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2007年01月21日
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グリム童話に想を得た幻想と怪奇そしてユーモア。“解説”不能の作品も。

 民俗学等に基づき、独特の世界を描き出す事で定評のある、マンガ家諸星大二郎の「グリム童話シリーズ」第2弾(普通同じ出版社から出るのに第1弾は朝日ソノラマ、第2弾は東京創元社。でもどっちも副題は「グリムのような物語」)。
 第1弾よりバラエティに富んだ印象があります。

 全12編収録。巻末に作者自身の解説あり。

 例によって感想(ネタバレは避けているつもりですが、白紙状態でお読みになりたい方はお読みにならないで下さい)。
1.「七匹の子やぎ」
 SFの形式ですね。ちょっと“理解”し難かった作品(初っ端からこれか)。
 遺伝子工学の研究所と思しき所に幽閉?されている7人の少年の話。
 “母”とは何者なのか、外で何が起こったのか、“オオカミ”にあたる謎の怪生物の正体は。


 私は“理解”出来ない作品に出会った場合、“味わう”事にしています。
 しかしこの作品、妙な作品であります。あんまり“妙”なので、読後落ち着きません。少し落ち着くために“理解”は無理としても、少し“誤解”して見ましょう。

 恐らくこの作品は、無意識の世界を舞台とした、子供から大人への精神的“自立”がテーマだったのではないでしょうか。
 “母”はユング風に「グレートマザー」。恐らく終盤に現れる“オオカミ”こそ実は“母”だったのではないかと。
 “オオカミ(母)”に飲み込まれるのか、否か。
 飲み込まれた“兄弟”たちは「シャドウ」。
 主人公は“自立”を前にしてたじろいでいるのでしょう。

2.「奇妙なおよばれ」
 民話譚形式。奇怪にして幻想的。グロテスク。
 貧しい男のもとへ「血入りソーセージ」と名乗る男から食事の招待が。謎の人物から「レバーソーセージ」と呼ばれた男は出かけるのだが・・・・。
 「なんだ、これは」(@_@;)。これは完全に「お手上げ」。“誤解”すら手に余ります。

ここまで来たら 、もう、それこそ “イメージ”を“味わう”しか対処の仕方がありません
 もしかしたら、自分の“脳”が生み出した“イメージ”を自分で“味わう”という、そういう話なのかも知れません。

3.「漁師とおかみさんの話」

 しかし、「欲深な女房」の内面描写を中心に据える事によって、全く別の作品に昇華されているといって良いでしょう。
 際限の無い“欲望”に突き動かされる事の得体の知れない“不安”。その“不安”を更なる“欲望”の実現によって忘れようとするのですが、その“欲望”は、やはり更なる・・・・。
 現代人の“不安”を短い話ながら見事に描写しています。
 ( 「“悪人”の内面を描写すると“文学”になる」 なんてね)

 と、考えると、なんとも奇妙な事ですが、「“無欲”な漁師」の方が現代人にとっては、「奇妙な人物」という事になりそうです。う~ん、この人の内面世界、気になってきた。

4.「スノウホワイト」
 「白雪姫」猟奇譚とでも言うべきもの。話の発端は「白雪姫」のラスト部分(永遠の眠りについた姫が王子のキスによって目を覚ますというあれ)。しかし、途中から全然別の「話」に見事に繋がります。
 私は登場人物のセリフ「鏡」という言葉でピンときましたね(^-^)v。
 元々、グリム童話でも白雪姫は三回殺される(かかる)という話でしたね。これを、あの「伝説」(ナイショ)と見事に結びつけたわけです。

5.「小ねずみと小鳥と焼きソーセージ」
 これも筋自体はグリム童話を踏襲しています(元々のグリム童話は教訓色が強い)。
 とぼけた味わいの作品ですが、ラストは少ししんみりします(だけど、ネズミやトリの擬人化ならまだしも、焼きソーセージの擬人化というのは妙なもの。しかもパソコンに向ってソフト開発なんかしていたりする)。

