不思議の泉

不思議の泉

29.“知恵の木”とルビーの

29.“知恵の木”とルビーの実



“知恵の木”は眠っていました。

たわわに実った丸い実はいろとりどりで、照葉のうえに顔を覗かせていました。

      もこもことした あどけない寝顔

想像していた皺だらけの老樹とは違い、まるでベビー・スキンの樹皮。

、、銀狼が手の伸ばして、紅い実に触れようと、、

とたん、“知恵の木”が目を覚ましました。

人の背の高さほどの“知恵の木”が、大きく伸びをすると、

  ぐ、ぐぐ、ぐぐぐ、ぐぐぐぐ、と樹幹が雲の上に。

伸びが止むと、ふたたび人の背丈にもどり目を細めました。




ゴーヤ寺の僧侶 「お目覚めでございますか。」

“知恵の木” 「求める者あらば、木の実も生きよう。」

ゴーヤ寺の僧侶 「この者たちにお力添え願えますでしょうか。」

“知恵の木” 「銀毛の狼、紅い実を1つ採っておくれ。

   可愛らしいお嬢ちゃん、フェアリー・キャンドルを果芯に灯しておくれ。」




、、銀狼の手のひらに、紅い実1つ、、

、、キャンドルの妖精の灯火、あからかに輝いて、、




         果芯の灯、フェアリーキャンドル。

          紅い実を包む。やわらかに。

       はじけるは、柘榴。はじけるは、ルビー。

         まわるよ、まわるよ、詩人の心。




“知恵の木” 「若者よ、なにか見えたかね。」

若い物書き 「『君子豹変』という言葉が見えました。」

“知恵の木” 「フム、その意味は、何だと思うかね。」

若い物書き 「豹の毛が季節にあわせて抜け変わり美しい斑紋となるように

   君子は時代にあわせてすばやく的確に自分を変えられる、が元来の意ですが、

 私たちが捜している国王と領主のことを表わしているのではないでしょうか。

 お二人を捜すのに必要な心構えですね。」

“知恵の木” 「ホー、君自身の探しモノの話かと思ったが、捜しモノの話かね。

   『君子豹変、小人革面』。

   いずれにせよだ・・・、“知恵の木”そのものに答があるわけではないのだよ。

   その実をどう生かすかは、己が度量。

   精進、精進。」




      知恵者の顔は、ふたたびのスリーピング・ベビー。

          赤子の心は、真綿の吸い取り紙。

              無尽の智恵の実。

        うまれきて、、うまれきて、、うまれきて、、




ゴーヤ寺の僧侶に教えられた道を

銀狼、若い物書き、キャンドルの妖精は、進み始めて。

呼び止める声に振り返りました。

「がんばれー!」

一番高いゴーヤの花の上から、修練中のおしゃべりリスが

手を振っていました。



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