ふゆゆん亭

ふゆゆん亭

私が読んだ本・7





「涙のタトゥー」ギャレット・フレイマン=ウェア著
ないとう ふみこ訳  POPLAR





涙のタトゥーを顔にいれた少年と出会い、
変わりはじめる15歳の少女ソフィーを描く、
喪失と再生の物語。






■あらすじ(素晴らしいので訳者あとがきより抜粋)


ソフィーは、
ニューヨークの私立高校に通う十五歳の女の子。

二年半前に最愛の弟を病気で失い、
さらに両親も離婚。

今も心の傷をかかえたまま、
ひたすら勉強に打ち込む日々を送っています。


そんな彼女の前に現れたのが、
母を亡くして頬に涙のタトゥーを入れた十七歳の少年、
フランシス。

ソフィーがタトゥーに惹きつけられて、
ついちらちらと盗み見ていると、
フランシスは、
いきなりソフィーの手を取って自分のタトゥーに押し当て、
彼女をどぎまぎさせます。

少し風変わりだけれど、
自然体で、
思いやりのあるフランシスは、
固い殻をかぶったソフィーの心のなかにするりと入り込み、
そのしこりを徐々にときほぐしてゆきます。








ヤングアダルトでのデビュー作である本書は
米国の児童書書評誌(BCCB)によって、

2,000年度のブルーリボン賞に
選定されています。








■感想(前半は私なりのあらすじ)


