いいこと探検家の人生冒険ポジティブ日記

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第1章:水資源の危機



第1章 水資源の危機



■水不足の現状



地球上のあらゆる生命を育んできた「水」。

「水」は有限で貴重な資源です。


いま、その「水」が「水不足」と「水質汚染」という2つの大きな
問題にさらされています。

国連の報告によると、現在、安全な飲み水が不足している人は
世界で10億人以上に達し、およそ25億人が適切な衛生サービス
を受けていない状況です。

また、予防できるはずの水系感染症が原因で、年間200万人の
子供たちが死亡しているということです。




◆干ばつや大規模な渇水



数十年前から、雨が降らないために干ばつや大規模な渇水が
頻繁に起こるようになりました。

雨が降らないとやがて砂漠化し、農作物が収穫できなくなります。
このため特に人口爆発している地域では、極端に食糧が不足し、
飢餓を引き起こすことになります。

たとえば、アフリカのサヘル地方では30年も雨期に雨が降らず、
最悪の年には20万人以上が餓死し、1980年以降は100万人
が餓死しています。

アフリカだけではなく、世界中で大規模な渇水が頻繁に発生して
います。

国連によると、現在、アジアやアフリカなどの31カ国が絶対的な
水不足に悩んでいます。

そして水不足が深刻な食糧不足をもたらし、8億人が1日2000
カロリー未満の栄養しか摂取できていないのです。




◆巨大な湖が消滅



中央アジアにある「アラル海」は世界で4番目に広い湖(九州と
四国を合わせたくらい)でした。

このアラル海が1960年以来急激に縮小し、40年前に比べて
面積は38パーセントに、推量は16パーセントにまで激減して
しまったのです。

このままでは、20年以内にアラル海は消滅するといわれてい
ます。


水量が激減したことにより、湖水の塩分濃度が1960年の6倍
にも達し、「死海」の値さえ超えてしまっています。

湖水が干し上がった場所では塩類が結晶化し、冬でもないのに
一面雪景色のようになっています。

当然のことながら、ほとんどの魚が姿を消し、漁業は壊滅的な
打撃を受けています。

また、舞い上げられた塩類には農薬や化学肥料が高濃度に混じっ
ているため、貧血症や肺疾患など、住民の健康にも深刻な被害を
与えています。

このような例はアラル海だけではなく、地球上の様々な場所で見ら
れるようになってきました。



◆地下水の枯渇



近年では、農業をするのに川の水だけでは足りなくなってきたので、
大きなポンプを使って地下水を大量にくみ上げるようになりました。

そのために、至る所で地下水位が低下しつつあります。

雨や雪融けの水が自然に地下水となる量よりも、くみ上げる量が多
ければこうなるのは必然です。

このままでは、やがて地下水が枯渇してしまうのは確実です。

地下水だけでなく、湖や沼の水も少なくなり、湿地も消えつつあり
ます。

水が不足しているために、インドやバングラデシュの農村地帯の人々
は、猛毒のヒ素で汚染された地下水までも飲んでいます。

その数は数百万人にも上るといわれています。

地元では安全な飲み水を確保するために、汚染された水脈を避けて
深さ約200メートルの井戸を堀り始めました。

しかし新しい井戸だけでは不十分で、しかたなくヒ素の入った地下水
を飲み続けている人がいるのです。

普通では、毒だと分かっていて飲むなんて考えられません。

それであっても飲まなければならないほど、いま、水は不足している
のです。



■地球の水



◆極めて少ない淡水



地球上に存在する水の97.4%は海水です。

魚やクジラのような海の生物は海水でも生きていけますが、
陸上の生物が生きていくためには、淡水という塩分濃度の
薄い清浄な水でなければいけません。

その淡水はわずか2.6%しかないのですが、その大部分は
南極や北極の氷として存在しています。

