリカの人々は視力が6度もあるという。
地平線にいる人の顔がわかるらしい。
パトリックは私たちのたわいのない宝探しゲームを嘲笑しているようだった。
「ほら、今あちらのブッシュにいましたよ(笑)」
私たちには全然わからない。
私はビデオカメラをフルズームにして3人から反則をつきつけられたが、それでも動物たちの姿など、この平原には存在しなかった。
Mがシマウマを発見したと主張したが、3人にはわからず却下。
パトリックは業を煮やした様子で、やおら運転手のフランクに停車を命じた。
「右に根元から分かれたアカシアがあるでしょう?その下に小さな沼ありますね。見えますか・・・・?そこに何がいます?」
「わぁーーーー!!キリンだぁーー!!」
遠足の子どもたちのように私たちは同時に叫んだ。
そう、ダービーのチケットは払い戻しだった(笑)。
が、そんなことはどうでもよろしい。
アンボセリ公園手前の草原で、ついに私たちは「野生動物」を「発見」した!
今日から、これでもかこれでもか、と動物たちとご対面するのだが、そんなことは何も考えず、「私たち」は純粋に感動を分かち合っていた。
「でも、動物は動物園にいるだけじゃないんだね。国立公園というから、ナイロビ郊外のところにあったように柵でも囲んであるのかと心配してました(笑)」と、私はもちろん、冗談のつもりで吐く。
「ここはアフリカね。いてるところにはどこにでもいてます」とパトリックはつまらなさそうに真面目に応えた。
それより、パトリック・・・・・・関西弁が移ってるんですけど・・・・・・。
パトリックは肌が黒い。
黒人だから当たり前だが、彼の肌はマコンデ彫刻のように墨色がかっており、本当に黒が濃い印象だ。
彼はキクユ族とも明らかにマサイ族とも違う。
どこの部族出身か、旅中最後まで聞かずじまいだった。
車はジェットコースター気分を味わいながらナイロビを発つこと4時間。
ようやく、ナマンガ・ゲートという保護区域内への入り口を通過した。
「やっぱり動物園かいな?」とMに向けて、意識はパトリックに対して笑いながら言う。
しかし、保護区内外を動物たちが行き来するのは、もちろん「自由」だ。
逆に遊牧で生計を立てているマサイ族が居住区を定められ、締め出された格好だ。
人間というやつは、どこまでもどこまでも勝手だ。
人間に対しても自然に対しても。
私たち物見遊山の者どもも、このことは最低のマナーとして心得ておかねばならないと思う。
それは―――――。
それは、ここでいう「公園」とは、類長猿である私たち「動物」が勝手に線引きしたものでしかない。
私たちは「動物を見に来た」のではなく「動物に見られに」ちょっとお邪魔させてもらっているのだ。ほら。
「ほら、ヌボーとした表情で、ヌーがこっちをボーッと見てるよぅ」
「さぶーーーー」と、M。
ゲートを潜って。景色に変化こどないが、やはり動物たちが多くなってきた。
「わー、シマウマの親子ですよーかわいいー」
「あっ!ほんとにシマウマの親子ですよ。かわいいー」
「見て見て。イボイノシシよ。ほんとにイボがあるんだ。かわいいー」
動物が増えるたびに、後の3人組がやかましい。
「サファリ中は静かに願います」
パトリックの声を真似て3人に言ったが、全く無視された。
「ああああーーあれっ”!ゾウよぉー」Sがやかましい。
「うきゃーー歩いてるぅー」Hよ・・・ゾウだって歩くがな・・・・。
「どえりゃぁーーーー!!耳を羽ばたいてます!!」Mまでカメラ向けながらうるさいのなんの・・・・・・・。
「あれは暑さを冷ますためね・・・」冷ややかに言うパトリツク。
「おおおーー!パンダも発見!!」
冷たい視線を浴びるのは私・・・・・・・・。
ところで、ところで、である。
今回ケニア訪問を選んだのにはワケがある。
動物に関心がないわけではない、それもある。
しかし、私は来年キリマンジャロ登頂を計画している。
キリマンジャロはタンザニア側から登頂するのが一般的ルートだ。
ぜひ、今回ケニア側から万年雪の「アフリカの富士山」をゾウのバックなどで、この目に焼き付けておきたかったのだ。
アンボセリは神奈川県と同じくらいの面積だ。
晴れ渡ったときには、群馬からも雄姿が拝める富士山より高い山のはず・・・・・。
その雄姿がそろそろ見えてきてもよさそうなものだが・・・・・。
遠くには乾燥地帯独特の渦巻きが何本も舞っていた。
雲、そういえば、いつの間にか分厚い雲が垂れ下がっている。
少し、不安になってきた。
雲の切れ目の地平線は裾野が広がっている。
少し不安になってきた。
デリー、ムンバイ経由ではるばる、ここを目ざしてやってきたのに――まさか・・・・・――。
「まさか、正面の雲の後がキリマンジャロ?」
「イエス・・・・・いつもだいたい雲の後ね」
パトリックはつまらなさそうに、あっさり言った―――――。
―― 昼行灯の水牛に捧げる・・・その1 ――
ワインリストに「ビラージュ」とあった。
いつものように・・・・・知ったかぶりして注文した(笑)。
1, 600シリング。つまり1シリング約2.5円として4,000円!