8歳の弟を失くしてから二年半、
弟の記憶が薄れて行く事を恐れて

ソフィーは一日二回
弟を思い出すのを日課としていた。


いつまでも変わらない弟がいるのに
自分だけが
どんどん変わって行く事が罪に感じられ

ソフィーは二年半前の自分を保とうと
男子から交際を申し込まれても断り続け

12歳だった自分を続けていこうと
頑なに自分の変化を拒絶していた。


母と離婚した父は自分中心で
弟のエアハートが6歳で発病してから

仕事を増やして留守が多くなり、
浮気までした。


ソフィーはいつまでも
父を許す事が出来ない。

ソフィーが
エアハートの部屋を使うようになっても

広くなったアパートと
母の淋しさを埋める事は出来ない。

ソフィーの家族は2年半経っても
姉を含めて4人共
エアハートの死を受け入れる事が出来なかった。


でもフランシスは8歳で亡くした母の死を
父と共に受け入れるために

母の骨を散骨した祖母の庭に毎週行き
母といつもいられるようにと

左目の下に
自分の瞳の色と同じ緑色の涙を
タトゥーにしてした。




ソフィーの家での「普通」を
フランシスが静かに変えて行く様子が

とても暖かくて優しさに満ちていて
人との関わりのありがたさに感謝する思いが湧いた。


フランシスがいつも自然体で
きっと自己一致が出来ているからだろうと思う。


ソフィーは弟の死と父の浮気と
両親の離婚を乗り越えるために

沢山の縛りを
自分の中に築いて行った。


ああ、
ソフィーの気持ちが良く解る。

12歳の少女が自分を守るために
必死で壁を作り上げたのだ。


そしてキリキリと己を縛りながら
変化を拒絶して生きていた。


フランシスの優しさや自然体が
それを溶かして行く様が、

毎日のちょっとした出来事の
積み重ねの中でソフィーによって語られて行く。


人の傷は優しさで溶かせるんだなぁと
優しく切ない気持ちになった。


健気なソフィーが
痛ましいくらいだった。


傷付いた人は
周りの人からは見えない所で
頑張っているんだよね。


家族を失う辛さを乗り越えるのは
簡単には出来なくて

逃げる事が出来なくて
悲しみも苦しさも

今を受け入れる事から
始まるのかもしれないと思った。




秀逸な作品で
すごく久しぶりに一気読みした。


良い話を読んだと
うれしい気持ちが残った。


久々のヤングアダルトだったが
素晴らしい一冊に出会えた。



母の死を乗り越えていない私にとって
ヒントになる優しい本だった。





訳者の方のあとがきも秀逸で、
あとがきに書いてある感想などは

この話の総てを語っていると感じて
この話が
こんなにも読みやすいのは

翻訳家さんの
力量もあっての事だと思った。




素晴らしい小説に
素晴らしい翻訳家さん。



忘れられない一冊になった。










二作目の「マイ・ハートビート」は
優れたヤングアダルト作品に贈られる

マイケル・L・プリンツ賞の
オナー賞を受賞しているそうなので

是非、二作目も読みたいと思った。










●カバーイラストを描いている
丹地陽子 ( Yoko Tanji )さんのサイト

不思議な世界観が漂う
素敵なイラストが見れます♪








●トラバしていただいた所

http://blog.seesaa.jp/tb/98074994








●読んだ本●


「エイリアン・テイスト」 ウェン・スペンサー著

赤尾秀子=訳 早川書房












■あらすじ


オレゴン州ユカイアの森林で
狼に育てられたユカイアは

推定12歳の頃に
ジョー・ママに保護されて
密かに生活をしていたのだが

マックスと知り合ってから
人探し専門の探偵業を手伝うようになった。


ユカイア(現在は21歳)には完璧な記憶力と
臭いを総て嗅ぎ分ける力、

そして血液を舐めただけで
DNAを識別する力も持ち合わせていた。


強靭な体力と人間離れした
運動能力にも優れていたが、

ジョー・ママとラーラ・ママ
妹のキャリーと相棒のマックスを愛する

心優しい寡黙な青年だった。


親しい刑事クレイナックに
協力を頼まれて

残忍な殺人事件の現場から
消えた女性を探しているうちに

ユカイアは恐ろしい事件に巻き込まれ
FBIのインディゴ捜査官と協力しながら
事件解決に奔走する事になる。


やがて知る
自分の出自と宇宙規模の恐ろしい計画。


ユカイアは苦しみ傷付きながらも
常に正面から立ち向かって行った。





これがウェン・スペンサーのデビュー作。

2001年処女長編を対象とした
「コンプトン・クルーク賞」を受賞。








■感想


いや~~~~面白かった!!!


最高!!!
と言いたい。


まあ、
都合の良過ぎる所は気にせず
飛ばして(^_^)



何しろ主人公のユカイアの設定背景が
凄まじいのに

ユカイアは力む所が無く
いつも自然体で静かに見守っている。

素直で正直で優しいのに
思い立ったら突き進む
強さと優しさを備えている。


人間界で暮らすようになって間もないせいか
とても純粋無垢で裏表が無い。



ユカイアの性格と能力に
すぐに大ファンになったヽ(^。^)ノ



驚く状況が次々に舞い込むのだが
恐怖心や守りよりも

今何をすべきかを学んで
行動して行くその素直さも
私にはとても魅力的だった。



エイリアン関係の状況は恐ろしく
人間や少数集団で闘えるのかと心配したが

記憶力、推察力、判断力と
柔軟性を備えたユカイアは

静かに波乱の中に駆け込んで行く。




ううう。
こんなヒーローものは大好きだ===!!!

え、
これはヒーローものじゃないのかな?


これは多分SFハードボイルド探偵物
って所だろうか。




表紙のチャラさに騙されなくて
良かった。

ライトノベルズの
軽い読み物かと思ってしまった。


若い人向けに
マンガイラストの表紙にしたんだろうけど
中身の濃さが伝わらないと思うなぁ。



続編がその後に4冊出ているが
日本で翻訳して出してもらえるのかな?

出版してもらうためにも
この本を買おうかと思っている。



2003年発表の「ティンカー」も
SFが大好きな読者が選ぶサファイア賞を受賞したそうで
久々にSFに返り咲こうかと思った。



とても楽しかった~~\(~o~)/
映画にしても良さそうだと思った。



ちなみにこのウェン・スペンサーは
日本のアニメの大ファンだそうです♪
















●読んだ本●


「マイ・ハートビート」ギャレット・フレイマン=ウェア著

宮家あゆみ=訳 河出書房新社 (ヤングアダルト) 












■あらすじ(扉より抜粋)


エレンは14歳。

天才肌の兄・リンクと、
リンクの美しい親友ジェームズを愛しているが、

あるとき同級生の女の子から、
ふたりは愛し合っているんじゃなかと聴かれて動揺する。

秘密の多すぎる友情、ものごとの本当の見方。

詮索と裏切り、真実とハッピーエンドの関係。

ちょっと奇抜な三角関係をめぐり、愛について、
愛する人について、自分を好きになる方法につて、

エレンは探しはじめた・・・・・・。








本書は2002年の
パブリッシャーズ・ジャーナル誌の
ベスト・チルドレンズ・ブックスや

スクール・ライブラリー・ジャーナル誌の
ベスト・ブックスに選ばれ、

2003年には
ヤングアダルト部門の書籍に与えられる
賞として名高い、

マイケル・プリンツ賞の
オナー・ブック賞を受賞した。








■感想


14歳のエレンが
兄とジェームズの事や

家族間の関係や
学校での事を通して

少しずつ成長して行く様子が
とても丁寧に一人称で書かれてある。


幼くて知らないからこそ
根本的な事を根っこから考えたり

調べたりして、

それまでは兄や両親の言う事を
鵜呑みにしがちだった事を

自分の感じる事を見つめ
深く掘り下げて

自分の考えを探り出して行くのが
とても好ましかった。












●読んだ本●


「きみに会いたい」芝田勝茂著

あかね書房 (ヤングアダルト)











