文机 0
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写真詩: 塚元寛一さん ツイッター:びいふじゃあきい・かもめ @kamome7440 写真素材;写真ac 櫻皮詩集: sampleさん ツイッター:sample @kaibutsu_head 詩小説: しぇりーいすちゃん ツイッター:しぇりーいすちゃん @izchan1スタート・ライン 4.蚊取り線香人生を変えたいと思う君へTo you who want to change the life人生百回の努力は、手段や行為だと言う。いいえ、その向こう側を、目指さなければ。時間は一日二十四時間。三百六十五日。未来も過去も、現在という今。現在という今だけ。君は誰かと暮らす、何かを学ぶ、伝えたいことがある、そして生きてる、でもわからないことは、それ以上ある。でも人生の入口に立って、自分の足で歩いてごらん、人の表情や、人の癖を考えてごらん、いま、君は何を見てる、いま、何を得ようとしてる。人を傷つけ、人を馬鹿にし、それでも僕が、生きてる理由愛を探す理由、ねえ、現在という今だけ、現在がすべて教えてくれる。この景色、この燃えるような色、この魂の熟すような雰囲気、僕は見たかった、そして知りたかった、空はいつまでも続いてる、夜のあとでも、昼、それとは気づかぬあいだにも。 蚊遣り火が、広縁で赤く螺旋をたどっている。 梅雨が、春と夏を相まぜにし、渦巻く。仕切りなく、開け放たれた農家の座敷は、梅雨を呼吸しているようだ。雑木林へとつづく庭が、薄日のやわらかな雨にしな垂れているのが目に映る。やおら雨粒たちの力強いダンス。こんもりとした紫陽花の大葉にもて遊ばれているのか、游んでいるのか、弾んではすべり下りる。 と、1つが軌道を逸れて、踏み石にジャンプする。 ―――Let it be. (アイツ語録。) 高1のクラスメートだった友だちの1周忌はまさにLet it be.な感じで、僕らは雨に浚われてゆく言葉を追おうともせずにいて、アイツだけが写真のなかで晴れやかで、昨年の豪雨の中、アイツが迷いなく身代わりのようにして助けたアイツのちっこい弟が、玄関を出ようとする僕らにお母さんのかげから小さく手をふり、僕らの「忘れ得ぬ1日のカレンダー」が仕舞われる。 金曜夕方の駅は、僕らの感傷がタイムトンネルの汀のさざ波であるみたいに、時間を階段の靴音や駅員のアナウンスや発車のベルにかえてゆく。無言で3人、列車に5分ほど揺られると、遠く高速道路の文明景色。ゆるいループのようになっている。そうか、行くときは反対側見てたから、ずいぶんな田舎に入ってゆく気がしたんだけど…。「けっこう宇宙文明の旋回する利器あんだよなー。」とアイツが言ってたのを思い出して、頬がゆるく濡れる。わるかったな、「竹トンボか?」なんて、さ。 「渦巻き銀河だな。」と木村。 「だな。」と遠藤。 「だな。」と僕。 今週の地学の授業は、先生がアラスカで開かれてる科学教育シンポジウムに招待されたとかで不在で、自習かと思っていたら星の映像を見せられた。渦巻き銀河もその中にあった。中央のバジルから外に向かって螺旋を描くように伸びている渦状腕、その中の星は入れ替わっていくけど、渦状腕は変わらずそこに在る。高速道路を走るクルマの流れに喩えられていた。 「俺たちだな。」と木村。 「だな。」と僕。 遠藤は2人の間で柄にもなく泣いていて、「泣くな。」と遠藤の肩を叩いた木村と僕の声も、潤んでいて。こうやって、昔から生徒たちは色んな想いを抱えた3年間を過ごすのだろう。と、じわじわ胸が熱くなってゆく。いま欲しい、言葉の火。こんなとき、最近ではポケットから手放せなくなったしの先生の『櫻皮詩集』のページを、僕の心はめくってゆく。 「spiral galaxy」…、しの先生は、今もその螺旋に胸おどる言葉の火を埋(うず)ませているのだろうか。 『雨後』 櫻皮詩集より 泣くな、雨粒たちよ 降りしきる おまえのまばたきのなかで 眠れずに夜を明かした 紫陽花の尽きた 愛想を埋葬した庭先で 草を毟る、女の 弓なりにしなる背には 飛び石が配されて 陽に晒されている 駆ける、蝶の 白い素足が やわらかい耳のそばを 過ぎてゆく 着古され色を失くした花々が まだ踊ろうよって コップ一杯の強い風を呷って 乾いた声を押し殺し 泣いている 泣くな、花々たちよ 降りしきる おまえのまばたきを 昨夜、ひとつ、ふたつと数え 眠りについた 女の背に沈む石は 夜の深まりの内で 渡航し、やがて小さな 蕾のような背に たどり着いた 女は泥のついた手を 水で洗い流し 陽に翳す 濡れて光る手指には 草で切ってしまった 浅い傷が赤く浮かんでいて ひりひりと疼いている 疼いている、そのしたで 通い合う血の 鮮やかさを見つめている ホームで列車の2人を見送って階段に向かって歩きはじめると、背中から可愛い声が春のセセラギを蝸牛する。 「あの…神田さんでしょ?」 男子高生うつむき純情ふもふも振り返ると。 もふ、…る。 もふ、…ってる。 もふふ、ホームってる。 もふふ、兎さんでホームをってる。 もふもふ、お耳して兎さんをホームは立って…。 うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! お耳、して。 お耳、ボクのうさぎさんして。 お耳、ボクのうさぎさんして、おねえさんチックして。 お耳、ボクのうさぎさんして、おねえさんチックして、桃いろスパイラルして、るぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ。 「神田さん、焼肉弁当がお好きなんですか。」 ……な……耳うさ…看護師……なん?