6.「ラプンツェル」
 いわゆる「いばら姫」を基にして描かれたSF。
 全く同名のマンガを諸星氏はサブタイトルも同じ『グリムのような物語 トゥルーデおばさん』に描いています(いいのかよ。混乱するぞ)。
 全く同じグリム童話に2作品とも因っていますが、前作に比べると今作品は起承転結きれいに纏まっていますが、“理”にかち過ぎたきらいあります。

7.「コルベス様」
 な(◎_◎)、全く不条理に人間が、擬人化されたトリ、ネコ、石臼、卵、針等に虐殺される話。
 ストーリーって、これだけですよ。もともとのグリム童話がそうなんですね。

 欧州の民話にはこうした、因果応報、勧善懲悪といった意味もなく、理不尽、一方的、突然に“虐殺”される話、というのがありますね。
 伝承の過程で“消失”したとも考えられますが、そうだとしても、やはり日本との“精神”風土の違いを考えさせられます。

 作者は作品解説の中で「この作品を描いた時は、折りしもアメリカが一方的にイラクに侵攻して、占領していた時期だった」と書いています。

8.「めんどりの死んだ話」
 「殺人(鳥)事件」を巡るユーモラスなミステリー仕立ての作品。
 恐らく諸星氏も楽しみながら描いた作品なのではないでしょうか。“小技”に思わず笑います。

 「誰の花嫁だ」「誰のということは言えません。十年くらい前から花嫁ですから」「どういうことだ」「十年前からこうやって花嫁をやっているんです」(略)「そういう花嫁なのか」「そういう花嫁なのです」
 とか、
 「クルミの実を削って作ったフィギュアなんかも得意です」「こいつクルミフェチだな!」「萌えますな、こりゃ」

9.「カラバ侯爵」
 あれ、これは「長靴をはいたネコ」でグリム童話じゃない(解説に「日本人の作者はあまり気にしないのだった」だって)。

 元の「長靴をはいたネコ」と善悪、ベクトルを反対にして“処理”して見せた怪異譚。

 ネコって、“両義的”存在だと本当に思いますね。日本でも「招き猫」の幸福を呼び寄せるハッピーなイメージがある反面、「化け猫」のイメージもありますからね。

10.「藁と炭とそら豆」
 とぼけた味わいのミステリー。グリム童話諸星版「X曜サスペンス劇場 田園小川殺人事件 そら豆を巡る「男と女」愛憎三角関係の悲?劇」というところでしょうか。

 ずうずうしい、そら豆(「そら美」ちゃんだって)が可笑しい。

 「事件の当事者たちが藁と炭であるという特徴を生かしたトリックは、まだ誰も書いていないのではないだろうか」と解説にありますが、当たり前だ(^〇^)。
 でも確かにミステリーの当事者が「人」である必要はないよな(^O^)。擬人化された「物」で十分。
 テレビの「X曜サスペンス劇場」なんかでやらないかな(やらないよ)。

11.「とりかえっ子の話」
 本作品集中、一番の出来。SF。グロテスクなユーモアに彩られた「小人(魔物)の見た現代史」。ヒットラー、スターリン、次々と権力者の手に渡る小人。果たしてこの小人の哄笑は何を意味するのか。

 欧州には赤ん坊が妖精によって小人にすりかえられるという話がよくありますね。グリム童話では、小人を笑わす事が出来たならば赤ん坊が帰ってくるという事になっているようです。
 では、いつまでも小人が笑わなかったら?

 この作品も、“解説”できるようなものではないような。
 小人の正体は無論、何故「笑うと子供が帰ってくるのか」も何故「小人は笑うのを我慢しているのか」も謎。
 アメリカに渡ると何故膨張し始めたのかも、小人の“中身”があれである理由も謎。

 ただ、作品として完成されているので、「ストーリーが完結している」という読後の満足感はありますね。

 (この小人は“大衆(庶民ではない)”の事かな)

12.「金の鍵」
 書き下ろしの作品。読者へのサービスですね。


 まだまだ、諸星氏が興味を抱いた話はグリム童話にあるという事なので、恐らく第三弾も出るでしょう。
 楽しみです。





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最終更新日  2007年01月21日 23時59分45秒
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