なんちゅーこっちゃ。
このお金があれば、当分ケニアで暮らしていける金額だ。
観光客とはいえ、後ろめたい気持ちにさせられ・・・・ることは、そのときはなく(笑)テーブルを囲む女の子たちのグラスに王様気分で気前よくなみなみと注ぐ。
あっという間に瓶に残ったワインはごくわずかになった。
そのことに対して、ひとりで大枚はたいたのにと、損得勘定(感情)が働いた。心のなかで泣いた。
私はつくづくセコイ男だ。
「カンパーイ!!お近づきのしるしに!」
私は自分のセコサを打ち消すかのごとく、勢いよく音頭取りを行う否や、一口何百円もするワインを吐き出しそうになった。
「そういえば、お子さんいらっしゃるんですよね~」
いきなり、またかいっ。
吐き出しそうになったのはいきなりの突っ込みばかりではない。
―なんだ!?このまずいワインは!?―
「なんで、そんなこと知ってるの?今朝、ここに来るとき、Mちゃんにも突っ込まれたんですけど・・・・・・」
「ネコちゃん情報で知ってるんです」
微笑む、ショートカットで目の大きなふくよかな若い女。
もう一台のワゴンのグループだ。
仮に1号車としておこう。若い女性二人に、若いノッポとチビというわかりやすい男性コンビ。
8人の組み分けはすぐに決まった。大阪3人組と私が1人参加だからだ。
このうら若き女二人とMと私、という組み合わせは永遠に無理だろう・・・・・・・。
「だって、ナイロビのレセプションで切手を買おうとしたら隣にいるお兄さん(笑)、あなたがデスクに置いたハガキが目に飛び込んできたんだもん~」
「ネコちゃん」と呼ばれる、ネコ?というよりは犬目風の(笑)感じで、額が広く、髪の長い女が説明を加え始めた。
「奥さん、すっごく綺麗なの~」と猫目のM。
「さっき車のなかで写真を見せびらかしてたわよ」と細目ワニ目のSが続く。
「わ~、見たい見たいっ!でね、――○○ちゃん、元気ですか?パパはアフリカでお仕事がんばってます――って書いてあったのよ~~~(笑)」
それ、―目に飛び込んできた―という国語は正しくないんではないですか?
「し・ご・と、ですかぁ~?」吹き出すようにノッポとチビが同時に叫ぶ。
あんたら、やっぱりナイスコンビだわ。
なんとなく幸せな、昼下がりのロッジ。
風は微動だに吹く気配はないが、高原のサバンナは比較的涼しく、しのぎやすい。
風がないため、厚い雲に覆われたままのキリマンジャロはどうやら拝めそうにない。
レストランのテラスのそばをドグエラ・ヒヒが堂々、横切っていく。
広大なロッジの敷地内はヒヒたちの格好の住みかになっている。
ガイドブックには「ときおり、サバンナモンキーたちが遊びにやって来る」と書いてある。
なぜか、犬のように鼻を突き出して小憎たらしく我物顔でのっしのっしと歩くヒヒしか見かけなかった。
私はMを、ヒヒをバックにして芝生をちぎるヒヒの真似をさせて写真に収めた。
そのとき、遠く背景のキリマンジャロの頂上が雲の間から垣間見せていたことを、帰国後写真を見るまで気づかないでいた―――。
サバンナモンキーもいることは、いた、らしい―――。
アンボセリ二日目のお昼、プールから帰ると、Sが私の部屋の前でお冠だった。
「ちょっと、あんた、部屋の前に柿の種、置きっぱなしだったでしょう~!隣の部屋がうるさいから何かと思って出てみたら、サバンナモンキーたちが柿の種にたかって、そこらじゅう散らかして大騒ぎで大変だったのよ~~!!」
「大騒ぎ」というキーワードはSにこそ当てはめたほうがふさわしいような気がしたが、もちろん、だまっていた。
そういえば、明け方、ロッジの外のベンチでJ&Bをチビチビ舐めながら柿の種をつまんでいたっけ?