2015年06月22日
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写真詩: 塚元寛一さん ツイッター:びいふじゃあきい・かもめ @kamome7440 写真素材;写真ac 櫻皮詩集: sampleさん ツイッター:sample @kaibutsu_head 詩小説: しぇりーいすちゃん ツイッター:しぇりーいすちゃん @izchan1スタート・ライン 3.コーヒー花火火鉢ノ灰ヲ均ラシテ、幻奏。深層心海。不条理ニ満チ満チタ、不幸ヤ悲シミガ咽頭ヲ曝ス。(臍の緒をきられた胎児、暗がりの虫、爬行する虫。)黒星ー図像・・・極限的なかたちで、歪ンダ奇妙・・。ブルーアイズだ。古惚けて煤けた駅を探す。世界形成的な濾過>過ぎてきた町に花火、過ぎてきた町に花火。――戻せない時の砂時計で、時の螺旋にめぐりゆく、アラビアンデザート・・、ネオンテトラ泳ぐ。レインボーフィッシュ泳ぐ。歌姫アリスは、プラスチックケージ・・。-DEAD END- 緊急畜殺処分決定。海ニハ求婚者ガヰル。BANKノ偽装。古風ナ手風琴ニ降リテクル、無益ナ夢ラノ殘骸。 仰望乾月 俯瞰財布 演算明滅 凝視店灯 自動開閉 ムフフフ、塾帰り高校生の味方、自動販売機より22円も安いホット缶コーヒー!満員電車、間もなく扉が開きまぁす、1本ゲット! 羨望漫画 菓子誘導 腹鳴弁当 耳兎焼肉 耳兎会計 ゲっ?な、なん《みみうさ》看護師?しかも焼肉弁当―っ?言語道断だろ、うさぎだぞ、うさぎ!うさぎさんは、アレでしょ、キャロット、キャロットケーキ、キャロットジュース、色々あるでしょ。キャベツという手もある、寒い晩にはお家で“はふはふ”ロールキャベツなんて最高じゃないか。いや、待てよ、内容物が問題だ。ひき肉はジューシーに“ふわふわ”が加わる分、焼肉よりメルヘン度は高いものの肉食系女子カテゴリーの常備色的存在じゃないか。うん、やはりキャロットだ!キャロットキャ☆ロケット月まで飛んでうさぎさんはたのしそうにおもちをつきました・・・僕はかわいそうにバスに乗り遅れました。 雲が満月をおしだすような夜は、ふと自分の歩みを確めたくなる。バスに乗り遅れたのは焼肉弁当のせいなんかじゃなく、《みみうさ》看護師が子どもの頃飼っていた“ボクのうさぎさん”に似ているからでもなく、唯々、しの先生のあの『櫻皮詩集』の美しさをこの満月の風景を解くような光のなかで確めながら歩きたかったからなんだ。言葉に綴らずにはいられない空しさがある、言葉を綴る虚しさがある。空虚さを実体に落とし込み詩として打ち上げる。しの先生のロケットはどこまで飛んだのだろう。 夏の夜空の花火は、いまもその人の瞳を煌めかせるだろうか。 歩測風景 車道瞬閑 街灯燈囲 公園空響 公衆電話 四文字熟語に填め込まれた景色に、想い出が飛び石する。この公園の奥には児童館があって、『トムソーヤの冒険』の絵本を取り合ってケンカしたっけ。公衆電話、ここの電話ボックス、まだあったんだ。桜の樹が、ガラスの四角い壁をのぞきこむように枝を伸ばしている。立ち止まって、温まったポケットの膨らみに手を突っ込む。手にすっぽり収まるアルミのまるい温もり。タブをひきぬくと、乳色がかったほろ苦い香りが鼻をくすぐる。 塾勉漢詩 詩仙酔詠 月下独酌 李白先生、月と僕と電話ボックスに、「ヒーコー!」だよ。 『花火』 櫻皮詩集より 夏の夜空に褪色してゆく肌を晒し 見上げる星へ声のない声を投げ入れる 僕らの無口な歩幅に呼吸を合わせながら 街灯と影に縫いつけた手と手に 蜜で濡れた月を均等に分け与える 背後から伸ばされる 素性の知らない子どもの手には すでになにかが包まれており ゆっくりとひろげられた手のひらは 甘く香り、野苺がすり潰されている 僕らの体温はいつだって うだるように熱くよそよそしい やっと分け与えられたときにはすでに冷たく さよならと手をふる指先の凍傷は 目のまえのあなたの人称の反復させる 火はたましいのように駆けあがり 月へと届かぬうちに離散する 僕らはまだどこかのだれかになれぬまま 手と手の触れえぬそれぞれ夜に 赤い器が割れるのを見る