「きみに会いたい」芝田勝茂著 表紙
こんな本です。











■あらすじ


中学生の幸恵は
小さい頃から人の思念が

心の中に聞こえてしまう能力を持っているため
聞きたくない事まで聞こえてしまい

知りたくない事まで知ってしまうので
とても苦しんで来た。


だから幸恵は
その能力を封じた。


心を閉ざして
学友からも距離を取って生きていた。


ある日、
街を歩いている時に

12~3歳の少年の声が
幸恵の心の中に聞こえてきた。


「金色の夕暮れ・・・・・
 涙が出そうになるのはどうして・・・・

 ひとりぼっちだ・・・・
 だれもわかってくれない・・・・

 だれも考えてなんかくれない・・・・・」



その日から幸恵の心に向かって
少年が呼びかけて来るようになった。



幸恵は悩んだ末に
寝る前に「おやすみなさい」だけを言う事にした。



すると少年の
幸福な思いが飛び込んで来た。



それから少しずつ始まった
幸恵と少年の交流。



それは日本の危機をも予期させる
思いもよらない出来事の始まりだった。







「セカイ系」「サイコ・ファンタジー」
などの作品として分類されているようだ。








■感想


思春期の少女の苦しみ、
デリケートで孤独な思いが

能力者と言う形を取って
描かれていると思う。


孤独な少年少女の心の叫びが
力となった時の大きさは

その悲しさや辛さを
よく表していると思った。


そして
それを乗り越えて行く強さは

前を向いて生きる勇気を
与えてくれると思った。


日本にも
良いヤングアダルトがあると知り

とてもうれしかった。











「セカイ系」とは はてなキーワード



・「きみに会いたい」
 芝田勝茂著の 感想サイト












●読んだ本●



「水銀奇譚」牧野修著 理論社













■あらすじ(扉より抜粋)



シンクロナイズド・スイミングに打ち込む香織には、

現実の高校生活より、
水の中のほうがリアリティがある。


肉体をコントロールし、
完璧な演技をすることがすべての世界。



すべては雨と、
連続して発見された溺死体から始まった。


死んだのは、
香織の小学校時代の教師や友人ばかり。


当時の記憶が、
鈍い痛みとともによみがえってくる。


「選ばれし者」だけが入部できる秘密のクラブ、
錬金術やオカルトにくわしい美少年の謎の失踪……。


やがて、
香織の身にも奇妙な出来事が次々と襲いかかる。








鋭利な言葉と奇抜な発想で異世界を構築する
牧野修がはなつ

青春ホラー・ミステリー!








■感想

香織の感情を切り離したような
冷たく排他的な思いが

ひどくきつく感じた。


プロットは面白いのだが
そんなに恐くないホラーだった。


香織の排他的な所の方が
よほど恐かった。


そんな香織が
皆を救おうと立ち向かうあたりが

それまでに持った香織の人格と
違うように思えた。


自分一人が満足していれば
他人なんか関係ないと

シンクロのパートナーに
合わせる事を全くしない香織が

皆のために闘い出したのは
何故なんだろう?

その辺が
私には読み込めていないのかな?


桐生薫の行動も
ホラーらしいと思っていたら

最後に突然丸く収まったので
何か拍子抜けした感があった。


人はそんなに変わるものか?
そんなに急に?


友人達の性格も
一貫していない感じを受けて

何か、
すっきりしない思いが残った。


ストーリーとしては面白かったのだが
登場人物の性格と行動が

時々一致しない感じがもったいない。


真の科学クラブの所は
とても面白かった。


小学生の時にこんな仲間がいたら
さぞかしスリリングな思いをするんだろう。



それにしても香織の孤独な青春は
淋しくて虚しいんじゃないかなと思ってしまった。

そんな香織の成長記でもあるのだろうな。


事件の後は
心の奥に秘めていた

人のぬくもりを求める香織が
生きて行くのだろうか。



淡々とした描写が
読み易くて面白かった。


香織や薫がなかなか魅力的だった。
だからちょっともったいない。



ハッピーエンドなのに
哀しい感覚が残っている。








●読んだ本●


「遺伝子捜査官アレックス」ローリー・アンドリューズ著

大野尚江=訳 早川書房









■あらすじ(扉より抜粋・全部盛り込んであってすごい!)