ですから陸上の生物が使える淡水はもっと少なく0.8%と
言われています。 

しかも人間が飲料用など比較的簡単に使える淡水は、0.007%
というごくわずかな量なのです。

このわずかな量を陸上のすべての生物で分け合ってきました。

人間、動物、鳥、植物・・・・。

まんべんなく分け合えば、十分足りる量のはずでした。

しかし、一部の人間が大量に使うことで、みんなに行き渡ら
なくなってしまっているのです。


水道水について見てみると、日本の1人1日あたりの水道使用量
は350リットルほどで、ヨーロッパの主要先進国とほぼ同水準
です。

ただしアメリカの約600リットルに比べると少なくなって
います。

というより、アメリカが多すぎるのです。


環境先進国であるヨーロッパと同水準だからといって喜ぶわけ
にはいきません。

日本は農産物、たとえば小麦や大麦、豆類の9割以上、果物の
約半分を外国から輸入しています。


農産物1トンに対して1000トンもの水が必要といわれており、
農産物を輸入することは、1000倍の重さの水を輸入することに
他ならないのです。


国内の研究者らで組織する「川と水委員会」の試算によると、
これらの農村物を輸入することで52億立方メートルの水を
輸入し、消費していることになります。

これは、国内のおよそ3000万人分の生活用水に匹敵します。

この他にも、木材や繊維製品を輸入しており、「日本人の生活
と経済は世界の水によって支えられている」といえるのです。




◆仮想水



実際に水を輸入するわけではありませんが、穀物を育てるため
に大量の水が必要です。これを「バーチャル・ウォーター(仮想
水・実際に必要な水)と言います。

たとえば、トウモロコシで1キロあたり1.9トン、小麦粉で
2.0トン、精米後の米 で3.6トンの水を利用していることに
なるのです(総合地球環境学研究所の沖助教授の研究)。

もし、これらをエサとして使って日本で家畜を育てた場合、鶏肉
でも4.5トン、 豚肉で5.9トン、牛肉では何と21トンの
水を利用していることになります(いずれも1キロあたり)。

牛丼1杯食べるのは、何と2トンもの水を利用していることに
なるのです。




◆生物は水がないと生きられない




水不足になると、陸上の生物は大変です。


35億年前、単細胞生物が海の中で誕生し、地球上の生命は
すべてここから進化してきたと言われています。

そのために体内に多くの水を含んでいます。


もちろん人間も例外ではなく、人体の60%以上が水です。


水を飲まなければ4~5日で人間は死んでしまいます。

砂漠の生物でさえ、水がまったくなければ生きていくことは
できないのです。


ほんの100年前まで、人間はわずかな水を人間同士、また
ほかの動物や植物と分かち合ってきました。

昔の人間は、水は森をつくり、土をつくり、そしてその恩恵で
人類は食糧をつくり、文化を育んできたということを知っていま
した。


しかし、最近は「水は地球の限りある共有資源である」という
ことを忘れている人が増えてきているようです。




◆水をめぐる争いに発展?




石油が枯渇したとしても、不便になるだけで命がなくなるわけ
ではありません。

しかし、水がなくなると人間は絶対に生きていけないのです。

このため、水不足に悩む国家や民族間で水の奪い合いが始まる
可能性があります。


アフリカ、中近東、中国、中央アジアなどでは、あと25年で
人口が倍増するため、水の供給が困難になるのは避けられない
状況と言われています。


国連は、「20世紀の戦争は主に石油を原因としていたが、
21世紀の政治的、社会的戦いは水をめぐるものになろう」
との予想さえしているのです。


特に河川は、国境を越えて流れているものが多く、ガンジス川、
ナイル川、ヨルダン川、チグリス・ユーフラテス川、アラル海
に注ぐアムダリア川、シルダリア川などの流域では、水をめぐる
紛争が起こる危険性が高いと言われています。