2015年05月31日
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イラスト詩: 塚元寛一さん ツイッター:びいふじゃあきい・かもめ @kamome7440 イラスト素材;イラストac 櫻皮詩集: sampleさん ツイッター:sample @kaibutsu_head 詩小説: しぇりーいすちゃん ツイッター:しぇりーいすちゃん @izchan1スタート・ライン 2.クリップidentityto ask one a question時々思う。わたしは、何者だったのだろうか、と。―――わたしは一瞬、「心は?」と問いながら、どうして星を見るのだろう。星はどうして、あんなに多いのだろう。「心は?」と考えた後では、もう、その熱度は、うしなわれてしまっているというのに。 「手作り餃子か、神田の弁当。」 「おい、木村、物色すナっ?!」 「えへ、替わりに高野豆腐やるな。ばあちゃんの煮物、うめえぞ。」 ※廃藩置県1871年 ・・・(木村、おまえは明治政府か。) 「餃子、うっめー!もう1個な。」 ※第1次府県統合1871年 ・・・(そのゆでタマゴよこせ、木村。) しかし、木村の箸づかいは見事で、ワニさんクリップみたいで、つい見とれてしまうじゃないか。やはり是非とも、未成年のうちに箸づかいはマスターしておきたいものだ。と、しばし人生設計していたのは不覚で。 「なんだ、神田、食わねえなら、これももらうぞ。」 ※第2次府県統合1876年 ・・・(木村、それは“遺恨”という名の、ひとくちだ。) 「神田君、ね、詩集読んだ?」 ゲっ、志野みずき、肩ポンなんてしちゃヤバイだろ。おい、木村、勘ぐるなよ。三日月おめめみたいな目でウフフしやがって、木村、キモイだろ。 「……。」 「そっか。ね、少し読んだら、感想きかせて。じゃ。」 日本史特別クラスの方に、ポニーテールを揺らして去ってく志野みずきの、うさぎさんの大きなクリップが目に入る。小学生の妹がこの前あのチッコイのほしがってて、ヘア・クリップっていってたな。女の子って、ああいうのするのか。ふと…、《みみうさ》看護師の“もふもふ”を“ふもふも”したいとおててが悶々する。メルヘン衝動シンドローム! 「Y字路って詩、いいんだ。桜の花びらが心に敷き詰められたようなシーンがあって。」 「なんだ、読んでんじゃん。」 「うん、始めのだけ。でも、なんで僕に詩集なんか…。」 「それが、神田の書きかけの小説、文芸部の志野みずきに見せたらスゲー興奮してさ。」 「木村、テメー!勝手にー!」 「ワリィ、ワリィ、でもさ、勿体なくってな。」 「……木村…あのさ。」 「なんだよ、だから、ワリィっ。」 「…電話ボックス…あるかなぁ。」 『そらから』 櫻皮詩集より どこまで見つめることができるだろう 雲ひとつない空からは何も落ちて来なかった 目薬を点眼した、目を細めた、三日月のように そうしておもいだした、些細なうそ たまごの殻をかんだときの不快感 目をひらいて、やはり雲ひとつない空 風がふいて洗濯物を揺らしている 時間をもどせるのなら あのYシャツが乾くまえに 袖口が汚れているうちに 沈黙を上手に叩き割って 雲をつかむような話ばかり ひっつかんで、ひろげて見せた あなたは上手な箸の使い方で たまごの殻をつまんで見せた 弁当箱のように小さな生活だった どこまで見つめることができるだろう 空には雲ひとつ、うかんでいる やがて雲はふたつに割れてゆく それから、また、雲ひとつない空 今夜は満月だろうか まだ、空を見つめている
2015年05月20日