「おかげで、サバンナモンキー見られて、写真も撮れたねんけどね」と、Mが小声でフォローしてくれた。
このいかんともしがたい相性の問題もあり、Sからは一方的に叱られっぱなしの道中になる。
その大部分は彼女の思い違い、認識不足によるものだと、私は自分なりに分析し、でも意味がないから放置することにしていた。
「坊主憎けりゃ、袈裟まで憎い」というが、わたしゃ、「神主」だ(爆笑)。
空の下のサバンナの昼下がりに突如降って湧いたハリケーンを右耳から左耳に流しながら思った。
―モンキーたち・・・・・・全部食べちゃったんだろうか?―
―柿の種・・・・・辛くはなかったのだろか・・・・・・?―
――――さて、早朝、日の出と同時にサファリである。
「マナブちゃんズ・ツアーの出発や!」Mはいつもウトウトしだす夜とは打ってかわって元気だ。
子どもや・・・・・・・・。
「いやいや、マナブちゃんいうよりも、ガクちゃんやな、ガクちゃんて呼んでええか?」
はしゃぐMをよそに、二日目にしてすでに苦痛であった。
何がって?狭い4WDのなかにMとのみならず、Sもいることではない。
いや、それも多いにあるのだが(笑)、何よりも、この圧倒的に動物を巡るこのサファリにもう「飽きて」いたのだ。
たった、二日目にして・・・・・・・・。
初日、あの感動を呼んだキリンが嘘、のようだった。
ゾウがいた。シマウマがいた、ガゼルもいた、イボイノシシもいた。バッファローもいた。
ヌーがいた。いや、いるどころかたくさんたくさんいた。あとはチーターとライオンくらいか?そうだ、サイもまだであった。
でも、マサイ・マラ保護区ではきっと見れるだろう、そう確信していた。
物事には順序があった。
「ライオンはアンボセリにはいないんですかぁ?」Mがおねだりするようにパトリックに尋ねた。
「いますよ」と、パトリックは相変わらず不機嫌そうに答えた。
パトリックは大きな目をギョロつかせ、冗談をよく言うが、不規則にたまに不機嫌になるのが玉に傷である。
が、パトリックの不機嫌さには、一定の法則があることを、私は旅の後半に知ることになる―――――。
「あのなぁ、Mちゃん。今日見れなくても明日、お目にかかれるわ。そうでなければ、最後のマサイ・マラにとっておき。アンボセリ、アバーディア、ナクル、マサイ・マラと巡るやろ?最初にチーターやらライオンやら何もかも見てしもたら後はつまらんでしょ。だからアンボセリからなの」
と、Mの影響の関西弁と、意識した標準語と、意識しないでもでる地元の方言が混ざってしまう。
「ガクちゃん、そういうとこは勘がええなぁ~~」
「そういうとこは、って、どういうことよ?」
ついでに、もうしばらくMをつなぎとめておこう。
屋根を支柱で持ち上げて眺める風景はどこまでもサバンナグラスのみ。
その枯れかけた草原にはヌー、ヌー、ヌー、ヌー、シマウマ、ヌー、ヌー、シマウマ、なのだから。
「あのな、Mちゃん。ここだけの話教えてやろか。今朝早く起きて門番にチップはずんで(本当は、最後まで出し惜しみしてチップは払わずじまい)、ロッジの外に出してもろたんよ。アカシアの林抜けて道の向こうにあばら家がいっぱい並んでおったんよ。そこになぁ~、何いたと思う?ゾウが小屋にいっぱい繋がれていたんよ。その隣の掘っ立て小屋にはもう大量のバナナやリンゴが山積みされとった。なんでやと思う?きっとな、『今日は観光客多いで~。ゾウあと50匹ほど追加や。オルトカイの東にライオン配置や。南西の湿地帯にはカバ数匹ほうりこんでおきや。ならしやすいニッポン人はええとして、しみったらしい英国人も多いよってに、暴動起きたらあかん』ってな感じで夜中のうちに無線連絡しあいながら、大型トラックで動物配置してますのよ・・・オホホホホ・・・」
「アホなこと言うて、夢のないこといわんの」
Mはとりつくしまもない。
「パトリックに笑われるよ」