すでに、紛争が起こっている地域も増えてきています。

1990年以降でも、南アフリカ共和国、イラク、インド、
ユーゴスラビアなどで、紛争が起こっています。

特にインドでは、カーナタカ州とタミル・ナドゥ州をまたがって
流れるコーベリー川からの灌漑用水の分配をめぐり、両州の
住民が激しく対立して推定で50人が死亡しています。


また、将来、水不足が懸念される国の多くが「核兵器保有国」で
あるのは、大変深刻な問題です。


私たちは、「水資源の危機が平和に対する脅威でもある」という
ことを自覚する必要があるのです。



■加速する水不足



この先、水不足はどのように進行し、どのような影響を与える
のでしょうか。

これからの水不足は、次のような要因によって深刻になって
いくでしょう。




◆灌漑(かんがい)




灌漑とは、田んぼや畑に水を引いてきて土地を潤すことです。

昔は、灌漑用水としては川の水が使われていました。

ところが、灌漑の規模があまりにも大きくなってしまい、多く
の川が干し上がってしまったのです。


その結果、川の水が流れ込まなくなった湖が消滅の危機に瀕して
います。

前出のアラル海の消滅も、過剰な灌漑が原因です。

アラル海には、アムダリア川とシルダリア川という2つの大きな
川が注いでいました。

その川の水を綿花栽培のための灌漑用水として使い尽くして
しまった結果、とうとう川の水がアラル海にほとんど流れ込ま
なくなってしまいました。

40年間で両河川からの流入量は10分の1以下にまで激減した
のです。




◆水消費量の急増




工業化の進展による工業用水や、都市化による生活用水の急増に
よって、世界の年間水消費量は1950年以降3倍以上になりました。

1900年から現在までには6倍も増えています。


この間に世界人口は3倍になっているので、水の利用量は人口
増加の2倍以上のペースで増加していることになります。

一方で1970年以来、世界人口が18億人増加したため、世界の
ひとり当たりの水供給量が3割以上減少しました。


また生活排水や工場廃水で汚れてしまって、利用できる水が少なく
なっていることも水不足に拍車をかけています。

すでに一部の地域は、慢性的な水不足に苦しんでいます。


国連は、「2025年までには、世界人口の3分の2が水不足に
悩まされる可能性がある」と発表しています。

特にアフリカでは、深刻な水不足に見舞われる人口が2010年
までに4億人に達すると予想されているのです。


グローバル・ウォーター・ポリシー・プロジェクト代表の
サンドラ・ポステル氏は、

「これまで水資源が豊かな地域と考えられてきた米国や中国でも、
一部で深刻な水不足に見舞われる可能性がある」

と言っています。


水不足は農業生産にも悪影響を及ぼし、これは食糧不足に直結
します。

前出のポステル氏は、

「現在、農業で使われる水は世界の水使用量全体のおよそ3分の2
を占めており、発展途上国では9割に達する国も多い。2025年
には地球の人口が80億人に達し、食糧需要も大幅に増加すると
見込まれている。
これほどの人口を養えるだけの食糧を生産するには、水の供給量を
およそ8000億立方メートル(8000億トン)も増やす必要が
あり、これはナイル川の年間流量の10倍以上に匹敵する」

