その日風が消えた。
僕は丘の上に立ってもう一つの丘の上を凝視していた。
いつもはそこで背を向けて立っているアノ姿も消えていた。
つまり、僕の前から、消えたかったのだろう。
風とともに。風を言い訳に。
風が消えても雲は移ろう。
細くたなびきたる雲はやがてもう一つの丘も覆い尽くし
僕の頭のわずかに上から雨を降らす。
つまり、僕とアノ差は、これくらいだったのだろう。
雲の中か、雲の下か。
霧雨は心地良い。
でもひどく憂鬱なんだ。
憂鬱。
つまり、僕は、悲しいんだ。
悲しいんだ。悲しいんだ。
―さよなら。