不思議の泉

不思議の泉

32.『居酒屋 酔いどれドッ

32.『居酒屋 酔いどれドッグ』



           酔いどれの夜がまたやってくるの。

           あなたは、泥の唄。

           そこは、そこなし、沼にしずんだ、、




まっくらな森の中のみちは、キャンドルの妖精だけが輝いて。

後ろを振り返ると、さっきまでの道は沼と化して。


     *               *               *

「クソ、先に進むしかないな。」 「あのチロチロは何かしら?」 「とにかく行ってみよう。」

 銀狼は辺りを見回し、      妖精は一点を指差し、   物書きはひるまずに、

     *               *               *


近づいてみると、『居酒屋 酔いどれドッグ』の看板灯。

      ドアを開けると…


◇ カウンターの中には、セントバーナード犬のバーテンダー :
      がいこつのワイシャツを着た、ネクタイ。

◇ フロアの案内は、シェパード犬のウェイター :
      がいこつのTシャツを着た、バンダナ。

◇ フロアの注文は、プードル犬のウェイトレス :
      がいこつのエプロンを着た、スカーフ。

◇ ステージの照明には、アメリカン・コッカー・スパニエル犬のシンガー :
      がいこつのドレスを着た、ネックレス。



客は大勢いるようでしたが、フロアは薄暗く、みんなの姿はぼんやりしていました。

すぐに曲が始まりました。

ハスキーボイスのソロが歌い、ドラムとギターが伴奏し、、




        ラブ それを口にする時

        花の香りにつつまれて夢みるわ

        それをただのお伽話というのなら

        アンタは夢をいつみるの


        夢さえみない底なし沼に酔いどれて

        俺の心はどうしようもないほど ヘベレケさ





曲の途中でプードル犬のウェイトレスが運んできたドリンクは、

『ラブ』という鮮やかな色合いのクランベリーのカクテル。


     *               *               *

「未成年は飲酒禁止だよ。」 「メタモルフォーゼはしたわよ。」 「妖精の成人式ですね。」

 物書きはからかって、      妖精はそっぽをむいて、     銀狼はなだめて、

     *               *               *


アメリカン・コッカー・スパニエル犬のシンガーは拍手の海を泳いで、

彼女を追うスポットライトは月明かりのように_

二人連れの客に手を差し伸べる、美しい歌姫。

その手に口づける、客の端正な横顔、、、

「あっ!」

驚いて声を上げたのは、銀狼でした。




        ラブ それを口づける時

        充たされる香りを知るようになるわ

        (アンタのいうとおり)

        途方にくれてる魂のアタシ

        でも人生を捨てたりしてないのよ


        それならグラスになみなみラブを注いで

        めぐる香りに夢みよう 二人一緒に





その歌こそが、

( 国王と領主を捜し出すために 木々が教えてくれた6つの道しるべ )

6番目の道しるべ、「めぐる香り」でした。







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