と指摘しています。



◆開発による水源消滅



リゾートセンターやゴルフ場を作るために、保水能力の大きい
森林を伐採したり、湖や川を埋め立てたりしたため、至る所で
水源が消えつつあります。

また都市化のために、水田がどんどん工場や住宅地に変わると
同時に、そこにあった水も消えてしまいました。


道路をアスファルト化したり、川の護岸をコンクリートで固めて
しまったので、雨水や川の水が地下に流れ込まなくなったことも
大きな問題です。


このような開発は、現在も続けられており、将来もより大規模に
推進されると予想されます。




◆地球温暖化による気候変動




国連は、地球温暖化によって、

1)干ばつの被害が増える、

2)日本を含む温帯アジアでは多くの河川で流量が減る、

3)山岳氷河の体積が2050年までに25パーセント減り、
  2100年には氷河からの水の流出量が現在の3分の2になる

と予測しています。


地球温暖化については次の章で詳しく述べますが、気候変動が
激しくなるというのが特徴です。


つまり、

「降るときは集中豪雨、降らないときはまったく降らない」

という極端な状況が予想されているのです。


山林地帯の過剰伐採や人工林の荒廃などで、森林の保水能力
そのものが減少してきています。

そこに集中豪雨が降ると、森林や土壌の浸透水量(保水能力)
を軽くオーバーしてしまい、あふれた雨水はあっという間に
海に達してしまいます。


一方、干天が続くと河川が干し上がります。


さらに、気温の上昇で山岳氷河や豪雪地帯の積雪量が減ると、
雪融け水も減少します。

これらのことから、地球温暖化が進むと、淡水資源が減少する
ことは避けられないと思われます。


日本の国立環境研究所は、

「21世紀の後半に二酸化炭素濃度が2倍になると、中国から
西アジア一帯、オーストラリア、東南アジアなど広い範囲で、
渇水時の川の流量が現在より25~50パーセントも減少する」