軍が運営する病理学研究所AFIPに勤務する
遺伝子学者アレックス・ブレーク。


スペイン風邪ウィルスのゲノム解析と言う
自分の研究に専念していた彼女は、

新所長の就任で、予想外の任務に就く。


海軍基地の周辺で次々に女性が襲われる
連続殺人事件の遺伝子捜査に駆りだされたのだ。


反発しながらも、
徐々に捜査へのめりこむアレックスだが・・・・。


専門知識を武器に、
体当たりの捜査に、

そして危険な恋にも挑む、新ヒロイン登場。











著者紹介には――――――――――


法医学と遺伝子学の専門家であり、
国際的にその名声は知られている。


アメリカ政府によるヒトゲノム計画では、

連邦諮問委員会で法的、倫理的、
社会的影響の審議責任者をつとめた。


シカゴ・ケント大学終身教授。


1999年の
『ヒト・クローン無法地帯 生殖医療がビジネスになった日』

をはじめとするノンフィクションの著作もあるが、
フィクションでは本書がデビュー作となる。


――――――――――――――――






■感想


著者紹介にあるように、

遺伝子研究においては
その筋の超専門家なので

研究所での機械の使い方や
研究費や上司との関係性などが

非常に説得力があり、


「CSIシリーズ」や「クリミナルマインド」の
アメリカサスペンスドラマファンである所の私は

科学捜査については
ある程度知っているつもりになっていたので、

本当の研究者が書くDNAの取り出し方や
捜査の仕方については興味津々だった。


DNAが
実はテレビドラマで見るように
簡単に本人かどうかが解る訳ではなく

他の人との比較としての確率が問題になって来る
なんて事は初耳だったので

とても面白く真剣に読んだ。



最近、
また頭が悪くなって働かないので
この本を読むのに一ヶ月も掛かってしまった(大汗)



また、
研究畑一筋だったアレックスが
科学捜査に携わるようになって行く様子や

人柄についても丁寧に書いてあるので
読み落とすまいと

こちらも丁寧に読んだので
時間が掛かってしまった。



30代の金髪スレンダー美女アレックスの
個性的な人柄は元気一杯で行動的で

読んでいて元気がもらえた。



著者がしたかった事をアレックスにさせているのか
著者が常に前向きに行動している人なのか。


これまでの仕事振りを見ると
きっと著者自身がバイタリティに溢れた

魅力的な人なんだろうなぁと思った。



言うべき事を言い、
信念を貫き通し、

自分に正直で、
反省はしても後悔しない。


猪突猛進で突き進み
失敗はしても自分を責め過ぎず

ポジティブ思考で走り続ける
アレックス。


読んでいて楽しかった。


生き生きとしたアレックスの生き様が
とても気持ち良かった。



恋の行方については
最後の方が省き過ぎ?

少し説明して欲しかったなぁ。
あんなんで良いのか?と思った。



でも、これが処女作だなんて
レベルが高いなぁ。




推理小説を読んでいると
いつの間にか解決していた本に時々出会うのだが

この本も
ヒントや証拠がジワジワ集まって来たせいか

私の頭が悪いせいか
いつの間にか解決していて

リアルな気がした。



ある時、
全部の符号が合って

パチン!と解決なんて
そうそうあるもんじゃないと思うので

リアルに感じたのかもしれない。



でも逆に、
だから一気に解決する話は
すっきり爽快になるのかもしれない。



次作はすぐに本題に入って
読み甲斐があるらしいので

是非頭が働く状況で
読んでみたい(*^_^*)













●読んだ本●


「ようこそ女たちの王国へ」ウェン・スペンサー著

早川書房











■あらすじ(本書の紹介より抜粋)


