不思議の泉

不思議の泉

橘姫と琥珀龍神 『風水害






ざざざぞぞぞ樹が、し、なる、ざわめく、
どどどごごご山が、う、なる、どよめく、

    ( こわいよ、こわいよ、こんな夜には童なくなく

   さと山いろ葉 揺れて揺られて――子守唄

          イチョウきいろ葉たからの実
       どんぐりの木のコナラ・ミズナラ・シイ
          トチもちクリの実クルミがし
       しいたけ・ひらたけ・舞ってまいたけ・ブナしめじ
          サクラ葉カシワ葉もちまいて
       タラのめ天ぷらモミジ・カエデのかざり葉

ざざざぞぞぞ樹が、し、なる、ざわめく、
どどどごごご山が、う、なる、どよめく、

    ( こわいよ、こわいよ、こんな夜には守もなくなく

   おく山みどり葉 振れて振られて――子守唄

       スギ皮あぶらおとして
       ヒノキ風呂においかぐわし
       マツ林まつたけうまし

    ( こわいよ、こわいよ、こんな夜には童なくなく守もなくなく

       キツネこんこんタヌキぽんぽこ
       アカゲラとととイヌワシひゅーい
       ウサギにリスは木のすあな
       カモシカ・クマは岩のあな

       イワナやヤマメは岩のかげ

ばっざばっざ川が、息せき切って傾れ込む、
ざばんざばん湖が、怒涛を上げて吠え掛かる、


・・・こんな大嵐の晩、日高見の国_
カガヤク七色湖に、
  琥珀龍神は千年の眠りから目を覚ましたのでした。

      龍神、拝天し雷雲を起こす!

それから七日七晩、
鉛色の団塊雲の割れ目から稲妻がふりおろされ、
//轟音なりひびき
激しい雷雨がつづきました。


・・・その頃、花爛漫の都_
ある公家屋敷に、
  末娘の橘の姫宮は七晩つづけて不思議な夢をみました。

琥珀の君、七色にカガヤク美しい若者が現われ、
瑠璃色の涙にぬれた哀しげな目をして、詩うのでした。

       時の忘れ夢に、     眠る独りの魂、
          奏でる調べの切なさ。
       愛しい貴女の甘やかな香りで、
       どうか私に、千年華を咲かせてください。
          美しい心の花を。

       狂おしいまでの貴女への恋慕。
       稲妻の閃光となり、のた打ち回り、
           私を苦しめる。
       満たされぬ虚ろな胸を埋めようと、
           豪雨の泪が、
       激流となり、降り注ぐ。

       どうか私の心を、優しく鎮めてください。
          美しい愛の花で。

千年華…
橘姫の清らな美しさを
   まるで千年の時にも輝きつづける花のようだ、と。
都の公達が讃え、歌に詠んだ詞でした。

八日目の晩、光る彩雲が橘姫を迎えに来ました。
日高見の国の天変地異は、
すでに花爛漫の都にも襲い掛かろうとしていました。
橘姫は家人と涙の別れをすると、彩雲に運命を託しました。

   らんまんの都にさきし
   橘のかおりこゐふる
     千年のゆめ
   えにしみち花もみとなる

彩雲は、七色湖を見下ろす琥珀山の頂き_
橘姫はたじろぎもせずに、ずんぐと立ち天を仰ぎ見ました。

「龍神よ われをつれて天に昇るがよい」

錦の十二単衣に黒髪。
甘やかな香りの橘姫。

   俄かに、俄かに、俄かに、

         湖水に竜巻く黒い影、浮上する。
             琥珀龍神、あらわる。

七色にカガヤク鱗に琥珀の目。
愛しい橘姫を乗せ天空へ昇ります、、、

         いつのまにか、

龍神の姿は、七色にカガヤク美しい若者に。
琥珀の君と橘姫。
彩雲に乗り、晴れ渡る天空へと消えてゆきました。




      それから、琥珀山の麓の村では…

      渇水除けに、琥珀の竜が祀られ、
      洪水除けに、橘の舞が奉納され、

     平穏な暮らしがつづいているそうです.






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