と言っています。



■広がる水質汚染



水を考える上で、もうひとつ大きな問題があります。

水質の汚染です。


日本やアメリカなど経済成長を重視する国では、大量生産・
大量消費が美徳とされています。

この社会は、大量廃棄を前提にして成り立っています。

その結果、大量の廃棄物が、煙として、スクラップとして、
また汚水として排出されています。


これらの廃棄物が河川、湖沼、海洋、地下水などを汚染し、
生態系の破壊や健康被害をもたらしているのです。


最近では、この問題が途上国にまで広がり、国境を越えた
地球環境問題へと発展しています。


世界保健機関によると、世界の50%の人に対して衛生設備
が未整備で、途上国における病気の80%は汚れた水が原因
です。

その結果、8秒に1人の割合で子供たちが水に係わる病気で
なくなっていると言われています。




◆水域の自浄作用




川や湖などの水域には、入ってきた汚れを浄化する働きが
あります。これを自然浄化作用とか自浄作用と言います。


しかし、浄化するといっても限界(自浄限界)があり、それ
を超えると、次から次に入ってくる汚れがどんどん蓄積する
ことになります。


人口が極端に集中している大都会では、大量の生活廃水や
産業廃水が河川や湖沼に流れ込んでいます。

こういった廃水には有機物が大量に含まれています。


有機物はプラスチックとか石油などもそうですが、この場合
は生ゴミやし尿のように、放っておくと腐ってしまうような
ものと考えてください。


このような有機物は微生物にとっての栄養となるので、水中
に排出されると、この栄養を求めて微生物が集まってきます。

そして微生物が栄養物を食べるとき、酸素を消費するのです。


水中に溶けることのできる酸素(溶存酸素)の量は、多くても
10ppm(水100キログラムの中に酸素が1グラム)くらい
です。


ここでppmというのは100万分の1を表すことを覚えて
おきましょう。

100分の1を1%と言うように、100万分の1を1ppmと
表します。



溶存酸素が十分にあるうちは問題は起こりません。


しかし水中に栄養分が多くなると、それだけたくさんの微生物
が集まってきて、あっという間に酸素を使い尽くしてしまいます。

魚や貝は毒によってではなく、酸欠で死んでしまうのです。

その後で、メタンガスや硫化水素などが発生するようになり、
さらに水質が悪化することになります。


私たちは、

「栄養という大切なものを棄てて、貴重ないのちを失っている」

ということに気づく必要があります。


このように、有機物の量が自浄限界を超えると、水が酸欠状態
となり、汚染が進んでしまうのです。



◆水質汚染の原因




1.河川



河川には、大量の生活廃水や産業廃水が流れ込んでいます。

家庭からは、トイレの汚水と生活廃水と言われる台所や
お風呂の水が排出されます。

トイレからの汚水は、下水処理場や浄化槽である程度処理
されますが、生活廃水は、多くの地域でまったく処理されず
に河川にたれ流されているのです。


この生活廃水の方がトイレからの汚水よりも2倍以上も多く
の有機物を含んでいます。

これが下水道の普及の遅れも手伝って、人口の極端に集中して
いる都会の河川に大量に流れ込んでいます。


また、上流にダムを建設することによって、水質が悪化する
ことがあります。

ダムを造ると水の流れが止まってしまいます。

水は流れていないと十分な酸素が溶け込まなくなります。

さらに、ダム湖には上流から運ばれてきた栄養分たっぷりの
土砂が沈んでしまいます。


そうなると自浄作用では対処できなくなり、水質が悪化して
しまうのです。


その水が下流に流れて行って家庭排水などと合流すると、
自浄作用がまったく機能しなくなることは十分考えられ
ます。


ここ10年ほどで都会周辺の川が少しずつきれいになって
きているように見えます。

魚が戻ってきた川もたくさん出てきています。


しかし、安心してはいられません。


以前はヘドロや藻の繁殖といった、黒色や緑色の目に見える
汚染でした。

ところが最近の河川は、透明にみえても猛毒のダイオキシン類
やPCB、有機塩素化合物、病原菌などが含まれていることが
あります。

そしてこれらの多くが、水生生物に蓄積して悪影響を及ぼし、
ひいては私たち人間の健康被害をもたらしてしまうのです。




2.湖沼




湖沼は、自然の状態でも徐々に汚れていきます。


湖沼は陸地で囲まれているために、湖水が海のように大量
には入れ替わらないのが特徴です。

こういう水域を「閉鎖性水域」あるいは「停滞性水域」と
いいます。


このため、自然の状態でも周囲の山林から落ち葉などが
流れてきて、リンや窒素が蓄積することになります。

これに加えて最近は、人間が排出する生活廃水によって
湖沼の汚染がどんどん加速されています。


たとえば、合成洗剤に含まれるリンや窒素、油や生ゴミに
含まれる有機物によって栄養過多の状態、つまり富栄養化
が進んでいます。


富栄養化が進むと、藻やアオコなどが大量に繁殖して湖面が
緑色に染まったり、真っ赤な赤潮が発生することになります。

そして、それらが大量の酸素を消費して湖水が酸素不足と
なり、魚など水に棲む生物が死んでしまうのです。


この意味で、東京湾や大阪湾、そして瀬戸内海なども閉鎖性
水域ですので、湖沼と同様に考える必要があります。



3.海洋



海は地球の表面積の7割を占めていて、すべてがつながって
います。

そのため、どこかが汚染されると、海流に乗って地球全体に
広がります。


たとえば、石油が大量に流出すると薄い油膜となって海を覆い、
広範囲の生態系を破壊することになります。


また大気中に放出された有害物質も、やがて河川や雨を通じて
海に入ってきます。

工場の煙や自動車の排気ガスも酸性雨などに混じって、やがて
は海を汚染してしまうことになるのです。


PCBや農薬が北極海から検出されていますが、この大部分は
大気によって運ばれたと考えられています。



●北海でアザラシが壊滅



1988年に北海沿岸で18000頭ものアザラシが死に、海岸
に打ち上げられました。

高濃度の有害物質でアザラシの免疫力が低下し、ウイルスに
感染したのではないかと考えられています。

北海は海といっても非常に狭く、日本海の30分の1しか水量が
ありません。

この狭い海に廃水、廃棄物の投棄、海底油田からの原油漏れ
などで、大量の有害物質がヨーロッパ中から流れ込んだのです。



●タンカーなどから大量の原油が流出



1989年にアラスカで起きたバルディーズ号の座礁事故で、
4万トンを超える原油が流出しました。

周辺の海岸や島々が汚染され、ラッコや海鳥が次々に死んで
しまったのです。

事故から10年以上たった現在でも、ニシンの漁獲量が大幅に
減り、カモ類の卵の殻が極端に薄くなるなど、後遺症が続いて
います。


原油が流出すると、1)油が薄膜となって海面を覆ってしまい、
海水に酸素が供給されなくなる、2)原油を分解するために使用
した界面活性剤が毒として作用する、などによって、長期に
渡って海域の生態系を破壊してしまうのです。