極端に男性が少ないこの世界では、
当然ながら女王が統治し、

兵士も職人も何から何まで
女性中心だ。


一方男性は
貴重な存在のため、

誘拐などされぬよう
姉妹たちの固いガードのもとで育てられていた。


ウィスラー家の長男ジェリンはもうすぐ16歳。

ある日、
盗賊に襲われた娘を助けたところ、

彼女は王女のひとりだった。


迎えに来た
王家の長姉(エルデスト)レン王女は

生来の美貌のうえに
心優しいジェリンに一目ぼれ、

ぜひ夫にと熱望するが・・・・。








■感想

ウェン・スペンサーの処女作である
「エイリアン・テイスト」が楽しかったので

珍しくも買って読んだ。


男性が希少価値であるために
財産として扱われたり

勉強させずに
女性の相手だけをさせる・・・。


一族の女性全員と婚姻関係にあり
10人~30人の妻がいるが

外に出ると略奪されるので
家の中だけで暮らして行くって。

うううむ。


19世紀の貴族の女性のような扱われ方で
女性がいかに惨めに生きていたかを

男性よ思い知るが良い。。。。


なんて言いたくなった。


ウェン・スペンサーさん、
やっぱり女性だった。


美貌の若者が、
国政をも巻き込む陰謀を暴く

めくるめく冒険小説と言う感じだった。


誠実で健気で賢くて優しくて
勇敢で正直な上に美貌の主人公ジェリン。

アマゾネス的な
強い女性達の社会で賢く生きて行く。

色んな謎や事件を解決して行く
珍しい男性として脚光を浴びても
謙遜さと優しさを忘れない。



難しいのから逃げたい時に
楽しく読む一冊かな。















●読んだ本●



「パラダイスの針」上・下
ジョナサン・ケラーマン著


北澤和彦=訳 新潮文庫



楽天になかったのでアマゾンで見たら
中古が恐ろしく安いです。

アマゾンの「パラダイスの針・上」
アマゾンの「パラダイスの針・下」





■あらすじ(扉より抜粋)



「上」


臨床心理医アレックスと恋人ロビンは、
南海の孤島にやってきた。

島に住む老医師から
臨床データの整理をたのまれたのだ。


二人は、
かつて日本軍が本部にしたという

立派な屋敷に案内され、
楽園生活を楽しむ。


しかし不気味なクモ園を見せられ、
食人を思わせるバラバラ殺人の話を聞き、

ビキニ核実験のエピソードに接するうち、

半分基地のこの島が
恐ろしい秘密を隠していることに気付く――。




「下」


島の将来を託そうと、
老医師が息子のように世話してきた

看護人ベンが、
殺人容疑で逮捕された。


アレックスは
老医師のたっての希望で彼に面会するが、

状況は圧倒的に不利だ。


やがてある嵐の夜、
健康に不安を訴えていた医師の姿が消える。


彼の遺した言葉を手がかりに、
必死に行方を探すアレックスの前に現れたものは――。


密室の謎解きと
驚愕の結末が楽しめる異色作。







■感想


南国の孤島での資料研究の仕事は
アレックスにとって

息抜きも兼ねたものとなり
ロビンにとっても

痛めた手首の療養がてらの
バカンスになるかに見えたが

島に着いてから見えたものの端々に

怪しげで不吉なイメージが散りばめられ
楽園のように美しくのどかな島は

実は問題に満ちている事が
少しずつ顕になって行く。


登場人物の行動や態度が謎だらけで
何と何が繋がっているのか

見当が付かず
非常に好奇心を刺激された。


「上」はあっと言う間に読んだのだが
「下」の方は
どんどん雲行きが怪しくなって来て

秘密の重さに圧倒されて
最後の三分の一に手こずった。


読み応えはたっぷりだった。


パムがその後どうなったのか
全く触れていないのが少し不満だった。

気の毒じゃないか、彼女。


でも秘密だらけ、謎だらけの
面白い一冊だった。









●読んだ本●


「浮遊死体」カレン・キエフスキー著 

―キャット・コロラド事件簿シリーズ―

柿沼瑛子=訳  福武文庫











■あらすじ(あとがきから抜粋)


サクラメントで細々と私立探偵を営むキャットのもとに、
二十歳そこそこの女性が訪ねてくる。

彼女の名はペイジ。

ペイジの依頼は、
自分が子供の頃に事故死したという両親について
調査をしてほしいというものだった。

聞くと、
亡くなった祖母フローレンスの遺産を相続するために、
母ルビーの死亡を証明する書類が必要なのだという。

ところが、
調査の手始めにと訪れたフローレンスの弁護士が、

その夜に不可解な死を遂げ、
キャット自身も何者かに命を狙われる。



事件に深入りしたキャットが
期せずして家庭内の骸骨(秘密)を
探り当ててしまう。






■感想


とても読み易くて面白かった。

キャットやペイジの行動と
育成環境との関係を強く意識して書かれた内容になっているが

やはり育成環境で苦しんでいる私から見ると
キャットの苦しみは中途半端と言うか

悩み足りない気がした。


ストーリーについては
するすると走り出した車に乗っている感じで

いつの間にか大事なシーンが
沢山続いて、

どんどん秘密が暴かれて行くので
飽きないのだが、

探偵なら
そこに気付かないはずはないんじゃないか?

