~月と小人。~


僕は椅子に座って黙ってそれを見つめていました。
あなたが字なんて見えていないことくらい僕にだってわかります。
それでもあなたは本を 読んでいましたね。
そこであなたが何を理解し思っていたのかは 僕にはわかりません。

本の上では小人が踊っていました。
とても優雅にステップを踏んでいました。
あなたはそれを見てなんていませんでしたね。
気付いていたのに 見てなんていなかった。
幸せに微笑を浮べ美しく踊る小人を あなたは無視しました。

あなたがパタンと本を閉じた時 あなたがそっと浮かべた微笑は
何者も適わない。
そのことが僕はとても悔しい。
その口元に作り上げられたくぼみは
どんな美すらも適わない。
あなたが憎いんです。
わかりますか? あなたが 憎いんです。

あなたの背後のベランダで 今もなお小人の影が踊っていることにすら、
あなたはとっくに気付いている。


2003/07/11

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