日本でも、若狭湾沿岸で起きたナホトカ号の座礁事故で、大量
の原油が流出したのは記憶に新しいところです。



4.地下水



地下水も水不足だけではなく、汚染されて大変危険な状態に
あります。


アメリカに半導体などのハイテク産業で有名な「シリコン
バレー」という地域があります。

実はこの地域内の地下水から、約100種類の化学物質が発見
されているのです。

シリコンバレーでは、飲料水の約半分を地下水に依存していま
すが、ここの汚染はすでに地下150メートル以上の深井戸に
まで達していて、今後被害が広がるのではないかと心配されて
います。


シリコンバレーと同じようなことは、日本でも頻繁に起こって
います。

今でも電気工場の地下水から、発ガン性のある有機塩素化合物
が、環境基準の1万倍前後という高濃度で検出されています。


最近は「灌漑などで地下水を大量に消費している」ことは前述
しましたが、これによっても汚染が進行しています。


過剰な汲み上げで地下水の水位が下がれば、空洞部分ができて
そこに空気(酸素)が流れ込んできます。

地下水中には酸素がほとんど溶け込んでいないので、ここに
酸素が入ってくると酸化力が高まります。

そうなると、水に接している土や鉱物が酸化され、毒性のヒ素
酸化物などが水に溶け出てくるのです。



■水不足と水質汚染が同時進行している



水が不足すると自浄作用が働かなくなって、水質汚染が進行
します。

また、水質汚染が進むと、利用できる水が少なくなります。


私たちは、大量に水を消費していると同時に、大量の廃棄物で
水を汚染しています。

このために、水不足と水質汚染が同時に進行し、しかも著しく
加速されているのです。


例えば、製造業では大量生産するために大量の水を消費します。

このため生産量が増えるほど、より大量の水が河川や地下から
汲み上げられ、また多種大量の汚染物質が排出されるようになり
ました。


その結果、地下水の使いすぎによる水不足や地盤沈下、廃水の
たれ流しによる水域の汚染が問題となったのです。


近年、先進国では取水規制や廃水規制が強化され、水質が
不十分ながらも徐々に改善されてきています。


ところが、中国や東南アジア、中南米などの発展途上国では、
かつての先進国が体験した以上の大変な水不足と汚染に苦しん
でいます。

この傾向は、現地の経済発展に伴ってますます強まっています。



■私たちは栄養を捨てている



次の数値は、ふだん私たちが台所から捨てているものが、
いかに環境に悪影響を及ぼすかを示しています。


・米のとぎ汁  :   600倍       

・コーヒー   :  1000倍       

・ラーメンの汁 :  5000倍      

・味噌汁    :  7000倍       

・おでんの汁  : 15000倍       

・生ジュース  : 15000倍      

・牛乳     : 15000倍       

・ビール    :      倍       

・コーンスープ :      倍      

・醤油     :     倍       

・てんぷら油  :      倍       

・マヨネーズ  :      倍       




★ビール~マヨネーズは何倍になるでしょうか?