と突っ込みたくなる所が少しあった。


概ね読み甲斐があり
充実していた一冊だった。








●読んだ本●


「殺してしまえば判らない」射逆裕二著 角川書店













■あらすじ(ほぼ抜粋)



首藤彪(たけし)三十四歳の妻彩理は
一年前に東伊豆の自宅で首をナイフで刺した状態で
亡くなっていた。


確たる物証もないまま
妻は自殺として処理され

彪は失意のあまり東伊豆を離れるが、
エリートサラリーマンで仕事人間だった彪は

徐々に行き詰るようになり
彩理の死の真相を究明するために

一年後に仕事を辞めて
再びそこで暮らす決意をする。


だが、引っ越してきた直後、

周囲で発生する陰惨な事件や
トラブルに巻き込まれてしまう。


その渦中で知り合いとなってしまった
奇妙な女装マニアの中年男・狐久保朝志。


外見に似合わず頭脳明晰、
観察力抜群な彼の活躍で、

彪の周囲で起こる事件は次々と解決していき、

さらには
妻の死の真相まで知ることとなるのだが…。


予測不能な展開と軽妙な文体、
そしてアクの強い探偵の鮮やかすぎる推理で、

読者を超絶&挑発の迷宮へと誘う本格ミステリ。

斯界を震撼させる女装探偵・狐久保朝志初登場。


横溝正史ミステリ大賞作家が放つ
超絶&挑発しまくりの本格迷宮推理。









■感想


ただただ題名の奇抜さに惹かれて
手に取って読んだ本です。

確かに死んでしまったら
真実は隠蔽されてしまうかもしれないです。


読み易くて爽やかな文章で
主人公の彪の一人称で語られて行くため

するすると気楽な小説を読むように
読んで行きました。


最後に伏線が解るのですが
少~し無理があるような気がしました。


黄色いドレスしか着ない
女装趣味の中年元検事が

どたばたと走り回って
いつの間にか事件をあちこちで解決していると言う

不思議な推理小説ですが、
推理小説と言うより

彪の人生の大事な転換点のお話し
と言う感じでした。


彪がこれからどう生きて行くんでしょうか
暖かい目で見守りたい気持ちになりました。






●読んだ本●


「復讐の傷痕―遺伝子捜査官アレックス―」ローリー・アンドリューズ著

大野尚江=訳  早川書房












■あらすじ(抜粋)


身元不明のその死体がAFIPに運び込まれたのは、
特異な銃創で刺された傷口があったからだ。

アレックスはDNA分析で、
被害者が最近ベトナムへ渡航するための

予防接種を受けていたことを突きとめ、
身元を特定する。


だが捜査は行き詰まり、
アレックスは手がかりを追ってベトナムへ。


事件の裏に
巨大な陰謀が潜んでいるとも知らずに・・・・・・・

難事件に、危険な恋に、
体当たりで挑むアレックスの奮闘を

スリリングに描く会心作!







■感想


アレックスシリーズの2作目を飛ばして
3作目を読んでしまったらしい。

でも読み進めるには
特に支障はなかった。


恋人のルークがヨーロッパに出掛けて行き
アレックスの大冒険が始まる。

どうしてアレックスの事件は
恋人が消えている間に起こるんだろうか?

仕事の出来る女だけど
恋人と同棲していると

仕事中心の生活や事件の関与には
躊躇が出てくるからだろうか?


AFIPの所長ワイアット大佐の
肝いりの問題を押し付けられ

断り切れずに始めた
アメリカ兵が持ち込んだベトナム人骸骨の
返還に関して

身元特定のために
遺伝子を調べ始めたアレックスは

父が亡くなったベトナムでの行動と
何らかの関係があるのではないかと不安になり

敬愛する父の姿を追って
骸骨を持ち込む経緯調べに熱中する。


二つの事件がベトナムへと向かい
アレックスは恐ろしい事件に巻き込まれるのだが、

事件の背景が見えて来て
解決しそうなのに

三分の二までしか読んでいないので
残ったこの厚さで何が語られるのだろうか?

