いつか見た青い空

いつか見た青い空

直樹の力と美帆の想い



歩いていた。

美帆には悩んでいる事がある。彼のことである。

美帆は、自分に感じる事のない超常現象の中にいる恋人の沖津直樹がいつか、

自分の手の届かない所に行ってしまうのではないかと思っている。

死ぬ、とか、行方不明になるとかではなく、二人の心が彼女に見えない力によって

引き離されてしまうのでは・・・と思っている。

美帆の友達にも霊感が強い、と自負する人もいるが、

美帆が知っている直樹の力に比べれば問題にならない。

直樹の得意とする分野は、霊を見る力、と気を感じる力、である。一度、逢った事

のある人に対しては、距離が存在しない。何処にいても、話すことが出来れば

大丈夫である。

ただし、直接、逢った時のほうが間違いなく霊視の的中力は上がる。

直樹は意識を体から離脱させる事が出来る。例えば、一度でも逢った事のある人に

対して、距離が関係なくなるように、一度でも行った事のある場所には意識だけを

飛ばして、見てくる事が出来るのである。ただし、この状態では霊達にも間違いな

く見られているので、かなりの危険が発生する。その場所にいる存在の力が上回っ

ていれば、死ぬ事もある。

気を感じる能力は、彼自身にも対応出来なくなるほどである。会話をしていなくて

も、大体、何が起こっているのか判断が出来る。霊気、もしくはあまりよくない存

在がいる場所はすぐに判る。彼の場合、邪気が強くなればなるほど、口頭部が痛く

なる。盆のくぼ、と呼ばれている場所である。

そういえば、こんな体験もあった。

美帆とドライブしている時、美帆が腹痛をおこした。あまりにも痛がっていた美帆

を見て直樹はこう言ったのである。

「今から見ることは絶対に誰にも言わないでほしい。」

こう言って左手を美帆の体に当てながら、静かに瞑想を始めた。すると、直樹の手

の平が熱くなり、顔が引きつるほどの腹痛がすぐに治ってしまったのである。

「いつからこんな事が出来るようになったの?」

美帆は聴いてみた。

「俺にも判らない?」

直樹に力の事を聴くと、決まってこの答えが返ってくる。どうやら、直樹には

とんでもない超常現象があり、その事だけは美帆にも話していないようである。


直樹から連絡があった。夜の7時には会えるという。家に帰って休むことにした。

家に向かう美帆の車の助手席には直樹へのプレゼントが置いてある。

美帆は、そのプレゼントを軽く握り締め運転をしている。幸せだ、と思える素敵な

時間だと感じている。

直樹に逢える事、それが今、美帆にとって最高の幸せ・・・である。


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