詩誌AVENUE【アヴェニュー】~大通りを歩こう~

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惑星のように傾き回る濾布に敷かれたマタ


リの眠りへ、万有引力の鳥かホーローの鶴口

を垂れる湯の一滴は托身の円さに満ち満ちて

いる。

羊歯に帰り花の落ちて結ばれた実が、つい

に渇き種を焦がすに至る記憶は多孔質のなす

層であり、琥珀のような記録は濾布の底に沁

み、やさしい遠心力に凝る。濁りなき蜜は恩

寵のように垂れる。
 ワイン   ジャスミン
それは鼻腔における葡萄酒と茉莉花の結婚。

檸檬水晶の風に吹かれて無限に伸展する衣裳

スカートの襞が頭蓋を越境する開花への恍惚。

それが波をたてて引いたあとには一人、ぽつ

ねんと取り残された湖畔の静けさがある。金

色の水面を飽かず眺めて佇めば、岸辺を歩い

てくる輝かしい御姿がある… … 。









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