inti-solのブログ

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2019.02.20
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テーマ: ニュース(100321)
エアバスA380生産終了へ 「欧州産業界の夢」はなぜ失速したか


世界の航空機の運航量は記録的な速さで増加している。だがこれにより需要が伸びたのは、旅客を目的地まで直接運べる、小回りの利くエンジン2基の双発機であり、ハブ空港まで旅客を運んで乗り換えさせるエンジン4基の巨大旅客機ではなかった。
A380の最大顧客であるエミレーツ航空など忠実な顧客は、544座席の機体は満席の場合、利益が出るとしている。だが、2階建て構造の巨大な機体を飛ばすための燃料代がかさむため、空席が1つ増えるごとに航空会社の財務に穴が開くことになる。
「エアラインの最高財務責任者(CFO)を震え上がらせる機種だ。空席が大量に出るリスクが高すぎる」。航空産業のある幹部は、こう説明した。~
航空各社は当初、競って発注した。2001年9月の米同時多発攻撃後に落ち込んだ旅客数が次第に回復し、運航コストが下がって利益が伸びることを期待したからだ。
エアバス側は、700─750機のA380を受注し、ボーイング747を過去のものにすると息巻いていた。A380の価格は現在、1機あたり4億4600万ドル(約491億円)程度だ。
だが実際は、A380の受注はようやく300を超えたところだ。ライバルのボーイング747は今週、誕生から50周年を迎え、A380よりはるかに長命な機種となった。(以下略)

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以前から、A380の生産打ち切りの可能性は指摘されており、私も4年以上前に記事を書いたことがあります。

A380生産打ち切り?

残念ながら、「か?」ではなく、実際に生産中止が決まってしまった、とのことです。
全体としてみると、世界の航空需要は右肩上がりが続いています。しかし、引用記事が指摘するように、A380が開発された当時の、ハブ&スポーク方式で、幹線を超大型機が飛び交う需要よりも、中型機の航続距離が伸びた結果、さほど需要が見込めない遠距離の地点間でも、直行便が飛ばせる路線が大幅に増えました。加えて、ハブ&スポーク方式であっても(それは、いまでも航空輸送の主流ではありますが)、超大型機を一回飛ばすより、中型機を複数回飛ばす方が、需要の変動に対応しやすく、空席が大量にでるリスクを回避しやすいのが現実です。

理屈上は、中型機を2回飛ばすよりA380を一回飛ばす方が、満席同士なら安上がりです。でも、満席にならないリスクを考えれば、中型機の方が安全確実、と言えます。こんな大型機を常に満席にできるような需要の大きな路線はわずかしかないのが現実なのでしょう。
A380は、機体が大きいだけに、値段も高価です。とりわけ、飛行機のあらゆる部品に中でもっとも高価なのはエンジンですが、これをA380は4基も搭載しています。1基だけでも、その価格は機長と副操縦士の2人のパイロットの生涯人件費の合計より高価なはずで、それを双発機より2つも余計に積んでいるのです。もちろん、燃料代を始めとした運行経費も、双発の中型機よりはるかにかかります。

おそらく、このような超大型機の需要がもっともあるのは日本の国内線です。羽田-札幌を筆頭に、かつては日本航空と全日空が、国内幹線にB747を大量に飛ばしていました。エアバスも、あるいは日本の航空会社からの発注を見込んでいたかもしれません。しかし、日本の航空会社は、A380はほとんど導入しませんでした。周知のように、スカイマーク航空が発注していたものの、これを取り消さざるを得なくなったことが、同社の経営危機を招きました。その後、全日空が、3機を発注し、1機はすでに納品されているようですが、それ以上の数を発注する様子もありません。
それどころか、既存の超大型機B747も退役が進み、日本貨物航空が運用する貨物専用機以外は日本の航空会社からは姿を消しました。
日本国内の景気が好調ではなく、航空需要の先の見通しが立てにくいこと、各空港の夜間の飛行制限、発着回数の制限がゆるめられる傾向にあること、成田空港の国内線拡大や関西に3つも空港ができたことなど、それに伴うLCCの台頭など、便数を増やすことへの制約が以前ほど厳しくなくなったため、超大型機の必要性が、日本でも大幅に減少したということでしょう。


前述の4年前の記事では、WikipediaによるとA380の確定発注は318機とあります。ところが今確認すると、284機に減っています。キャンセルが相次いだのでしょう。夢で飯は食えない、ということなのでしょう。残念ですが、仕方がありません。
ただ、この機体に対応できるように、莫大な費用を投じて設備を改修した空港も少なくない中で、このような失敗に終わってしまったことは、各方面に禍根を残した気がします。

もっとも、生産中止が決まっただけで、既存の機体は当分運行するのでしょうから、まだこれから乗る機会もあるかもしれません。というか、乗ってみたいです。現状では直接見たことすら、まだないのですが。時々飛行機の写真を撮っていますが、撮影は羽田空港に限られるので、羽田空港には乗り入れていないA380を見たことはまだありません。そのうちに、成田空港に撮影に行こうかなあ。でも、遠いんですよね。最近は飛行機より鳥の写真ばかり撮っていますけどね。





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最終更新日  2019.02.20 22:41:47
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Re:A380生産終了へ(02/20)  
Bill McCreary さん
>というか、乗ってみたいです。現状では直接見たことすら、まだないのですが。

私も残念ながらA380は、見たことがないですね(気づかなかった可能性はあります)。私は機体よりキャリアに興味のある人間ですが、A380はやはり別格ですから。もし乗りましたら、またご報告して記事も書きますので、ぜひお読みになってください。 (2019.02.21 19:42:28)

Re[1]:A380生産終了へ(02/20)  
inti-sol  さん
Bill McCrearyさん

あれは、かなり異形の飛行機なので、見れば気付くと思いますよ。国内線では乗れない飛行機ですからねえ。全日空が導入する3機は、ハワイ路線という話なので、ハワイに行けば乗れる、かな? (2019.02.21 23:07:08)

Re:A380生産終了へ(02/20)  
アンドリュー・バルトフェルド さん
「搭乗したのは最初で最後」という機体はありますが、A380は「夢のまた夢」かなと思います。

予定はありますが、コロナウィルスの収束次第で乗れない可能性もありますので。 (2020.04.06 23:23:06)

Re[1]:A380生産終了へ(02/20)  
inti-sol  さん
アンドリュー・バルトフェルドさん

ANAは2機のA380を導入し、3機目を今月導入の予定でしたが、受領を延期するとの報道がありました。投入していた成田-ホノルル線も運休となり、また航空業界全体が新型コロナの影響でひっくり返りそうな状態です。ANAはJALに比べて経営が安定している印象がありましたが、客室乗務員の8割を一時帰休、1兆3千億の融資要請など、相当追い込まれているようです。
実は、成田空港に勤めている知人(航空会社ではなく空港ビルのお店)がいるのですが、第2ターミナルはお客さんがまったく誰もいない、と言っておりました(国内線メインのLCCターミナルは違うようですが)。
A380も、こういう事態に際してはお荷物としか言いようがないでしょうね。ANAも、A380は早期に手放すことになってしまうのではないかという気がします。 (2020.04.07 06:58:34)

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