もちろん、パトリックは笑わない。
「あれ?いたの?Hちゃん」矛先を変えてみる。
「ひどーい」Hは京都生まれの京都育ち。
はんなりと、口をとがらせた。
「ちょっと、静かにしてくれる」Sもいたのね・・・・・・・・。
―まーた、叱られちゃいましたぁ~―と目でMに合図した。
Mは即座に理解したらしく、クスクス笑った。
そのとき、Sの眼光が鋭く光ったのを私は見逃さなかった。
「ネコちゃん派閥」がほぼ一日をともに過ごす4WDのなかで、「ネコちゃん中心主義」で良好な(笑)関係を築きつつあるなか、私たちのグループは砂上の楼閣である(笑)。
サファリの度に私はMとのみほぼ会話を費やしていたが、MはHが会社の先輩で、このツアーには社内メールのやりとりで同行することにしたそうで、やはり気兼ねはしていただろう。
Hは私がMばかり贔屓にしているのを内心は苦々しく思っていたか、無頓着(笑)。
で、問題のSであるが、私が彼女を遠ざけよう遠ざけようとする意思とは裏腹に、なにかとイチャモンをつけてきては勘違い光線ビビビの姉御肌振る舞いしようとするのである。
こうしてみると、結構おもしろいね、サファリの「人間観察」。
だって、人間だって哺乳類だもん――お後がよろしいようで――。
さて、動物のサファリである。
前方にはSがさきほど指摘した、ジープがずらりと整列していた。
どうやら大物(?)を発見したようだ。
どこから集まったのかと思えるくらいの何十台もジープが轍に一列になって駐車し、しかも整然とはほど遠い、正月の福袋の奪い合いのような様相である。
「ライオンがいた」らしい。
発見者であるガイドたちにもそれぞれグループがあり、サファリをしながらお互い無線連絡を取り合うらしい。獲物をゲットしたら即連絡を入れる算段だ。
いかに「動物をより多く、効率的に観光客に見せるか」が彼らの腕のみせどころなのだ。
各々のグループは得意のテリトリーがあるらしく、同じコースをすべての車が走るわけではないので、同日同時刻であっても、ライオンを見られないグループもあるわけだ。
我らがガイド、パトリックの眼力はいかに?視力は驚異的な6・0らしいが(!)、「アフリカでは当たり前」なのだそうである。
同じグループにしか知らせてないつもりでも、神奈川県ほどの狭い(?)面積のアンボセリ公園である。
おのずと、1匹のライオンに何十台ものジープが集まるのである。
「ほらね?おもしろいでしょ、人間観察」
私はMに笑ってみせたが、Mの目つきが変わっているばかりか、興奮しているのか充血している。
問えば、「寝不足やねん」らしい(笑)。
「ライオン1号ゲット!でも見えへんな~~」
Mは高感度の双眼鏡を持っている。
「おっ!双眼鏡持ってるやん。どしたん?わざわざ買うたん?」
「ううん、弟のや。なんや、友だちと北海道行くときに買うたいうてた。せや、馬を見に行ってん」
「北海道へ馬を・・・・・・。ふーん、兄弟で動物好きなんだね」
「贔屓の馬舎があるいうてた」
「なんやっ!競馬ファンかいっ(爆笑)」
「どうやら、つがい、みたいですよ。メスが寝そべっているでしょ?その岩の背後にほら、オスがいるでしょう?」
私たちよりパトリックのほうが、よっぽど流暢な日本語で教えてくれた。
保護区や国立公園は、どこでも車を乗り入れることができるわけではない。
どの公園も動物保護レインジャーたちが使う、決まったコースがある。
動物たちが生きていく糧、である草を守るためである。それは、生態系のバランスを保持してもくろみがあるのはもちろんのこと。
動物めがけて草原を突っ走ろうものなら、おとがめ、罰金どころか外国人でも禁固刑がありうるらしい。
しかし、たまに不埒なガイドに当たると、方向を見失ってしまい、迷子になることもあるらしい。
もちろん、密猟者たちはお構いなしであろう。
植民地時代以降、高く売買されるサイの角や象牙を求めて密狩が跡を絶たない。
