猫のひたい

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ちびたん物語(1)―出会い―



野良猫ちびたんとの出会いは、近所の公園への道すがらだ。

お気に入りの散歩道というのがあって、当時独り者だった私は休みの日の天気の良い早朝や、夕焼けのきれいな日にはせっせと、
ひとり散歩に出かけたものだ。

公園を抜けた狭い住宅街へと続く小径には、野良猫ちゃんや半野良ちゃん達の溜まり場があって、
彼らを横目で眺めながら、ぷらぷら歩くのがまた楽しみであった。

数ある野良ちゃん達の中にあって、ひときわ目を引く魅力的なメス猫ちゃんがいた。
白と黒のブチ模様で、前髪が八割れとなっている器量の良い子で、私は勝手に『ミーちゃん』と名付けていた。

ミーちゃんは単に器量良しというだけでなく、流し目で人を誘うような、艶っぽい目付きをした印象的なコだった。
そればかりではない。彼女が一度スゴんだら、そこらのオス猫ちゃんなど
途端に尻尾を巻いて逃げて行く、女番長としての貫禄とスゴみを十分に兼ね備えていた。
そう、ミーちゃんは当時その辺りを仕切っていた「筋金入りの野良猫」だったのだ。

そんなミーちゃんが、ある日子猫を生んだ。

公園を抜けたすぐ前の道に面する一軒家の庭先だ。
そこのお宅には、庭で飼われている犬がいたのだが、その犬と反対側の門扉の陰を、子育ての場所と決めたようだ。
犬が吠え立てても、鎖につながれて何も出来ないことや、公園前で散歩に来る人々の目に留まって、子育てをしながらでも
うまくすれば自分や子猫が、ご飯にありつけることを知ってのことであろう。
そんな計算高さにも、彼女の野良としてのしたたかさが垣間見れる。

子猫は、真っ黒いのが1匹と黒と茶のサビ色が1匹、そして母親にそっくりの白黒模様の八割れちゃんの計3匹だった。
そしてこの白黒ブチこそが『ちびたん』である。

1_門の前のちびたん

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