いつか見た青い空

いつか見た青い空

やきもち焼きの美帆



愛知県蒲郡市の西に三ヶ根山という山があり、夜のドライブは蒲郡の夜景をよく見に行く。

食事を終えて、三ヶ根山山頂の夜景が見える場所で車を止めて夜景を見ていた。

「美帆、今日の話を聴かせてくれ。江美さんに会ってきたんだろう。」

美帆は少しためらいがちに話し始めた。

「たいしたことではないんだけど,毎日が楽しくないとか、希望がないとか、言って
たよ。前世の影響が・・・みたいなことも言ってた。」

「確か、前に逢ったことがある子だろう。喫茶店でバイトしてたと思ったけど。髪が長くて,藤原紀香に顔が似ている子だよね。」

「そうそう、あの子・・・ふ~ん、憶えてたんだ・・・なぜかしら?私の方が可愛くて,チャーミングなのに・・・」

こういう時の直樹は、必ず、なにかを考えているふりをする。別に男だから

いいだろう、と言って、口を利いてくれなくなったことがあるのだ。

直樹の雰囲気が静かになった。彼が意識を集中している、霊感を働かせているのだ。だが、

不思議な事に彼は目を閉じたりしない。目を開けたままの精神集中で霊視ができる。

少し時間が経ち、美帆に話し始めた。

「江美さんと話がしたい。どうやら、気の迷いではなさそうだ」

美帆は想像もしなかった言葉に正直、驚きを隠せなかった。

「と、言う事は、江美の言うとうり、前世の影響があるの?」

「はっきりしないが、逢えば判る。今度、3人で逢って話をしよう。」

「うん、判った。江美に連絡する。今度の金曜日でいいかな。江美は必ず、金曜日
は休みだから。家に帰ったらメールしてみるね。」

「どうにかなりそうなの?」

「そうだな。霊の影響ではなさそうだから、大丈夫だと思う。後ろの人達も教えて
くれると思うしね。」

「後ろの人って、俗に言う 守護霊 とか言う人たちのことなの?」

美帆は素直に聴いてみた。

「まあ、そうだな。色々と、というより、かなり色々な事を話しかけてくれている
よ。」

「私にもいるの?守護霊とか言う人達。」

「間違いなく誰にでもいて、守ってくれているはずだ。ただし、自分の力でどうに
かしなければいけない事には力を貸してくれない。本当に危ない時だけ助けてくれ
るんだ。」

この後も色々な超常現象の話をした。

「ねえ、直樹、今日は家に帰ろうよ。疲れてるでしょう?」

「そんな事ないよ。少し休んでいこうよ。」

美帆は目尻が吊り上っていた。

「今日は、か、え、る、の!」

「何を怒ってるんだよ。何か言ったか、俺。江美さんの事は何でもないってば・・・」

無言のまま、細く吊り上った目で静かに睨み付けている美帆に最強の恐怖を感じた直樹は、静かに車を

走らせた。こういう時の直樹は霊感なんて働かない。ひたすら、家に早く着く事を祈っている。

美帆は、凄いやきもち焼きなのである。直樹が家に着いて何回もメールしても、返事がない。

携帯もつながらない。

「とにかく、寝るか。怒っちゃったし・・・前世の出来事・・・宗教が絡んでいるような気がするが・・・とりあえず逢ってみないと詳しくは判らないな。」

もう一度だけメールしたら、返事が返ってきた。

「あっかんべ~だ!泣きながら寝るの・・・可愛そうで、とても可愛い美帆より」

時々,子供みたいな振る舞いを見せる美帆を直樹は愛している。

「美帆に逢えなかったら、人として、歪んだ人生を過ごしていたかもな。愛する喜びをを教えてくれた。守り抜く強さを与えてくれた。ありがとな、美帆」

いつものように 小鳥のさえずり というCDを聴きながら眠りについた。



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