  考えてみてくださいね。


  答えは明日発表します。




話を戻しましょう。



例えば、米のとぎ汁を1リットル流した時、600リットル
つまり600倍の水で薄めないと魚が棲める水質にはなりま
せん。

ただし、これらは比較的汚染に強いと言われるコイやフナに
対する数値であって、アユやヤマメなど清流魚が生きていけ
るには、この何倍もの水量が必要なのです。


ここで大切なことは、マヨネーズも牛乳も栄養そのものだ
ということです。


以前にも述べましたが、食べ物が水の中に排出されると、
この栄養を求めて微生物が集まってきます。

そして微生物が栄養物を食べるとき、酸素を消費するの
です。


水中に栄養分が多くなると、それだけたくさんの微生物が
集まってきて、あっという間に酸素を使い尽くしてしまい
ます。

その結果、魚介類が酸欠で死んでしまうのです。


また、水中が嫌気性といわれる状態になり、メタンガスや
硫化水素などが発生します。

いわゆる死の川、死の海の出現です。


多くの人は

「川の上流の方が下流よりも水がきれい」

と思っているようです。

しかし本来は、下流に行くほど自浄作用によって水質が良く
なるはずなのです。


とはいえ、現実には下流の方が確かに汚れています。


これは、ほとんどが人為的に事上限界を超えた廃水を流し
続けているのが原因なのです。


いのちを育むはずの「栄養」を捨てて、いのちを奪う。


私たちは、知らず知らずのうちに、こんな理不尽なことを
しているのですね。



はじめに昨日の問題の解答です。



・ビール    : 16000倍       

・コーンスープ : 26000倍      

・醤油     :  3万倍       

・てんぷら油  :   20万倍       

・マヨネーズ  :   24万倍       



第一秘書さん、大正解でした。


さすが秘書!


拙著を読んでいただき、ありがとうございます。




それにしてもスゴイ数字でしょう?


企業や行政に責任を押しつけてる場合じゃないですね。







■私たちにできること



◆具体的な方法


では、一体どうしたら、この水に関する問題の悪循環を断ち
切ることができるのでしょうか。


ここで重要なことは、汚れた水を浄化すること以上に

「水を節約する」

「水を汚さない」

ことです・・・・当たり前ですが・・・・。


まず第1に、「徹底した節水を心がける」ことが大切です。

たとえば、

「頻繁に水道の蛇口を締める」

「節水コマ(水道管に挿入する節水用部品で、水量が約半分
になる)をつける」

「トイレのタンクに栓をしたビンなどを入れて、タンクに
貯まる水量を少なくする」

「お風呂の残湯を洗濯・トイレ・庭の水まきに利用する」

「洗車をやめる」

などがあります。



第2に、「洗剤・石ケン・シャンプー・化粧品の使用量を
少なくする」ということも大切です。


汚れの落ちが悪いからと、石ケンをたくさん使うのでは意味
がありません。

いまでも、世界の8割の人は石ケンを使っていないのです。


化粧品に関しても、日本だけで年間36万トンもの化粧品が
使われ、洗顔時に石ケンとともに流れ出ています。


環境に良いものであっても、必要最小限の使用にとどめる
ことが必要です。



第3は「資源の有効活用・再利用」です。


たとえば、

「雨水をタンクに貯めて、トイレの水や洗車用水として使う」

「米のとぎ汁を植木や庭の植物にかける」

などが考えられます。


こういった身近なことが、多くの人の行動につながれば、
大きな力となります。


ぜひ、皆さんにも試していただきたいと思います。



◆合成洗剤と石ケンはどちらが環境にやさしい?