と思っていたら
とんでもない事件に発展して行く。


読んでない方はお楽しみに(*^_^*)



だけどこんなに危険な目に合っていたら
トラウマでおかしくならないだろうか?

と個人的に思った。


何故彼女は普通に生きていられるのかな?
すご~く基盤がしっかりしている?

でもふらふらした男性とばかり付き合っているアレックスは
父が不在だった事に関連した不安があるのだろうと思う。


専門的な技術が随所に出て来て
それはとても面白かった。

分析して調べて行くのは
とても面白そうだ。


wowowでやっている
「リ・ジェネシス バイオ犯罪捜査班」でも

地球規模の危機を回避するために
ギリギリに追い詰められた状況の中で

最高の技術者達がぶつかり合い
マクロの難問を解きほぐして行くのだが

そのスリルに似た謎解きがあって
面白かった。


ただここは「気付くだろう」
と突っ込みたくなった所もあったけれどもね。

そして時に行動面で
軽薄さを感じないでもない。



最高の科学者が書いた
スリルと危険に満ちた

ベトナム戦争の傷の深さを知る事の出来る
大切な一冊だと思った。


アレックスは大胆で
猪突猛進で、

行動派の女性だ。



スケールの大きさにも
脱帽した。


こんなに自分を信じて生きていられるって
うらやましい限りだ。








★追記(途中で書いていたもの)


その道のプロエッショナルが書いているだけあって、
専門的な事がとても刺激的で面白い。

DNAから個人を突き止めるために
色んな手法を思い付いてソフトを作ったりする。

面白い、その道筋が。



「血液や皮膚のDNAは
 両親から半分ずつ受け継いだ計3万個の遺伝子を含んでいるが、

 頭蓋骨は
 母親から受け継がれるミトコンドリアDNAだけで、

 遺伝子は37個しか持たず、
 細胞にエネルギーを与える働きをする」


へえええ~~~~~。
知らなかったなぁ。

頭蓋骨のDNAは母親からだけのものだなんて。
しかもたったの37個!!


少し賢くなった気がした(((((^m^







●読んだ本●


『「気」の意味』―仙道が伝える体の宇宙―

島田明徳著  地湧社











これは
小さい頃から心について思考し、

思春期には
「私とは誰なんだ?何をするために生まれてきたんだ?」

と苦悩し続けた著者が『気』と出会い
様々な武術や修行に明け暮れて10年近い年月が経った頃に

ようやく『気』を実践している
仙道の老師に巡り会い、

弟子入りを許されて修行をして行くうちに
『気』の本質を体得し

自分自身を知り、
宇宙を知った著者の体験と知恵の書である。










■目次


   はじめに


第一章『気』との出会い   

     疑問、疑問……悶々……

     師を求めて……そして師との出会い

     本格的な修行に入る


   付◎信じる者は救われる




第二章『気』の修業体験

     私の修業体験

    『気』の体感

     小周天

    『気』が勝手に動き出す……そして快感、快感

    精宮瞑想

    広がる意識

    練士を伝授される


   付◎出神法(幽体離脱法)




第三章『気』の真髄

    『気』って何?

     頭脳知から体験知へ

    正しく『気』を理解するために

    練精化気

    練精化神

    『気』とは自然の摂理


   付◎五感を超える――超能力と願望法




第四章 病いと『気』の関係

    病は気から

    病気を知る―自分自身を知る

    病気って何?

    私たちの身体

    自然との不調和が病気の原因

    二つの意識

    進化を続ける人間

    なぜ意識は進化するのか?

    法則からの逸脱

    病気は人生の道標


   付◎ストレスについて




第五章『気』の力

    『気』の力

    潜在するパワー

    『気』の力の原理

    心身のリラックスとイメージによる力

    重心圧(丹田力)と合理的な身体運動

    『気』の力で人を飛ばす?