飢饉にあえぐアフリカの民たちが生活の糧とばかりに手引きしたり、商売に手を染めるという側面ももちろんあろうし、一面のみでは解決できない構造的問題があるような気がする。
ゾウは自然のままにまかせていても、生きていく、のが困難らしい。
温暖化の影響をもろに受けて、年々、アフリカの赤道あたりも砂漠化が確実に進行しており、彼らの食糧も減っている。
しかも、ゾウは雑食で、草という草を食べ、木という木をなぎ倒していく。
すると、アカシアしか食べないキリンをはじめ他の草食動物が絶滅の危機に瀕し、ゾウも自らの乱食がたたり、自らの命も種の保存も危うくしてしまっている。
草食動物が少なくなると、当然、肉食動物の生命にも影響する。
種の保存のために人間が介在する功罪はともかくとして、ジンバブエなどでは、ゾウの種を守るためもあり間引きされるらしい。
ケニアは法律で禁じられている。
したがって、ケニアでは遠からずジンバブエよりも早く、ゾウなどの大型動物は絶滅する、と断言する科学者もいる。
しかし、いかなる理由であれ、規約にある動物を商品として扱うことをワシントン条約は禁じている。
アフリカ諸国政府も悩めるところであるが、どうであろう。
それはそうと、サイの角なんか何にも効用なんかないのですよ。
「自然が一番。ライオンが遠くて見えなくても、これも自然のうち」
「なんや、ガクちゃん、物分りのよさそうなこというて」
「はい、いいですか?次、行きますよ」パトリックは妙に元気になって、フランクに発車を命じた。
車はネコちゃんたち1号車と離れ、ロッジ周辺のオルトカイ地区から昨日、ナマンガゲートから来た道を逆に走りはじめ、やがて本道をはずれ、細い右の道を進んだ。
ほどなくして、ダチョウが一列に並び、羽を広げて走る後姿や、シマウマが水を求めて小さな池に向かい一列縦隊に並んでいる光景や、ハイエナたちが朝食の肉のかけらを奪い合う様や、その肉のおこぼれをセグロジャッカルが狙う姿など、檻のない動物園ならではの光景を目のあたりにした。
きっと4人様々に、シャッター音の数ほどの感動があったであろう。
なかでも、バッファローの大群が移動する光景は圧巻であった。
通常、サファリはこうして早朝と、日没前の2時間のみ行われる。
動物たちが一番活動しており、また効率よく周れる時間帯なのだ。
ゾウの親子の行列をみた。インパラもいた。聡明そうなヘビクイワシもみた。
「カバはおらんのかいな?」
またMが可愛く不平を言う。
ヒッポ・ポイントと呼ばれるカバの住処の池をいくつか周ったが、生憎私たちは、カバが水中で生活することを知らなかった。
「そのうち、カバッーと、出てこんかな?」
「なんや、しょうもなーガクちゃん。ガクちゃんいうより・・・・・やっぱりマナブーやな。せや」
サファリを重ねる回数ごと、Mの私に対する接し方、というより姿勢が明らかに変化していた。
「単身で果敢にアフリカに渡った好奇心旺盛な博学な年上のひと」から「妻子を残して自分だけ悦楽に興じる身勝手でだらしない男」に・・・・・・・・・。
あたってるやん(笑)。
「カバより、ワシはキリマンジャロを所望じゃ」
「マナブーしつこいわー」
早朝は、厚く垂れこんだ雲が裂け、比較的キリマンジャロは仰ぎやすい、と聞いていたが、やっぱりキリマンジャロはどっしりした麓を覗かせているだけで勇姿とはいいがたい。
Mは独り言をつぶやくようになぐさめてくれた。
「残念やなー、マナブー・・・・。でも、大丈夫!どこぞの神主がおるから!」しばらく間があり。
「・・・・・・・・神主いうたら、神の使いやろ?」また、しばらく間があり――――。
「・・・・・・・・・・なんで、マナブーが神の使いなんっ!!??」
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