inti-solのブログ

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2013.09.19
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テーマ: 鉄道(23166)
JR東海:リニア中央新幹線ルート発表 6駅の位置も


ルートは南アルプスを東西に貫き、品川−名古屋間の約286キロを結ぶ。
リニアは全席指定の前売り販売のため、駅は切符売り場や待合室を設けないシンプルな形となる予定だ。車両基地は相模原市と中津川市に建設する。品川、名古屋両駅は既存駅の地下で直結する形とし、東海道新幹線との乗り換えを短時間で行えるようにする。
リニアは騒音などを考慮して、ルートの8割超が山岳や地下トンネルを走行。東京都や愛知県の都市部では、大半が地下40メートルより深いトンネルを通る。鉄道としては初めて「大深度地下利用法」が適用され、地上の用地買収や地権者への補償の必要がなく、スムーズに着工できる利点がある。

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普通の鉄道のレールで推進機構だけがリニアモーターという、鉄輪式のリニアモーターカーは日本でも各所で営業運転の実績があります。東京で言えば地下鉄大江戸線がそうです。
しかし、磁気浮上式のリニアモーターカーは、日本国内では今のところ営業運転の実例は名古屋で愛知万博の際に建設された一例があるだけです。万博終了後も営業運転は続いていますけど、距離はたった9kmなので、限りなく実験線に近い。しかも、方式はJRとは異なります※。世界的に見ても、他には上海トランスラビットくらいの例しかないし、トランスラビットも営業距離はそう長いものではありません。
それが、一気に東京-名古屋間(最終的には東京-大阪間)で開業というのです。

※JR方式は、磁石の同極同士の反発力で車両を浮上させるのに対して、名古屋のリニアモーターカー「リニモ」は車両の磁石は下側、線路の磁石は上側に配置し、磁石の吸着力で車両を浮上させる。

個人的には、南アルプスの真下を通過するトンネルが気になってしまいます。公表されている路線図で見ると、南アルプスの塩見岳と荒川三山の間を通過することになるようです。国立公園の特別保存地域の真っ只中、トンネルによる通過とはいえ、地下水系への影響などがないのか、という危惧は消えません。

もうひとつの問題は、リニアモーターカーは既存の鉄道と比べてかなり電気を食うという点です。 以前に記事を書いた ことがありますが、鉄道(鉄輪式で通常のモーターで走る鉄道)は、非常に省エネな乗り物です。それに対して、リニアモーターはかなり電気を食う。地下鉄大江戸線など鉄輪式のリニアモーターカーでも、通常のモーターを使う既存の鉄道より電気をかなり食うようですが、磁気浮上式は、それに浮上のエネルギーまで加わるわけだから、更にエネルギーを喰うことになります。
まだ実用車両がないので、リニアモーターカーがどの程度電気を食うのか、実際のところは未知数ですけれど、 Wikipediaの中央新幹線の項目

JR東海が交通政策審議会・中央新幹線小委員会の2011年5月12日会合に提出した資料によると、500km/h走行時のリニア1列車当たりの想定消費電力は約3.5万kWとされている。2027年の名古屋開業時には、所要時間40分、ピーク時5往復(上下10本)運転すると想定すると、合計約27万kW。2045年の大阪開業時には、所要67分、ピーク時8往復(上下16本)で、合計約74万kWの電力を消費すると試算している[100]。これに対して現在の東海道新幹線は、ピーク時には1時間に最多13往復(上下26本)が走行しているが、消費電力は約36万kWである。

とのことなので、単純計算すると、列車1本あたりの消費電力は従来の新幹線の3倍以上になります。しかも、中央新幹線の車両として予定されているL0系は、1両あたりの乗車定員が従来の新幹線より少ないみたいなので、乗客1人あたりでは差がさらに広がる可能性もあります。

品川-名古屋間最速40分というスピードは確かに魅力的ですが、途中駅4駅にすべて停車すると、所要時間は70分になるそうです。ということは、加減速にかなり時間がかかるということです。途中駅に停車する列車がごく少ない、という事態も想像できます。

その点を別にしても、私自身リニアモーターカーに乗りたいか、というと、どうもあまり食指が動かない、というところです。相棒の実家が大阪なので、年に1回くらいは大阪に行きますが、品川発名古屋行きとなると、今より乗り換えの回数が2回増えます。それはちょっと面倒くさい。(最終的に大阪まで延びれば乗換えが1回増えるだけで済むけど)
それに、南アルプスの自然保護の話とは若干矛盾しますが、路線のほとんどはトンネルで、地上走行部分がほとんどないということは、車窓を楽しむことはできないということです。仕事で乗るなら速ければ速いほどいいでしょうが、旅行で乗るのにそれは面白くない。狭い日本、そんなに急いでどこに行く、なんてフレーズが昔ありましたが、それを思い出してしまいました。

JR東海が自己資金のみで建設する限りは心配する必要はないのかもしれないけれど、およそこの種の大規模工事で、予算が当初予定どおりで収まる例は少なく、下手をすれば何倍にも膨らむ可能性があります。今の時点では、中央新幹線の運賃は、既存の東海道新幹線より数百円から1000円高い程度、という予定だそうですが、実際にその運賃が維持できるのかどうかは未知数です。
今のところは東海道新幹線を廃止するわけではなさそうなので、中央新幹線にそっぽを向いて東海道新幹線を利用し続ける選択肢は充分ありますが、やがて、新大阪まで全通すると、東海道新幹線を冷遇し始めるでしょうね。もっとも、大阪までの全通は2045年の予定とか。そのとき、私は77歳。そんな先に東海道新幹線がどうなるか心配しても、始まらないか。

しかし、中央新幹線が建設されれば、次は山陽、東北、という話になるのでしょうし、それがすべてJRの自己資金のみで建設できるなら文句を言う筋合いではないのですが、「公費で」という話になると(東京-大阪間ほど高収益の路線は他にないから、そうなる可能性は低くない思われます)、またまた国の借金がどうなってしまうんだろうか、という危惧を抱きます。

それにしても、私が子どもの頃は、リニアモーターカーは近未来の乗り物と見られていたのですが、実際には実用化は遠い遠い道のりです。
理由はいくつかありますが、既存の鉄道との技術的断絶が大きすぎる(相互乗り入れができない)ということと、既存の鉄道の速度がどんどん上がっていったので、リニアモーターカーの速度上の優位が、あまり大きくなくなってきた、と言うことが理由でしょうか。私が子どもの頃、鉄道の速度記録はフランスで時速331km/hという1955年に立てられた記録が長く君臨しており、「これが鉄輪鉄道の技術的上限、営業運転の上限は200km/h代半ば」と言われていました。ところが、1980年代以降、鉄輪鉄道の速度記録はどんどん塗り替えられて、今では570km/hという記録があり、営業運転でも軒並み300km/hを超えています。
もちろん、鉄輪式の鉄道の速度は、これ以上大幅に上げるのは困難ですが、リニアモーターカーのほうは、更に上げることも可能と思われるので、技術的な「伸びしろ」は大きいのでしょうが、投入する資金との兼ね合いで考えると、なかなか難しい面が大きい、というところでしょう。いくら速くできても、飛行機には勝てないですからね。





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最終更新日  2016.11.19 09:55:23
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