    リラックスとは解脱への道


   付◎兜割り




   あとがき











■感想


こんなにも純粋な人がいて
しかも世間や人に惑わされずに

自分が知りたい、
得たいと思っている真理を追究し続けて

探し当てるまで
何でもやってみる人がいるものなんですね。


そしてとうとう見つけてしまったと言う
すごい一冊でした。



気功を自分のものにするまでの
具体的な体験が丁寧に書いてあります。


例えば瞑想中のある時、
自分の周囲に意識が拡がって、

周囲の山々がみんな自分になってしまった。


と言う経験が書いてありました。


それは単なるイメージではなく、
自我意識が残っている状態で、

自分を意識できる状況下において
その自分が、

山であり、
川であり、

空であるといった状態を
はっきり認識できている。


まるで自分自身が
宇宙そのものになったように感じた。


この宇宙が始めから意識(意)を持った
極微の微粒子である物質の活動による

エネルギーの充満した空間から
成り立っている事を知り、


そのエネルギーこそが『気』だと
筆者は語っています。


そしてこの宇宙は
ある一定の法則を持って存在していることを

身をもって体験したわけでした。


これは所謂「悟り」と言う状態でしょうね。
気功を修行してそこまで行ってしまった。


本当に凄い人だと思いました。





そんな事も書いてあり
とても面白い本でした。


著者の謙遜で真摯で実直な性格が
伝わりました。


この空間全てに行き渡る
エネルギーと言う意思のあるもの。



なるほど~~~~。
なるほど~~~~~~~~。






●読んだ本●


「ティンカー」ウェン・スペンサー著

赤尾秀子=訳 ハヤカワ文庫











■あらすじ


21世紀末、
中国が開発した異次元間転移装置ハイパーフェーズにより、

異世界への道が開かれた。


だがその装置は未完成で、
なぜかピッツバーグだけが

魔法が支配するエルフホームに転移してしまった。


ティンカーは、
そのピッツバーグでスクラップ業を営む、
18歳の天才少女。


ある日、
魔法の狛犬に襲われた一人のエルフを助けたことから、

地球・エルフホーム・オニヒダの三世界にまたがる
奇想天外な大事件に巻き込まれることに!








■感想


人が感情移入をするには
二種類あるのではないだろうかと思う。

自分が抱える問題や苦しみと似たもの抱えた
共感を呼ぶ人や話や状況。


あるいは自分が持っていないものを持っている人。
自分が出来ない事をしてくれる人。

自分の代わりに何かを成し遂げてくれるので
うれしくなる人や状況。


ティンカーの場合は自分に出来ない事を
成し遂げてくれるスーパーヒロイン♪


数学系の天才少女で
行動派、性格は真っ直ぐで正直

思いやりがあって元気。


思いもよらない出来事に翻弄されつつ
その中で意外な行動や知恵で

困難を乗り越えて行く
大冒険SFファンタジーと言う所か。


恋に疎いティンカーは
試しにデートをしてみたり

試しにキスをしてみたりと
率直で幼くて可愛くて

でも緊急時には
とても頼りがいのある天才になる。


アニメのように
奇想天外なストーリーとテンポは

理屈無しに大いに楽しめた。


気楽に読むのに最適で
すごく楽しいSF冒険ファンタジーでした。







●読んだ本●


「暗いところで待ち合わせ」乙一著 幻冬舎文庫









■あらすじ

視力をなくし、独り静かに暮らすミチル。
職場の人間関係に悩むアキヒロ。

駅のホームで起きた殺人事件が、
寂しい二人を引き合わせた。

犯人として追われるアキヒロは、
ミチルの家へ逃げ込み、
今の隅にうずくまる。

他人の気配に怯えるミチルは、
身を守るため、

知らない振りをしようと決め、
奇妙な同棲生活が始まった――。

書き下ろし小説。









■感想


事故によって視力を失い
父まで突然失って

独りになったミチルの
孤独と悲しみが

じわじわと心に染み込んだ。


傷付く事が恐いので
家に引きこもり

植物のように転がって一日を過ごし、

いつかひっそりと
寿命が尽きるのを待っているミチルの生き方は

もしかしたら
私の生き様も似ているかもしれないと思った。


受身で何となく生きて
何となく一日を過ごして

死ぬのを待っているだけの
希望の無いミチルの生き方が、

悲しくて胸を貫いた。


警察に追われるアキヒロもまた
孤独で人と関わる事を拒絶して生きて来た。

じっと座り込んで
密かに生きながらえるアキヒロ。


孤独な二人が居場所を求めて
希望を見出して行く様に

鼻がつんと痛くなり
涙がこみ上げて来た。


ただの有り得ない設定の
不気味な小説かと思って読み始めたのに

二人のやるせない孤独感と
逃げてばかりの弱さと

誠実で真面目な所と
精一杯な生き方が胸にじんと来た。


娘に薦められて読んだのだが
若い人がこのような小説を書き

若い人がこのような小説を読むのは
とても大切な出会いだと思った。


若くない私にも
大切な世界だと思った。



娘曰く

「これはね、
 優しさの詰まった小説なんだよ」


本当に、
優しさの詰まった小説だった。





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