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イラスト詩: 塚元寛一さん ツイッター:びいふじゃあきい・かもめ @kamome7440 イラスト素材;イラストac 櫻皮詩集: sampleさん ツイッター:sample @kaibutsu_head 詩小説: しぇりーいすちゃん ツイッター:しぇりーいすちゃん @izchan1スタート・ライン 1.目薬autumn強い眼で睨んでいたら、眼の端がうるんで、涙こぼれそうになった。愛や希望、つなぎとめる。名づけようのない気持ちに、胸が痛くなることを重ねた。物語は始まっていくんだけれど、まだ先の見えないスタートなんだ。僕等は勇気が欲しいと思った。自分を越えていく力が欲しいと思った。 「今度の点眼薬、どう?」 「甘くて、おいしい、って感じ。」 眼に味覚があるわけではないのだけれど、感覚の青信号が点灯する、「合点のゆく説明」ってあるものだ。たとえば、この((みみうさ))看護師。まるで、っつうか本物のウサギだし!なのに、このクリニックで、「看護師さんを、ウサギがしてるんですけどー、マジ、おかしくないっスか、これ。」とか、「野兎病、うつらないかしら?」とか、「ママ、あたしも、こういう動くぬいぐるみ、ほしい。」とか言う奴は誰もいなくて、もふもふしてるお腹を不慮の事故を装いふもふもしようなんて輩もいなくて、兎が月で餅つきするくらいナチュラル~な写実画でしょって感得してしまう脳回路の理解の浸透を、「合点のゆく説明」と呼ぶみたいな。 「ほ、ほ、眼の甘味覚は回復してきたようだな。」 「眼の甘味覚、ですか、先生。」 「ふむ、そこで怪訝に覆るとは、まだ眼の苦味覚過敏はつづいておるな。」 しのクリニックの院長、しの先生は、秋田の角館の出身とかで、小学校の同級生からプレゼントされた桜皮の眼鏡ケースを診察室の机に鎮座させている。銀縁エリート遠視眼鏡をそこから取り出し視界を整えると、電子カルテに何やら打ち込む。 「先生、ドライ・アイですよね、僕。」 「愛に乾いた若者発言かね。」 「・・・。」 このつかみどころのない若オヤジ・ギャグを、((みみうさ))看護師はあっさり廃棄処分。 「先生、そういうこと言うと、患者さん来なくなりますから、ぜひ止めてください。」 処方された目薬、袋には『詩のクリニック』とある。これも若オヤジ・ギャグだろうか…。((みみうさ))看護師、これもぜひ頼む。クリニックの門脇、ハナミズキの紅い花が高校のクラスメート志野みずきみたいに口を開く。「私の従兄、詩じゃ食っていけないからって、お医者さんになったのよ。」そっか、だが、若オヤジ・ギャグは詩ではなくポエムだな…。「ほら、これが従兄の詩集。学生の時に作ったんですって。貸してあげる。」おい、おい、志野みずき、美人語録「あげる」かよ。 『Y字路』 櫻皮詩集より 電話ボックスの中はとても静かだった 夜の桜並木を見上げる、扉のすきまから風がすべりこむ 電話の向こうから聞こえるのは怒り声 それを心地よく思いながら、まだ未練のある数字に触れていた また競馬で財布を空っぽにしてしまったんだ だから、歩いて帰っている。もう少し待っていてくれ。 そう言って、次に僕が話す番になったらどう謝ろうか考えている けれど電話は途切れてしまった 一台の車が横切ってゆき、灯りに照らされる 僕の頭をたらした姿を真似た影が 電話ボックスの中でひとまわりする よじり合っていたふたつの線が ゆっくりとほどけてゆく 受話器を耳から離す 繋がっていた線を叩き切るような感覚が嫌だったから 音を立てないように、そっと受話器を下ろした 扉を開けると冷たい風が首から肩へと吹き抜ける 水たまりに月が映っている 振り落とされた桜の花があたり一面を 絨毯のようにしきつめていた ふり向くと、ふたつに分かれた道が ずっと向こうまで続いている そういえば僕は、道に迷っていたんだ もう賭けるものは僅かだからと軽い気持ちで足を踏みだす すると一頭の競走馬が僕の耳の側を通り過ぎてゆくような気がした 水たまりの月を踏みつけて、足音も立てずに川沿いの道を歩いていった 僕は煙草に火をつけて、誰もいないシャッター通りをまた 歩いてゆくことにした
2015年05月10日
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