よく

「石ケンは合成洗剤に比べて環境にやさしい」

といわれていますが、大切なことを忘れると何にもなり
ません。


確かに、石ケンの方がデータ的には優れているといえます。

しかし

「環境にやさしいものであっても必要最小量を心がける」

という意識がなければあまり意味がありません。

表面張力がなくなり沈んでしまうアメンボにとっては、どち
らも大敵です。

「いのち」という観点で考えることが大切なのです。



また、石ケンか合成洗剤かのいずれかに正解があると思い
込んでいると、もしほかに良い方法があったとしてもそれ
に気づかない可能性があります。


実は、たとえば洗濯の場合、石ケンも合成洗剤も使わなく
てもすむ方法があるのです。


それは、備長炭と天然塩を使う方法です。

この方法を工夫したのは、京都で美容室を経営する牧野裕子
さんです。

以前から「木炭を使えば洗剤や石ケンは不要」という情報は
ありましたが、牧野さんは独自に全自動洗濯機でできる方法
を試行錯誤の末、考え出されたのです。


私も昔、祖母が灰を使って手洗いで洗濯していたのを覚えて
います。


また牧野さんは、本職の美容室でもシャンプーをいっさい
使わずにお酢を利用した洗髪を実践されています。


このように、「石ケンか合成洗剤か」という二者択一の議論を
超えたところに、素晴らしいアイデアが潜んでいるのです。




◆お皿についたマヨネーズをティッシュでふき取るのと水で洗う
  のとではどちらが地球にやさしい?




これもよく議論になる話題です。


「マヨネーズは24万倍の水で薄めないと魚が生きていけない
ので、水で洗うのは良くない。だからティッシュで拭き取る方
が地球にやさしい」、

「ティッシュを使えば森林破壊につながるし、それを燃やすと
二酸化炭素が出て地球が温暖化する。また木がなくなるという
ことは水を蓄えることができなくなり、淡水資源もダメになる。
だから水で洗う方が地球にやさしい」

など、立場の違いによる意見の対立が見られます。


確かに、どちらの意見も事実ですし、正解のひとつといえるで
しょう。


でも、

「お皿にマヨネーズがつかなければ水もティッシュもいらない」
のです。


この場合、

「お皿についたマヨネーズをどうするか」

という視点で議論する限り、それぞれ自分の都合の良いデータ
を集めることに精いっぱいで、なかなか事実は見えてこない
ものです。 

ちょっと視点を変えると、

「マヨネーズを必要なだけキャベツにつけて食べればお皿は
汚れない」、

など、第三のアイデアが出るものです。


これだけ言っても、

「でも、注意していてもお皿に溢れたりする場合もあるで
しょう」

と食い下がる方も(ほんのわずかですが)おられます。


そんなときは、

「お皿をなめればいいのです。イヤだったらフランス料理
のスープのように、パンなどですくって食べればいいじゃ
ありませんか」

と笑って答えることにしています。

人体は、常温でしかもほとんどお金のかからない超効率浄水
器でもあるのです。


もっとも、限度を超えるとダメになってしまいますが。

だから人間は「ほどほど」が大切なのですね。


もう少し考えを進めると、

「そもそもマヨネーズをつける必要があるのか、マヨネーズが
なくてもおいしく食べられるのでは・・・・」

という、いわゆる「脱マヨネーズ」の発想も生まれてきます。


そして、

「マヨネーズが必要になったのは、野菜が美味しくなくなった
から。野菜が美味しくなくなったのは、農薬や化学肥料を使った
ために土が死んでしまったから」

というように、次第に根本原因に向かって気づきが深まっていく
のです。




◆ペットボトルの洗い方



たいていの市町村は、

「ペットボトルを回収する際には、よく水洗いすること」と

指導していますが、

「面倒くさい」、

「もったいない」

とか

「水洗いすることで、かえって汚水を流してしまう」

などの意見があります。



ここでとっておきの(当たり前の)方法を公開しましょう。


それは、

「例えばジュースを飲んだ後のペットボトルに少量の水を入れ、
よく振ってその水(薄いジュース)を飲む」

ということです。

つまり、人間というきわめて効率の良い浄水器を使おうという
わけです。


もちろん牛乳パックでも同じことです。


これは私の息子(当時4歳)が、残ったジュースを飲もうと
して実際にしていたことです。

「ただいやしいだけだ」とも思えますが、「何も考えない大人
よりも地球に負荷をかけていない」のは紛れもない事実です。

「いやしさが地球を救う」・・・・???。


このようなアイデアは、子どもほどよく思いつきます。

子どもから学ぼうという姿勢も非常に大切です。


ただし、ペットボトルや紙パックではなく、リターナブルびん
が望ましいことはいうまでもありません。甘いものの取りすぎ
にも注意しましょう・・・・念のため。




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