「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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いつか見た青い空
4月の晴れた空
以前から気になっていた場所なのだが、その場所ではよく不審火が発生している。
改めて霊視してみると、やはり穴が開いていた。それは霊的な穴であり、普通の人には見えないが、
霊感が強い人間には明らかに、その部分の空間にゆらぎがあるのである。当然、その穴の向こうには、
不思議な世界、幽界と呼ばれる場所がある。幽界への入り口の穴には必ず門番がいる。
ここにも居るのだが、それは人の霊ではなく、この世には生まれず、あの世に
生まれた自然霊と呼ばれる存在である。ここに居る自然霊はレベルか低く、
精神が疲れている人が波長が合ってしまうと犯罪をおこしてしまう可能性がある。
また歩きはじめると、直樹の携帯が鳴った。美帆からである。
「私だけど、ローソンに行くんでしょう。私達のつまみを買ってきてよ。私は、ポテトで、江美はカラアゲ君レッドだってさ、よろしくね」
直樹は甘い物が大好きなので必ずアイスクリームを買っていく。
大好きなジョージアロング缶とアイスクリーム、二人のつまみを買って店を出た。
美帆のアパートに帰ると二人に笑顔が戻っていた。
普段と何も変わらない様子だったが、江美のオーラの色は綺麗になっていた。
直樹もテーブルに座り、買ってきたつまみを置いて食べはじめた。
「さて、これからの事だけど、さっきも言った通りに全て江美さんにしてもらいたいんだ。まず、お祈りをさせてもらえるキリスト教の教会を探してほしい。その教会へは3人で行こう。そして、過去の江美さんに話しかけてほしいんだ。」
「私、キリスト教徒じゃないけど、いいんですか?」
「それは大丈夫だ。君が君に話しかけるようなものだからね。ただ、前世の因縁を考えると、どうしても仕上げは舞台になったキリスト教会でないとだめなんだ。」
江美は少しだけ困った顔をしていた。それを察知した美帆が尋ねた。
「何を言えばいいの?」
「それは教会に行ってから教えるよ。」
数時間、この部屋で過ごし、美帆が江美を送っていった。
10日ほど経ったある日、美帆から携帯にメールが入った。愛知県岡崎市にある教
会が話を理解してくれたようだ。
さっそく、次の日曜日に豊橋駅前に3人が集まり、教会がある岡崎市に向かった。
ここは徳川家康の生誕の地である。霊的な力がとても強い場所である。
教会に早く着いてしまったので、途中で見つけたパスタ専門店で昼食を済ませた。
教会に向かう途中に江美が花屋を見つけた。
「直樹さん、花を買っていきたいんですけど、いいですか」
直樹は車を花屋の駐車場に止めた。
「私も行って来るね」
美帆も車を降りて花屋に入っていった。10分程で花束を買い、教会に向かった。
約束のPM2:00に教会の駐車場に着いた。受付に居る女性に神父さんに約束して
ある事を告げて部屋まで案内してもらった。
「おおっ、これが教会の持つ霊気か。なんて綺麗なんだ。とても純粋で、凄く気持ちいい。まるで、神様の心の中に居るみたいだ。これじゃ、悪魔なんて勝てるわけがない。」
直樹の意外な言葉に美帆も江美も噴き出していた。
「何がおかしいんだ?」
この言葉にも二人とも笑ってしまった。
「直樹さん、お祈りの言葉を教えて下さい。あまり、長居しても悪いし・・・」
「そんなに硬くならなくてもいいよ。前世の自分を思い浮かべて、こう言ってあげればいい。 もう、私は大丈夫だから、苦しまなくてもいいよ、明るい世界に行ってね。って。それだけでいいんだ」
「わかりました。今から始めます。直樹さん、美帆も一緒に祈ってもらっていいですか?」
「いいよ。二人で祈ってみて。」
江美が十字架の前にある机の上に買って来た花束を捧げた。二人はそれぞれの祈り
を始めた。
「よし、俺も始めるか。これだけの力が満ちた空間ならいつも以上に効果がでるはずだ。」
直樹も二人の後ろで霊気の同調を始めた。霊気が同調した時、その霊気の力を操る
事ができるのである。同調した霊気を江美の方向に放った。ほんの数秒かもしれな
い。が、神聖な霊気が江美を包み込んでいく。明らかに江美の雰囲気が変わった。
オーラもまた、一段と綺麗になった。
「よし、全てが終わった」
直樹がそう感じた時、二人とも顔を上げて振り向いた。
笑顔の江美が直樹に言った。
「終わりました。何となくですが、前世の私が微笑んでくれたような気がしました」
「うん、そうだね。私もそう思ったよ。ねえ、直樹、私ね、後ろから光みたいなものを感じたけど、誰か、ドアを開けて入ってきた?」
「誰も入ってこなかったよ。気のせいだ」
直樹は驚いた。明らかに美帆の感覚が鋭くなってきている。少し不安だが、直樹に
は必ず美帆を守り抜くという強い決意がある。例え、肉体が滅びても、魂だけにな
っても、必ず守り抜くという信念がある。
受付で挨拶を済ませ、教会を後にした。途中、コンビニで買い物をして、公園で休
憩をした。とてもいい天気なので、喫茶店をやめたのである。
風がとてもさわやかで、春の日差しが気持ちいい。
「直樹さん、美帆、今日は付き合ってもらってありがとうございました。なんだか、心が軽くなった気がします。正直言って、直樹さんの力を信じていませんでした。誰かに話を聞いてもらって、気持ちが楽になればいいや、なんて思っていました。聴きたい事があるんですけど、一体、何処まで見えているんですか?」
直樹は少し微笑んで答えた。
「今回は、霊視というより、俺の守護霊に 伊藤江美の真実を教えて下さい、と念じて、教えてくれた内容を江美さんに話しただけなんだ。前にも話した通り、霊能者はパイプなんだよ。俺が凄いわけじゃないんだ。」
「そうなんですか。とにかく、ありがとうございました。これから、私なりに真剣に生きていきます。私、好きな俳句があるんです。昔のお坊さんの良寛という人の俳句なんですが、 裏を見せ、表を見せて散るもみじ、と言うんです。人生は悲しい事、楽しい事、苦しい事、嬉しい事を繰り返し、過ぎて行くんだよ、と教えたそうです。枝から離れてひらひら舞いながら落ちていくもみじに人生を例えたのでしょうね。けど、なんとなく、この言葉の意味がわかってきたような気がします。ほんの少しだけど・・・」
「それでいいんだよ、江美。きっと、みんなそうだよ。自分だけが・・・と思った時にこそ、歯を食いしばって生きて行こうと思う事が必要だと思うし、行動を起こすことが大切だと思うよ」
美帆の言葉に直樹も江美もうなずいていた。
豊橋に着いたのは、夕方の6時だった。
先に江美を送り、二人はそのまま、静岡県の浜名湖にドライブに出かけた。
江美からメールが来た。お礼のメールだった。
「江美、もう大丈夫だよね。何だか嬉しい。ありがとう直樹。」
「俺は何もしていない。頑張ったのは、君達だよ。もう少しドライブしよう。」
そして、二人だけの時間を過ごしてそれぞれの家に帰った。
いつもより、暖かいと感じられる日曜日の出来事である。
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