『私の故郷』


その頃、まだ自分が韓国人だと知らなかったし、親戚が韓国にいると
知っても、そこがどこにあるのか分かりませんでした。
私は大阪で生まれ育ったので、私の居場所は大阪以外にはないと思っ
ていたのです。
自分が韓国人で本籍が済州島だと知った時、自分の故郷は簡単に行く
ことの出来ない遠い国にあるのだと思い、とても悲しかったことを覚
えています。
日本の友人達は、私が故郷に行ったことがないと聞くと驚きました。
彼らも、済州島がどこにあるのか知らなかったからです。
だから、『帰る故郷がある』ということは私の中で憧れでした。


社会人になって、友達と韓国へ遊びに行くようになりましたが、故郷の
済州島へ行くことはありませんでした。
初めて済州島へ行くときは、必ず父と一緒に行くと決めていたからです。
父自身、済州島へは10年以上帰っていませんでしたし、父と行って
こそ意味があると思っていたからです。
しかし、父は何年も私の希望を叶えてはくれませんでした。


我慢できなくなった私は、父も行かざるを得ない状況を作ろうと考え
ました。
勝手に2人分の済州島行きの飛行機を取ってしまったのです。
これには父も観念して、2004年秋、私は初めて故郷の土を踏む事が
出来ました。


ソウルヘは何度か行きましたが、『自分の国』という思いは無く、私は
ただの旅行者でしかありませんでした。


でも、済州島では感じたのです。
『ここは私の故郷』だと。

国籍とかではなく、私の故郷は済州島なんだと。
ここに、私のルーツがあるんだと。
父と一緒だったということも関係しているのかもしれません。


短い滞在でしたが、父の実家へ行き、血の繋がった家族に会い、私は
今まで感じたことのない気持ちをたくさん体験することができました。
そして、韓国語を勉強していて本当に良かったと思いました。
親戚が、とても喜んでくれたのです。
中でも、父が一番喜んでくれました。


父の実家は涯月にあります。
緑が豊かで、目の前に海があり、静かな村です。
私は心から、『ココに住みたい』と感じました。


これからは、私は胸を張って、皆に言うでしょう。
『私の故郷は済州島です。とても素敵な島ですよ。』と。


jeju3jeju5jeju1bong。と滝




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